最前線で戦う30代マネジメント層100人に聞いた

世界経済を読み解くための情報収集術

世界中の出来事が身近に感じられるようになった昨今。2008年に起こったリーマンショック、ギリシャを発端とするヨーロッパの金融危機、円高…。目まぐるしく変わる世界経済にまつわるさまざまなニュースについて知っておくのは、ビジネスパーソンにとって大切なこと。そこで、30代でマネジメント層として活躍するビジネスパーソン100人に、世界経済にまつわる情報収集の仕方についてアンケートを実施。また世界経済に詳しい2人の有識者に、最近メディアを騒がせている世界的な金融不安が「日本の雇用」にどう影響するかについて話を聞いた。

2011年12月7日

30代・マネジメント層に「世界経済」についてのアンケート調査を実施

30代でマネジメント層に就く人たちが「世界経済」についてどのように情報収集し、何に興味を持っているかを調べるために、インターネットを通じてアンケートを実施した。対象は30歳〜39歳で、マネジメント層に就いている100人(男性90人、女性10人)。

アンケート実施時期:2011年11月22日(火)〜11月26日(金)
協力:メディアパーク

30代マネジメント層・100人に聞きました
「世界経済について、どのように情報収集していますか? 」

94%の人がインターネットを活用して情報収集している

複数回答で答えてもらったが、インターネットを使った情報源を1つも選ばなかったのは100人中6人。実に94%もの人が、インターネットを利用して情報収集しているということがわかった。インターネット(ニュースサイト)を活用している人が83%と最多。具体的なサイト名では「日経電子版」が一番多く、他「プレジデントロイター」「ダイヤモンド・オンライン」「CNET Japan」などが挙がった。またインターネット(ポータルサイト)と回答した人は70%。こちらは回答者の4割以上が「Yahoo!JAPAN」を挙げ、「Google」「MSN」「Infoseek」が続いた。

3位の「テレビ」はニュース番組が多く、具体的な番組名で最も多く挙がったのが「ワールドビジネスサテライト」。「テレビ」と回答した方の2割が視聴していることがわかった。また番組名ではなく「NHKのニュース番組」と回答した人も多かった。
4位にランクインした「新聞」だが、半数以上が「日本経済新聞」を購読していた。その他、「読売新聞」「朝日新聞」「産経新聞」と続く。数は少ないが、「日経流通新聞」などの専門紙や業界紙を活用している人がいた。
なお、本・雑誌を利用している人は4人に1人という結果に。「日経ビジネス」「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」「PRESIDENT」といったビジネス誌が挙がった。

「情報が早い」インターネットが上位に

Q1で答えてもらった中から、「もっとも利用しているもの」について聞いたが、一番多かったのが、3人に1人が回答したインターネット(ポータルサイト)。続いてインターネット(ニュースサイト)ということで、インターネットだけで6割という結果に。「情報が早い」といった点で、インターネットを積極的に使う人が多いようだ。なおモバイルサイトやメールマガジン、セミナー、勉強会/サークルなどを最も利用しているという人はいなかった。上記については他メディアと併用して情報を得ているケースが多いことがわかる。

「新聞の情報は信用できる」と考える人が多い

インターネット(ニュースサイト)がトップ。しかし、それに続いたのが新聞ということで、便利でよく使うことと信用性がリンクしないところが、興味深かった。インターネット活用者の中でも新聞社が提供するサイトを利用している人が多いことからも、新聞に対する信用度の高さがうかがえる。「より信用できる情報を、利便性の高いインターネットで得たい」というのがユーザーの本音だろう。また、テレビと新聞については、Q2で「もっとも利用している」と回答した人の多くが、Q3でも同じく「信用できる」と回答している場合が目立った。 

平日の夜や朝を使って情報収集する人が多い

もっとも多かったのが平日の帰宅後で63%。夜の時間をゆったりと使って、インターネットやテレビ、新聞などをチェックするという人が多かった。以下、通勤前の時間と、業務時間中が同じく42%。意外にも通勤時間と回答した人が少なかった。なお、休日と回答した人のうち、「休日のみ」の人はいなかった。仕事が忙しい平日でも、何かしらの情報収集は行っているということのようだ。

