一度目の「キャリアの棚卸し期」との向き合い方

26歳・営業経験3年、営業職を続ける?変える?

営業の仕事に就いて3年ほどが経った26歳。誰しも一度は、「このまま営業を続けていていいのか?」と考えるタイミングのようだ。3年間頑張ってもなかなか思うような成果が表れず、先が見えなくなったり、いつまで数字を追いかけなければいけないのかと辛さを感じたり…。しかし、営業からキャリアチェンジするにしても、営業としてキャリアを積むにしても、安易に決めるのではなく、自身のキャリアの方向性をじっくり考えてみることが大切だ。専門家と、キャリアチェンジ経験者の声から、考え方のヒントを探ってみよう。

2012年4月25日

<ADVISER>

株式会社人材研究所<br>
代表取締役社長/曽和利光氏

株式会社人材研究所
代表取締役社長/曽和利光氏

リクルート、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門、管理部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野でさまざまな実務やコンサルティングなどを経験。2011年10月に独立。「人々の可能性を開花させる場や組織をいかに作るか」に取り組んでいる。

【専門家の意見】ポテンシャルが評価される年齢でも、キャリアチェンジには
「その道の専門性」が必要。営業を続けるならセールステクニックをつける努力を

新しい方向性は、「好きこそものの上手なれ」で決める

3年間、営業として数字を追い、走り続けてきた26歳。「こんなしんどい仕事をずっと続けていくイメージが湧かない」「別の職種にキャリアチェンジしたい」と思うことも多いだろう。企業の採用代行や人事コンサルティングなどを幅広く手掛ける、人材研究所の曽和氏は、そんな現状についてこう語る。
「実際、26歳ぐらいの年齢で、営業を飛び出す人は少なくありません。営業の仕事でマーケティングをかじったからマーケティング職に転身したい、事業提案の企画を一から考えたから企画職にも転身できるのでは?などと考える人が多いようです。しかし正直、営業3年で身につく水準の企画やマーケティング経験では、キャリアチェンジは難しいでしょう。ほかの職種も、もちろん同様です。『少なからず経験があるから転職できる』と楽観的に捉えて会社を辞めても、転職活動は難航が予想されます。なぜなら、いくらポテンシャルが評価される若手であっても、その職種で経験を積んできた人にはかないませんし、今は、コンサルタントが企画職やマーケティング職に、公認会計士や弁護士などが経理財務職に…というように、『専門知識を極めた人』が数多く事業会社に転職しようとしています。たとえ各分野の基礎知識があったとしても、経験者や専門家に競り勝つのは難しいでしょう」
それでも、キャリアチェンジを志す場合は、「今までの経験の中から一つ軸を決めて、それを深める努力をするのが成功の近道」という。
「その際は、『その仕事が本気で好きか』で決めることが大切です。専門知識を高めるためには、継続的に勉強し、知識をブラッシュアップしていく努力が必要。果たしてそれができそうか?と自分に問うてみてください。逆にいえば『好きこそものの上手なれ』にかなうものはありません。どんどん勉強したい!と思える分野であれば、自然と努力ができ、専門家の知識量にも早晩追いつくことができるでしょう」
まずは、今までの経験のどこに軸足を置くかを考える。そして、その分野を本気で身につけようと思えるかどうか、仕事内容を調べてみる。これが「次」を決める重要なステップだ。仕事内容については、専門書に目を通して勉強したり、その職種に就いている人にヒアリングする方法もあるし、SNSで情報収集するのも一法。本気になれそうな仕事だと確信できれば、覚悟を持って飛び込んでみよう。
「ただ、その場合もいきなり転職するより、まずは『社内異動』を狙うほうが実現可能性が高い。自社で異動願いを出して、勉強を続けつつ数年間経験を積めば、『専門を極めた人』にも近づけます。それから転職活動をしたほうが彼らに勝てる可能性が高いでしょう」

