敏腕経営コンサルタントに聞いた

「会社の将来性」を見抜く方法

不況が続く中、まずは今の会社でスキルを磨いてから、景気回復を待って転職しようと考えている人も多いかもしれない。しかし、現在勤めている会社は、働き続けるべき環境なのだろうか?もっと将来性のある環境で働くほうが、自分のためではないのか?…そこで、「自社の将来性」を見極めるための方法を、敏腕経営コンサルタントに聞いてみた。後々、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないで済むように、まずは今の環境を見極めることから始めてみよう。

2011年3月16日

<ADVISER>

株式会社アジルパートナーズ
山崎将志氏

東京大学経済学部卒業後、アクセンチュアを経て2003年に独立。事業再生コンサルティングのアジルパートナーズ、家事を宅配する生活総合支援サービスのカジタク、プロフェッショナル研修の知識工房など、さまざまな事業の運営に携わる。『残念な人の思考法』(日本経済新聞出版社)、『残念な人の仕事の習慣』(アスコム)に続く、ビジネス英語の勉強法をテーマにした著書『残念な人の英語勉強法』(幻冬社)のほか、『仕事オンチな働き者』(日本経済新聞出版社)など著書多数。

ネクスト・キャピタル・パートナーズ株式会社
プリンシパル 出口知史氏

東京大学大学院卒業後、経営戦略コンサルティング会社である株式会社コーポレイトディレクションに入社。その後は株式会社ダイヤモンド社、事業再生ファンド、グラクソ・スミスクライン株式会社を経て現職。現在は投資先であるフジ医療器において取締役として再建を果たした後、成長に取り組む。一貫して経営戦略、事業再生・改革における各種問題解決の考案および実行支援を行い、これまでに携わった企業は100社を超える。主な著書に『論理思考の「壁」を破る 』(ファーストプレス)など。

危険信号は必ずある!

「将来性に疑問がつく会社には、決定的な欠落がある」と語るのは、山崎氏。出口氏も、「何かしらの問題があるからこそ、危険信号が表れるもの」と説明してくれた。そんな、将来性がある企業かどうかを見極めるためには、どんなところに気をつけたらいいのだろうか。2人のアドバイスを参考にして、自社について今一度、見直してみよう。

山崎将志氏に聞く
「将来性のない会社」の見極め方

熱い「want」が社内にあるか?

経営理念、特に経営者の考え方には、3つの種類があると考えます。
一つは「want」の発想。「自分がやりたいことをやる」という考え方です。二つ目は「should」の発想。「これをやるべきだ」という“理想”がもとになっているものですね。そして三つ目が「must」の発想。「やらねばならないことをやる」ものです。
これらの中で、最も成功するのは何でしょうか。それは、「want」のビジネスです。経営者の言葉の中に、「どうしてもこれをやりたい!多くの人に使ってもらいたい!」という「熱い想い」があるかどうか。そして、それが顧客のwantにマッチしているかどうか。いつの時代も、伸びていくのはそうした企業です。「やりたいことを何としてでもやる」という強い気持ちが、これからの時代はますます重要になっていきますから、働いていてもそういうものが自然と見えてこない(感じられない)会社はダメでしょう。
ちなみに、経営者が商品に直接関係のない「must」を重視しているビジネスや、株主の期待にこたえねばならない・雇用を守らなければならないといった発想もよさそうですが、新しいものを生み出すパワーが弱く、市場が一巡した後はあまり発展性がありません。私が最もお勧めしないのは、「should」ばかりを追い求める企業です。何かを成し遂げたい熱い想いよりも、「この世の中はこうあるべきだ、社員は○○すべきだ」といった理想を追い求めることに意識が向きがちで、自己満足的な中身が伴いにくい事業を行う場合が多いのです。いま一度、自社の経営理念や経営者の言葉の中に、「どうしてもこれをやりたい」と伝わってくるような「熱い想い」があるか、見直してみましょう。

相手の「want」を捉える力はあるか?

