企業のニーズに合わせてシナリオを練る!

給与・待遇・役職…希望をかなえる面接交渉術

企業の採用意欲も徐々に戻りつつある中、転職で希望を叶えるチャンスも広がってきています。思い通りの給与、待遇、役職などを手に入れるためには、面接での交渉が肝心!そこで今回は、交渉を有利に進めるためのテクニックを、シーン別に紹介します。人材コンサルタントオススメの「キメ言葉」も用意しました。

2010年07月21日

<ADVISER>

佐藤人材・サーチ株式会社 代表取締役社長 佐藤文男氏

佐藤人材・サーチ株式会社
代表取締役社長 佐藤文男氏

日商岩井、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券、ブリヂストンなど異業種を経て1997年に人材紹介(ヘッドハンティング)ビジネスへ。2003年に佐藤人材・サーチ株式会社を設立。ヘッドハンティングの傍ら、キャリアアップ、中途・新卒採用などの講演や執筆を行う。『転職のバイブル2010』(経済界)ほか著書多数。

Case1
前職経験を活かして同じ職種に転職したいAさん

メーカーの経理 → 給与水準の高い業界の経理を希望

<プロフィール>
大学卒業後、経理職としてメーカーに入社。30歳。既婚(子どもなし)。入社以来7年間、経理畑一筋。簿記2級所持。英語が得意で、現在、国際会計基準(IFRS)の検定合格に向けて勉強中。
<希望>
●今の会社は給与が低すぎる。もっと給与の高いところにいきたい。
●語学力を活かして、国際会計基準を勉強してステップアップしたい。

キメ言葉 
「入社したら、○○で必ず即戦力になれます」


まず最初に、交渉に臨むにあたっての鉄則をお伝えします。1つ目は「事前にシナリオを作ること」。そのためにはキャリアの棚卸しが不可欠ですし、相手が求める人物像を把握しておかなくてはいけません。2つ目は「相手の気分を害させないこと」。冷静に進めるのが基本。感情的になってはダメです。最後に「交渉を1回で終わらせようとは思わないこと」。焦らず、2回、3回と話し合う覚悟で挑みましょう。

あなたの場合は、まずは7年間どんな経理をやってきて、入社後にどう貢献できるのかを伝えること。そして、「英語が得意で、TOEICは○○点です」など、英語のレベルを明確な数字で示すことです。あなたから即戦力であることをアピールして、切り札となる英語力や検定合格後の貢献で後押しするのです。今は英語のできる経理をあらゆる企業が喉から手が出るほど欲しがっていますから、企業はあなたを逃すまいと思うはず。そうなれば勝ったも同然です。

給与については最初から強気に主張せず、面接の後半に「私と同程度のキャリアの方はどれくらいの年収ですか?」と聞くのがいいでしょう。「実はほかに受けている会社ではこれくらいを提示されていて…」といった探りを入れるのも、あなたの場合なら効果的です。業界ごとの給与水準ですが、一応目安はあるとはいえ、このご時世、会社の業績に大きく左右されます。あまり業界を気にしすぎず、営業利益や求人状況などからトータルに見て、個別の企業ごとに判断するほうが賢いですね。求人広告を隅々まで読めば、ある程度の年収レンジは読み取れるはずです。

Case2
異業界で、条件をつけて給与アップを狙うBさん

広告代理店で広告営業 → インターネット業界でコンテンツ制作のプロデューサーを希望

<プロフィール>
大学卒業後、大手広告代理店で広告営業を8年経験。31歳。未婚。チームリーダーも任され、キャリア、給与ともに順調にアップさせてきた。もともとゲームおたくで、インターネット業界に興味あり。独学だがインターネットの知識には自信がある。
 <希望>
●営業として培った対人スキルや企画力、リーダーシップには自信あり。転職後も肩書きのある立場で働きたい。
●現在の給与は約900万円。ネット業界の給与は安いと聞くが、できれば下げたくない。百歩譲ってすぐに前給保証は難しいとしても、将来的には給与増が見込めるような交渉をしておきたいのだが…。

