




17万部を超えるベストセラーになった
『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』
仕事力の磨き方をわかりやすく説いてくれる
経営コンサルタントは、
かつて東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)の
行員だった。

ある人物と飛行機で隣り合わせたことが人生を変えた
国際的な仕事がしたかったんです。東京銀行は一番国際化が進んでいた銀行でした。当時は終身雇用の時代。入社3年目までは仕事を覚える時期、みたいな空気が当たり前のようにあって、のんびりしていましたね。それこそ独身寮の先輩と出社前にテニスをして、仕事を終えてもまだ明るいからテニスをして、なんて時期もあった。支店の業務から輸出、輸入、それから為替ディーリングを経験するんですが、これが面白くて。将来は為替ディーラーになってニューヨークに赴任して、なんてことを考えていたんです。
転機になったのは3年目のMBA留学。2年間、仕事を離れて遊ばせてもらえるのかと思ったら、大間違いで。人生観が変わるほどの衝撃を受けました。例えば日本人の価値基準は、アメリカ人とは全く違っていた。いい大学を出ていようが、いい会社に勤めていようが、そんなことは全く関係ない。大事なのは、「自分が何をしてきたのか、どれだけ会社に貢献できたか」なんです。
MBAを出ると有名企業に就職する人もいましたが、最も尊敬されるのは、いい会社に入る人ではない。独立する人でした。そしてみんな、自分というものを、ものすごく大事にする。これはカルチャーショックでしたね。
自分を意識しなければ、大企業というのは居心地がいいんです。そこそこの給料に寮や社宅、言われた仕事をきちっとやり、みんなと仲良くし、一生勤めて、それなりに出世して…。何も疑わずに、そういう生き方をする道もある。でも、アメリカに行って僕は変わった。自分しかできない仕事がしたいと思ったんです。
幸運だったのは、帰国後システム部に配属されたこと。当時は主流じゃないし、人が行きたがる部署でもない。でも、実は銀行全体を見ることができる場所なんですね。しかも大きな予算で、大きな権限をもらって走らせるプロジェクトにも出会えた。面白くて夢中になりました。難関だった情報処理技術者の上級資格も取得することができました。
その後、M&Aの部署に異動になるんです。今でこそ花形部門ですが、当時は妻から「チョコレートの会社に出向するの?」と聞かれたような時代(笑)。でも、これがまた面白くて。日本やアメリカの大企業トップと数十億円、数百億円のビジネスを展開していく。当時、33歳から34歳。まさに自分が頭に描いていた国際ビジネスでした。
ところがあるとき、ニューヨークからの出張帰りの飛行機の中で、ある人物とたまたま隣り合わせになりました。かつて外務官僚だった岡本行夫さんでした。機内でいろんな話をしているうちに、新しく作った会社に来ませんか、と誘われたんです。僕は転職するつもりなんてありませんでした。ところが日本に戻ってからも、続けてお声がけしてくださったんです。
岡本さんは僕の性格を見抜いたんですね。そしてこう言われた。「赤字なので助けて欲しい」と。実は僕の趣味は親切なんです(笑)。それを見事突かれて断れなかった。ひとつだけ条件があったのが給料。銀行でもらっていたのと同じ額を出してほしいと。僕には家族を養う義務があったから。
小さな会社にいくわけですから、大銀行のような大きな仕事はもうできないと思っていました。ところが岡本さんのもとには国内外の政財界の大物が続々と相談にやってきた。世界の超一流の人たちを間近でたくさん見られたんです。これは本当に貴重な経験でしたね。



岡本氏のもとで仕事に邁進する一方、
自分の進みたい方向も見え始めた。
ビジネスのアドバイスがしたい、
やはり独立してみたい、という思いだ。
だが、ここでまた転機が訪れる。