実は、「顧客ニーズ」なんてものは、成熟社会ではそれほど重要ではありません。なぜなら、誰もが考えていることだからです。さらに、人々のニーズは、もうほとんど満たされてしまっている。今、市場が欲しがるものは、提供者が「どうしても広めたい」と一生懸命に頑張って普及させたものばかりです。考えてみてください。本当にタブレット型コンピュータやスマートフォンは必要ですか?それらを買うのは、必要だからではなく「欲しい」からです。そして、その「欲しい」は提供者によって作られているものなのです。
商品提供者が適当に作った商品は、市場にそう伝わります。新商品を開発“しなければならない”という思いで作られたものは、市場は欲しがりません。重要なのは、提供者のwantです。
以上はB2Cの話ですが、B2Bも同じような考え方です。例えば、クライアントのところに営業に行った場合、目の前にいる担当者に商品の機能を説明することも大事です。しかし、「こういえば上司を説得しやすい」「その商品が導入されると、どれくらい生産性が上がる」といったことこそが、その担当者が本当に知りたい情報のはずです。相手のwantを捉える力がある企業は、マーケットやトレンドといった言葉に左右されない、本当の強さを持つことができるはずです。企業の考え方がmustやshouldに縛られていないかどうかが、見極めポイントです。

商品を本気で売ろうと思っているか?

ニーズは提供者の「want」によって作られるものです。そんな中で、人々の消費活動をどのように考えればいいでしょうか。
これもまた、売り手の「want」があってこそなのです。多くの皆さんは、本は書店で売っていると思っているはずです。でも実際は、本は書店“が”売っているのです。売り手の「この本を売りたい!」という強い「want」が、消費行動を左右しているというわけです。顧客は常に「自分で物を探して買う」わけではありません。
顕著な例が、「ジャパネットたかた」でしょう。売り場では見過ごしがちな商品を、わざわざ5分、10分と時間をかけて説明し、売る。自分たちが信じる価値を必死に伝えようとするから、売れるわけですね。こうした売り手の熱意や思いが、われわれの消費行動を動かしているのです。
震災の影響で、しばらくの間は厳しい状況が続くかもしれません。しかし、そうした厳しい時期こそ、いま一度、自分の勤める会社や自分の仕事を振り返り、冷静に次のプランを練る好機であると捉えるべきでしょう。

出口知史氏に聞く
「将来性のない会社」の見極め方

感情的に物事を判断していないか?

頑張らず、しかも結果も出していない社員(特に経営者たちと同世代)が、文句も言われずにそれなりに評価されていたら、それは危険なサインです。さらに、そのことを経営者や上司に聞いてみたときに、見て見ぬフリをしたり、聞く耳を持たないとしたら、さらに末期的状況です。「結果を出していない昔からの仲間に対して冷遇できない」ということは、経営者本人が経済的合理性に基づく判断をしていないということだからです。そうした「感情的な判断」をしていることは大問題です。気持ちはわかりますが、組織のために時として鬼・悪役にならなければならないのが、経営者です。
感情的な判断が一度許されてしまえば、次からも感情的に物事を決めるようになってしまいます。そうなれば、例えば印象だけで何かを判断するようになったり、周囲からの反対の意見に耳を傾けなくなるなど、物事を「見たいようにしか見なくなる」という、経営者としては致命的な状況に陥ってしまいます。こんな会社は、ユーザーからは見放されます。生き残っていくどころか、とても成長性があるとはいえません。

上辺だけの「コスト削減」で満足していないか?

最近、「コスト削減」という言葉が表面的に使われている会社が多いですよね。例えば「コピー用紙の無駄遣いをやめる」「花瓶を1つに減らす」「18時になったら消灯して帰る」など、“目に見える部分”だけしかやろうとしないのは、決して悪いことではないのですが、一つの危険なサインでしょう。なぜかといえば、「本質が見えていない」からです。コスト削減において最も大事なのは、普段見えにくい部分にもきちんと目を配り、構造的な問題を捉えること。そのうえで、実は必要ではなかった業務を削って効率を上げ、生産性を高めるなど、無駄なことを探し出して見直すというのが本来の形です。こんな上辺だけを見るやり方をしていては、経営戦略上でも本質を見極められないのではないかと思われても仕方がないでしょう。
これは、例えば「自社の強み」を見極めることにも関係してきます。「当社が武器にしてきた開発力は、今の時代に通用するのか?通用しないなら、営業力にシフトしなくてはいけないのでは」などと現状を本質的な部分から分析し、必要にあわせて定期的に人的・金銭的なリソース配分を見直す。市場の変化が著しい今だからこそ、求められる視点です。そうしたことができなければ、ニーズや変化に対してリーチできなくなるだけでなく、勝負する事業領域や市場でのポジションが不適切になり、いずれは市場から淘汰される可能性は高くなります。

あからさまな情報格差はないか?

