企画マーケ、販促、コンサル…人気職種に転身の確度とは?

「営業経験しかない30歳」のキャリアチェンジの可能性

30歳を前に、キャリアチェンジを志す人は少なくないだろう。中でも「営業職」は、企画提案を始め、マーケティングやコンサルティング、プロジェクトマネジメントなど幅広い業務に触れるケースがあるため、「営業職しか経験がなくとも、別の職種にキャリアチェンジできるだろう」と思っている人が多いようだ。実際、30歳まで営業経験のみを積んできた人が未経験職種にキャリアチェンジできる可能性は、どれだけあるのだろうか?専門家と、キャリアチェンジ経験者の声から探ってみたい。

2011年11月30日

<ADVISER>

株式会社人材研究所<br>
代表取締役社長/曽和利光氏

株式会社人材研究所
代表取締役社長/曽和利光氏

リクルート、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門、管理部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野でさまざまな実務やコンサルティングなどを経験。2011年10月に独立。「人々の可能性を開花させる場や組織をいかに作るか」に取り組んでいる。

【専門家の意見】「30歳で営業からキャリアチェンジ」は狭き門。
実現可能性が最も高いのは、現在の会社で他職種を経験→転職

営業職の未経験転職は、マーケット知識、製品知識を転用できる場合で可能

「30歳で営業からキャリアチェンジ」は、結論から言えば可能です。
営業の仕事では、顧客のリストアップから新規開拓、マーケティング、ヒアリング、提案、コンサルティング、アフターフォローなど、さまざまな業務スキルが養われます。そのため、ほかの職種に比べるとつぶしが利く職種。今までの経験のうち、自信のある業務に軸足を置いて行動すれば、30歳で全くの異業界・異職種への転身もあり得ます。
BtoCの営業を30歳まで続けてきたのであれば、ターゲットとするカスタマーの動向について知り尽くしているはず。その知識を、別の業界・職種に転用することが可能です。例えば、化粧品メーカーの営業としてF1層の女性の行動や志向などを知り尽くしているならば、同じ層をターゲットにしている企業はすべて応募対象。若い女性客を新たに取り込もうとしている飲食チェーンや、ウエディングビジネスのマーケティングや販促担当、女性向け情報サイトの企画職などで力を発揮できるでしょう。
BtoB営業の経験者ならば、バリューチェーンにおける川下である「顧客群への転職」が考えられます。例えば、素材メーカーの営業であれば、その素材を加工している「売り先」企業に移り、素材の知識を活かしてシーズベースで商品企画を考える…などの可能性もあり得ます。

未経験の営業出身者を採用する「リスク」を取る企業は少ない

しかしながら、30歳になってからのキャリアチェンジは、どうしても難易度が高くなります。一般的に、30歳を過ぎると、経験やスキルを活かして即戦力として活躍してくれることが求められるからです。おそらく、まじめに営業経験を積んできた人であれば、どんな職種でも比較的短期間で成果が出せるようになるのでしょうが、採用する企業側から見れば、職種未経験者を採用するのはどうしてもリスクになります。人気職種となれば、経験者の応募も多く集まりますし、「リスクを取ってまで未経験者を採る」理由がありません。
このリスクをどこよりも取ってくれるのは、「今の会社」。営業としての今までの働きぶりや、人柄を知っているから、「この人ならば○○職でも活躍できる可能性がある」と判断できるのです。
例えば、マーケティング職に転身したいならば、29歳で無理に転職するよりも、自社で異動願いを出してマーケティング経験を積み、3年後の32〜3歳に別の会社に転職するほうが、転職市場においては圧倒的に高く評価されます。

