プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。

挫折や失敗を繰り返せたことは、むしろ幸運だったと思います

マギーさん(俳優、脚本家、演出家)
マギー●1972年、兵庫県生まれ。大学在学中に、同じ大学のメンバー6人とお笑い集団「ジョビジョバ」を結成。リーダーとして演出、脚本、出演の3役をこなす。2002年12月に「ジョビジョバ」活動休止後、ソロとして俳優、脚本執筆、演出の分野で幅広く活躍。脚本家として、テレビドラマ『山田太郎ものがたり』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で人気を集める。07年には、放送作家・福田雄一とコントユニット「U―1グランプリ」を結成。ライブ感あふれる新鮮な笑いを提供している。
2009年10月7日

90年代に一世を風靡した
伝説のお笑い集団「ジョビジョバ」。
脚本・演出・出演の3役をこなしながら、
メンバーを牽引していたのが、
今回登場するマギー氏だ。

転校をきっかけに、面白い人になろうと

大学で「ジョビジョバ」を始めたのも、とにかくお笑いをやりたかったからです。僕は昔から面白い人に憧れていたんです。僕の母親は何より面白いことをよしとする人で。だけど、自分はなかなかそうはなれなかった。人気者の同級生を見ては、「ちくしょう、目立ちやがって」なんて、密かに思ったりした子どもでした(笑)。

そんな自分が変わったのが、小学校5年生の時。親の転勤で引っ越すことになりまして、突然「どうせ誰も自分のことを知らないんだから、面白い人になってみよう」と思い立った。試しにやったらウケたんですよ。今思えば、転入生だからハードルが低かっただけでしょうけど(笑)。そのうちに同級生たちが「アイツ、次はどんな面白いことをするんだろう」って僕に期待してくれるようになった。周囲の期待にこたえて笑いを取れたときは本当に気持ちよくて、いつしか、やめられなくなっていました。そのころには「将来は、テレビで面白いことをする人になりたい」って言ってましたね。それも、そういうことを言ったらみんなが笑うだろうというのもあったんですけど(笑)。

中学、高校でも変わらず、常に笑いのことは考えてました。明日はどんなことをして笑わしてやろうか」と毎晩ネタを考えて。もう、趣味と言うよりは仕事に近い感覚になってましたね。

大きな転機は、いつも2択だった

もちろん当時は、自分で作った集団で食べていこうとまでは考えてませんでした。ただ、同じことに興味のある人たちに出会えれば、何らか道は開けるかなぁ、ぐらいに思っていただけです。

だから大学で「ジョビジョバ」のメンバーと会ったときも、「こいつらとならいける」とか、そんな運命的なものを感じたわけではありません。大学1年の夏休みにヒマしていた数人が、「何かやる?」みたいな感じで、なんとなく集まっただけ。

実は僕、「ジョビジョバ」の活動とは別に、とある劇団の養成所に所属していたんです。そこでしばらくレッスンを受けていたんですけど、どうもしっくりこない。ある日「僕がやりたいのは、どこかに所属することではなく、自分で作ったものを自分で演じることなんだ」と気付いたんですね。これはデカかった。早い段階で自分がやりたいことがわかったおかげで、その後ずっと迷わずに進むことができましたから。

これまでにいろんな転機があったけど、振り返ってみると大きな転機はいつも2択なんですよね。AかBか。いろいろ悩んでいても最終的には結局、2択をドンと突きつけられると思うんです。

そうやって自分で作る道を選んだ僕は、すぐさま「ジョビジョバ」のメンバーに言いました。「学生ノリは辞めて真剣にやろう。でも公演を3回しても、500人動員できなかったら解散しよう」って。そしたら、1回目で500人集客できた。そこから勘違いが始まるんですけどね(笑)。


その後、「ジョビジョバ」の
快進撃が始まる。動員数はうなぎ登り、
次々とキャパの大きな劇場を
制覇していった。

自分たちだけが楽しきゃいいって思ったことは一度もない

階段を駆け上がっていく感じでしたね。男だけの集団だったから、下克上の「オラオラ感」みたいなものがあったと思います。不安やプレッシャーを感じる余裕もなく、勢いでワーワーやってました。

我ながら当時の勢いはすごかったですよ。次々と劇場の記録を塗り替えていったし。でも、ワーワー言いながらも常に客観的な目は持っていようとしてましたね。自分たちだけが楽しきゃいいって思ったことは一度もないです。やっぱりお客さんが笑ってはじめて「笑い」は成立しますから。それに、客観的な視線を持って綿密に計算して稽古していないと、お客さんは笑ってくれないんですよ。