キメ言葉 
「前給を維持したいですが、それが無理な場合、1年後に同額まで上げてもらうためにはどのような実績を残せばいいでしょうか?」


あなたが今の給与額のまま転職するのは、かなり厳しいでしょう。業界的に未経験で年収900万円はありえませんし、会社も周囲とのバランスを第一に考えるはず。しかも、このご時世では転職先は中小企業に限定されますから、せいぜい600〜700万円がいいところですね。しかし、1年後に今と同額にする方法があります。それは、面接の場で条件を設定するのです。「1年以内にヒットコンテンツを出す」などの高い目標を設定し、「クリアすれば900万円に上げる」という約束を取りつけるのです。その際は周囲の誰もが納得するような条件でないと意味がありませんし、また、その条件を設定し、クリアすることで組織にプラス効果がもたらされることを前提に話す必要があります。

流れとしては、まずは経験がないなりに仕事に対して理解があることを伝える。あなたの場合、これまではコンテンツを売る側だったが、今度は作る側になるということで、コンテンツそのものへの知識や理解があり、違う角度からアプローチできるという点に重きを置くことが効果的です。そして、自信の裏づけをはっきりさせましょう。「以前こんな企画を実現させた」「150%の売り上げ実績を残した」「周りからこう評価されてきた」などなど。そのうえで、上記のキメ言葉を言ってみましょう。いきなり「ヒットコンテンツを出すから900万円にしてほしい」では、交渉以前に採用されないので注意が必要です。

ちなみに、中小企業の場合、肩書きや役職はいくらでも融通がきく場合がほとんど。「プロデューサーの肩書き」くらいなら、よほどのことがない限りつけてくれるでしょうから、お願いしてみましょう。また、「最初から○人くらいの部下を抱えるマネージャーとして」「予算はこれくらいの裁量を持たせてほしい」といった希望も、給与交渉の条件設定の流れで伝えてみましょう。あなたの可能性を感じ取ってもらえていれば、前向きに検討してくれるはずですよ。

Case3
倒産しそうな会社から抜け出し、不利なく転職したいCさん

人材派遣会社の企画営業 → 損保業界の営業を希望

<プロフィール>
大学卒業後、人材派遣会社に入社し企画営業に。30歳。既婚(子どもあり)。昨今の不況で会社の人件費が大幅カット。社員数が減り、仕事量が激増して忙しすぎる毎日。過去にはトップ営業として何度も表彰されたが、最近は目標数字も達成できず…。取引先から「うちに来ない?」と声をかけてもらうこともある。
<希望>
●毎日忙しいが営業成績は全く伸びず、やりがいや手ごたえを感じない。業界的に不況のあおりをモロに受け、業績も悪化の一途。小さい会社だけに、このままだと倒産の可能性も…。早いところ今の会社を抜け出して、かねてから興味のあった損保業界を目指してキャリアアップしたい。

キメ言葉
「損保業界の中でも、御社の○○の部分にとても惹かれました。御社で働きたいです」


業績不振はあなたのせいではないので、もう前を向くしかありません。あなたがすべきことは、早く辞めたいという焦る気持ちを抑え、「新しい挑戦をしたい」という前向きな気持ちを前面に出すことです。そのためにはシナリオをしっかり用意することが大事。希望する損保会社について徹底的に調べ上げ、業界研究やその会社の業界の中での位置づけなども細かく勉強しておくこと。「なぜその会社に入りたいのか」を自分自身の言葉で伝えるための理論武装をすることです

気をつけたいのは、焦って最初から強気で押しすぎないこと。給与については、希望額を聞かれてから、前給などを考慮して具体的な数字を伝えましょう。「御社のトップ営業の方は、実際にどの程度の実績を残して、どれくらいの給与をもらっているんですか?」などと聞くのもいいですね。また、最後に質問を求められるはずなので、その時に「どれくらいの数字を残せば、リーダー的な立場を任せてもらえるのか」「営業としての裁量の幅」なども確認しておきましょう。仕事への前向きさが伝えられる一方で、約束を取りつける可能性にもつながります。

