プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。

楽しくやる。自然にやる。無理に大きく見せない。これがいちばんですよ

原田泰造さん(お笑いタレント、俳優)
はらだ・たいぞう●1970年、東京都生まれ。93年名倉潤、堀内健とともに、「ネプチューン」結成。第36回ゴールデンアロー賞芸能賞を受賞。『ネプリーグ』『ナニコレ珍百景』『しゃべくり007』など、数多くのレギュラー番組を持つ。また、俳優としても活躍し、テレビドラマ『編集王』『ビッグマネー』『奥さまは魔女』『篤姫』などに出演。2005年の舞台『キスへのプレリュード』では主演を務め、第43回ゴールデンアロー賞演劇新人賞を受賞した。
2009年2月18日

芸能界入りの動機は、
「テレビに出たかっただけ」だという。
そんな原田氏が、
お笑いトリオ「ネプチューン」
を結成したのは、23歳のときだった。

2人を選んだのは、ただ一緒にいたいと思ったから

僕は何でもよかったのね、テレビに出られれば。物心ついたころから、テレビの世界に憧れていて、内緒で児童劇団に申し込んだこともあった。親が月謝払ってくれなくて入れなかったけど(笑)。

それで高校卒業後、アルバイトして貯めたお金でドラマのエキストラを紹介してくれる会社に所属したのね。入会金を払えば、エキストラの仕事をさせてくれる、まあ、劇団みたいなところ。演技の勉強がしたかったというよりは、何でもいいからテレビに出たかったんです。

その後、オーディション雑誌を見て、モデルとか俳優とか、いろいろと応募した。今の事務所(ワタナベエンターテインメント)に入ったのもその一つ。ここは友人とコントやって、オーディションに通ったのね。だから芸人をやることになった。自分としては何でもよかったんだけどね(笑)。

そのときのコンビ名は「パープルン」。ちょうど「村さ来」っていう居酒屋でアルバイトしてたから(笑)。それで、半年くらいお笑いライブに出たりしてたんだけど、相方が借金作って田舎に帰っちゃったのね。

一人になってどうしようかと思っていたら、ちょうど同期に健(堀内健氏)がいて。それで「一緒にやる?」って声をかけて、コンビを組んだわけ。

今度のコンビ名は「フローレンス」。ちょうど電車に乗ってたとき、コンビ名、決めようって話になったのね。そしたら、車窓から「フローレンス」っていうラブホテルが見えて。じゃあ、これでいいやって(笑)。

「フローレンス」は2年くらい続いたかな。お笑いライブで優勝したりもしたんだけど、健も僕もボケでしょ。収拾つかなくなっちゃったのね。お客さんがいつもポカーンとしてて、「何でだろう」と思ってたら、ツッコミがいなかった。それにリーダーを日替わりでやってたんだけど、2人とも時間管理がむちゃくちゃで。これはまずいっていうんで1つ先輩の潤ちゃん(名倉潤氏)に入ってもらったの。潤ちゃん、面倒見がいいからさ。

2人を選んだ理由はね、笑いのセンスが合うってこともあったんだけど、単純に、一緒にやりたかったのよ。僕、人見知りなのね。でも、2人とは最初からすごくやりやすかった。無理をしないでいられたの。そういう人たちと組めたから、長くやってこられたんだと思う。

組んだ瞬間は長くやる自信なんて全然なし。長くやろうとも思ってなかったんじゃないかな。今、この瞬間、コイツといたい。そう思っただけだったのね。

仕事って、思い通りにならないことばっかりでしょ

仕事上の転機といえば、やはり『ボキャブラ』(『タモリのボキャブラ天国』)ですね。それまでイベントに出させてもらっても、お客さんが少なすぎて3回公演なのに1回で終了になったりしてたのね。それが『ボキャブラ』に出た途端、イベント会場に入りきらないほどお客さんがきてくれるようになって。まるっきり変わったのね、世界が。

『ボキャブラ』って1回の収録で何本もネタをやるんだけど、どれがウケるのか全くわからなくて。自信があるものがウケなかったり、逆にこれはダメだろうと思うものが1位になったり。「あれ、何でだろう」と思うことは多かったですね。今でもそういうことはありますよ。だけど、前よりその幅は狭くなったかな。少しずつだけど、感覚がつかめるようになってきているんでしょうね。

仕事の壁を乗り越えてきたとか、そんなたいそうなことではないですよ。ただ、仕事って、思い通りにならないことばっかりでしょ。一日に何度も「どうして、こうなるんだろう」って思うことが起きるんですよね。