また、違う仕事に転身して基礎の基礎から覚えたいのではなく、もっと高い視界でその仕事全般に関わりたいと考えるならば、実は「今のまま営業として自社にとどまり、営業マネージャーに昇格を目指す」のが一番賢い方法ではないか…と私は考えています。
立場が上になればなるほど、職種ごとの垣根は低くなります。一スタッフの段階では、職種転換のハードルは高いですが、経験を積み、マネジメントスキルを身につければ、その「マネジメントスキルが汎用スキル」となり、職種スライドが容易になります。営業畑出身のマーケティング部長、人事部長など、よく目にしますよね?
そもそも、「会社の売り上げを稼ぎ出す」営業は、会社の事業構造、収益構造もよりリアルにつかめています。営業以外の職種で「職人」にはなれなくても、「営業としての現場感覚を持って別の部署でマネジメントを行う」という視点であれば、さまざまな方面で力を発揮できるでしょう。せっかく30歳まで積み上げた営業経験ですから、リセットせずにさらに伸ばして、ゆくゆく転身を目指すほうが、賢いキャリアの積み方だといえます。

【キャリアチェンジ経験者の声】30歳で未経験転職を実現するには
その道で生きていくという覚悟と、応募職種との接点をアピールすること

【CASE1】29歳で不動産営業→臨床開発モニターに転職。
理系の知識+応募先企業を調べ尽くすことで「可能性」と「熱意」を伝えた

CRO(受託臨床試験期間)・臨床開発モニター 伊藤健史さん(29歳・仮名)

CRO(受託臨床試験期間)・臨床開発モニター
伊藤健史さん(29歳・仮名)

■キャリアチェンジのきっかけとは?
大学時代は理学部化学科に在籍。先天性ステロール代謝異常症の研究に取り組んでいました。大学の同期は、大半が医療機関や素材メーカーの研修室に就職しましたが、私は「部屋にこもってずっと研究に勤しむよりも、外に出ていろいろな人と触れ合う仕事に就きたい」と考え、不動産会社の営業を選びました。

都内の不動産会社で、土地や住宅の売買を担当。営業先は個人だけでなく企業も多く、さまざまな立場の人と関われるのが刺激的でしたね。売れば売った分、給与に反映されるのもやりがいにつながっていました。ただ、もともと会社員志向が薄く、いつかは独立したいと思っていました。健康・医療というテーマに興味を持ち、この分野でビジネスができないかと考え始めたのが、29歳のとき。そこで「起業につながる経験と知識をつけるために、大学時代の知識を活かして医療分野に転身しよう」と考えたんです。
ネットで、未経験でも採用される可能性がある医療系の職種を片っ端からリサーチ。
製薬会社や医療機関を取りまとめ新薬の治験をモニタリングする「臨床開発モニター」であれば、営業として培ったコミュニケーション力が活かせるうえ、大学時代の知識も活かせると考えました。

■キャリアチェンジを実現するために努力したことは?
経験もスキルもないので、ネットや本で情報収集して臨床開発モニターの仕事について調べ尽くしました。「何でこの仕事に就きたいのか?」という理由が甘いと、必ず落とされると思ったからです。転職エージェントが主催するCRO系の転職セミナーにも積極的に参加。さまざまな業界知識、職種知識を仕入れました。
臨床開発モニターの仕事は、GCP(医薬品の臨床試験の実施基準)が遵守されているか、治験が治験実施計画書通りに進められているかどうかモニタリングするのが主な仕事ですが、製薬会社や治験実施医療機関のスタッフなど、さまざまな役割の方との綿密なコミュニケーションが不可欠。知れば知るほど、社会的意義がある仕事だと思えましたし、営業としての経験も活かせると確信。あとはどれだけ自信を持って堂々とアピールできるかだと思いました。
応募したのは5社でしたが、1社1社についても納得のいくまでとことん調べ尽くしました。会社のホームページはもちろん、会社の評判や業界での位置づけ、社長のインタビュー記事やブログまでも細かくチェック。「なぜ数あるCROの中で、この会社に応募するのか?」を自分で腹落ちするまでじっくり考えました。ちなみに、業界研究、仕事研究、会社研究には約3カ月の時間をかけています。どの会社の面接でも「5年も営業をしていたのに、なぜいまさらCROなのか」を突っ込まれましたが、事前に調べ尽くし考え抜いたおかげで、ひるむことなく堂々と受け答えができました。
今の会社の最終面接の後に、「なぜ入社したいのか。入った後どのように活躍したいのか」をA4判1枚にまとめたアピール書を社長に渡しました。入社後に聞いたのですが、これが最終的な決め手になったようです。会社のこと、仕事のことをここまで調べ尽くし理解しているならば、未経験でも頑張ってくれるのではないかという「未知の魅力」を感じた…とのこと。30歳近くで、未経験であっても、揺るがぬ熱意があれば叶わないものはないのだと感じています。

