キーワードは「仲間」「褒める」「長所」

辞めたいけど辞められない…悶々スパイラルからの脱出

上司や同僚との人間関係、職場環境の不一致など、仕事をするうえで不満を感じたり、イライラがつのって「もう辞めたい!」と思うこともあるだろう。しかし、そんな簡単には辞められないもの。とはいえ、不満を抱えたそのままの状態で働き続けることは精神的にもよくない。かといって辞める決断もできず…。そんな「辞めたいけれど、辞められない」という状況に陥ってしまったときに、人はどうすればその悪循環から抜け出し、新しい一歩を踏み出すことができるのだろうか。3人の専門家に話を聞いた。

2012年11月28日

精神科医の秋元豊氏に聞く

専門知識や上下関係を排除した仲間に、悩みを話してみる

医療法人梨香会理事長
秋元病院 院長
秋元 豊氏
岐阜医大卒業後、航空自衛隊、岐阜赤十字病院勤務を経て1980年秋元病院創立。精神科医。アルコール依存症など、辞めたいけれど辞められないと苦しむ患者の根本的な治療に力を入れる。日本における「家族療法」の第一人者といわれる。

仕事によるストレス増幅は、今や誰しもが持ち得る「社会の病気」だと考えてください。働くことの意義は?人生とは何か?そうした問いに対して、一人ひとりが向き合うことを要求されています。しかし、正しい答えを出せる人などいません。誰しもが、自分の人生や仕事について多かれ少なかれ悩んでいるわけです。

現在のような混沌とした世の中では、病気になることが健康であり、逆に病気にならないほうが病気ではないかという人もいるくらいです。つまり、職場環境で悩んでいるあなたは間違っているのではなく、「普通のことなんだ」というくらいの認識を持ってください。悪循環から脱出するための最初の一歩は、「同じ状況で悩んでいる人はたくさんいる」ということを知ることです。

そして、身近なところでの話し合いがされる必要があります。ポイントは、「身近な人」という人が誰かということです。必ず守る必要があるのは、以下の3点です。

●専門的な意見が介在しないこと

●上下関係がないこと
●ホンネを話せること

つまり、医者でも、精神科のカウンセラーでもなく、会社の上司や先輩でもありません。
同年代の仲間、例えば学生時代の同期といった気のおける友人や家族と、悩みについて話すことが一番の方法なのです。

例えば食事をしたりお酒を飲みながら、「最近、毎日残業が3時間でさ…」「上司の無茶振りが過ぎるんだ」などと、つらいと思うことを仲間に話してみてください。多少の状況の違いはあれど、誰しもが似たような悩みを抱えているものですから、いろいろな話が聞けるでしょう。今、まさに悩んでいる人もいれば、そこを乗り越えて働き続けていたり、思い切って転職した人もいるかもしれません。

大事なのは、話を聞く自分の側がフラットな状態でいること。専門知識や上下関係によってこういうものだと押しつけられたり、何かを強いられるのではなく、こういう意見もあるんだな程度に耳を傾けることができることです。そして、それらをもとに自分なら何ができそうかを考えてみること。その小さな試みは、確実に現状打破へとつながります。

最近は、コーディネーターを中心に同じ悩みを抱える人同士が集まり、体験談を話し合う「自助会(Self help group)」というものを活用することが増えています。これは、アルコール依存症や薬物中毒、ドメスティック・バイオレンスといった、”抜け出すことが難しい”といわれる病気の治療にもよく使われる方法です。あなたの身の回りでも、同様のことをしてみてはどうですか。

「自分中心心理学」で数々の悩みを解決する石原加受子氏に聞く

自分を褒め、「プラスの感情」を自分自身で育てる

オールイズワン代表
石原加受子氏
独自で生み出した「自分中心心理学」を確立。延べ人数3万人以上にカウンセリングを行う。セミナーや講演活動のほか、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」のアドバイザーも務める。『仕事も人間関係も「すべて面倒くさい」と思ったとき読む本』(中経出版)など著書多数。

悪循環に陥って身動きが取れない状態というのは、言い換えれば「考え得る選択肢の割合がすべてフラットで、どこにも進めない」ということです。そうした状態から抜け出すためには、そのバランスを変えていくこと以外に方法はありません。

ではどうするか。自分自身の中にプラスの感情を積み重ねていくことです。具体的には、「自分を褒めてあげる」。些細なことでもいいので、何かができたら自分を褒め、認めてあげるのです。

ポイントは、「些細なことでもいい」という点。というのも、実は人間にとっては「小さい成功」も「大きな成功」も実感値の量は同じなのです。であれば、達成しやすい小さな目標をクリアしていくほうが簡単だし、楽に自分自身をプラスの方向に持っていけます。

「わからなければいつもより少し早めに相談してみる」「今日は昨日と違う方法でトライしてみる」などの目標を設定することは、たとえ八方塞がりの状況であってもできますよね?自分を苦しめる社風や上司とは直接関係のないことでも全然構わないわけですから。そうした小さな目標をクリアし、成功体験を積み重ねながら少しずつプラスの感情を自分自身で育ててあげるのです。この一歩一歩が、未来の大きな変化につながっていくわけです。

