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プロが指南する「経営が危ない会社」の見分け方
絶対大丈夫だと思われていた大企業が次々と事実上の倒産をし、自分の会社は大丈夫なのだろうかと、心配になる人も多いだろう。特にこの時期、赤字決算が発表されると、このままこの会社にいるよりも、どこでもいいからほかの会社に転職したほうが…なんて考えもよぎってくる。そこで今回は、企業の倒産に詳しい専門家に「倒産の前兆」について指南してもらった。
2010年3月10日
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[上場企業の倒産鑑定人] 株式評論家 和島英樹氏 |
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[中小企業の倒産鑑定人] 経営コンサルタント 竹田陽一氏 |
いきなり失業者にならないように、会社を見極めよう
転職は失業中より在職中のほうが圧倒的に有利と言われている。特に買い手市場の今は「会社を辞めずに転職活動をする」のが、キャリアアップ転職のセオリーと言っても過言ではない。在職中なら気持ちにも経済的にも余裕があるので、自分のキャリアパスにそった転職先を選ぶことができるからだ。
とはいえ、大企業が倒産に追い込まれてしまう経済状況の中、自分の会社が突然倒産し、いきなり失業者になってしまう可能性がないとは言い切れない。「希望退職を募っている」「赤字決算になった」「ボーナスが減額された」など、さまざまな不安要素が思い浮かぶが、専門家は倒産の兆候をどこで判断するのか。数多くの倒産企業を取材してきた2人に聞いた。
[上場企業]倒産の兆候はこれだ!
<IR情報は重要な判断材料になる> 株式記者として20年以上、数多くの大企業の倒産を見てきた和島氏。「上場企業の場合は、たいていホームページにIR情報が載っているので、そのなかにある決算書を見れば会社の財務状況がすぐにわかる」のだとか。ポイントは「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つを見ること。和島氏にそれぞれのチェックポイントを上げてもらった。 ●「貸借対照表」で借金が多い いわゆる「バランスシート」と言われるもので、「会社の財産がどうなっているか」がわかります。ここでは「借金が多くないか」をチェックしましょう。 ●「損益計算書」を見て、経常利益が3年以上赤字 こちらは通称「P/L」と言われ、「会社のもうけがどれだけあるか」がわかります。「売上高」「営業利益」「経常利益」「純利益」などのさまざまな項目がありますが、「経常利益」に注目してください。大まかに言うと、「売上高」からコストを引いたものが「営業利益」、「経常利益」はその「営業利益」に「営業外収益」を加え、さらに「営業外費用」を引いたもので、企業の収益力を示す指標となります。この「経常利益」が数年間黒字ならば安定企業です。増えていると優良企業ですが、増えていなくとも横ばいならば倒産の心配はほとんどないでしょう。逆に経常利益の赤字が3年以上続いているなら、経営は相当厳しくなっていると言えます。 ●「営業活動キャッシュフロー」で、赤字が続いている 「キャッシュフロー計算書」は「現金の出入りがどうなっているか」を知ることができます。「営業活動キャッシュフロー」「投資活動キャッシュフロー」「財務活動キャッシュフロー」の3つの項目がありますが、その中で注目してほしいのは「営業活動キャッシュフロー」です。これが赤字ということは、本業で稼いだ現金収入より借金の利息などの支出が多いということになりますから、倒産の危険度が高いです。その場合、外部からの資金調達をしなければ経営が保てなくなりますが、そんな会社に投資する人はいないでしょうから、赤字が続くと倒産してしまいます。 |
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[中小企業] の倒産の兆候はこれだ!
