プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。 才能はいらない。「できて当たり前」だと強くイメージすれば、誰でも成功できる 西田文郎さん(メンタルトレーナー、株式会社サンリ代表取締役)
にしだ・ふみお●1949年生まれ。スポーツ体力研究所サンリ所長。株式会社サンリ代表取締役。1970年代から大脳生理学を利用した科学的なメンタルトレーニングの研究をはじめ、能力開発プログラム「スーパーブレイントレーニングシステム」を完成させる。ビジネス、スポーツ、教育など多くの分野に門下生を持ち、多数の成功者を輩出している。北京五輪女子ソフトボール日本代表を金メダルに導いたことでも有名。主な著書に『NO.1理論』『ツキの大原則』(共に現代書林)などがある。
2011年2月23日

北京五輪女子ソフトボール日本代表を
金メダルに導いたことで知られる
メンタルトレーナーの西田氏。
大脳生理学を利用したその理論は、
ビジネスの世界でも有効だという。

電話番号を覚えられる人は、みんな億万長者になれる

誰でも億万長者になれるんです。自宅の電話番号10ケタを覚えられるなら、あなただって。みんな天才なんですから。それを信じないのは、おかしな話だと思う。以前、ある中学校の先生が「不良で校則違反ばかりして、とっても頭が悪い生徒がいる。その子のせいで学校が荒れている」と嘆いていました。変な話です。その子なんて、僕からするとまさに天才です。でも先生はそう考えない。「頭がよい子=歴史の年号なんかをちゃんと覚えている子」だと思っている。違いますよ。

だって彼らは、自宅の電話番号を覚えている。電話番号は数字10ケタ。それに比べて、歴史の年号なんてせいぜい4ケタです。10ケタの数字を覚えられるなんて、天才としか考えられない。

「自宅の電話番号ぐらい覚えていて当たり前」だって思うでしょう。「そんなのチョロイ」って思うでしょう。そうなんです。当たり前だと思っているから、できる。逆に「無理だ」「できっこない」と思っていたら、4ケタの年号だって覚えられません。できないのが当たり前だと思っているから、できないんです。じゃあ、「成功するなんて当たり前だ」と思うことができたら? そう、誰だって成功できる。僕が、北京五輪の女子ソフトボールチームを金メダルに、駒大苫小牧高校の野球部を甲子園優勝に導いたのも、ぜんぶ「それが当たり前だ」と思わせたところに秘密があるんです。

人間の脳というのは、「チョロイ」と思ったことは全部できるようになっている。これを「チョロイの法則」といいます。成功者というものは、みんなこの法則の実践者ですよ。松下幸之助だって本田宗一郎だって、ビルゲイツだってそう。99.9%の人ができないといったことを「できる!」と信じ込んでいた。そう考えると、成功者ってただのアホだとも言えますよね。僕の教え子にもアホがいっぱいいます。「人間の平均寿命を300歳にしてみせる」とか平気で言う人たちが集まってくる(笑)。彼らは、何でもできると思っているアホです。でも、だからこそ彼らは成功したのです。

「他人の喜び」をイメージできる人が成功する

人間は無意識のうちに「できるはずがない」「これ以上は無理だ」と限界を作っています。過去の経験から作り上げてしまった否定的なイメージ、思考、感情が、行動にブレーキをかけてしまうのです。これをすべてプラスに変換して、脳のブレーキを外してあげればいいんです。すると、イメージも感情も思考もぜんぶプラスになって、ウキウキわくわくしてきます。集中力も想像力もひらめきも最大化する。つまり、脳が最高の状態になるんです。そうすると想像以上の力が出るというわけです。