実は「セールステクニックを持ち合わせた若手営業職」は引く手あまた

しかし、曽和氏は「安易に営業の仕事を飛び出す前に、営業のよさも再考してほしい」と訴える。
「どの企業も、『若くて行動力があり、セールステクニックがある若手営業経験者』を欲しがっています。しかし、転職市場に該当する人材が少なく、需要に供給が追い付いていない状況なんです」
この場合の「セールステクニック」とは、例えばクライアントの予算を見極める、誰が決裁権を持っているか判断する、クライアントの心を動かすために相手の視界に立ってクライアントメリットを考える…などといった、いわゆる営業手法の根幹部分を指す。
「若手営業の企画力は、年々レベルアップしています。ロジカルシンキングの必要性が広く認知され、MECEの考え方は今や学生でも知っているほど。しかしその一方で、昔ながらのセールステクニックは『泥臭い』などと軽んじられる傾向がある。実際、営業を辞めたいという若手の多くは、『ただ売り込むだけの仕事がいやだ』などと言います。しかし、これに伴い『せっかく最高の課題解決案を作ったのに、それを聞き入れないなんて顧客が悪い』などと自己中心的に考え、自らの売りこみ方を省みない若手が増えています。この『せっかくの最高の提案』を『相手に納得させ、受け入れてもらう』ために必要なのが、セールステクニック。これは、顧客の視界に立ち、相手の心理状況や社内の立場などを読み、どう説明すれば納得するのかを考えるというもの。曖昧なリアルから本質を見極める力が必要になるため、鍛えがいのあるスキルといえます
セールステクニックが求められるは今だけのトレンドではなく、中長期的にも求められ、評価されるスキルだという。
「現在の営業職には、圧倒的に足りないスキルであり、希少価値は高い。相手の立場を理解し、どうすれば納得し動いてもらえるかを考えるスキルは、営業現場だけでなくマネジメントにも大いに役立つものなので、ここを鍛えておけば昇進、昇格もしやすいはず」
では、日々の仕事の中でどうやって鍛えればいいのだろうか。
相手が顧客でも上司でも、『その人の2つ上の立場の人の視点』を想像し、目の前の相手のことを考えてみましょう。そうすれば、目の前の相手がどんな立場にあり、どんなプレッシャーを受けているか、今の関心事は何か…などが想像できるでしょう。『クライアントの担当者に、この提案を社内でエスカレーションしてもらうには、どんな説明をしてどんな資料を用意すれば動いてもらいやすくなるか』などの頭が働きます。これを繰り返していくことで、相手のかゆい所に手が届く動き方ができるようになります」

【経験者の声】キャリアチェンジ組は「営業で培った強み」を活かして成功。
営業継続組は、自身のキャリアを熟考して「営業の楽しさ」を再認識

【キャリアチェンジ組】
営業時代に身につけたスキルをベースに転職活動し、企画の仕事に出会う

工具メーカー・企画職 松浦健吾さん(29歳・仮名)

工具メーカー・企画職
松浦健吾さん(29歳・仮名)

新卒でイベント会社の営業職に就き、3年間働きました。担当していたのは、アミューズメント施設などでのイベント提案。しかし、経済環境の影響もあり、なかなか大型のイベントが受注できず、営業成績はイマイチ。3年間頑張っても芽が出ず、27歳の時「自分には営業適性がない。別の仕事に転職したい」と思うようになったんです。
ただ、イベント企画自体を考えたり、イベント受注後の会場の設計や装飾手配、ギミックづくり、POPづくりなどには楽しさを感じていました。必要に迫られ、見よう見まねでIllustratorやPhotoshop、CADなども独学で覚えました。これらを操作しながらイベント全体の企画や運営を組み立てていると、どんどんアイディアが浮かんでくるんです。「企画の仕事のほうが向いているのでは?」と思いつつも、いきなり企画職に転職できるとは思えなかったので、「IllustratorやPhotoshop、CADのスキルを活かせるところ」で求人を検索。すると、未経験OKのHPデザイナーやメーカーの販促企画職などがいくつかヒットし、その中の一つである工具メーカーに採用されたんです。
現在は、自社のカタログやチラシの企画と作成、営業支援キャンペーンの企画や販促ツール作りなど、企画のほか販促、宣伝などに広く携わっています。IllustratorやPhotoshopはフル活用中。自社の展示会の会場の図面も自ら引いているので、社内で重宝がられているようです。数字のプレッシャーから解放され、やりたい仕事に就けて、本当に満足。「まず希望の職種ありき」ではなく、「持っているスキルを活かせる場所を探した」のが、私の勝因だったと思っています。