触れている情報量の多さが、自信の拠り所に

86%の人が知識不足だと回答。その理由を見ていくと、「断片的な情報しか入手できていないから」(39歳・男性・不動産業、経営管理)、「テレビや新聞の情報をそのまま鵜呑みにしているだけだから」(37歳・男性・営業職)という、情報の偏りに不安を感じているという意見が多かった。その他、「十分な情報を得るだけの時間がないから」(39歳・男性・製造業取締役)という回答も多かった。責任ある仕事について忙しいマネジメント層は、日々の仕事に追われ、情報をインプットする時間が十分にとれていないと感じているようだ。また、「どこまで詳しくなっても、十分理解したとは言えないと思う」(33歳・男性・ITサービス)と、世界経済を読み解く難しさについて言及する人も。

逆に「はい」と回答した人は「多方面からたくさんの情報を収集しているから」(37歳・男性・事務職)、「株取引をしているから、常に経済情報をチェックしている」(33歳・男性・情報サービス業)など、理由はともあれ、たくさんの情報に触れていることが自信の拠り所となっている人が多いようだ。

日本の景気に影響を与える「経済政策」に関心が高い

47%と最も多かったのが「経済政策」への関心。

「輸入が多い仕事なので、政策次第では原価(輸入コスト)に差が出てくるから」(39歳・男性・卸業営業職)、「円高による原材料の価格と輸出に与える影響を見るため」(38歳・男性・商品サンプル製作経営)など自社の業績に直接影響がでてくるため、気になっているという人が多いようだ。「混沌とした経済環境への手だてがあるのかどうか気になる」(36歳・男性・企画)など今後の先行きを不安視する声も。
「企業業績/格付け」と回答した人は、「取引先企業についての情報が気になるから」という理由が多かった。また「株式市場」と回答した人の多くは、「個人的に投資(資産運用)をしているから」という理由だった。
全体を見通すと、ギリシャを発端とするヨーロッパの金融危機に対して関心が高い人が多い。
「世界連鎖恐慌」といわれるように、「他国の問題も他人事ではない」といった “危機感”を持つ人が増えたと言えるかもしれない。

専門家はこう見る!世界経済と日本の雇用

日本総合研究所・山田氏に聞く
「世界経済情勢が日本に与える影響とは?」

(株)日本総合研究所
調査部長 チーフエコノミスト
山田 久氏
住友銀行(現三井住友銀行)を経て1991年に㈳日本経済研究センター出向。1993年より(株)日本総合研究所調査部に出向し、2011年より現職。マクロ経済分析や経済政策を専門分野とし、新しい労働市場のグランドデザインや、グローバル化の中での地域活性化などに詳しい。

影響が及ぶルートは4つあると思います。

1つ目は、ヨーロッパ経済からと日本の直接的な影響です。対ヨーロッパビジネスのチャンスが減ったことにより、現地生産、およびヨーロッパ向けの輸出が減ります。ヨーロッパとの関わりが大きかった企業では、従業員の給与が減ったり、人員整理が実施されたりということもあるかもしれません。
2つ目が、新興国との関係です。世界経済はどんどん統合され始めていて、特にヨーロッパの銀行が新興国にお金を貸す額も増えています。しかし、そのお金を自国にあてることになりかねませんから、現在の世界経済をけん引している新興国にお金が回らなくなる可能性があります。特に東欧や中東、その他中南米への貸し出しが多く、これらの地域が厳しくなれば、その影響でアジア市場の景気が悪くなる可能性があり、日本でも製造業を中心に、大きな打撃を受けることが考えられます。
3つ目が円高です。過去の円高のときも同じでしたが、輸出企業にとっては円高になれば損失が大きくなります。経営悪化の危険性はもちろん、海外生産から撤退したり、市場を縮小することもあるでしょうから、ビジネスチャンスは減ります。
そして最後に、金融収縮の問題です。世界経済が減退し、株価も下がっています。実は、企業も消費者のマインドは、株価に影響を受けやすいと言われており、株価が高ければ物がよく売れたり、企業も資金の調達がしやすくなります。反対に株価が安くなればものが売れなくなりますから、財務体質は悪化します。
 