<IR情報がない場合は、社内の状況でチェック> 上場していない企業は、ホームページにIR情報がないことが多く、財務状況を把握しづらい。そこで、調査会社時代に1600件の倒産企業を取材し、経営コンサルタントになってからも数多くの中小企業の倒産を見てきた竹田氏に、倒産の兆候を上げてもらった。 ●支払期日より前に売掛金を回収する 資金繰りに困り始めると、社長は大口だけでなく小口の売掛金の回収に対してもうるさく言うようになる。それがもっと進んでくると、支払期日より先に売掛金を集金に行くよう営業に指示が出ます。規模の小さい取引先なら、経理部長の裁量で期日より先に支払ってもらえることもありますからね。そういう無理な命令が上司から出たら、経営が厳しくなっていると見て間違いありません。 ●営業会議が多くなる 業績のいい会社は経営者の方針や販売戦術が明確です。それに従って社員の教育にも力を入れている。一方、会社が危なくなると、そんな余裕はなくなり、会社の方針もあいまいになります。具体的な営業方針も示さないのに、ただ「売り上げを上げろ」と言うだけの営業会議が頻繁に行われます。方針がないまま無意味な会議が増えたら経営難を疑いましょう。 ●少人数私募債を頻発する 少人数私募債というのは、会社が無担保で発行できる普通社債の一種です。金融機関に頼らず資金を調達できるので、中小企業にとっては強い味方となります。黒字の会社がつなぎ融資として発行する場合はいいのですが、なかには赤字だらけで倒産が見えているのに私募債を発行し、社員や取引先からお金をだまし取ろうとする悪質な経営者もいます。少人数私募債を頻発し出したら、要注意です。 |
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[中小企業] 倒産の兆候はこれだ!その2
●営業のトップ、経理部長が辞めていく 放っておいても売り上げをあげてくるような優秀な営業は、自社の情報を仕入れるのも早い。自社の経営が危ないという情報を早い段階で手に入れていますから、真っ先に辞めていきます。そういう優秀な人は取引先から「ウチで働かないか」と声もかかるし、自分で部下を数人引き連れて独立してしまうケースも多い。普段から営業のトップの動向には気をつけておくといいでしょう。同じように、目安になるのは経理部長。会社の財務を知り尽くしている経理部長が見切りをつけて会社を辞めたら、見込みがないのでは、と疑ったほうがいいと思いますよ。 ●社長の出社時間が遅くなる 中小企業の場合は、社長自ら金策に回ります。取引先に営業に行くのなら訪問先を周りの人に告げますよね。でも金策に行く場合は、どこに行くか告げないで出かけるんです。中小企業は、よほど経営状態がよくないと社長秘書は置かないので、秘書を代行している総務課長などに社長の行く先を聞いてみるといい。社長の行く先不明が頻繁にあるようなら、金策に走っている可能性が高くなります。 ●せこ過ぎる経費の節約 「ボールペンは自分で買うこと」「社用で使う携帯は自分持ち」「営業で使用する車のガソリン代は自腹」など、考えられないような経費の節減策が出たら要注意。社員が自発的に呼び掛けるなど無駄な経費を削減しようというものではなく、仕事に必要なものまで会社が出し渋るようになったら、運転資金が底をついている証拠でしょう。 ●給与の遅配が始まる 最近では「ボーナスが減額した」人も多いでしょう。「賞与が出なくなった」なら、まだ大丈夫ですが、「給与の遅配」があったら倒産の最終段階に入ったと思っていいでしょう。パターンとしては給与の半分だけ支払って、来月もまた半分だけ支払う。この繰り返しで遅配が始まったら、早くて3カ月、遅くとも6カ月後には倒産だなと思います。遅配が始まったら、いよいよだと思って本腰を入れて次の仕事先を探し出さないと大変なことになりますよ。 |
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転職活動は倒産の兆候がないうちから始めよう
最近では、上記のような倒産の傾向と前後して「希望退職」を募るケースが多い。人材コンサルタントが口をそろえて言うのは、「倒産の兆候があっても、安易に希望退職に乗らないこと」だ。退職勧告されたなど仕方ない場合もあるだろうが、会社が危ないからという理由だけで離職して転職活動をするのは、非常に危険だ。なかなか就職先が見つからず、長期にわたって転職活動を余儀なくされる場合が増えているので、退職には慎重になろう。倒産の兆候があった場合はすぐには辞めないで、急いで転職活動をすること。とはいえ、履歴書や職務経歴書の作成、応募先の情報収集、あっせん会社への登録など、急いでも応募までに数日かかってしまうのが一般的だ。できれば倒産の兆候が見える前に、転職の準備を進めておくのがベストなのだ。
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- EDIT&WRITING
- 高嶋ちほ子
- ILLUST
- 坂本タクマ