ちなみに、今の会社の不満や後ろ向きなことは言ってはダメです。ましてや業績不振、倒産しそうだなんて絶対に言わないこと。足元を見られた瞬間に、交渉の余地がほぼなくなると思ってください。あとは、有能な人材に見せたいがために「ほかのところから誘われている」などと強気なことを言いたくなる気持ちもわかりますが、あなたの場合は絶対にNGです。こういう駆け引きは、あなた自身が絶対的に優位な状況でないと逆効果なのです。「だったらそちらに行けば?」と返されるのがオチですよ。

Case4
最近話題の「外資の成長企業」に転職したいDさん

印刷会社の営業企画 → 中国からの進出企業を希望

<プロフィール>
大学卒業後、商社の営業を経て、取引先だった印刷会社に営業企画として転職。32歳。未婚。企画とは名ばかりのルーチンワークに不満を感じ、今後伸びそうな中国企業に転職を検討中。商社時代に中国での勤務経験もあり、語学力にはそこそこ自信がある。
<希望>
●現在の仕事は、毎日変化が少なくて刺激が感じられない。できれば給与は下げずに、ある程度の肩書き・待遇で面白みのある仕事に携わりたい。最近ニュースでよく見かける中国からの進出企業に興味がある。うまく高待遇で潜り込む方法はないものか。

キメ言葉
「すぐに実績を出せます」「○○万円を希望します」

中国の企業といえど、欧米の外資企業とさほど変わりないと思ったほうがいいですね。彼らにしたら、在日の中国人を雇えば、日本人を雇うのに比べて圧倒的に安く済むわけです。日本人をあえて採用するということは、その見返りを期待するからこそ。ポイントは「すぐ」です。すぐに業績を上げてくれるか、すぐに戦力になるか。その視点を忘れずに、これまでの2社で扱った商品、販路などの知識が通用する前提で企業選びをすれば、即戦力として受け入れてくれるはずです。

ちなみに外資系企業全般にいえることですが、交渉の場でははっきり物事を言いましょう。遠慮したり、察知してもらおうといった考え方は一切通用しませんから、「年収は○○万円を希望」「リーダーとして1つの部署を任せてもらいたい」などと、臆せずにズバっと希望を言うことです。あとは、1回の面接だけで結論を求めないこと。何度も交渉を重ねていく粘り強さも必要です。会社の成長段階や規模によっては、待遇面は最初から高望みはできないかもしれませんので、ある程度実績を残してから、半年後や1年後といったスパンで見直してもらうよう約束をするのがベターでしょう。そのように事前交渉すれば、応じてくれるはずです。

交渉上手になる秘訣は「自己分析」にあり

面接での交渉も、あくまで一つのビジネスコミュニケーション。相手の話を聞き、意見を返すという点では、普段の業務と同様にマナーを忘れないことが大事だと佐藤氏は言う。成功の秘訣は、入念なキャリアの棚卸し。自分自身の強みを把握し、自分の言葉で話せるようにしっかり準備できていれば、相手の話を聞く余裕も生まれ、焦らずに希望を伝えることもできるはず。場数を踏んで、いろいろな会社の人事に会って話すことも、交渉を上達させる近道だ。

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どの企業でも、仕事に対して前向きに動ける「即戦力人材」が求められる時代。アピールポイントをまとめるためにリクナビNEXTスカウトにレジュメを登録し、何度かブラッシュアップするのがオススメ。企業からのオファーを受けることで、自分の思わぬ強みが明確になることも。面接で自分の強みを伝えることができれば、転職後に納得のいく給与、待遇で働ける可能性がアップするぞ。

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EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
志村 江
ILLUST
栗生ゑゐこ

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