特にドラマとか舞台なんかやっていると、そういうことの連続でね。最初のころなんか、台本を見ただけで、「うわあ、これだけのセリフ覚えられるかな」って不安になった。それを一回一回クリアしていくと、それが自信になるのね。まあ、今回も大丈夫だろうって思えるようになる。それで、少しずつ大きい仕事ができるようになっていったのかな。


この春、
芸能界の礎を築いた渡辺プロの創始者、
渡辺晋氏の半生を描いたミュージカル
『ザ・ヒットパレード』が再演される。
主演を務めるのが原田氏だ。

他人が喜んだ顔を見て嬉しがれる人には、求心力がある

渡辺晋さんって、エンタテインメントに対する愛情がすごいのね。情熱というか、パワーというか。何年経ってもそれがぶれない。草分け的存在だから何をやるにしても初めてだったわけでしょ。でも、全然ビビってない。器のでかい人だったんだなあと。

僕は自分が楽しみたいと思って仕事をしてきたんだけど、晋さんは違うのね。人を楽しませたいということがパワーの源になっている。他人が喜んだ顔を見て嬉しがれる人。こういう人は強いし、ものすごい求心力を持っている。だからこそ、すぎやまこういちさんとか青島幸男さんとか渡辺美佐さんとか、天才が彼の周りにどんどん集まってきたんだと思う。

晋さんは、人を楽しませるということで、自分自身が楽しかったんじゃないかなあ。能力を評価してもらいたい、なんて、二の次なのね。やっぱり楽しくてやってる人にはかなわないんですよ。楽しまなきゃと思って頑張って仕事をしてる人には、無理があるのね。本物には勝てないの。

焦ってもいい。焦るのは、悪いもんじゃないから

僕が新人のころ、先輩から「人生には3回チャンスがくるから、そのうちの1回でもつかむといい」っていわれてたけど、どれがチャンスだか全然わからなかった(笑)。若手にとってはどれもがチャンスみたいなものでしょ。といって、全部チャンスだと思って頑張るほどガツガツもできないし。

だからチャンスのつかみ方っていわれても見当つかないけど、振り返ってみて、ひとついえるのは、そのときそのとき、とにかく楽しかったってことかなあ。

当時は、みんなものすごく貧乏でバカばっかりやっててさ。テレビの仕事のとき、若手は全員緊張してるから見てると面白いのよ。「お、アイツかんだな」とか「派手にスベったな」とかね、お互いを見て笑ってて。とにかく楽しかった。

10代、20代って、すごく焦るでしょ。若いころは自信があるしね。僕もそう。結構、昔は焦ってた。自分はあれもこれもできる。こんだけたくさん能力があるのにどうして仕事が来ないんだろうって思っていた時期もあった。でも、いざ、ふたを開けてみたら、それほど能力はなかったんだけど(笑)。

でも、焦りが悪いものかっていうと、そうでもないのね。今は逆に、そういう若さゆえの焦りみたいなものが欲しいなと思うときもある。よく見られたいと思う気持ちがないと勉強しないものね。

落ち込みそうになったときにはさ、「世界なんて簡単に取れるよ」とか大きなこと言ってくれる友達に会ったりして、気持ちを楽にすればいいんじゃないかな。

楽しくやる。自然にやる。無理に大きく見せない。これがいちばんだと思うんですよ。

information
ミュージカル『ザ・ヒットパレード ショウと私を愛した夫』

戦後、日本のショウビジネスを発展させた渡辺プロダクション。その創始者である渡辺晋、美佐夫妻の半生を描いたミュージカル。昭和30年代から50年代にかけて、日本のポップス、歌謡界の礎を築いた渡辺夫妻。焼け野原の東京でジャズを通じて知り合った2人の夢が、ザ・ピーナッツ、クレイジーキャッツ、伊東ゆかり、中尾ミエ、ザ・タイガースなど、数々の人気歌手、ヒットソングを生み出していった。実業家としても評価の高い渡辺氏の生き方から、苦しい時代を生き抜くヒントがたくさん見つかるはずだ。

2009年3月5日(木)〜25日(水)東京公演 ル テアトル銀座 by PARCO 
2009年4月1日(水)〜5日(日)大阪公演 シアターBRAVA!
出演:原田泰造、戸田恵子、ほか 
脚本:鈴木聡 演出:山田和也 音楽:宮川彬良 
問い合わせ:東京公演 サンライズプロモーション東京☎0570-00-3337、 大阪公演 キョードーチケットセンター☎06-7732-8888

EDIT/WRITING
高嶋千帆子
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己
HAIRMAKE
山本知佳
STYLIST
伊藤省呉

衣装協力/エディフィス新宿(東京都新宿区新宿3-31-9 1F/☎03-5366-5481)
ジャケット(25,200円、エディフィス)Tシャツ(8,400円/ミゼリコルディア/ともにエディフィス新宿)

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