物事をよく考えないで決断する経営者ほど、下した決断に対して「なぜですか?」と部下から聞かれることが嫌なのです。なぜなら、その理由をきちんと説明し、納得させるだけの自信がないから。経営者だけでなく、現場のマネージャーたちにも同じことがいえます。彼らがそうした困った状況を避けるために手っ取り早くできるのが、部下に伝える情報を制限すること。つまり、意図的に情報格差がつくられている組織は、不健全だということです。ましてや、自らの立場を守る(部下や同僚に抜かれないようにする)ために、情報の流れをコントロールするようなマネージャーが増えれば、どう考えてもその組織は問題ありでしょう。そのうち部下も疑問を投げかけるのをやめて、物事を考える習慣がなくなっていきます。疑問の受け手であるマネージャーや経営者も、その状態に安住して物事を考えなくなり、組織全体が思考停止状態になります。そうした会社は、外部環境の変化に対応できなくなります。一例として、不可解な人事異動や組織変更があったのにも関わらず、周囲はおろか、当事者にも背景や狙いが説明されないなんてことがあったとしたら、それは大問題。そうした説明責任が果たされないことも、危険信号です。
あなたの周囲を見渡してみて、あからさまな情報格差はありませんか?日頃から、上司は説明責任を果たしていますか?その辺りを見極めてみましょう。

自社の将来性を診断したら…

会社に残る場合の対処法

将来性を阻害する要因の中には、社員が動いて直していけるものもあるはず。ここでは「すぐにできる対処法」をあげた。会社を辞める前に、まずは自ら動いて社内改革に取り組んでみよう。

●社長や直属の上長に「ここがおかしい」と訴える
おかしいと思うことを、声に出して発言するところから改革は始まる。一人でやるのが難しい場合は、組合のように仲間を集めて集団で声を上げよう。実は、この方法が、経営者にとって一番堪えるのだ。最もやってはいけないことは、あきらめて黙ってしまうこと。それでは、泥舟に一緒に乗っているようなものだ。

●直属の上長や先輩に「なぜですか」と聞いてみる
声を高々に上げる勇気がなくても、「相談があるのですが」と上長や先輩などに時間をもらい、直接聞いてみるならハードルも高くないはず。その際、喧嘩を売るような強い態度で出るというよりは、純粋な気持ちで、正論として「おかしいのでは?」と投げかけてみるのがいいだろう。

転職する場合

自社はもとより転職先に企業についても、将来性を調べておきたい。できる限りの方法で応募先企業について情報収集すること。もちろん、業界や商品力などの要因も大きいが、入社前に「社長の人柄」や「経営方針」に共感できるかどうかを見極めたい。

●社長本人と会って話すこと
特に中小企業では、社長の考え方が会社の経営方針に直結する場合がほとんど。できることなら、社長と話す機会をもうけてもらい、直接、経営理念や会社としての将来展望、社長自身のビジネスに対する思いなどについて聞いておきたい。また、こうしたお願いを聞き入れてもらえるかどうかも、その応募先の風通しの良さを測る材料になるはず。

● 配属先部署の上司や同僚に会わせてもらうこと
将来性が見えない会社では、そこで働く社員にも、そうした負のオーラが知らないうちに伝播するもの。直接会うことで、職場の雰囲気や社風も判断できるはず。「自社に対してどう感じているのか」を聞いてみるのも参考になるだろう。

●経営者の「思い」を、ホームページなどで調べておくこと
面接の前に、経営者が事業に対してどう考えているかを探ってみよう。会社のホームページはもちろん、社長が出した本や、取り上げられた雑誌などで多少なりはうかがい知れるはず。ビジネスの方向性や経営者としての志向が、山崎氏の言う「want」なのか、もしくは「should」や「must」なのかを自分なりに理解しておくことで、面接時に聞く内容も変わってくるだろう。
当然、四季報などを活用して、IR情報や取引先企業名などを調べておくのは当然。また、本業以外にもやみくもに事業を広げていないかも、企業の寿命に影響することなのでチェックしておきたい。

企業が出す「サイン」から将来性を見極めよう

企業の将来性を見抜くのは、簡単なことではない。しかし、将来性に疑問がつく企業には、何らかの課題や問題点が見えやすいことも事実だ。まずは今の職場をしっかり見つめ直し、危険信号をいち早くキャッチしよう。より納得して働ける環境に身を置くことで、自身のビジネスパーソンとしてのスキルアップに集中できるはずだ。

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自分に合った仕事を見つけよう

リクナビNEXTスカウトに登録すれば、これまでに意識して探さなかった思いがけない企業からオファーが届くこともある。いろいろな企業に興味を持ち、情報収集や応募を重ねていけば、「将来性のある会社」を見極めるための自分なりの判断軸が身についていくはずだ。将来の可能性を広げるためにも、ぜひ活用してみよう!

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EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
志村 江
ILLUST
佐藤ワカナ

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