2012年の気になる数字から読み解く

どうなる?2013年の「雇用」と「経済」15の視点

2012年も、行政やあらゆる企業・機関からさまざまな調査結果が発表となった。そこで、そうしたデータを元に、今年一年を振り返ってみたい。「雇用マーケット」「業界動向」「商品・技術・サービス」に分けて、気になる数字を追ってみた。こうした数字の中に、2013年を読み解くためのヒントが見つかるかもしれない。

2012年12月26日

「雇用マーケット」編

(1)求人意欲は絶好調?完全失業者数が前年比18万人減。29カ月連続で減少

厚生労働省が全国のハローワークの求人・求職の状況を取りまとめて発表する「一般職業紹介状況」によると、2012年10月末時点の有効求人倍率は0.80倍で、前月比0.01ポイント下落。では、失業率はどうなっているかといえば、同じく10月末の調査結果によると推定4.2%で、昨年同月に比べ、わずかだが良化傾向にある(厚生労働省「労働力調査」より)。完全失業者数で見れば271万人だが、この数字は前年同月に比べると18万人も減っており、29カ月連続で減少を続けている。しかも、会社都合での失業者は前年同月比13万人減。有効求人倍率からは日本経済の良化傾向は見てとれないが、失業者数でみれば明らかに良化傾向といえそうだ。

(2)中小企業は、人手不足!大卒求人倍率が3.35倍にまで上昇

リクルートワークス研究所発表の「大卒求人倍率」では、従業員数別に求人倍率を調査している。2012年3月卒業予定の大学生および大学院生の計7528人と、従業員規模5人以上の全国の民間企業4251社を対象にインターネットで行った調査では、社員数5000人以上の企業のでは求人倍率0.49%、1000〜4999人では0.74%、300〜999人では0.97%と続く中、300人未満の中小企業では3.35倍という数字が発表されている。これはもちろん、新卒者を対象にした調査だ。しかし、そうした中小企業が人手不足で悩んでいることがよくわかる数字ではないだろうか。

(3)若者の海外離れはウソ?海外勤務を希望する若者が増加中

文部科学省が1月に発表した、大学、大学院、短期大学など高等教育機関を対象に行った日本人の海外留学状況は、対前年比6910人の減少で、10.3%のマイナス。全国の高校を対象に調査した「平成20年高等学校における国際交流等の状況について」でも、留学者数は前年比18.5%減。若者の海外離れが進んでいるとよく言われるが、それを裏づけるデータといえるかもしれない。
しかし一方で、日本能率協会が同社実施の公開教育セミナーに参加した今年4月入社の新入社員1309人を対象に行った「新入社員意識調査」では、新入社員の50.7%が「海外勤務を希望している」と回答。その理由が、「国内では経験できない仕事にチャレンジできそう」「今後のキャリア形成に役立ちそう」ということで、海外経験を前向きに捉えようとしていることがわかる。同調査で、「グローバル化に“期待感”を持つ新入社員」は66.5%という結果に。今後、市場のボーダレス化が進み、企業のグローバル採用熱もいっそう高まっていくだろうが、それを後押しするデータといえそうだ。

(4)高齢者雇用安定法の改正で、定年年齢を引き上げる企業も

 今年8月に法案が改正された、「高齢者雇用安定法」。年金受給開始年齢である65歳まで働くことができるようになるというもので、2013年4月1日からの施行となっている。
この改正により、大企業を中心に定年年齢を65歳まで引き上げようとする企業も出てきた。これはまさしく、超高齢社会を見越しての動きの一つだろう。高齢者層の雇用が増えることで、若年者の雇用が減るなどの影響が出るのではという意見もある。4月以降の求人動向に注目しておきたい。

(5)早期退職者数が昨年よりも倍増している

東京商工リサーチが全上場企業を対象に行った調査によれば、2012年1月から12月7日までに早期退職募集の実施を情報公開した企業は62社で、早期退職者数は1万7700人。2011年が8623人ということで、この1年で倍増したことがわかった。
募集対象を明確化している主な29社のうち、全社員が対象なのは10社で、「35歳以上」が3社、「40(41)歳以上」が7社、「55歳以上」が2社となっている。雇用不安という点では、どの年代においてもあるといえるかもしれない。

(6)スカイツリーの経済効果は期待はずれだが、東京ソラマチで「雇用創出」

東京スカイツリーが5月に開業。大方の予想通り、旅行、ホテル、住宅、その他グッズ販売など一定の経済効果は生まれた。一方、特に期待された地元経済への波及効果は思ったほどではないとういうのが、今のところの見立てだ。
しかし、実はあまり注目されなかったのが、スカイツリーによる雇用の創出。墨田区のハローワークによれば、スカイツリーのお膝元「東京ソラマチ」だけでも、正社員・契約社員・アルバイトを合わせて3000人を超える雇用が生まれたという。また、施設内においても、運営スタッフを中心に500人程度の需要が出るなど、合わせて1000人程度の雇用が創出。今後、周辺施設の活性化によって、まだまだ人材ニーズは高まると言われている。