人生の師匠に教わった"お金を追うな、仕事を追え"
もう転職するつもりはなかったんです。でも、独立する前に来てみないか、と誘われて。日本福祉サービス(現セントケア)の村上美晴社長でした。今では売り上げが200億円を超える上場企業ですが、当時はまだ11億円ほど。ところが、村上社長はこのころから上場を考えていたんですね。それで社内コンサルタントのような仕事をしてほしい、と。この経験がまた、貴重なものになるんです。
東京銀行でも岡本さんの会社でも、僕は日本を代表するような会社とばかり付き合っていました。でもここは当時、名前もない、お金もない、人材もいない会社。この会社を村上さんという名経営者が成長させるわけですが、どうすれば会社が強くなっていくのかを、僕はまさに実地で見ることができたんです。これは、まさにかけがえのない実体験でした。
そして僕は独立するんですが、このとき嬉しいことがありました。それは、かつて属した3つの会社が顧問先になってくれたことです。辞めた会社が顧問先になっている。これは、すごい信用を生むんですね。実は転職も同じ。辞めた会社とどれだけいい関係を築けるかは、その人の力を示す指標のひとつなんです。もっといえば、古い友人、長く続いている友人がどのくらいいるかは、人を見極める指標のひとつだと思う。
僕は本当に人に恵まれました。上司にも恵まれました。どうしてそうなったのかはわかりません。ひとつあるとすれば、仕事を本当に楽しんでいたことかもしれません。面白いから自分の仕事を人にしゃべりたくて仕方なくて(笑)。今もルンルン気分で出社していますしね。あとは、人にお願いごとをするより、お願いごとをされるほうが好き、ということもあるかもしれない。僕の人生のバロメーターは、知らない人にどのくらい道を尋ねられるか、なんです(笑)。人が道を尋ねるのは、余裕のある人でしょう。それを目指したい。そもそも僕は人生に楽観的なんです。なぜなら、たくさんの人に親切にされてきたし、助けられてきたから。本当にそうだったんです。
若い人には、早く高給取りになりたい、という人もいますね。でも、お金は後からついてくるんです。僕の人生の師匠である曹洞宗の僧侶からはこう教わりました。「お金を追うな、仕事を追え」と。とにかく懸命にやること、いい仕事をすること。休日にウチでゴロゴロしてるんじゃ、話にならないですよ。大リーグのイチロー選手は、果たして毎日ゴロゴロしているか、想像してみてください。
一流と二流は、実は一人前になってからの行動が分けるんです。みんな一人前になるまでは頑張る。悔しいから。でも、そこから努力できるかどうか。仕事がひと通りできるようになってから努力を積み重ねると、深いところまで見えてきます。
そして、優れたリーダーは人格も備えているものです。人格がどうすれば磨けるのかは私にもわかりません。しかし、少なくとも人格を高めようと思わないと人格は高まらない。思っていないと、そっちの方向には向かわないんです。
何よりもまずは自分の能力を高めること。能力を高めれば、それに見合った仕事が必ずやってきます。そして、仕事を好きになることです。でも、そのためには仕事ができなくちゃいけない。できるから楽しいし、好きになれるんですよ。実は仕事を楽しむにも、努力が必要なんです。



『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』
小宮一慶著
ベストセラーばく進中の小宮氏によるビジネスパーソンのための養成講座シリーズ。新聞の何を見ているか、工場視察でどこを見るかなど、仕事ができる人の視点を教えてくれる「発見力」。なぜ日本のGDPを知る必要があるのか、数字のワナにはまらない人はどう見るのか、世の中が、ビジネスが違って見えてくる「数字力」。身近なことからビジネス上の問題解決の仕方を学べる「解決力」。頭がどんどんよくなる本の読み方、選び方を指南する「読書力」。まさに目からウロコの養成講座シリーズです。小宮氏が豊富な経験からしぼり出した方法論で、足りないビジネス力を養ってみては。(すべてディスカバー刊)
- EDIT
- 高嶋千帆子
- WRITING
- 上阪徹
- DESIGN
- マグスター
- PHOTO
- 設楽政浩


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