




ゲームソフト『妖怪ウォッチ』
第1作目の売り上げは、
110万本を突破。テレビアニメは高視聴率、
関連玩具も売り切れ続出と、社会現象に。
その仕掛け人が、
ゲームクリエイターの日野氏だ。

堀井雄二さんに教わった「顧客が必要なものだけに絞る」という考え方
ゲームの世界に入ろうと思ったのは、子どものころに『ドラゴンクエスト3』(正式表記はローマ数字)に感動したことがきっかけです。当時はファミコン用のソフトだったんですが、絵がものすごく単純じゃないですか。これで人を感動させられるのはすごいなと。家庭用ゲーム機に可能性を感じたんです。
その後、コンピュータ専門学校を卒業し、最初はシステムソフト会社、その後ゲームソフト開発会社に転職。そこでディレクターの仕事をさせてもらって、30歳で独立してレベルファイブを立ち上げました。
僕は、結構下積みの時代が長いんですよ。最初は、SCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)の下請けでRPG(ロールプレーイングゲーム)の開発をしていました。そのなかの『ダーククラウド』というプレイステーション用ソフトが、国内で10万本、アメリカを含めると100万本というヒットになったんです。それで名前が知られるようになり、堀井雄二さん(ドラゴンクエストの生みの親)から「ドラゴンクエスト8」の開発を依頼されました。
堀井さんから学んだことは大きかったですね。堀井さんは「ユーザー視点」をすごく持っている人。プロの作り手でありながら、実際にプレイするお客さん側からも見ることができる。これは本当にすごいなと。
僕はそれまで、やれることは何でも詰め込もうとしていたんです。ユーザーにとって選択肢は多いほうがいいと思っていたから。でも「何でも自由にできますよ」というのは、お客さんからしてみると、「全部やらなくてはいけないこと」になってしまう。全部やらないでゲームを進めると「やり残した気持ち悪さ」が残ってしまうんです。そうではなくて最低限「やらなくてはならないこと」だけを提示することで、ユーザーはやり残した感を持つことなく、気持ちよく進んでいけます。堀井さんと出会って、お客さんが必要とするものだけに絞ることの大切さを知りました。これは、今でも大事にしていることです。
社内の反対を押し切り顧客の利便性を優先、『レイトン教授』がヒットに
この考え方は、初めての自社販売ソフト『レイトン教授』シリーズでも取り入れています。このソフトはニンテンドーDSから出したのですが、当時、DS のソフトは任天堂のものしか売れていなかったんです。周りからは、初めての自社販売作品をDSから出すことに反対されました。「DSでは『脳トレ』しか売れない。『脳トレ』をやる層はアドベンチャーゲームはやらない」と。でも僕は、「だったら、『脳トレ』しかやらないお客さんをアドベンチャーゲームの世界に取り込めばいい」と考えました。
その手法の一つが、ゲームの中で今やるべき「目的」を明確に示すこと。『レイトン教授』シリーズは推理アドベンチャーゲームなのですが、次の目的が常に表示されます。これは社内のスタッフからも反対の声が多かった。「ゲームなのに、次やることを言ってしまったらゲームにならない」と。普段アドベンチャーゲームをやり慣れている人から見たら、次の行動を制限されてしまうのは物足りないんじゃないかということです。
でも、これまでアドベンチャーゲームをやったことのない層を取り込むには、わかりやすいほうがいい。こちらで線路を完璧に引いて、その道をわかりやすく表示してあげる。そのために、今やるべき「目的」を明確に出しておくんです。そうすると、ゲームを中断して再度始める際、すぐにその世界に入りやすいでしょう? そういう風に、普段ゲームをやらない層でも楽しめる工夫をいろいろと盛り込んだ結果、シリーズ累計1550万本以上という大ヒットにつながりました。



徹底したユーザー視点は
『妖怪ウォッチ』にも取り入れられている。
大人視点を徹底的に排除。
今の子どもが共感できることだけに絞り、
ストーリーを考えているのだとか

