円高?円安?それぞれのシナリオで読む

2011年 景気と雇用の大胆予測

「不況」「不景気」と言われ続けているうちに、2010年も残すところあとわずかとなった。「2011年こそは…」と期待を持ちたいところだが、実際はどうなるのだろうか?そこで、気鋭の経済評論家お二人に、雇用と関係が深い「経済の動向」について大予測してもらった。結果、「円安派」と「円高派」に立場は分かれたが、あなたはどちらを支持する?

2010年12月22日

「円安派」の中丸友一郎氏が大予測!
2011年はこうなる

アメリカ経済が復活!
方や日本は回復の目処は立たず

マクロ・インベストメント・リサーチ
代表取締役兼チーフエコノミスト
中丸友一郎氏
日本輸出入銀行(現国際協力銀行)、世界銀行、JPモルガンなどでエコノミストとして活躍。その後、ロイタージャパン投資調査部長を経て現職。「アメリカ経済大復活!2011年はドルと米国株で儲けなさい」「日経5000円割れ時代の資産防衛術」(ともに徳間書店)など著書多数。

 【世界経済はどうなる?】
現在のようなデフレ不況下では、積極的に国内に向けて投資し、活力を生むような政策をとることが望ましいと考えます。しかし、「事業仕分け」に代表されるような内向きで財政緊縮に重きを置いた政策では、なかなか日本の経済回復は実現できないでしょう。
ひどいデフレ不況にもかかわらず、ユーロ至上主義で財政緊縮にこだわり続けるEUや、経常収支黒字から赤字に転落しつつあり、過剰なインフレの懸念を抱えるBRICs諸国の一部など、世界経済は軒並み厳しい状況が続きます。しかし、その一方でアメリカは、経済政策面で評価ができます。積極的な財政・金融そして銀行への公的資本注入などの金融セクター政策を背景に、どん底だった2008年を境に徐々に回復を見せ、2011年から2012年にかけて失業率が下がる分岐点といわれる「経済成長率3%」を超えてくるでしょう(現在は2.5%)。FRBの50兆円にも達する大規模な量的(金融)緩和政策第2段(QE2)に加えて、ブッシュ減税の恒久化への動きもあいまって、米経済が今後とも成長を持続することで長期金利の上昇も期待できます。これまで受け皿的に買われていた円がドルに流れるのは時間の問題。その結果、円はどんどん下がり、下手すると120円から130円くらいまで円安になると考えられます。日本の金利は緊縮財政と消極的な日銀の金融政策の下で1%割れ、株価は順当なところで7000円〜8000円、最悪の場合5000円なんて可能性も大いにあるでしょう。
つまり、相対的に起こる「アメリカ経済の復活」というシナリオが、今後の日本経済・世界経済を考えるポイントとなるはずです。

 
【景気はどうなる?】
結論からいいますと、今後の日本の景気は、今以上に悪くなる可能性が高いと思います。それは、政府による財政政策に期待がしにくい状況だからです。世界大恐慌時のように、日本は今デフレ不況の中で、財政均衡至上主義のイデオロギーに固執しているわけです。
同様に物足りなさを感じるのが、雇用回復への取り組みです。先日、日銀総裁が「今の日本は過剰な労働力を抱えている」と世界に向けて発信したのですが、これには違和感を持たざるを得ませんでした。財政も金融も今は積極的に運用することで、雇用と経済の拡大を目指すべきです。このままでは、早急な経済回復、景気回復の実現どころか、雇用の回復も厳しいでしょう。まずは、能力があり、やる気にあふれる人が仕事に就ける社会をつくること。そこが改善されない限り、日本の景気は本格的な回復へは向かえないと思います。
 
【転職するなら…狙い目業界は?】
●日本が誇る「先端業界」
まず注目したいのは、日本が世界の中でも比較的リードしている「自動車」「電機」「機械」という3つのセクターです。自動車はいうまでもありませんが、工作機械や産業用機械などの電気機器メーカーには、世界に誇れる技術があふれています。これは株を買うのと同じ発想なのですが、単に「今、とてもいい」だけでは現状維持にすぎません。「持続的な成長が期待できる」という側面を重視することです。そうであれば、将来も賃上げ、昇進あるいは人的資本の向上などが期待できます。上記の分野で、世界で誰にも負けない技術を持っている会社というのがそれに当てはまるでしょう。具体例を挙げるならば、ホンダやキヤノン、ファナック、コマツなどといった企業になるでしょうか。

●アメリカと一緒に稼げる会社
アメリカが復活するといっても、まだまだ力強いものではありません。とはいえ、世界の株式の40%以上を占めるなど、その影響力は強大です。よって、アメリカを中心に回っている、最先端の業界は見ておくほうがいいでしょうね。「IT」「バイオ」といった、最先端で知識中心の技術分野です。

●生活インフラ
リスクヘッジという意味でも、手堅くいくならばやはり「電気」「ガス」といったインフラ系です。こうした業界は底堅いため、地道にコツコツ働きたい人には合うのではないでしょうか。

