明確な成果が見えない、評価基準が不透明…

人事部で働く20代100人の「仕事の悩み、キャリアの不安」

人事の仕事は細分化されていて多岐にわたるうえ、成果が数字で表しにくい。特に20代の若手人事担当者は、「自分の仕事の成果が見えず、スキルアップしているのかどうか不安」「正当に評価されていないと感じる」などの不安、不満を抱え、今後のキャリアの方向性について悩んでいる人が多いようだ。今回は、20代の人事経験者100人にアンケートを実施。彼らが今、人事の仕事にどう向かい、どんな思いを抱いているのかを聞いた。

※アンケート実施時期:2010年2月28日〜3月2日 協力:メディアパーク

2011年3月9日

【100人アンケートから見えてきた若手人事の本音】
「20代・人事職」は、誰もが仕事や将来の悩みを抱えている!

1000人以下の企業で、他業務も兼務している人が多数

勤務先企業規模と、人事専任・兼任グラフ

▲企業規模が小さいため、人事以外の業務も任されているという人が多かった。兼任している業務は、総務が最も多く66%、以下、経理・財務32%、営業事務29%、法務21%、広報・IR16%と続く。

担当領域は「採用業務」が5割以上と圧倒的に多い

担当する人事業務グラフ

▲若手が初めに任されるケースが多い「採用」業務が半数以上。教育・育成、労務、人事管理に関わっている人も多く、人事の中で業務の幅が広がりつつある人も少なくないようだ。20代ですでに国際人事に関わっている人もいた。

「成果が見えない」から「アピールできない」と悩む人が多い

人事業務で不安に感じることグラフ

「仕事に不安や不満を感じていない」という人はおらず、皆何らかの不安、不満を抱えていることがわかった。トップは「仕事の成果が見えない」ことに関する悩み。そのほか、「自身の働きが正当に評価されていない」「調整業務が多い」などの悩み、不満が上位に挙がった。
「なかなか成果を具現化しにくい業務なので、目標設定に困る」(流通・小売)「人事業務の成果というのがよくわからない。やりがいと成果の違いは何なのかいまいちはっきりしない」(メーカー/電気・電子・機械系)「教育担当なので、研修をやっても即時効果が表れるものは少ない。たいていは2、3年後に効果が見えてくるため、なかなか自信を持って行動できない」(IT・通信)などというように、成果が見えにくく、数字でも示しづらい業務だけに、スキルが自分の中に蓄積されているのか不安という声が多かった。
また、「正解が存在しない業務だからこそ不安」(商社/総合商社・素材・医薬品他)「会社にどういった利益的貢献ができているのか、たまにわからなくなる」(その他業種)というように、正解がない業務だけに自分がやっていることは正しいのだろうか?もっといい方法があるのではないか?という思いが付きまとう…という悩みや、「実績が見えにくいから批判の対象となりがち」(不動産)と、業務の影響が全社に及ぶからこその不満もあった。

将来も「人事を続けたい」が45%、「人事以外も検討」が49%と拮抗

今後のキャリアイメージグラフ

▲人事の専門家、人事マネージャーなど「将来も何らかの形で人事業務に関わっていきたい」とした人が45%であるのに対し、「人事以外の職種も検討している」人が49%と上回った。キャリアの方向性に悩む人の多さが浮き彫りになった。

「人事の一部分しか経験していない」「どんなスキルが身に付いているのかわからない」という不安の声が多い

キャリアについての不安グラフ

今後のキャリアイメージを聞いたところ、「何らかの形で人事業務に関わっていきたい」とした人が45%であるのに対し、「人事以外の職種も検討している」人が49%に上った。
「人事の一部分しか経験していないし、経理のように業務が知識として身に付いたり資格に直結しないため、スキルアップしているのか見えにくい。人事以外の職種も経験して自分の道を見つけたい」(流通・小売)「人事が中心となってリーダーシップを取るというよりも、各部との調整に精力を使わねばならないのがつらい」(サービス)「業務のアウトソーシング化が進み、人員が削減されているので別の職種に転身を考えたいが、どういったキャリアステップを踏んでいけばいいのかわからない」(IT・通信)などの声が聞かれた。
また、「今後も人事業務に関わりたい」という人の中でも、「兼務している総務業務の割合が高く、人事業務の専門性が磨けないのが不安」(メーカー/電気・電子・機械系)「成長期にある会社なので、自分のスキルアップを図る間もない」(サービス)など、人事としてのスキルアップ方法に悩む声が多く聞かれた。

評価、スキルアップ方法、キャリアの方向性…悩み多き20代人事職。そんな時期を乗り越えて「人事を極めた」先輩たちは、このような悩みをどのように解消して今に至るのだろうか?人事歴16年の人事責任者、人事などを経て起業したヘッドハンターの、先輩人事2人にアドバイスをもらった。

【人材系一筋16年】ライフネット生命保険・採用責任者のアドバイス
「自分なりの軸を持ち、自己評価することでセルフモチベーションを高めよう」

ライフネット生命保険(株) 曽和利光氏

ライフネット生命保険株式会社
曽和利光氏

人事は褒められ、評価される仕事ではない

そもそも、人事は「褒められたい、評価されたい」と思う人には向いていません。短期間で成果が見える業務ではないですし、採用にしても制度改革にしても人事異動にしても、「社員誰もが納得できる」ものではないからです。そのため、常に「理想の組織とは?」「理想の人材とは?」を考えて自分なりの軸を持ち、自分で自分を評価できる「セルフモチベーション型」の人が向いているでしょう。
人事の業務は、組織全体、全社員とかかわります。そのため、いろいろな不満や批判に触れることも多いでしょう。そんな現場の意見を一つひとつ聞こうとして八方美人になってしまっては、全体最適化はできません。意見はあくまで情報の一つに留め、冷静に判断して自分の信念を貫く意志と覚悟が必要です。