では、具体的に何をすればいいのか。イメージトレーニングの方法を1つだけお教えしましょう。成功するには、まず「願望(目標)を持つ」こと。そして、「目標達成している状態を具体的にイメージ」する。次に、配偶者でも友人でも誰でもいいから「他人を喜ばせている様子」をイメージする。人は自分以外の人を喜ばせることで、力が湧いてくるものなのです。そして、次に「達成するための問題点をイメージ」する。しかし、この作業をすると、必然的に「このままではまずい」とマイナスのほうに気持ちが触れてしまうので、「必ずできる。できて当然だ」と自分に刷り込みをしてください。最後に「喜んでいる自分」を強くイメージする。この順番です。

このイメージトレーニングが成功すると、どうなるか。「まだ達成できていないのに、まるで達成できたかのような気持ち」になるのです。ウキウキわくわくして、子どものように前向き。これをメンタルヴィゴラス状態といいます。これこそ、脳が最高に活性化されている状態なのです。

「プラス思考」を勧める本が世の中にはたくさんありますが、それを読んでマイナス思考を捨てられるかといったら、非常に難しい。なぜかというと、プラス思考の重要性は書いてあっても、どうプラス思考にするかが書かれていないからです。僕は、40年前にそれに気付き、ずっと研究してきました。それで行きついたのが、大脳生理学に基づき科学的にプラス思考を手に入れるためのプログラム「スーパーブレイントレーニングシステム」だったのです。


20代は上場企業で
会社員をしていたという西田氏。
なぜ、安定した会社を辞め、
メンタルトレーナーの道を選んだのか。

出発点は「こんな簡単なことをなぜできないのか」

会社を辞めたのは1980年。それまでは、上場企業で営業の仕事をしていました。当時は脱サラする人なんていなかったから、みんな驚いていましたね。

20代は実に無礼な人間だったんです。「なんで、こんな簡単なことをみんなはできないのか」「自分は普通の人間と違う」と本気で思っていました。まさに「チョロイの法則」通り(笑)、その考え方のおかげでぶっちぎりで成績がよかった。

「仕事なんて簡単だ」と思うようになったのは、学生時代にやっていたアルバイトがきっかけなんです。不動産でもうけている社長がいて、その下で働いていたんですが、彼はお金持ち相手にいとも簡単に別荘を売っていた。バスにお金持ちを乗せて別荘地に連れていき、現場をちょこっと見て回るだけで、超豪華なレストランで徹底的にご馳走する。それでおみやげを持たせて、その日はお終い。でも後日、営業がいくと恩と情で別荘を買ってくれる。それを見て以来、「ものを売るなんてチョロイ」と頭の中にインプットされました。

その意識で会社員になったものですから、商品がどんどん売れました。何百万円の商品でも写真を見せるだけで買ってもらえた。でも、まわりの社員を見て考えるわけですね。なんで彼らはうまくいかないんだろうと。そんな時に、脳の研究について知りました。当時、ドイツのスポーツ界で、大変なことが起きていた。全然脚光を浴びていなかった人間が、素質のある人間を追い抜いて金メダルをとっていました。彼らは何が違うのか。それはイメージ力。つまり、「できると思い込んでいるかどうか」だったんです。

「これはビジネスにも通じるはずだ!」。上司に話したら、「お前、ちょっと調べてみろ」っていうんです。そこで日本中の主要大学に電話をしたところ、そんな研究はどこもしていないと言う。上司に報告したら「じゃあ、お前がやれ」と。そこから、大脳生理学の研究が始まったというわけです。

とはいえ、文献も先行研究もありませんから、最初の8年間は失敗続き。そんな僕を見て女房が、「誰でも最初からうまくいくわけじゃないわよ」って。今でも教え子に言うんですが、「成功するには3つのものを持っていなくてはならない。1つは「夢」。2つめは「夢の話を聞いてくれる友」。最後に「夢を支え続けてくれる人」です。僕の場合は、女房が夢を支え続けてくれたんです。