「業界動向」編

(7)総合家電メーカーの苦戦が伝えられる中、「下請け会社の6割強は増収」の謎

白物家電の販売不振など、国内総合家電メーカーの業績不振のニュースが続いている。2013年3月期連結業績予測が4500億円の赤字であると11月に発表したシャープ、パナソニックも大幅な下方修正を10月末に発表した。そうした発表を受け、総合家電メーカーの苦戦は今や誰しもが知ることとなった。
そこで注目したいのが、帝国データバンクが今年12月に発表した、「パナソニックグループの下請企業実態調査」。3万1513社への調査結果によると、すでに関連倒産も発生し始め、2011年度の業績については減収企業が1万1029社(全体の37.9%)であることがわかった。これはシャープグループの2.5倍にあたるという。
しかし、この数字から見えてくるのは、下請け企業の6割以上が増収企業だということ。今後の推移には目が離せないが、総合家電メーカー凋落と騒がれ続けることとの温度差は感じられるのではないだろうか。

(8)ソーシャル・オンライン隆盛の中、家庭用ゲーム機市場が5年振りに前年比増加

日本オンラインゲーム協会が今年7月に発表した「JOGAオンラインゲーム市場調査レポート」によると、オンラインゲーム市場は1405億円、ソーシャルゲーム市場は2794億円で、合計すると4199億円。昨年発表の数字が合計2365億円だったことと比較すれば、約1.8倍の市場規模となった。2012年3月発表の決算を見ると、利益率を大きく下げた企業もあったが、採用を増やして人件費を上げていたり、海外進出を目指して投資を増やしているなど、理由ははっきりしており、不安材料にはなりにくそうだ。
一方で、そのほかのゲーム機器会社の業績を見ると、大手、中小を問わず、マイナス成長を続けているところが多い。にもかかわらず、エンターブレインが今年10月に発表したデータでは、家庭用ゲーム市場規模は前年比10.7%増の1753億4000万円で、ゲーム機・ソフトともにプラスに転じている(調査期間は2012年3月26日から9月30日)。これは5年振りとのこと。その背景にあるのは、人気コンテンツ作品のソフトの売り上げ増。ゲーム市場はソーシャル・オンライン化へ進むのは間違いないが、コンテンツ企画力などの商品開発力で起死回生をはかることは十分可能といえそうだ。

(9)「人口減」の中でも新築住宅が伸びる理由

少子高齢化が進み、人口が減ることで「家余り」が問題となるといわれている。復興需要を除き、土木・建築業界はそれほど大きく成長を見せてはいない。しかし、戸建・分譲マンションを合わせた住宅着工戸数について第一生命経済研究所が9月に行った調査によると、全国における2012年度の着工数は89万戸で、2013年度は96.8万戸の予測と、大幅増加が期待できると発表。今年10月の新設住宅着工戸数も前年比25.2%増で、2008年以来の超高水準を記録したという。
大きな理由は住宅エコポイント終了による駆け込み需要と見られる。しかし、低金利、消費税増税、引き続きの被災地での需要増という3つの理由から、この水準は一時的なものではなく、今後しばらく続くと予想されている。住宅販売メーカーにおける雇用の創出も期待できそうだ。

(10)少子化は追い風?子ども向け教育ビジネスが好調

少子高齢化が進む中、「子ども」をメインターゲットにした教育ビジネスは、縮小するどころか成長市場として期待が高まっている有望業界の一つだ。
フランチャイズ研究会の発表では、2010年度の学習塾・カルチャースクールの教室数は630店増加で、総売上は3371億円と、前年比111%となっている。中でも注目が「個別指導教育」。ゆとり教育の反動で授業の補習が必要になった子どものフォローなど、「子どもに合った教育を受けさせたい」というニーズの高まりとともに市場を拡大している。
文部科学省が学習塾への1円以上支出者を対象に行っている「子どもの学習費調査(2010年度)」によると、学習費は10年前に比べて小・中・高ともに右肩上がり。特に公立中学に通う子どもは年額4万円アップ、公立高校は約6万円アップ、私立高校は約8万円アップ。少子化の一方で、「一人あたりの教育費」は上昇を続けているのだ。もちろん、学習塾だけでなく、英語や音楽、ダンスといった「習い事」の需要も高まっている。対象とする子どもの年齢も広がっており、幼児向けの右脳開発や、大学生・社会人向けのキャリア教育など、多種多様なサービスが増えているのも特徴。教室が増えれば、当然、人材も必要となる。教材のデジタル化で異業界経験を評価する流れや、コミュニケーション力に重きをおいた人物採用の傾向は進んでいるため、求人動向にも注目しておきたい。