【CASE2】31歳でソリューション営業→税理士補助スタッフに転職。
簿記の資格と「税理士として独立する」という将来目標をアピール

税理士事務所・税理士補助スタッフ 前田邦明さん(31歳・仮名)

税理士事務所・税理士補助スタッフ
前田邦明さん(31歳・仮名)

■キャリアチェンジのきっかけとは?
新卒でソフトウェア会社に入社し、法人向けソフトウェアの営業を8年間担当。そして今年の9月に税理士事務所に転職しました。
3年前に販売管理・在庫管理ソフトを取り扱うようになったとき、企業に提案する際に経理的な知識が必要だと感じ、簿記の勉強を始めたのがきっかけでした。営業を通じて税金問題で悩みを抱える企業がとても多いと感じ、「このまま勉強を続けて税理士になり、独立して顧客企業の悩みを解消したい」と考えるようになったんです。
まずは簿記2級を取り、その後の約2年間は税理士試験合格のための勉強に注力。営業目標数字を抱え、毎日忙しかったのですが、通勤時間や営業先への行き帰りの電車の中など、移動の間の短い時間を有効に使って勉強しました。平日の夜や休みの日も、ほぼ勉強に充てていましたね。
税理士になるには試験に合格するだけでなく2年間の実務経験が必要になるため、「科目合格を待たずに転職した方がいい」と考え、今年に入って転職活動をスタート。しかし、未経験者を受け入れてくれる税理士事務所はほとんどありませんでした。そこで、税理士事務所の求人動向を調べ、「税理士試験が終わる8月と、その合格発表がある12月は求人数が増える」というトレンドをつかみ、今年の8月に照準を絞り8件に応募。うち4件の面接を受け、今の事務所に採用されました。

■キャリアチェンジを実現するために努力したことは?
31歳で転職を実現できたのは、「税理士として独立したい」という強い目標を持ち、2年以上にわたって勉強を続けてきたことが、実を結んだと思っています。
実は、4年前にも一度転職活動をしたことがありました。そのときは、なんとなく仕事の環境を変えたくなって、営業経験が活かせそうなところに適当に応募し、内定を獲得。「とりあえず行ってみるか」という気分でいました。しかし、リーマンショックで急きょ内定が取り消しに。幸い、前の会社に退職を申し出る前だったのでそのまま勤務し続けることができましたが、そのときに「何の目的もないまま転職しようとしていた」自分の安易さに気付き、「なりたい将来像をしっかり描けたときに、転職活動をしよう」と決意したんです。だから、「税理士になりたい」という目標が生まれた後は、それに向けてわき目も振らずに突き進むことができました。
面接では、8年間の営業経験も前面にアピールしました。ソリューション営業も、税理士の仕事も、「顧客企業のお役に立ちたい」という思いは一緒であり、たくさんの企業の経営課題に触れ、解消につなげてきた経験は、税理士事務所でも必ず活かせる!と自信を持ってアピールしました。
実際に転職を経験してみて思うのですが、30歳になってから、準備もなくいきなり異業種にキャリアチェンジするのは、やはり難易度が高いと感じますね。就きたい仕事があるならば、少しでも早めに勉強やリサーチなどの準備を始めることで、「経験はなくても熱意を買ってもらう」ことが可能になるのではないでしょうか。

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