20代のうちに「人を見立てる力」を磨いておこう

採用や教育などの手法について経験を積むことは大切ですが、あくまで一つの手段にすぎません。どの業務においても、「この人は何に悩んでいるのか」「この組織の課題、問題点はどこにあるのか」と客観的に考えて、「人や組織を見立てる力」をコアスキルとして磨くことをお勧めします。そうすれば、誰かの批判や不満などといった表面的な事柄にいちいち過剰に反応しなくなりますし、「こんな課題があるなら、採用面でこう解決していこう」と的確な「手段」に落とし込むことができます。可能であれば、心理学を少し勉強するといい。「人が行動する時の心理的メカニズム」を理解しておくと、スキルアップが早まります。
この「人や組織を見立てる力」は、人事以外のあらゆる職種に転用が可能。例えば営業職なら、顧客の言葉の裏にある本当のニーズや課題は何かを探り、的確な提案につなげることができますし、マーケティングや商品企画ならば、新商品のターゲットを分析していく過程でフルにスキルを活かせます。すべての仕事は、「人」が基盤となります。「見立て力」はどんな場面でも活かせるスキルです。

人も組織も急には変わらない。性急に結果を求めず長期スパンで考える

かくいう私も、紆余曲折はありました。入社以来、人材系一筋で今まで来ましたが、20代の頃は「なんでこんな制度を作ったんだ」などと批判を受けることもあり、「私のやったことは間違っているのでは」と悩んだこともあります。でも、人や組織は「慣性」が働くので、制度を変えてもすぐに人、組織までが変わることはないのです。性急に結果を求めず、周りの声にも惑わされず、自分の信念に自信を持つことが何より大切。「いつかは結果が出るし、皆にもこれでよかった、と思ってもらえる」とじっくり長期スパンでとらえることで、モチベーションが維持できるはずですよ。

曽和利光氏
ライフネット生命保険株式会社 総務部長
1995年情報サービス会社に入社し、人事部に配属。採用、教育、新人事制度の構築、組織人事コンサルティングなど幅広い業務に携わる。2009年9月にライフネット生命保険に転職し、管理部門全体を統括する。目標は「個人の能力、ポテンシャルの最大化を図る触媒になる」こと。「まずは自社で効果を挙げて『いい会社の事例』を作り、徐々に社会全体に影響を与えていけたら」。

【人事と営業を経てヘッドハンターに】佐藤人材・サーチ代表のアドバイス
「人事は30代以降が俄然面白い。20代は経験値を上げる基礎固めの時期」

佐藤人材・サーチ(株) 佐藤文男氏

佐藤文男氏
佐藤人材・サーチ株式会社

人事は経験の長さ、深さがモノを言う業務。20代が不安に思うのは当たり前

人事の仕事は、新人から経営トップまで全従業員と関わり、組織全体を俯瞰で見渡さなければならない業務。「人」が絡む仕事だけに、人生経験に裏打ちされる部分も多く、知識だけではフォローし切れないことが多い。20代がいくら頑張って理解しようとしても、例えば40代50代向けの管理職研修の内容は、実際にはなかなか理解し難いものですよね。
人事の仕事の特殊性ともいえますが、「経験を積み、年齢を経ないと、できないこと」がどうしてもあるものです。だから、20代が「スキルを積んでいるイメージがない」「成果が見えない」と不安に思うのは、実はしごく当たり前のこと。今は経験を積む修行の時期だと捉え、焦らずコツコツ、「人事としての場数」を増やしていくことです。30代後半以降で一気に充実感が加速してくる仕事だと思いますよ。

社内のあらゆる部署に出入りし、社内人脈を築いておこう

社内のあらゆる部署、あらゆるスタッフと関わるというのは、人事の特権ともいえます。20代の今のうちに、いろいろな部署に出入りして顔を広げ、人脈を築いておくといいでしょう。年齢が高くなればなるほど「人事がうちの部署に来ている…なにかあるのだろうか」とヘンに勘繰られて出入りしにくくなりますから、若手のうちがチャンスです。いろいろな部署の人と交流を持つことで人事以外の視点を得られ、現場の課題もつかめますし、社内人脈はどんな人事業務においても必ずプラスに働きます。できれば各部署のキーパーソンと関係性を作っておくと、困った時に頼りになり、業務が円滑に進むようになるでしょう。

20代のうちに、営業など他部署を経験すると経験に厚みが出る

また、20代のうちに一度は、営業などほかの部署を経験することをお勧めします。外から人事部門を見ると、社内に置いての位置づけがわかり、人事に何が求められているのか客観的に判断することができます。なかでも、「売り上げを稼いでくる営業職」を経験すれば、会社の収益構造がつかめ、視野も経験の幅もぐんと広がります。
私は新卒で人事を務めたのち、営業を3年経験。その後、転職してまた人事、営業(マーケティング)を務めました。人事以外の仕事を経験したことで視野が広がりましたし、過去に培ったすべての実務経験が、現在のヘッドハンターとしての働きに活きていると感じます。

佐藤文男氏
佐藤人材・サーチ株式会社 代表取締役社長
総合商社、外資系証券、メーカーといった異業種で人事および営業(マーケティング)を経験し、97年に人材サーチ業界へ。2003年に起業し、ヘッドハンティングを中心に人材コンサルタントとして講演やセミナー、執筆なども手掛ける。近著に『転職のバイブル2012年版』(経済界)。人生の目標は、「世の中の人がよりよい転職を実現するために、生涯現役で働き続けること」。

人事としての経験が活かせる採用情報

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