悪循環の中にいる人は、頭の中だけで悩みがちです。前に進めないともがく場合、実は一生懸命になっているのは頭の中だけで、行動が足りていないことがほとんどです。そして、その原因の多くが、「最後まで完璧にやり遂げないといけない」という思い込みである場合が多い。さらに、「それができる人ほど能力が高いはず」という二重の思い込みです。果たして、本当にそうでしょうか?人に早めに相談できたり、無理なことは無理だときちんと言えることのほうが、組織社会においては能力が高いと思いませんか。

結果に重きを置きすぎる「0か100の発想」では、絶対に前に進めません。小さな成功の積み重ねが、人を楽にし、現状を変えていく。こうした心の原理を知っておけば、「自分の力ではどうしようもない」などという状況なんて、実はあり得ないことに気づくはずです。

「辞める?辞めない?」という悶々スパイラルを乗り越えて
心理カウンセラーに転身した土肥幸司氏に聞く

まずは目の前の仕事を黙々とやる。その中で人から言われた長所をメモしておく

カウンリングサービス所属
心理カウンセラー
土肥幸司氏
専門学校卒業後、出版社に入社。約10年勤務するも、突然会社が倒産し無職に。出版の仕事と似ているだろうと印刷会社に転職するも、長時間労働や社風になじめずに苦戦。数年間勤務の後、2007年に心理カウンセラーに転身。

私は以前、勤めていた会社が倒産し、「この仕事だったらできるのでは」と転職した印刷会社で、辞めるか辞めないかを悶々と迷い続ける日々を送りました。長時間労働で自分の時間もなかなか持てず、残業代もほぼなく、しかも経営者と折が合わず、会社のやり方にそぐわなければ排除される環境がつらくて、とても孤独で何度も辞めようと思ったのです。しかし、前職を辞めた後の失業期間中に不安な時を過ごした経験から、無職になるのがこわくて辞める決断ができませんでした。「ここは自分の居場所ではない」と毎日考えながら、それでも辞めずに悶々と働いていました。

そのうちに、段々と「こんな気持ちで働いていたら何事もいいかげんに取り組む癖がついてしまうのでは」と心配になってきました。だから、とりあえず目の前の仕事にだけ集中して、一生懸命にやろうと。ほかのことはあまり考えずに黙々と働くようにしたんです。すると半年後に、仕事仲間から「土肥さんは人の話を聞くのが上手」と声をかけられたんです。

その時に、「あ、僕ってそうなんだな」と思いました。ならば人の話を聞く仕事に就いてみるのもいいかなと、ふと思った。そう考え始めたら、気持ちに少しゆとりが生まれました。自分を取り巻いていた悪循環からちょっとだけ抜け出せる気がしたんです。

カウンセラーとしてアドバイスするとしたら、何でもいいから目の前のことに夢中に取り組んでみては?ということかもしれません。私の場合、そのモチベーションは「いい加減に生きる癖がつくのは嫌だ」でしたが、人それぞれ違っていい。「もっとお金を稼ぎたい」「隣のアイツに負けたくない」など、最初はそんな気持ちでもいいと思います。

すると、誰かが見てくれているものです。「あなたって○○ですね」と人から言われたら、それを手帳にでもメモしておき、1カ月後に見直してみれば意外な発見があるでしょう。自分一人で考えている時には見えなかった道が開ける時とは、そういう時だと思います。

辛いと感じているその時は、登山でいえば実はまだ2合目か3合目くらいかもしれません。まだそこからは頂上なんて想像できないし、足元の景色はよくありません。だったらとりあえず何も考えずに道を歩いてみる。6合目、7合目まで行けた時には少し頂上が感じられて、見下ろしたときの視界も前よりずっと広くなっているでしょう。もしそこでこのまま登り進めたいと思えば、頂上を目指して進めばいい。「この山は違うな」と思ったら、すでに7合目まで登れる脚力はあるわけですから別の山に挑戦すればいい。そんなふうに考えてみてはどうですか。

悶々とするときほど、身近なこと、小さなことからコツコツ取り組んでみては

悪循環の中にいると、大きな変革を起こさなければ現状を打破できないと考えがちだ。そして、その発想がより自分自身を苦しめ、身動きをとれなくさせる。3人の話にもあったように、大事なのはベクトルの向きを少しでもスパイラルの外側に向けること。角度が変われば、いずれ外側に出ることができる。時間はかかるかもしれないが、そうした気持ちでコツコツと取り組んでみることが有効なのかもしれない。「残るか/転職するか」といった極論だけで考えようとせず、今できることを違うアプローチでしてみたり、人に話を聞いてみたりして、気分を入れ替えることも効果的なのかもしれない。ぜひ試してみてほしい。

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EDIT&WRITING
志村 江
PHOTO
武島 亨、樋木雅美

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