クリエイターが調子に乗れば乗るほど、売れない作品になる
僕が一貫してやってきたことは「ユーザー視点を持つこと」、つまり「ターゲットを決めて、そのターゲットが喜びそうなことを想像しながら作る」ということです。
こう言うと当たり前のようですが、プロとして何年もやっていると、どんどん志向がマニアックになってしまいがちです。でも、クリエイタ―が調子に乗って、凝るほどに売れない作品になってしまうんです。
『妖怪ウォッチ』のターゲットは、小学生の子どもたちです。自分がその時代に興味を持っていたことを思い出して、ストーリーを考えています。そこに大人の視点は入れません。徹底的に排除します。少しでも入ると、ちぐはぐな作品になってしまいますから。
ただ、子どもが好きなものは本質的には変わらないのですが、時代によって変わってくることもあるわけです。そこはリサーチして、修正していきます。
例えば、僕の時代には『ドラえもん』が大人気でしたが、のび太のようにすべてがダメダメな子は、最近少なくなっていると思います。今はどんな子どもも「普通」になれるよう、教育が行き届いているんです。逆に「普通」であることが悩みになっている。だから、『妖怪ウォッチ』の主人公は、「普通」の少年です。そうやって、今の子どもたちに受け入れられるよう、キャラクターやストーリー設定をしています。
アニメ、玩具でも「ぶれないコンセプト」を共有。それがクロスメディア成功のカギ
もうひとつ成功のカギを上げるとすれば、「ぶれないコンセプトを打ち出すこと」。『妖怪ウォッチ』の成功の裏には、クロスメディア展開があります。漫画、ゲーム、玩具、テレビアニメの順でクロスメディア展開をしていきました。それは企画段階から考えていたことです。
実はクロスメディア展開は、国内外シリーズ累計750万本以上の出荷を記録した『イナズマイレブン』、そして『ダンボール戦機』に続く3作目なんです。前2作の経験から、クロスメディアで大事なことは、「コンセプトを明確にすること」だと学びました。
出版、テレビ、ゲーム会社、玩具メーカーとそれぞれに違った個性がありますから、しっかりとしたコンセプトを打ち出していかないと、バラバラな作品になってしまいます。それでは足を引っ張り合うだけ。クロスメディアの意味がなくなってしまうんです。
『妖怪ウォッチ』のコンセプトは「笑い」です。どんなメディアであっても、必ず「笑い」の要素を入れてもらうようにしています。極端に言うと、コメディの要素が入っていれば、起承転結がなくともそれでよし(笑)。どのメディアでも今の子どもたちが笑えるかどうかで判断しています。そうすると、一つの形が生まれてくるんですよ。それがムーブメントにつながっていくんです。
結果が出るまでやり続ける。結果があって初めて、次の展開が生まれる
1本、筋を通すっていうのは、自分のキャリアにも通じるところがあります。僕はまあ、下積みも長かったんですが、ずっと同じことを投げ出さずにやってきたんです。好きで入った道だから、とことんやってみようと。ゲーム一筋にやってきたから、業界の中でたくさんの経験値を積むことができて、そのうちヒット作を生み出すことができた。結果を残せたから、ドラクエの仕事ももらえたし、テレビアニメや映画の世界にも進出することができたんです。
せっかく入っても道半ばであきらめてしまう人も多いけど、やっぱり、好きな道に入ったら、結果が出るまでとことんやり続けたほうが絶対いい。その先にいろんな面白い展開が待っているんですから。やり続けなきゃ、もったいないですよ。


2014年7月10日に発売された『妖怪ウォッチ2 元祖/本家』。「失敗することを恐れずに、新しいものを提供していきたい」と日野氏。前回と同じものを新作として提供することは、ファンの期待を裏切ることになる、という信念のもと、『妖怪ウォッチ2元祖/本家』では、さまざまな試みを取り入れたという。今回は、「元祖」「本家」の2バージョンが用意されている。作品ごとに,“ともだち”にできる妖怪や選べるクエストの一部、また購入特典が異なっている。両方のバージョンを持っていると、特別なダンジョンに挑戦することができる。現在と過去を行き来して「妖怪ウォッチ」が消えた謎を探ってく壮大な物語。通信機能も大幅にパワーアップし、周りにいる友達だけでなくインターネットを使ってバトルをすることも可能に!
タイトル:妖怪ウォッチ2 元祖/本家
ジャンル:RPG
対応機種:ニンテンドー3DS™/3DS LL
発売日:2014年7月10日(木)2バージョン同時発売予定
価格:パッケージ版/ダウンロード版:各4,968円(税込)
制作・発売:株式会社レベルファイブ
公式HP:http://www.youkai-watch.jp/yw2/
権利表記:©2014 LEVEL-5 Inc.
- EDIT/WRITING
- 高嶋ちほ子
- DESIGN
- マグスター
- PHOTO
- 日高康智


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