なぜ、ヨーロッパの金融がこのようになってしまったのかといえば、ひと言で言うと「体力の違う国々の通貨を一緒にしてしまったから」です。通貨が強い国も弱い国もすべてが均一化・平坦化した結果、ギリシャのような経済力のない国でも、簡単にお金が借りられるようになり、赤字が溜まって破綻してしまいました。最終的に行き着く先は、「EUの解体」か「財政統合によるギリシャの再建」しかありません。現実的に考えて解体は避けようとするでしょうから、通貨が強い国が主導して再建を進めることになるでしょう。しかし、各国のさまざまな思惑や、国民感情も入り交じりますから、相当な時間がかかります。そもそも、解決するまでギリシャの財政が持つのか…など、さまざまな問題を抱えています。この現状を踏まえれば、「ユーロ安・円高」という状況はしばらく続くと考えるのが妥当です。上記で挙げた4つの影響はしばらく出続け、解決するまで、少しずつ日本経済を蝕んでいくでしょう。
 
特に日本は、新興国と比べて成長の余地が少なく、人口も減り始めています。内需には頼れないため、輸出ビジネスに頼らざるを得ない状況です。当然、成長力のあるアジアがターゲットになりますが、これまで欧米相手に行ってきたビジネスとはニーズが違いますから、ものの考え方を変えなくてはいけません。ビジネスの仕組みも変わるでしょう。「企画・戦略などの仕事のニーズが増える」「現地での雇用を増やす」「海外出張の仕事が増える」など、求められる仕事が変わり、結果として「雇用の質」が変わっていくと考えられます。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング・吉田氏に聞く 
「世界経済情勢が日本に与える影響とは?」

三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)
組織人事戦略部 プリンシパル
吉田 寿氏
富士通人事部門を経て、1990年に三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。人材マネジメント・システムの再構築や人事制度の抜本的改革などトータル的な組織・人事戦略コンサルティングに携わる。『リーダーの器は「人間力」で決まる』(ダイヤモンド社)など著書多数。

ギリシャを発端とするヨーロッパの金融危機や、タイの洪水による経済混乱などは、おそらく多くの日本人が「対岸の火事」と捉えているのではないでしょうか。実際には、明日に突然、日本経済が破綻したり、雇用が落ち込むことは考えにくいと思います。しかし、グローバル経営が進み、世界中で連結経営する企業が増えた今、当然、影響は出ます。

 
特に私が不安視しているのが「心理的ダメージ」です。日本企業のいいところは、派手さはないが堅実経営で、どちらかというと慎重に物事を考えて決断できること。世の中の変化を敏感に捉え、常に一歩先を見極めながら打ち手を考えられる企業が多いのです。だから雇用という面では「育てる」ということを第一に考える文化があります。その慎重さゆえに、例え対岸の火事であっても、何かしらの影響が出ることが予想されれば、決断が慎重なものにならざるを得ないのです。強気で攻められたところを下方修正したり、前向きな戦略だったものが様子見になったりする可能性が高い。守りに入るあまり、「迂闊な採用はできない」と考えるようになって、人員の採用がストップしたり、場合によっては早期退職で人員削減を…などということは十分に起こり得ます。ただ、逆に言えば、こうした慎重さを持っているからこそ、簡単には倒産しないともいえます。しかし、こうした心理的な抑制・保守化によるダメージが、ダイレクトな経済打撃よりも先に、雇用の現場を不安に陥れる可能性はぬぐえません。

変化が激しい時代だからこそ、積極的に情報を取りにいく姿勢が大事

グローバル化が進む中、仕事上で直接的な影響がない人でも、世界経済について関心を持っておくことはとても重要になっている。識者2人が語ってくれたように、今後もさまざまな角度から影響は出続け、われわれの雇用に直撃する可能性も十分に考えられるのだ。変化が激しい時代だからこそ、あらゆることに関心を持ち、自ら積極的に情報を取りにいく姿勢が、ビジネスパーソンとしての価値を上げることにつながるかもしれない。

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EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
志村 江
PHOTO
平山 諭

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