●景気に左右されにくい情報通信産業
NTTやドコモ、KDDI、ソフトバンクといった通信産業は、実は景気の影響を受けにくいと言われています。なぜなら、技術革新がグローバルに起こっているからです。たとえ国内が伸び悩んでも、世界のどこかで最先端技術が生まれ、その恩恵によって生き延びることができるからです。
逆に、国内景気に影響を受けやすい銀行、証券、不動産などのセクターは、日本の経済政策が大きく転換されないかぎり、当面厳しい状況が続くと見ざるを得ないでしょう。

「円高派」の春山昇華氏が大予測!
2011年はこうなる

2010年とほぼ同じスピードで
景気は回復に向かう

金融ストラテジスト
春山昇華氏
ロンドンにて国際分散投資に3年間従事し、帰国後は国内系・外資系の投資顧問会社などで年金基金の運用や投信の立ち上げ、内外株式のCIOなどを経験後、現在は金融機関での運用関連業務に携わる。投資の話題を扱うブログ「おかねのこねた」を主催するほか、「サブプライム後に何が起きているのか」(宝島社新書)など著書も多い。

 【日本経済はどうなる?】
世界経済は2008年のリーマンショックでどん底を経験し、2009年でぐぐっと回復を見せました。その余波を受けて2010年はさらなる経済成長が期待されたため、全体的に期待値が上がってしまい、多少の成長を遂げたにもかかわらず、あまり成長を肌で感じる機会がありませんでした。2011年はその逆で、これまでの反省から期待値が下がることで、成長スピードはほぼ変わらないにもかかわらず、成長をより実感できる一年になるでしょう。
日本が貿易などで黒字を出している以上、円安になるのは難しく、赤字を垂れ流しているドルは何もなければ下がる一方でしょう。よって、為替は時期によってブレは当然ありますが、年間で3〜5%くらいは円高になると思います。株価は、2010年は0〜5%程度の上昇で終わりそうですが、2011年は5%から10%程度の上昇、10500円〜11000円程度の期待ができそうです。金利についてはほぼ横ばい、ほとんど動かないでしょう。そもそも給料が増えませんから、物の値段も上がらず、人々が使えるお金の量も一定のままですから、物価もほとんど変わらない。引き続き、おだやかなデフレが続くはずです。

 
【景気はどうなる?】
3月の決算期に向けて、どの企業も年明けから経費削減に力を入れるでしょう。その分、4月以降は緊縮が少し緩まって徐々にお金が回り出すと予想されます。よって、3月が「景気の底」になり、その後は少しずつですが回復に向かうと思います。
 
【転職するなら…狙い目業界は?】
●新興国とビジネスの機会を持つ企業
やはり海外との関係は要注目です。特に、中国やインドといった「新興国」とのビジネスを拡大させている企業は採用が活性化しています。つまり、アジア諸国の人々など、「今、裕福な人」との関係性を強くしている業界は強いということです。もちろん英語は必須ですし、中国語も話せるほうがいいですね。特に今は中国語を使える日本人はものすごく重宝されています。10年後には必須条件になる可能性大ですから、今のうちに勉強しておく手はあると思います。

●ソーシャルネットワーキングサービス
ネット関連ビジネスの中でも、より多くの人にアプローチできるという意味で、「世界を相手にビジネス展開する企業」は必ず伸びるでしょう。facebookに代表されるような、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)はその代表格ですね。日本人のネット人口は約6000万人と言われていますが、例えば中国に目を向けてみると、すでに4億人ともいわれています。10年後には10億人を越えるというデータもありますから、今のうちからビジネスチャンスを狙って注目しておいて損はないでしょう。

●取引先がしっかりしている企業
お客からお金をもらって成り立つビジネスである以上、必ず景気に左右されます。ということは、「その企業が誰を相手に商売をしているのか」に着目しましょう。つまり、安定していて、お金を持っている取引先を相手にしているかどうかを見極めること。今の時代のリスクヘッジとして有効なはずです。これは株を買うのと同じですね。さらにいえば、すでに多くの人がネット上などで騒いでいる時点で、ライバルが多いと判断すべきです。「人が目をつけていないところを狙う」のが鉄則。そのうえで、「好き」だと思えるビジネスを狙うこと。好きこそものの上手なれ。好きで続けるうちに、相手に信頼されます。この閉塞感のある時代でも、自分自身のパイを広げる方法はあるのです。

今の状況を悲観せずに、チャンスと捉えよ!

2人の意見を総合すると、日本経済は、2011年も目覚ましい回復を見せることはないようだ。経済の低迷に伴い、転職市場もうなぎ登りに採用件数が増えない可能性がある。しかし、いつまでも好景気をぼうっと待っていたのではみすみすチャンスを逃してしまう。自分のキャリアパスに合わせて、何かを得られる企業がないか、探してみてはどうだろう。2011年を充実した一年にするためにも、さっそく新しいチャレンジの計画を立ててみよう。

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EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
志村 江
PHOTO
武島 亨
ILLUST
柏原昇店

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