急成長企業2社の人事プロフェッショナルに聞いた

「社会人経験5年目」のリアルな採用基準

企業が求める人材像を把握することが、転職成功への第一歩。そこで今回は、3年連続増収増益を達成している成長企業に、中途採用する際の採用基準を聞いた。中でも「第二新卒」という見方はされなくなり、中堅社員と評価され始める「社会人経験5年目」を評価する“ものさし”を聞くことで、企業が若手経験者採用に求めるものは何かを探ってみた。

2011年2月9日

急成長企業は応募者をどう評価しているのか?
採用担当者に直撃!

業界内では珍しいネット専門の生命保険会社として注目を集める
ライフネット生命保険株式会社の場合

ライフネット生命保険株式会社 総務部長
曽和利光氏

ライフネット生命保険株式会社について
2008年5月の開業以来、急成長を遂げる生命保険企業。安くてシンプルな保険プランで注目を集め、2010年12月現在で保有契約件数は5万件を超える。各メディアでも注目を集める成長企業。

 
【採用で重視する点は?】
3つあります。1つ目は、「自分の頭で考える」ことができるかどうかです。保険という商品を扱う仕事は、法律や契約、ファイナンスやマーケティングの知識のほか、数学的な確率論等、厳密な論理性を用いた議論が多く、専門性の高い仕事といえます。しかし一方で、生命保険という商品は、広く大勢の人向けの公共性が高いもので、決して難しいものではありません。こうした商品を扱ううえで求められる論理的思考とは、「自分の持つ思い込みや偏見から逃れ、真理をつかみとれる力」だと思います。柔軟な発想で課題認識ができ、ファクトとロジックを用いて結論まで導ける人であってほしいです。2つ目は「知的好奇心」です。時間的、空間的に広がる縦横無尽の発想力を持ち、自ら学習する能力に長けた人材です。そして3つ目は、「多様性への対応力」です。ライフネット生命保険は、さまざまなバックボーンを持つ人が短期間で一気に集まってできた多様性の高い企業です。自分と違うことを尊重しながらも、きちんと議論ができる対応力が必要になります。
社会人経験5年程度の人には、専門家集団をつなげるような、ネットワークのハブのように組織の横串を刺す役割を期待します。知の組み替えを促す存在として、新しい発見や気付きを提供してもらいたいですね。
 
【前職での仕事の成果は?】
重視します。中でも、「逆境における成果」にこそ興味がありますね。厳しい状況下で自分なりのどんな工夫をしたか、どんな手だてで乗り切ったのか、具体的なエピソードを聞くようにしています。また、関わったプロジェクト等の仕事の中で、どのような課題を認識し、どういうファクトに基づいて深く掘り下げながら解決に導く努力をしてきたのか、その結論にまで到達させる力については、特に重要視しています。
重要度★★★

【前職での役職やポジションは?】
役職の有無は全く気にしません。肩書きという意味ではなく、どんなポジションで、どんな人たちとどのようなコミュニケーションをとってきたかは、多様性への対応力を判断するために必ず聞くようにしています。価値観がフラットであることは、論理的に物事を考えるためにとても大事なことだからです。
重要度★★☆

【前職での雇用形態は?】
これも特に気にはしていません。派遣社員として入社した人で、現在は社員登用された人材も実際におります。ポテンシャルを見て、職種に対応する力がありそうだと判断すれば採用しています。
重要度☆☆☆

【前職の勤務先の規模は?】
全く気にしません。当社には、大企業の出身者もいますし、名前も知られていない小さなベンチャー出身者もいて、それぞれがそれぞれの持ち味を活かして活躍しています。企業の規模よりも、どれくらいの人数の人たちと、どんな環境で仕事に取り組んできたのかが気になりますね。
重要度★☆☆

【学歴は?】
全く不問です。現に当社では、大卒、専門学校卒等を含めて、あらゆる経歴を持った人たちが活躍しています。学歴で何かを判断するような採用は行っておりません。
重要度☆☆☆

【失業期間は?】
理由次第でしょうか。基本的には、社外で自主的に行った活動に対しては評価をしたいと考えていますので、ブランクがあるからといって一概にダメだとは思っていません。その期間に経験したことを仕事に活かせるのであれば、貴重な経験として評価します。実際に、海外に留学して経営を学んだり、語学の勉強やボランティア活動等を行ってから当社に入社した社員もおります。
重要度★★☆

高齢者向けグループホーム「愛の家」で注目を集める
メディカル・ケア・サービス株式会社の場合

メディカル・ケア・サービス株式会社
執行役員
H&Cサポート部長
佐藤文雄氏

メディカル・ケア・サービス株式会社について
1999年11月設立のグループホーム「愛の家」運営企業。2007年以降は積極的なM&Aによって事業を拡大。有料老人ホームやデイサービスセンターの運営・管理、福祉用具の販売等も行う。高齢化社会に向け、認知症ケアの分野を牽引する注目の成長企業。


