顧客の喜ぶ姿、頼られ感、達成感、成長感…

経験10年超のベテランが語る、だから営業職は辞められない

若手の間では、「営業はしんどい」と捉える人が少なくないようだが、営業の仕事が大好きで、10年以上経った今も現場にこだわり、活躍している人はとても多い。異業界異職種に飛び出すことなく、活躍し続けてこられた理由は、一体どこにあるのだろう?今回は、同業界で10年以上、営業として活躍し続けている3人に「今の仕事が好きな理由」を聞いた。

2012年12月5日

お客様ごとのソリューションを第一に考えられる今の仕事が好き。「私たちの
ことを本気で考えてくれたから購入した」との言葉に心からの喜びを感じます

株式会社モリモト 平松貴博さん

株式会社モリモト
課長
平松貴博さん(34歳)

平松さんは、2001年4月にモリモトに新卒入社。以来11年半、ずっと新築マンションの営業に携わっている。モリモトを志望したのは、「デザイン性に優れたマンション作り」に惹かれたから。現在はプレーイングマネージャーとしてプロジェクトを牽引している。

新人時代は、想像していた営業の仕事とのギャップに悩んだ時期もありましたね。当時はまだ、ネットでの販促がそこまで進んでいなかったので、主な集客方法は電話と飛び込みとポスティング。昼は1日400件ひたすら電話をかけ、夕方以降は個人宅への飛び込み営業50件ペース。今考えると、すごい数ですね。
でも、辞めようとは思いませんでした。最低3年間は頑張ろうと決めていたし、ほかに行きたいところもなかったからです。そして毎日がむしゃらに営業に取り組むうちに、徐々にコツを覚え、営業成績も伸びて行きました。そうなると、仕事はだんだん面白くなる。4年目に入ったころには、トップ営業の仲間入りを果たし、主任に昇格しました。

5年目にぶつかった「壁」が、営業スタイルを一から見直す契機に

しかし5年目に、大きな壁にぶち当たりました。それまでは、川崎など都心周辺のファミリー向け物件を主に担当していたのですが、初めて東京・麻布という超都心のDINKS向け物件を扱うことになったんです。
物件価格で言えば、今までの2倍近い立地。今までのファミリー向けの営業トークは全く通用しませんでした。ファミリーだと「子どもが増えて手狭になったから」など家を買う明確な動機がありますが、都心物件を求める顧客の場合、「友人が買ったから」「デザインがかっこよさそう」などというあいまいな理由でモデルルームに訪れるお客様が多いんです。ニーズをつかみ切れず、アプローチ方法もわからず、全く売れない日々が続きました。この業界では、モデルルーム来場客のうち成約いただいた数を「歩留り」といい、だいたい10%程度が平均と言われます。私は、直近の物件では歩留り平均20%近くを挙げていたのですが、この物件では一気に3%台にまで低下。「このままではだめだ。一から営業方法を見直そう」と腹を括りました。

自分の営業スタイルを振り返り、何が悪いのか、何が足りないのかをあらゆる角度から熟考。そして、今までは「売るための営業」をしていたことに、自分自身で気づいたんです。
今までの物件では、「買う動機が明確」な状態でモデルルームに来てくださるお客様が多かったので、物件の知識をひたすら頭に叩き込み、ニーズに合った特徴をとにかくアピールすればお客様の心は動かせた。でも、お客様ニーズがあいまいで、かつ立地以外での差別化がしづらい都心物件では、その方法は通用しません。考えてみれば、当然でした。そこで、「お客様のメリットを追求する営業」に切り替えたんです。
具体的には、今住んでいる物件の特徴と、なぜこの物件に興味を持ったのかをヒアリング。そこから、「心の奥底にある物件に対する要望」を探り、仮説を立てます。例えば、男性のお客様の場合は「昇進・昇格=収入の増加」をきっかけに、都心物件に興味を持つ人が少なくありません。それがわかったら、立地のよさやステイタスなど、お勧めするポイントが見えてきます。

大事にしたのは、営業としてではなく、「目の前のお客様が自分の家族や友人だったら、どうアドバイスするか?」という目線で臨むこと。「この物件を買ったほうがいいお客様か、否か」を、相手の立場に立って判断し、後者と思われる方には無理にはお勧めしないようにしました。このように営業スタイルをガラリと切り替えたところ、少しずつ、成果が出始めました。「私の立場に立って、真剣に考えてくれてありがとう」という感謝の言葉もいただけるようになりました。嬉しかったですね。同時に、今までの自分は単なる売り子だったことにも気付いた。壁にぶつかったからこそ、営業としての基本に立ち返ることができ、自信もつきました。

