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人はなぜ「仕事選び」で迷うのか?
人は日々の生活の中で、たくさんの選択をしている。仕事選びもその1つ。しかし、何かを買ったり、食事のメニューを決めたりすることに比べて、仕事選びは決断までに時間がかかるし、悩みも深い。それはなぜだろうか?仕事探しのプロフェッショナルと心理学者の3人に、仕事探しで悩んでしまう理由について話を聞いた。
2012年8月1日

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心理学者 早稲田大学名誉教授 |
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有限会社アンギルド 代表取締役社長 心理学者 |
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株式会社リクルートエグゼクティブエージェント |
心理学者・加藤諦三氏に聞く
仕事選びは「自分自身の社会的評価」の決定に大きな影響を与えるため
人は社会的評価を気にします。仕事選びで迷ってしまう理由は、どの職業に就いているかでその人の社会的評価が左右される場合が多いからでしょう。そこで「失敗したくない」と強く思います。ただし、失敗を恐れるといっても、失敗そのものは単なる一つの経験でしかありません。本当に恐れているのは、「失敗したことで、周囲が自分のことをどう見るか」です。
失敗というものは、人によって意味づけが違います。小さなことにいつまでもくよくよしている人がいる一方で、すぐに忘れてしまう人もいます。まずは、自分にとっての失敗の意味づけを知っておくこと。そのためには、過去の自分の失敗経験を振り返り、人から何を言われたのかを思い出してください。もしその時に違った人と出会い、違ったことを言われていたら、今のように失敗を感じていないはずです。
そうやって、小さいころから周囲の人があなたの失敗にどう反応してきたかで、あなた自身の失敗の意味づけができています。それを知っておくだけでも、少しは楽になれるはずです。
心理学者・内藤誼人氏に聞く
コストを気にしすぎる心理的要因と、変数の多さで選択に時間がかかる
1点目は、「かけるエネルギーとコストの差」です。この場合のコストとは、お金(費用)や時間、人間関係も含みます。洋服や靴、ランチのメニューなどは、せいぜい数千円程度の費用だけで済むでしょう。仮に選択に失敗したとしても、ダメージはそれほど大きくありません。しかし、仕事の場合は“人生がかかっている”と考えます。仕事に関わるものはすべて、コストが高いのです。「変な選択をしてしまったらどうしよう…」と考え始めてしまえば、選べなくなるのは当然なのです。基本的に、人はメリットを得る喜びよりも、デメリットから生じる後悔のほうを嫌います。心理学には「接近−回避コンフリクト」というものがありますが、「メリットへの接近」と「デメリットからの回避」が同時に存在している場合、人は「デメリットからの回避」を選ぶことが知られています。つまりデメリットを気にしすぎるあまり、自分にぴったりの仕事であっても、決断までに時間がかかるというわけです。
2点目は「仕事選びは変数が多い」ということ。選択すべき変数が多くなれば、人はますます選べなくなります。仕事選びでは、職種、業種、給与額、企業理念、人間関係、場所、通勤時間、社格…というふうに、ざっと挙げただけでも検討する際の変数がものすごく多い。「人間が同時に比較できるのは7つの特性まで」というデータがありますが、住居購入や結婚と同じように、押さえておきたい変数が多い分、必ず迷うものだと理解しておく必要はあるでしょう。よって、もし悩みたくなければ、自分で特性を絞ってしまうことです。「給与はどうでもいいから、“やりがい”だけで選ぶ」といったふうに、変数を減らしてください。
迷うという行為はとても素敵なことですが、実は無駄なことでもあります。「うまくいかなかったら、その時に考える」という気持ちで、まずは行動することが大事だと思います。
転職支援アドバイスのプロフェッショナル・森本千賀子氏に聞く
「人生の充実を左右する」と慎重に。優先順位が不明確なほど悩む
理由は大きく二つあると思います。
1点目は「“仕事の充実=幸せな人生”と考えやすく、安易な決断ができない」ということです。多くの人は、「幸せの指標」を仕事に合わせています。仕事が順調で、仕事を通じて自分がイキイキしていることが、ハッピーであるかどうかを決める大きな基準になっているのです。一日の大半は仕事をしているわけですから、どうせ同じ時間を使うなら、やりがいが持てて、ワクワク楽しめて、結果として成長でき、報酬にもつながる仕事のほうがいいと思うのは当然です。しかし、働いたことのない会社でそれを実現できるかどうかは,見えるわけではないのでわかりません。幸せのために少しでも充実した仕事を選びたいが、仕事を選ぶことは人生において何度もあることではありません。慎重になるのは当然です。
2点目は「自分の本当の優先順位が明確になっていないから」です。
特に20代、30代では、好奇心を持ってチャレンジしようと考えれば、未経験転職を含めて多様な仕事から選択することが可能です。「選択肢が多い分だけ悩ましい」ということもあるかもしれません。しかしこれは、キャリアが浅いゆえに自己分析ができていないということでもあります。自分の軸がわかっていないため、力の発揮しどころがわからず、選ぶ際に基準を持ちにくいのです。であれば、自分の中での優先順位を知っておくこと以外に、悩みを軽くするための解決策はありません。自分の過去や、他人からの意見を参考にして、「今の自分にあるもの・足りないもの」を自覚する。さらに「将来どうありたいのか」を具体化してみる。「現在」と「未来」を比較することで、自ずと優先順位の高いものと低いものがわかるはずです。
私は、悩むことには意味があると思っています。自分を見つめる時間を持つことで、新しい発見があったり、より納得したうえでの決断を導くことができるからです。そうやって苦労した経験は免疫力となり、必ず次につながります。どんなことであっても、迷うのは当然。だからこそ、納得いく決断を出せるように準備をすることが大事なのではないかと思います。
仕事選びは迷って当然。大事なのは「納得感」
三者三様の意見だったが、結論としては「仕事選びは迷うものだ」ということ。人が生きていくうえで、仕事がしめるウェートはとても大きい。だからこそ、「より満足度が高い場所を」と意気込んでしまうのは当然のことかもしれない。大事なのは納得のうえで決断すること。もちろん、迷わずに決断できればスムーズだが、森本氏が言うように、迷うことで学べることがあるのも事実。3人の意見を参考に、あなたにとっての「仕事の意味」「迷いの原因」について考えてみてはどうだろう。その先に、自分らしく働ける転職先が見つかるはずだ。
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- EDIT&WRITING
- 志村 江
- PHOTO
- 樋木雅美