【採用で重視する点は?】
未来に対してどういう志向を持っているのか、そして、その志向や目標がわれわれの提供できるものと一致しているかどうかこそが、最も重視するところです。ですから、面接で確認するのは、どんな目標や希望を持っているのか。そして、転職の狙いや、仕事選びの軸としているものについても確認しています。誰もが「過去の経験を活かしたい」と言いますが、それよりも、今後どうしていきたいのかを軸に考えることのほうが重要だと考えています。
私は、社会人としての方向性が5年目くらいでおぼろげに見えてきて、そこからの5年間で方向性を固め、10年目くらいで方向性が定まるくらいのペースでもいいと考えています。そう考えると、「社会人5年目」はとても重要な時期だと思います。だからこそ、きちんと見据えたその先が当社であるべきかどうかは、お互いじっくりと話したうえで、しっかりと見極めるべきだと考えています。

【前職での仕事の成果は?】
仕事には2種類あります。与えられる仕事と、自分で作り出す仕事です。社会人経験5年目という時期は、社会人として「これがやりたい」というものに気付き始め、ようやく自ら仕事を作りだせるようになる時期だと考えています。よって、与えられた仕事で残した成果はあまり重視していません。それよりは、どうやって課題を解決してきたのか、その方法が気になりますね。どんな仕事にも必ず課題があります。そこへの向き合い方の中に、「自分で仕事を作り出す力」を見ることができるからです。
重要度★★★

【前職での役職やポジションは?】
特に気にしません。ただし、いずれはマネジメントを任すことができそうかどうかを見極めるために、前職ではどのような環境で育てられたかを確認することはあります。
重要度★☆☆

【前職での雇用形態は?】
募集するポジションによります。専門性の高い職種では前職がアルバイトや派遣社員だとなかなか難しいですが、営業職であれば雇用形態は気にしない等、さまざまなケースがあります。しかし当社は「自分から仕事を作り出す力」を重視しているので、そういった経験がしにくい、アルバイトや派遣社員は評価につながりにくい部分はありますね。
重要度★★☆

【前職の勤務先の規模は?】
一切気にしません。大企業だから、中小企業だからということは、採用を行ううえで関係ないと思っています。
重要度☆☆☆

【学歴は?】
経験上、上位大学の出身者のほうが論理性が高いといった傾向があるような気がしていますが、一方で、複雑な事情が背景にある場合には、ほかの人にはない経験を積んできていたり、興味深い考えを持っている可能性もあり、そこに魅力を感じることはあります。いずれにしても、それは「傾向がある」というだけであって、基本的には学歴は仕事をするうえで関係がないものだと考えていますので、選考ではさほど気にしません。
重要度★☆☆

【失業期間は?】
失業期間は気になります。ブランクがあるということは、その期間、どの企業からも欲しいと言われなかった、もしくは何もしなかったということ。それでは、評価のしようがありません。ただし、ブランク期間をどのように有意義に過ごしたのか、きちんと説明できる場合は評価するケースもあり得ます。「資格取得をするために、専門学校に通った」等、過ごし方に必然性を感じ、今後の仕事につなげて考えられる場合です。
ブランクがあることで、仕事の“勘”が鈍ると考える企業もあるようですが、私はそうは思いません。仕事とは、もっと標準化されたもので、しばらくしなかったくらいで一気に衰えるものではないからです。ブランク明けにミスが続いたとしたら、それは勘が鈍っているのではなく、その人の資質の問題だと判断します。
重要度★★★

転職エージェントに聞く
企業は「社会人経験5年目」をどう見ているのか?

ポテンシャルだけでは厳しい!
「その職種で通用するスキル」が必須に

株式会社リクルートエージェント
キャリアアドバイザー
チームリーダー
倉増泰葉氏

【社会人経験5年目のポイントは?】
「第二新卒」と言われる新卒3年目までは、まだポテンシャルを重視した採用が行われます。しかし、5年目となると、ポテンシャルだけでは通用しにくくなります。職種を問わず、社会人としての最低限の知識を身につけたうえで、その職種の基礎を理解しているかどうかが評価の決め手になるのです。仮に異職種に挑戦するとしても、希望する仕事で活かせる力が、前職時代に身についているかどうかが重要になりますし、そのスキルが何なのかを意識できていることが肝心なのです。
また、仕事への取り組み姿勢も見られていると思ってください。言われたことだけをただ取り組んできたのか、積極的に手を挙げてさまざまなチャレンジをしてきたのかでは、5年目ともなると、社会人としての基礎スキルに大きな差が出てくるものだからです。