自分のやり方を追求できる今の環境に満足。辞めるという選択肢は、ない

現在は、マネージャーとして部下をまとめつつ、東京・赤坂にある物件すべての営業を任されています。成約いただいた後には必ず、「なぜご購入いただいたか」理由を聞くようにしているのですが、人情で売れるようなエリア・価格帯ではないのに、「平松さんだから買ったんだよ」と言われることがあります。売るためではなく、私たちのことを本気で考えて、提案してくれていることが伝わったから、と。営業冥利に尽きる瞬間ですね。
この会社を辞めようと思ったことは、今まで一度もありません。数年前、会社の経営状態が悪化したときにも、全く転職は考えませんでした。お客様のことをとことん考えられる今の仕事が好きですし、社長もその考え方を推奨していて、私たち社員のことも認めてくれている。営業として、これ以上いい環境はありません。これからもずっとこの会社に身を置き、会社の成長に貢献し続けたいと、心から思っています。

産地や年代で、味も価格も異なるワインの世界。知識を磨き、顧客の嗜好を
つかんだ結果、「あなたに任せる」と言われたときの喜びはひとしおです

ピーロート・ジャパン株式会社 石井一彦さん

ピーロート・ジャパン株式会社
セールスマネージャー
石井一彦さん(37歳)

石井さんは大学卒業後、1年間のアルバイト生活を経て、ワインの輸入販売を手掛けるピーロート・ジャパンに営業職として入社。現在は東日本地区の法人向け営業でトップセールスを誇る。そもそも営業を志したのは、「求人数が多い」という消極的な理由から。しかし、今ではこの仕事が楽しくて仕方がないと笑顔で語る。

入社当初は、この仕事を続けるべきかどうか迷った時期もありましたね。研修で2カ月間、個人顧客の開拓を担当し、その後、飲食店やホテルなど法人向け営業に配属されました。いいお客様が多かったですが、中には難しいお客様もいらっしゃいます。アポイントを取って出向いたのに門前払いを食らったり、厳しい言葉を投げかけてくる方もいて、新人時代はへこむことが多かったですね。

トップセールスの先輩の叱咤に奮起し、迷いが吹っ切れる

それでも踏みとどまったのは、トップセールスを挙げていた先輩の存在が大きかったですね。誰よりも早く出社して、誰よりも多く客先を回るという、いわゆる「仕事大好き人間」。自分だけでなく周りにも厳しく、新人の私はずいぶんとしごかれました。しかし私は、元来負けず嫌い。営業先でへこんで、やる気を失いつつあるときも、先輩に叱咤されると「なにくそ!」と奮起できたんです。そして、がむしゃらに先輩の真似をしてひたすら客先を回っていたら、少しずつですが成果が出始め、「数字を挙げる」という営業としての基本的な喜びを感じられるように。それに伴い、厳しい言葉しか掛けてくれなかった先輩が、徐々に私を認めてくれるようになりました。先輩との関係性が築けたとき、「営業としてやっていけるかもしれない」とようやく思えました。
入社時には、ワインの知識は全くありませんでした。入社後の研修である程度は身につけましたが、知識レベルで言えばお客様のほうが圧倒的に上。とにかく客先に足しげく足を運び、自分の顔を売りながら、お客様の味の好みを聞き出し、お店ごとの傾向をつかむ努力をしました。お店の嗜好がわかると、お勧めできるワインもだんだんわかるようになってきます。数年経ったころ、いつもワインの味に細かな注文をつけていたお店が、「これからは石井さんのお任せで頼むよ」と試飲もせずに購入してくれるようになったんです。私を信じてくれた、ようやくパートナーになれた!とこの上ない喜びを感じましたね。

「ワインの流行り」を肌で感じたいから、今も営業現場にこだわる

現在は、6人の部下を持ちながら、営業として100件の顧客を持っています。新規開拓やご紹介、引き継ぎなどで長年コツコツと関係性を築いてきた顧客ばかり。ミシュランで星を獲得した有名店や、著名人が多く集まる会員制のお店などもあります。マネジメントだけに専念せず、今も現場にこだわるのは、今、市場に流れているワインの流行りを肌で感じていたいから。この「感覚」が、ワインの営業としての最大の武器なんです。

今の仕事に、日々楽しさは感じていますが、大変さ、難しさは感じません。今はどんなメニューにもワインを合わせる時代。和食店でも中華店でも、居酒屋にだって置いてあります。どんな飲食店にもワインの潜在ニーズはあるので、新規開拓がしやすいんです。
それにワインは、産地や年代などによって味も値段も全然異なる、繊細で奥深い商品。商品知識を追究できる環境に身を置く楽しさや、その知識を仕事でフルに活かせるやりがいもあります。ときには、高級フレンチレストランに「新しいメニューにどんなワインが合うか、具体的なアドバイスがほしいから」と、フルコースを振る舞ってもらうことも。この仕事をしていなかったら、知らなかったであろう世界。毎日が刺激的であり、ワイン以外のものを売りたいとはもう思えませんね。部下にも、自分が感じているこの喜び、やりがいを味わってほしいと願っています。