会社を辞めたのは、「ブレイントレーニング」を完成させるためです。僕は、ビジネスマンだけでなく、アスリートにも効果があるだろうと考えていました。当時、スポーツの世界ではメンタルマネジメントはずいぶん遅れていましたから。そこからは、ひたすらデータ集めです。スポーツ選手を集めて、無料でさまざまなデータをとらせてもらいました。そのデータこそが、ブレイントレーニングを完成させてくれた。おかげで独立して4年間ほぼ無収入でしたが(笑)。

ターゲットをあえて絞って実績を積んだ

今、僕の会社は静岡県の島田という土地にあります。普通は、こんなへんぴなところに会社なんて作りません。実際、僕も東京に会社を構えるつもりだったんです。でも女房が「だってあなた、成功するっていったじゃない。ここでもできるでしょ」って。「いや事業にはスピードだから東京じゃないと」と僕が説得しようとしても、「だって成功するって言ったじゃない」といって聞かない。「じゃあやってやるよ!」という気持ちもあって、結局島田に会社を作りました。

しかし、これが功を奏した。島田を拠点におきながら日本全国に影響を与えるには、戦略がいります。そこで、「ある程度成功している層」にターゲットを絞って指導することから始めました。一般の人まで枠を広げれば、マーケットははるかに広がるのはわかっていました。でも、プロは内容勝負。まずはターゲットを絞り込んで、実績を積み重ねていくことだけを考えました。影響力が大きい成功者たちに評価されれば、いずれは日本中にこのブレイントレーニングが普及していくと信じてね。

その戦略は見事に当たって、門下生は口コミでどんどん増えていきました。マスコミにはずっと顔を出さなかったのに、です。でも還暦を迎えて、一般にブレイントレーニングを公開することにしました。世の中に恩返しがしたいと思ったからです。この日本は毎年3万人が自殺している国です。僕は日本のために、ブレイントレーニングを使いたいと思ったわけです。

自己実現の先には「無欲」という究極の欲がある

マズローの欲求5段階説によれば、人間にとってもっとも高次の欲求は「自己実現欲求」ですが、実はもう一つ上の欲求があります。それは「無欲」という究極の欲です。そして、無欲ほど脳が快になる状態はない。ここでいう無欲とは「何もしたくない」という無欲ではありませんよ。一生懸命仕事をして、世の中のために生きるということ。論語の言葉を借りるならば、「天命を知る」ということです。

「50にして天命を知る」と論語にある通り、かつては50代から世の中のために生きる人生が始まりました。でも今は60歳、70歳になっても自分のことしか考えないという人たちが増えています。天命を知らないまま死んでいく人生は、意味のなかった人生です。それでは空しいでしょう。人はどこかで、天運に気づかないといけない。それが、自分を活かしてくれた世の中への恩返しなんです。

よく「自分の天命はどうやってわかるのでしょうか」と聞いてくる人がいますが、成功者じゃないと天命を感じるようにはなりません。厳しいようですが、天命を行うにふさわしいレベルというものが、人にはあるんです。だからこそ、まずは成功しないといけない。

逆に言うと、成功したら天命を知り、それを実行しなくてはなりません。成功させてもらった恩を社会に返すんです。それは、自分の夢を叶えるよりも、もっと大きなこと。とてつもない成功者というものは、自分の夢なんて持っていません。彼らは天命に従って、自分がしなければならないことをしているだけ。世のためを思って本気で生きる。とてつもない成功とは、そうやって成し遂げられるものなんですよ。

information
『NO.1 メンタルトレーニング 本番で最高の力を発揮する最強の自分をつくる』
西田文郎著

大きなプレッシャーのかかる場面においても最高のパフォーマンスを発揮する超一流アスリートたち。彼らの活躍の秘密は超強気なプラス思考にある。それこそが人間の能力を最大化するためのカギなのだ。日本におけるメンタルトレーニングの第一人者である西田文郎氏が、プラス思考を手に入れるための科学的トレーニングを紹介する。アスリートのみならず、経営者やビジネスパーソン、受験生にも読まれるべき一冊。
現代書林刊

EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
東雄介
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

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