「商品・技術・サービス」編

(11)デジタル家電の凋落の一方で、「高級」白物家電は売り上げ好調

苦戦をしいられているデジタル家電や白物家電。しかし、そんな中で、売り上げを伸ばしながら今後の市場形成を期待されているジャンルがある。それが、機能重視の「高級機器商品」だ。例えば、住宅事情や共働きによる理由から、夜遅くに利用しても迷惑にならない静音家電。掃除機や洗濯機などを中心に、前年同月比で10%以上の売り上げを記録(メーカーが発表)。また、室温に合わせて風向や風量を自動調整する扇風機なども、メーカーによると販売計画の2倍を超えるペースで売り上げを伸ばした
高級機種がゆえに値段も比較的高めのものがほとんど。扇風機の場合は2万円以上の機種が人気ということで、「売れない」「安売り」が目立つ家電業界の中では、今後の活性化の起爆剤として期待が高まっているようだ。電気料金の値上げの影響で、割安な夜間料金プランの導入が進められるなど、追い風もある。付加価値の高い高級家電製品の開発ニーズは、高まりそうだ。

(12)ビッグデータ元年。ただし現時点ではまだIT市場支出額の0.1%

ビッグデータ元年と言われる2012年。2013年以降の市場予測も、軒並み右肩上がりが言われる。IDC japanが10月に発表した「国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場予測」によると、2016年までの年平均成長率は39.9%で、期待が高まる分野と注目が集まる。しかし、現状の国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場支出額は、IT市場支出額全体の0.1%。また国内企業1050社の調査では、ビッグデータ認知度も高いとはいえず、導入検討が13.6%、導入済みに至っては2.6%と、低調な数字。「技術はニーズが成長させる」というが、期待値に比べ、数字的にはあまりぱっとしていないのが現状と言えそうだ。
データ設計やデータマイニング、統計学の知識といったニーズが高まると言われていたが、まだまだ技術面よりも、活用・分析方法を認知させるコンサルタント的な仕事の需要からだろう。 

(13)出版業界の期待の星、電子書籍はスマートフォン対策に苦戦も、拡大余地は大

電子書籍元年と言われたのが2010年。以降は電子書籍化が進み、電子書籍数も好調に推移…と思いきや、いわゆるガラケー向けの電子書籍が7割近くを占めていたため、スマホの普及に対応が追いついていないのが現状。インターネットメディア総合研究所が電子書籍販売店、取次、出版社への取材とユーザーへのアンケートをもとに調査した「電子コミックビジネス調査報告書2012」(9月発表)によれば、電子コミックの市場規模は514億円で、前年度10億円の減少となった。
とはいえ、電子書籍端末が続々発売し、さらに今年4月には出版物のデジタル化を支援する「出版デジタル機構」も設立。つまり、本格的な普及期はこれから。同機構が目指すのが、2017年時点で現在の約3倍にあたる2000億円市場。しかし、それでも出版市場全体の1割程度なのだというから、電子書籍ビジネスの拡大余地は予想以上に大きいといえる。 

(14)健康志向は飲食業界のみならず。右肩上がりのフィットネスクラブ

健康への関心が高まり、ドリンクを中心に健康志向食品市場が活性化を続けている。11月に発表された富士経済の予測では、「キリンメッツコーラ」(キリンビバレッジ)が38.1%増の売り上げ見込み。他社からも新商品が発売されるなど、トクホの炭酸飲料水ブームは2012年の一つのキーワードだった。
こうした健康志向は、何も飲食業界だけではない。スポーツ用品大手でも、最新の決算発表で好調が伝えられている。また、隠れたところでは、フィットネスクラブが好調。経済産業省が10月に発表した「特定サービス産業動態統計調査」によれば、全国でフィットネスクラブを営む事業所の総売上額は少しずつだが増加傾向で、1〜3月期は734.1億円、4〜6月期は736.9億円、7〜9月期は759.6億円と推移。しかも、従業員数もこの10年間は右肩上がりが続いている。「健康」をテーマにしたビジネスは、業界を問わず、今後の成長市場を読み解くうえでのキーワードとなりそうだ。

(15)コンビニの注目サービスは高齢者を支える「移動販売」

コンビニエンスストア各社の海外展開が進んだ2012年。国内におけるトピックとしては、PB商品の充実や、宅配サービスの導入が報じられることが多かった。しかし、実はコンビニの在り方を変えるのではないかと密かに注目されているのが、茨城県の一部店舗をきっかけに広がりを見せ始めた「移動販売」だ。
もともとは東日本大震災を機に導入されるようになったが、店舗に並ぶ商品と同じものを積んだ車が住民のところへ販売に出向くことで、近所に小売店がない人や高齢者などの新規開拓を取り込みながら、コンビニの利便性がアピールできる。11月末の時点でセブン-イレブン・ジャパンでは28台が走っているほか、ファミリーマートやローソンでも導入が進。日本フランチャイズチェーン協会の調べでは、10月末時点の実店舗数が4万6224店で、昨年同月比で2000店増。フランチャイズ研究会によれば、2013年中に日本中でさらに1000店舗増えると予測されており、移動販売台数の増加も確実といわれている。移動車という”新しい店舗”の増加であることから、人材の追加は必須。どういう商圏で、どんな品揃えでという議論が進むことは間違いないため、エリアに関する知識や、マーケティング力、営業力などを持つ人材が新たに必要となるのは確実。新たな雇用の創出も見込めそうだ。

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EDIT&WRITING
志村 江

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