宝石をご案内したときに、お客様の表情がぱあっと明るくなるのが嬉しい。
そんな私の気持ちが伝わったときに、お客様の心も動くと感じています

株式会社ジュノー 大岩典史さん

株式会社ジュノー
宝飾事業部 取締役部長
大岩典史さん(40歳)

大学卒業後、留学費を貯めるために始めたアルバイト先で営業の楽しさに目覚めた大岩さん。米国留学を経て、宝飾品の営業を約14年間務めている。今までを振り返り「営業として壁にぶつかったことはない。宝飾品の営業は自分の天職」と言い切る。

大学卒業後に就いたのは、ガソリンスタンドのアルバイト。そこでものすごく稼ぎました。
給油の際にお客様に声をかけて、オイル交換やタイヤ交換、洗車などを受注すると、アルバイトであっても給与に還元してくれる会社だったんです。そこで、どのようなセリフで声をかけたら成功するのか自分なりに傾向を探り、相手の年代に応じて話し方も工夫しました。すると、気づいたら店長の月給を上回る稼ぎになっていたんです。そのときですね、「自分の努力や工夫が数字に表れる仕事って楽しい!」と思えたのは。それ以来、営業として壁にぶつかったり、悩んだりしたことはありませんね。「営業って楽しい」という気持ちのまま、今に至っています。

社長の営業トークや立ち居振る舞いを徹底的に真似て、自分のものに

アルバイト時代の私の働きを評価してくれた当時のエリアマネージャーに誘われ、車の関連用品販売会社の設立に参加。22歳の時でした。ここでは、社長に常に同行して、営業トークや立ち居振る舞いなどを徹底的に真似ました。社長は情報感度が高く、ちょっとした時事ネタを話に取り込んで盛り上げる。私も新聞を読んだり、営業先での情報交換に力を入れてインプットを増やし、営業トークの質を高める努力をしました。その結果、比較的すぐ成果を上げることができ、1年半後には米国留学の資金を稼ぐことができました。
アメリカでは、語学学校に通うかたわら、宝石鑑定士の専門学校に通学しました。子どものころから宝石や星空、ガラスなどキラキラ輝いているものが大好きで、以前から「宝石について専門的に学んでみたい」と思っていたからです。ただ、日本での3年間で磨いた営業スキルには自信がある。そこで、2年間みっちり勉強した後は帰国して「宝飾品の営業」に就こうと、自身の方向性が定まりました。

被災地ご夫婦の「心機一転頑張るため、宝石という夢を買いたい」との言葉に涙

2年後、26歳で帰国した後は、ずっと宝飾品営業に携わっています。今の仕事は、個人顧客向けのジュエリーアドバイス。全国に5万人以上いる既存顧客に、アフターサービスとして購入いただいたジュエリーのクリーニングを行い、リフォームや新商品購入のご案内をするというものです。北海道から沖縄まで、毎日のように全国を飛び回っています。
部下にもよく教えているのですが、この仕事は「どうにかして買ってもらおう」という姿勢で臨むと、どうしても表情がギラギラしたり、切羽詰まった顔になったりするもの。目の前にいるお客様には、すぐに察知されてしまいます。大切なのは、「買ってもらおう」という考えをいったん捨て、お客様とのコミュニケーションを楽しむこと。
宝飾品は、生活必需品ではありません。でも、保有することで心が豊かになり、身につけることで晴れやかな気持ちになるもの。宝飾品を目にしたときには、どんなお客様でも表情がぱあっと明るくなる。その瞬間が嬉しいんです。極端な話、買っていただかなくてもその表情を見られるだけで嬉しい。でも、そんな私の気持ちが伝わったとき、お客様の気持ちも動く。そんな経験を積み重ねてきました。

つい最近、石巻に住む50代のお客様から連絡をいただきました。震災前に、2回ほどご購入いただいた自営業のお客様。「久々に宝石を買いたいので、来てほしい」とのご要望に、急いで仮住まい先のアパートに出向きました。震災で自宅も会社も流され途方に暮れたが、1年半が経ってようやく会社を建て直すメドがついた。心機一転、夫婦で頑張るために、何かしら夢のあるものがほしいと思ったときに、君の顔が浮かんだ…と。じーんとしましたね。購入いただいたのは、前回ご購入いただいたものの津波で流されてしまったという、真珠のネックレスとダイヤのペンダント。お二人の嬉しそうな笑顔と、「もう少し落ち着いたら、また買わせてもらうよ」との言葉に、営業冥利に尽きるとともに、「やはりこの仕事は私の天職だ」と再認識しました。
私の願いは、宝飾品を通じて、一人でも多くの人にこのご夫婦のような笑顔になってもらうこと。私がご案内する宝石の輝きで、誰かの心をふっと明るくすることができたら、こんなに嬉しいことはありませんね。

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EDIT&WRITING
伊藤理子
PHOTO
設楽政浩

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