昇進したのに100万円減、ストレスフリーになって80万円増…
出世と収入の相関関係
出世と給与アップは正比例すると思われがちだが、必ずしもそうとは限らない。そこで今回は5人の体験談をもとに出世と収入の相関関係を読み解いてみた。
“昇格”したのに収入ダウン “降格”したけど収入アップ
“昇格”したら収入アップ “降格”したら収入ダウン
“昇格・降格”せずとも収入アップ
出世:○ 収入:×
“昇格”したのに収入ダウン
K・M さん(男性・35歳)
カメラ量販店係長(500万円) カメラ量販店次長(400万円)
 夢の2階級昇進を果たすも、待っていたのは残業続きの毎日と、まさかの給与ダウン。「忙しいくせに給料が減るような仕事、いっそのこと辞めたら?」と妻に苦言され、突破口を開くため「転勤」をしようかともくろんでいる。
「昇格」という名の甘い罠!
蓋を開けてみれば、残業地獄と給与ダウン
残業地獄と給与ダウン 入社して10年経ちますが、係長から次長へと2階級昇進しました。残業や休日出勤に明け暮れていた私を見かねた上司が会社にかけあってくれたおかげで、人事から「これからは管理職に就いて、少し楽をしなさい」と言われました。「やった!」当然、給与アップして休日も増える!と喜んでいたのですが…。
 人をマネジメントするのがメインの仕事なのですが、各店舗に技術系経験者が少ないため、他店舗が忙しいときは手伝わなければなりません。そのため、日中は店長、エリアマネージャー、他店のヘルプを一手に行い、夜は写真の修整や仕上げといった技術系の仕事をこなす毎日に。さらに追い打ちをかけるように、社内規定が改定され、課長職以上は残業代がつかなくなったのです。仕事はいっこうに減らないのに、以前より100万円も給料がダウン!このままでは精神的にも肉体的にもきついので、新天地へ「転勤」することを考え中です。
K・Mさんの出世と収入の相関関係
カメラが好きだったのでカメラ量販店に転職したが、1日の勤務時間は12時間以上。次長に昇格後は、管理職になり6店舗管轄することに。しかし今までとは違って残業代がつかなくなり、結果的に100万円の給与ダウン…。
出世:× 収入:○
“降格”したけど収入アップ
H・K さん(男性・40歳)
執行役員(720万円) 役職なし(800万円)
 経営コンサルタント会社からマーケティング会社へ転職。4年後、執行役員に昇格するも、役員会議や全くの畑違いの紙・Webの制作部門の統括も任されるようになりストレスが増大した。体調を崩したこともあり、自ら「降格」を願い出て業務に没頭。現在はストレスフリーに。
自ら願い出た「降格」は
やりたい仕事を究めるための手段
やりたい仕事を極める 「元の仕事に戻してください」。執行役員から元の社員への降格を自ら願い出ました。もともとの専門分野であるコンサルティングに専念したかったのが一番の理由ですが、会議、打ち合わせ、事務作業が多くストレスが急増。体を壊してしまったのです。
 「降格」と聞くとネガティブなイメージを持つでしょうが、今はスキルアップが図れていますし、ストレスフリーになったので「勇気ある撤退」という感じ。帰宅は深夜ですが、妻の理解もあって何の文句も言われません。むしろ給与がアップして喜んでいますよ。
 そう言えば、降格になっても周囲の人からはその理由を聞かれませんでしたね。もしかして私を哀れみ、気を使っていたのかも(笑)。
H・Kさんの出世と収入の相関関係
自ら希望した降格により、コンサルティングという専門分野の仕事に専念でき、ストレスが解消。しかも実績を上げたことが評価され、執行役員時よりも給与アップに成功した。労働時間はむしろ減り、やりがいを感じているため苦にならない。
出世:○ 収入:○
“昇格”したら収入アップ
M・K さん(女性・34歳)
保険・事務(400万円) 保険・営業(550万円)
 事務職から営業職へ異動。新規プロジェクトに抜擢され、念願のキャリアアップを果たす。給与も150万円アップ。出張漬けの毎日に、「自分の時間が持てない」という悩みを抱えながらも、将来の目標に向かって着実に前進している。
給与アップとキャリアアップを果たすも、
頻繁にある出張にグッタリ
給与アップとキャリアアップ 会社から「将来は部下の育成に尽力してほしい」と見込まれ、事務職から営業職に異動しました。給与も150万円アップし、5人の部下を持つことに。男性社員に負けないくらい仕事をバリバリこなしたかったし、全国を飛び回ってのホテル生活にも憧れを抱いていました。でも、そんな嬉しさなんか1回目の出張で吹き飛ぶくらい仕事がハード。出張は頻繁にあり、しかも知らされるのは出発の直前で、友達との約束をドタキャンしたことが何度も…。自分の時間が全く持てず、プライベートもへったくれもありません。
 また、一度も足を踏み入れたことのない土地に行くことが多いため不安も大きく、肉体的なストレスはもちろんですが、精神的なストレスが溜まりました。とはいえ、念願の給与アップとキャリアアップを果たし、仕事面では充実感でいっぱい!あとはプライベートを充実させるのみ。やはり結婚や子どものことも考えます。けれども、なかなか自分の時間が持てないので、今の状況では厳しい…。幸せな家庭を築くためには早く一カ所に落ちついて仕事ができるようになりたいですね。
M・Kさんの出世と収入の相関関係
売り上げ成績トップだった金融機関を辞め、保険会社に転職。一般職で入社したが、もっと仕事がしたいと思い配属転換を希望。営業職として新規プロジェクトに配属され、給与が150万円アップ。今の仕事にやりがいは感じるが、出張の多さに疲労困憊。今後は社員の育成面に重点をおいた仕事がしたいと思っている。
出世:× 収入:×
“降格”したら収入ダウン