【キャリアチェンジ組】
営業視点で必要な資料を先回りして揃える。経験をフルに活かせる環境に出会えた

機械商社・営業事務職 三宅洋子さん(28歳・仮名)

機械商社・営業事務職
三宅洋子さん(28歳・仮名)

キャリアウーマンに憧れ、営業職を志望。バリバリ働いて、女性営業マネージャーになるのが夢でした。実際、営業の仕事は楽しく、成績も良好。しかし、毎日が激務で、終電帰りが当たり前。売り上げが上がれば上がるほど業務量も増え、休日を取るのもままならなくなってしまいました。入社3年目に結婚したのですが、夫のほうが家に帰るのが早く、毎晩夜中まで待たせてしまうのが辛くて…。この人のためにもっとやるべきことがあるのでは?と思い、26歳の時に転職を決意しました。
希望は、今より残業が少なく、休みが確保できるところ。営業の仕事は好きだったので、別の職種への転身は考えていなかったんです。ルート営業がメインの今の会社を見つけ、応募したところ、面接の場で「前職がそんなに忙しかったのであれば、営業職ではなく、まずは営業事務をやってみない?」と提案され、「まずは、なのだったらチャレンジしてみようか」と何の気なしに入社を決めました。
今の仕事に就いて、早くも2年。「思いのほかこの仕事に向いている」と感じています。前職はアシスタントがおらず、提案書作りや見積もり作成、営業数字管理などすべての文書作成をこなしていたので、書類作成はお手のもの。営業時代、外回りをしながら「今のうちにアシスタントが見積もりを作ってくれていたらどんなに楽か…」などと考えていたので、今は必要になると思われる書類を、営業に言われる前に先回りして作っています。「ありがとう!助かるよ」と言われると、本当に嬉しいし、経験が活かせる喜びも感じますね。残業もほとんどないので、家事との両立もできています。このままずっとここに勤め続け、「営業事務の生き字引」になるのが今の私の目標です。

【営業継続組】
数字だけでなく組織を率いるやりがいを求め、営業マネージャーを目指すと決意

不動産会社を退職し転職活動中 花岡公平さん(28歳・仮名)

不動産会社を退職し転職活動中
花岡公平さん(28歳・仮名)

前職は、不動産会社の営業職。戸建住宅の新規開拓営業として、個人宅に飛び込みを続ける日々でした。しかし、いくら頑張って受注を上げ、目標を達成しても、次の期にはさらに高い目標を課される。終わりのない数字との戦いに、「いつまでこれを続ければいいのか」と徐々に疑問を覚えるようになったんです。
3年が経ったころ、キャリアチェンジを真剣に考え、いろいろな職種を検討しました。「若いうちは体力勝負で何とかなるが、将来を考えたら資格や技術を身につけたほうがいいのではないか」とエンジニアになることも検討したほど。しかし、今までの営業としての3年もじっくり振り返ってみて、営業の面白さも再確認したんです。営業は画一的なものではなく、会う人ごとに話す内容もアプローチ方法も変えなければいけない。でもそれを考えるのが楽しいんだと気付きました。そこで熟考の末、「数字だけではなく、部下をまとめ育成し、組織を率いるという、今までとは違うやりがいを得るために、マネジメント職を目指そう」と決意しました。
現在、早くマネジメント職に就けるチャンスが高い、小規模のネットベンチャーを中心に「営業マネージャー候補」としての入社を目指して転職活動中。まだスタートしたばかりですが、前職での経験と実績が評価され、書類通過率は高く、面接にも呼ばれ始めています。入社後は、まずは営業の最前線でバリバリ働きつつ、新しい事業の立ち上げなどにも積極的に関わり、できるだけ早く営業全体をまとめる立場につきたいですね。

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伊藤理子
PHOTO
関本陽介

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