転職トップ > 転職成功ノウハウ > 転職パーフェクトガイド > 転職活動 基本の「き」 > 「世界市場で評価される営業職」の条件
「世界市場で評価される営業職」の条件
国内経済の先行きが不透明な中、アジアを始めとする海外市場への進出目指す企業が増えている。国内で働く営業職であっても、好む、好まざるに関わらず、「海外」というキーワードを意識せざるを得ない状況になっている。そんな中、いままさに世界をまたに掛け、グローバルに活躍している営業は、どんなスキルを備えているのだろうか?そして実際に「世界で評価される営業」になるには、どんなスキルを磨いていけばいいのだろうか?専門家に話を聞いた。
2011年4月6日

【今の求人市場の動向は?】成長市場を狙ってあらゆる業界が進出を計画。
マーケティング力、課題発見力の高い営業職が、海外市場でも求められる
(株)ジェイエイシーリクルートメント
執行役員 東京営業本部キャリア+ディビジョン担当/菅沼昌史氏
若手営業職を中心にキャリアアドバイスを行う「キャリア+(プラス)ディビジョン」の責任者
「アジアを中心に成長マーケットを取りにいこうとする企業の動きを受け、海外での営業職の採用ニーズは、業界のかたよりなく着実に増えている」というのは、人材紹介会社ジェイエイシーリクルートメントの菅沼氏。ただ、「海外で活躍できる人材」といっても、語学力があるだけでは評価されないという。
「営業に求められる基本的なスキルは、海外でも国内でも同じです。国内で評価されない営業職は、海外でも活躍できない。語学力はアプリケーションの一つに過ぎません」
では、どんなスキルを持った営業職ならば、国内でも海外でも活躍できるのだろうか?
「携わっている業界・手掛けている商材に関する知識に長けているなど『自身の専門領域』を確立していて、現地で自ら情報を収集し、自分の判断で決断できる人材です。よく『営業職はマーケティング人であれ』といいますが、自らの力で顧客の課題を見つけ出し、その課題を解決するための戦略を練ることができる人は、どんな企業のどんな場面においても歓迎されます。加えて、特に海外では速い意思決定が求められる場面が多いので、指示待ちの人は通用しません。自分の意見をしっかり持ち、誰に対しても臆することのないタフなネゴシエーション力が求められます」
海外での営業職の求人案件は、今後どう変化していくのだろうか?
「初進出企業の現地拠点立ち上げ要員は、引き続きニーズがあるでしょう。それがひと段落した後は、現地採用が増えてくるため、現地のスタッフを取りまとめる営業マネージャー層の採用が増えそうです。また、現地クライアントや、現地の生産拠点との交渉など、日本に居ながらにして世界とコミュニケーションを取る営業職のニーズが増えるとみられます」
【世界で高く評価される営業になるには?】現地で人脈を築き、
現地のニーズを知ってローカライズできる力が求められる
(株)日本総合研究所
総合研究部門 経営戦略クラスター 主任研究員/徳岡 拓氏
企業の経営戦略、海外事業戦略、CRMなどのコンサルティングを担当
「今も、これからも、求められるのは、国境にこだわらない視野でビジネスや人をつなぐことができる『クロスボーダー型』の人材」というのは、企業の海外事業戦略についてのコンサルティングを手掛ける、日本総合研究所の徳岡氏。
「営業というと、単に『売る』というイメージが強いですが、これからは『つなぐ』という意識を持つことが重要。海外進出の際は、日本の商品やサービスを現地で売ることよりも、まず国内で確立しているバリューチェーン(価値連鎖:開発、調達、生産、物流、販売などの事業の一連の流れ)を、現地に合わせてつなぎ直すことが先決です」
徳岡氏が提案する、「海外で力を発揮できる人材になるための3ステップ」を、以下に説明しよう。「企業の海外進出支援の際、実際に営業トレーニングに使っている内容です。海外ビジネスを手掛けることになった人はもちろん、日本国内にいながらでもこの3つを心がければ、営業としてのスキルUPにつながり、グローバルに活躍するための筋力もつきます」。
【人脈構築スキル】とにかく人に話しかけ、多方面で知り合いを増やす
海外では何のリソースもないし、自分以外の社員はほとんどいない環境。だからまずは、どんなジャンルのものでもいいからコネクションを作ることが大切です。仕事関係の人脈である必要はありません。まずは趣味の仲間でも何でもいいから、とにかく知り合いを作っていくことです。そうすれば現地の考え方や商習慣などを学べますし、現地でのビジネスのヒントがもらえることも少なくありません。そして、何の脈絡もない関係性からビジネスが生まれることだってあるのです。
【メリット提示スキル】相手へのメリットを示して、関係性を築く
知り合いが増えてきたら、次はそれぞれの人との関係性を固めましょう。そのためには、あなた自身のレピテーション(評判)を上げることが重要ですが、外国においてレピテーションを上げるのに有効なのが、「自分と付き合うことで相手が得られるメリット」を明確に示すことです。
日本では、阿吽の呼吸でビジネスが成り立ったり、会社の規模や格で信頼を得られることもありますが、海外、特にアジア地区のビジネスパーソンには全く通用しません。「私と付き合うことであなたの人脈が増える」「顧客が増える」「スキルアップにつながる」…など、何らかのメリットを具体的に伝えることがあなたのレピテーションUPにつながり、人脈がさらに強固になります。
【現地の目で自社商品を見る力】「グローカル」の視点を意識する
日本の商品、サービスをそのままの形で海外に持ち込んでも、普及拡大させるのは至難の業です。商品やサービスを現地に根付かせるには、「グローバルな統一規格は守りつつも、一部分をローカルに合わせること」が必要。これをグローカル化と呼び、それを遂行するのも営業職の大切な役割です。
グローカルに考えるためには、前述のSTEP1、2で築いた人脈がモノを言います。そして、「本社が作った規格を、疑いの目で見てみること」が意外に有効です。少し引いた眼で自社商品・サービスを見ることで、バリューチェーンの中のどこを変える(ローカルに合わせる)べきかが見えてきます。例えば、販売チャネルを変えるべきなのか、売り方を変えるべきなのか、商品そのものの形態を変えるほうが有効なのか…など。
例えば、日用品雑貨や食品メーカーがアジア市場で商品を小袋に分けて販売し、ヒットしたケースがあります。このような場合、流通・生産にも大きな影響を与える仕様変更となりますが、現地の声を拾った営業が粘り強く本社に掛け合うことで、実現につながることが往々にしてあります。
この事例のように、「こう変更したほうがいい」と思ったら、商品の仕様や流通形態の変更を本社に懸け合うぐらいの気概も、海外では求められます。現地のことを、社内で一番理解しているのは、その現地で働く営業担当者以外にありません。自らの裁量で新たな商品を作り、新たなマーケットを生み出すこともできる、醍醐味の大きな仕事だと思います。
- EDIT&WRITING
- 伊藤理子
- PHOTO
- 平山諭/マツダナオキ