【前職での仕事の成果は?】
前職での実績は、どの企業でも必ず見る部分です。5年目ともなると、自分の実績について語れない人に対する評価は厳しいと思ってください。ただし、誰が見てもわかるような、ものすごく高い実績を残していることが大事なのではありません。5年といえば、職種経験をある程度は積み、何かしらの形で成果が出てくるころです。あくまで採用側が知りたいのは、5年間にその仕事に対してどのような意識で取り組んできたか、そしてそれが周囲からどのように評価され、数字や成果として残したのかということです。仮にその成果が低いものだったとしても、自分なりに努力し、工夫した結果として導いたものであれば、採用側は評価をしてくれるものです。つまり、「自ら主体的に仕事に取り組めるか」が大切で、それを成果やプロセスを通じて判断しようとしているわけです。
重要度★★★

【前職での役職やポジションは?】
役職というものは、企業ごとの組織要因によるところが大きいため一概にはいえませんが、まだ5年目であればそれほど重用視しなくていいという企業がほとんどでしょう。募集内容によっては役職があればその分評価は上がる場合もあるかもしれませんが、肩書きがないからといって気にしすぎることはありません。
それよりも、「いずれはリーダーを任せられそうだ」と期待させることのほうが重要です。仕事の成果はもちろんですが、仕事への取り組み姿勢や、この転職にかける意欲等を通じて、「ポジションを任せられる、信用できる人材」であることを強調しましょう。
重要度★☆☆

【前職での雇用形態は?】
「正社員」「契約社員」で働いてきたことがあくまで前提だと考える企業は多いです。よって、「派遣」「アルバイト」では、不利になる場合が多いかもしれません。やはり前者と後者では、任される仕事の範囲や裁量の幅が大きく違うという評価が一般的。社会人経験の乏しい5年目をわざわざ採用するのなら、もっとポテンシャルを秘めた若手人材を採用しようと考えるのは当然の流れです。この不況下ですし、いろいろな事情があるとは思います。正社員や契約社員以外の人は、なぜその働き方を選んだのかを説明できるように準備しておきましょう。
重要度★★☆

【前職の勤務先の規模は?】
企業によって評価がわかれるところなので、一概に言うのは難しいですね。大企業の場合、組織の中でもまれ、その一員として段階を踏みながら仕事を進められる経験を身につけていたり、研修をじっくり受けていることを期待する場合が多いです。一方で規模が小さい企業は、一人に任される裁量が大きい分、いろいろな経験を積んでいたり、研修と合わせて早くから現場で叩き上げられてきたことに注目する場合が多いでしょう。いずれにしても、応募先がどのようなタイプの企業で、どのような人材を求めているかによります。しかし、それはあくまで前職の環境がそうであっただけで、本人がどのような意識で仕事に取り組んできたのかが重要です。企業規模によって合否を判定することはまずないと思っていいでしょう。
また、前の勤務先の社名は、本人のポテンシャルをはかる一つの判断材料として見る場合が多いです。しかし、知名度の低い企業だからといって評価が下がるものではありません。いずれにしても、規模や名前といったものは、応募者がどんな人なのかを想像するための、「会わずにわかる部分」を知る一つの判断材料にすぎないのです。
重要度★☆☆

【学歴は?】
これも、勤務先の規模のケースと同じで、書類上でその人がどんな人かを想像するための一つの材料です。受験時に頑張ったんだなという証として、いい印象を持つきっかけになる場合はあります。相対的な評価を行ううえでの、一つの判断材料だと考えてください。あくまで大事なのは、「社会人としてどうしてきたのか」。それに尽きるのです。
重要度★☆☆

【失業期間は?】
いくら不況で失業者が多いとはいっても、ブランクがあれば印象は悪くなります。しいて許容範囲を言うとすれば、「2カ月以内」でしょう。長ければ長いほど、採用側の評価は下がると思って間違いありません。やはり採用側が気にするのは、「失業期間中に何をしていたのか」。それは、就業意欲があるかどうか、働くことへの感覚が鈍っていないかが気になるからです。「失業期間中、どの企業からも欲しいと思われなかったのでは?」「採用してもすぐに辞められてしまうのでは?」という心配を払拭することが大事でしょう。「入社後にはこうなりたい、こんなふうに頑張りたい」と、入社後のビジョンがきちんと語れるのは当然で、失業期間中に得たことをどう活かしたいのか、一貫性を持って説明できることが評価を下げないための最低条件だと思ってください。
重要度★★★

「社会人経験5年目」は、ポテンシャルよりも「仕事上の成果」が重要視される

今回は、2社のケースと、転職エージェントに採用基準について話を聞いたが、やはり同じ「社会人経験5年目採用」と言えど、共通する部分もあれば、違う部分もあった。しかしながら、どの企業も「前職での仕事の成果」は重要視しており、ポテンシャル以上に、「その職種の基礎知識が身についているか」が求められているようだ。また過去の経験の中で「選考に不利になるのでは?」と思われるような点でも、企業にきちんと理由を説明することができれば、納得してもらえるケースがある。「社会人経験5年目」は、業務を通じ、自分自身の専門分野を身につけながらも、自身の過去のキャリアについて今一度棚卸ししておくいいタイミングだと言えそうだ。

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EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
志村 江
PHOTO
武島 亨、樋木雅美、松田康司
ILLUST
まるやまともや

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