学生のころから、舞台にお金をかけたり、プロのスタッフに頼んだり、安いけど親しい友人や先輩からもきっちり入場料を取ったり、いわゆる「演劇サークル」のノリとは最初から違っていたと思います。だから僕たち、敵も多かったんですけど(笑)。

やれることはすべてやったと思えたから、決断できた

「ジョビジョバ」結成から5年経って、再び転機がやってきます。大きなプロダクションから、メンバー全員まるごと所属しないか、と声をかけていただいたんです。もともと舞台だけじゃなくていろんな活動がしたかったので、快諾しました。おかげでテレビ、映画、ラジオ、雑誌とフィールドが広がっていったんですけど、それまで見たことのないような素晴らしい景色に立てると同時に、見たことのない高さや固さの壁にもぶつかって。とても勢いだけで登っていける世界じゃないぞと。

それでも何度もあがいて壁にぶつかっていくうちに、それまで6人組だからこそのイキオイで上だけを見てオラオラ言ってた僕たちが、それぞれ、一人ひとりのスピードで進みたくなってきた。僕だけじゃなくて、全員そうでした。だって「活動休止しようと思う」って神妙に話し出したら、みんな即効、同意してましたから(笑)。

みんなが「やれることはすべてやった。やり切った」と思えたから、そういう決断に至ったんだと思います。辞めるかどうか迷うのは、まだやり切ってない、まだ自己ベストを出せてないって心のどこかで感じているからではないでしょうか。

今、振り返ってみると、確かに「オラオラ感」はあったけど、いつも自信満々だったかというと、そんなことはありませんでした。むしろ自信の数より挫折の数のほうが多かったと思います。でも、何度も挫折や失敗を繰り返すチャンスを与えてもらったのは幸運でした。そんだけレースに出場できたってことですから。レースに出なきゃ自己ベストも何もわからないですからね。

「嫌いなことが同じこと」。これが最低限のルール

2002年に「ジョビジョバ」を活動休止してから7年。ますますこの仕事が好きになっています。それはたくさんの「いいにおいのする人たち」と一緒に仕事ができたおかげです。「ジョビジョバ」のメンバーもそうだったけど、今、「U―1グランプリ」というコントユニットを組んでいる福田雄一さんもそう。みんな「いいにおい」がするんですよ。

「いいにおい」っていうのを、言葉にするのは難しいんですけど、例えば「嫌いなことが同じ」ってことがあります。「好きなことが同じ」というのも大切だけど、それ以上に嫌いなことが同じっていうセンスって、チームで仕事をする上で絶対必要だと思います。今度の舞台『バンデラスと憂鬱な珈琲』では、主演の堤真一さんをはじめ、段田安則さん、高橋克実さん、小池栄子さん、高橋由美子さんといった、年齢からなにからバラバラの個性の面々とひとつのものを創るとなると、ある種、異種格闘技戦になるんです。そういうときは特に「嫌いなことが同じ」ってセンスを共有することが大事ですね。とりあえず「反則」が共有できなかったら試合になりませんから。その点は、スポーツと同じなんだと思いますよ。

information
『バンデラスと憂鬱な珈琲』

米国軍随一のネゴシエイターであるバンデラス。彼の使命は12時間後に迫ったロシアとの開戦を阻止することだった。フジテレビ系列で2009年秋より放映される月9ドラマ『東京DOGS』など数々の人気番組で注目を集める放送作家・脚本家の福田雄一氏と幅広い分野でマルチに活躍するマギー氏が、主演に堤真一氏を迎え、これまでになく痛快な追跡劇を生み出した。「せっぱつまった堤さんが見てみたい」という福田&マギーのインスピレーションから生まれたこの舞台。段田安則、高橋克実、小池栄子、高橋由美子など豪華俳優陣の味のある演技とスピード感あふれる斬新な演出が絶妙な化学反応を起こし、抱腹絶倒の笑いを提供する。

作/福田雄一、マギー 演出/マギー 出演/堤真一、高橋克実、小池栄子、村杉蝉之介、中村倫也、高橋由美子、段田安則 公演日時/2009年11月2日(月)〜11月29日(日)

会場/世田谷パブリックシアター
企画・製作・お問い合わせ/シスカンパニー ☎03−5423−5906 http://www.siscompany.com/

EDIT/WRITING
高嶋千帆子
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

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