K・S さん(男性・34歳)
新聞社(1300万円) ネット関連会社(700万円)
1000万円を超える年収がありながら、ストレス発散のための浪費が激しく、貯金はゼロ。毎晩のように飲み歩き、帰宅するのは次の日の朝。過酷な労働環境と人間関係、そして仕事へのマンネリ感に悩み続け、転職することを決意。人並みの生活に戻り大満足。
給与ダウンがもたらした
ストレスからの解放と仕事へのやりがい
ストレスからの開放と仕事へのやりがい 新聞社時代は仕事柄付き合いが多く、毎晩のように高級クラブをはしご。銀座を我が物顔で歩いていました。スーツは高級ブランドを着こなし、欲しいものは即購入。しかし、これらはすべてストレスの代償でした。いくら年収1300万円をもらっていても、仕事は深夜にまでおよび、さらに人間関係が最悪。まさに個人プレーのオンパレードで、「出し抜いてやろう」と敵意むき出しなんです…。こんな環境では精神衛生上によくないと思い、給与ダウン覚悟で転職。
 現在は、ネット関連の会社に勤めています。この業界はまだ若い業界のため、上司が自分よりも年下。最初は戸惑いを覚えましたね。でも、日々変化のある仕事と誰かが困っているときに必ず誰かがフォローするというチームワークの良さに大満足しています。案の定、600万円も給与がダウンしましたが、人間関係がよい中でやりがいのある仕事に就いているので、以前のようなストレスがなくなりました。不思議なもので、年収1000万円を超えていた当時は1円たりとも貯金ができなかったのに、今じゃ毎月コツコツと貯金できています。きっと金銭感覚が正常に戻ったんでしょうね。ただ、飲みに行く店が高級クラブから居酒屋にかわり、ときどき寂しさは感じますけど(笑)。
K・Sさんの出世と収入の相関関係
付き合いが多く、残業後は毎晩のように飲み歩き、湯水のごとくお金を浪費。同時に仕事へのマンネリ感も強くなった。その後、600万円の給与ダウンと引き換えに、ネット関連会社へと転職。規則正しい生活に満足でき、以前はできなかった貯金にも成功。
出世:− 収入:○
“昇格・降格”せずとも収入アップ
H・K さん(男性・40歳)
金融機関(450万円) 不動産管理会社(750万円)
 念願のマイホーム購入の喜びもつかの間、業績悪化→公的資金注入→給与の大幅ダウンと、まさかの天国から地獄へ。人員削減でしか活路が見出せない会社に嫌気がさし、転職を決意。資格を活かして異業種転職に成功。家族とともに幸せな生活を送っている。
業績悪化が原因で転職を決意。
新たな活路を見出すも…
家族サービス 金融機関で働いていたときは残業が多く、帰宅時刻は午後11時過ぎ。それでも、処理し切れなかった仕事は自宅へ持ち帰り、休日返上で自宅にこもって仕事をすることもしばしば。こんな生活がこれからも続くのか…と嫌気が差してきたころ、業績の悪化から公的資金が注入され会社の様子が一変しました。毎日のように社員面談が行われ、遠まわしに自主退職を促されました。給与も300万円ダウン。ちょうどそのころにマイホームを購入したので、「このままではローンが…」と焦ってきたので転職を決意。幸いなことに、在職中にたくさんの資格を取得していたので、すぐに勤務先が決定しました。
 転職先が不動産管理会社だったので、厳しいノルマや残業がなくなり、心も体も随分と楽になりました。定時退社を義務付けられているため、ウィークデーは子どもたちと一緒に夕飯を食べられるのがとにかく嬉しい。でも、休日に仕事をすることが多く、運動会や文化祭などの子どもの学校行事に参加してやれないことだけが残念です…。
H・Kさんの出世と収入の相関関係
念願のマイホームを購入するも、会社の業績が悪化し300万円の給与ダウン。ローンの返済に思い悩む日々を過ごし、ストレスがピークに。在職中に取得した資格を活かし不動産管理会社へと転職。現在では給与アップし前職のピーク時と同じ750万円にアップ。
出世と収入の相関関係を解説
column
上田昌美氏
キャリアコンサルタント上田晶美
ハナマルキャリアコンサルタントを設立。大学生の就職、社会人の転職に関する講演は年間100回を超える。就職関連の著書をはじめ、ブログで転職のアドバイスも。
出世=給与アップ、降格=給与ダウンとは限らない。
転機こそ、冷静な判断と将来の目標が必要
 「昇格」と「給与アップ」は必ずしも正比例しません。多くの企業で管理職に昇格すると残業代が支給されなくなることが多く、残業代が多く支給されていた人は、結果的に給与ダウンになってしまうケースがあります。また、昇格することによって仕事内容が人のマネジメントへと変化することも頭に入れておきましょう。昇格や給与アップは、会社から今までの成果を評価された証しです。今まで以上の働きを会社から期待されますので、重圧は覚悟してください。その後は、仕事内容を見直して、次の目標を設定するようにしましょう。
 日本の企業では少ない例ですが、同様に「降格」と「給与ダウン」も正比例しないケースがあります。例えば、降格することによって役職手当を失いますが、給与体系が成果主義の場合、働き方次第で降格前よりも多くの給与がもらえるかもしれません。もし、給与ダウンした場合は、実績を出せば給与の見直しがあるのですぐに元の給与に戻すことは可能です。降格の場合は、復活人事があったかどうかの前例を調べておきましょう。もし、復活人事がなく、その会社に留まってもモチベーションが上がらないようでしたら、ストレスの原因になるので、転職をオススメします。
EDIT マインドシェア DESIGN&WRITING エーアンドエス ILLUST ニコ・ニコルソン

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