スポーツファンに
新たな視点を提案する

ITコンサルティングのSEからデータ分析を行なうアナリストへ。
スポーツ業界で働くことの楽しさについて柳鳥さんに語ってもらった。

——B.LEAGUEや各チーム向けのデータ分析をされているということですが、具体的にはどのような業務を行なっているのですか。

「いわゆるB to Bと言われるような、チーム強化向けのデータ分析を中心に行なっていますが、最近はファンの方々が試合観戦をもっと楽しめるようになるためのデータ企画なども増えてきました。

たとえば、B.LEAGUE FINAL 2017-18で、試合前に行なわれた両チームの隠れたキープレーヤーを紹介する企画に携わり、企画内容の検討やデータ提供を行ないました」

——それはどういったデータだったのでしょうか。

「ファイナルまで進出してくるチームですから、両チームのファンの方も、メインになるような選手については改めて紹介するまでもなく、皆さんよくご存じだろうと思います。それ以外の選手で、密かに活躍している選手のスタッツを紹介したいという企画でした。

具体的に言うと、千葉ジェッツには石井講祐選手という、優れた3ポイントシューターがいます。彼の3ポイント周りのスタッツを分析していったところ、『レギュラーシーズンで石井選手が3ポイントシュートを3本以上決めた試合は、8戦負けなし』というデータがあぶり出されたんですね。これほどのデータはリーグを見回しても他の選手にはなく、『不敗神話』として会場で試合前に紹介させていただいたところ、ファンの方々も『おおーっ!』と盛り上がってくださいました。

他チームの皆さんからも、ぜひこのような企画を、ということで、今シーズンは様々な企画や分析データの提供をしております」

——それは試合の見方も変わりますし、ファンの方々も喜びますね。

「はい。ただ、私は2018年4月にこの会社に入社して、5月末にファイナルが開催されました。弊社のバスケットボールのアナリストは私ひとりで、また正直に言いますと当初は野球のアナリスト志望だったものですから、最初は大変でした(笑)。チャンピオンシップは8チームが勝ち上がりでどんどん試合をしていきますから、その進展を見ながら何パターンも企画やデータのパターンを考えていって……当日の会場で盛り上がるファンの方々の様子を目の当たりにした時は、本当に嬉しかったですね」

好きなことを仕事にするのが一番のモチベーション。

好きなことを仕事にするのが一番のモチベーション。

——わずか2カ月での結果だったわけですね。そもそも、前職はITコンサルティングの企業に勤めていらっしゃったんですよね。

「はい。2009年に入社して、2018年春の転職まで、そちらで勤めていました。コンサルティングと並行してシステムエンジニアリングも行なっている会社で、私はSE(システムエンジニア)として、某大手企業の社内ポータルにかかわり、システムの保守や運用を行なっていました」

——スポーツは昔からお好きだったのでしょうか。

「小学校の頃から野球をしていまして、野球に限らずスポーツ全般を観るのは好きでした。大学時代にインターンでプログラミングを経験しまして、それが面白かったものですから、新卒時にはSEになりました。

そこで6〜7年が経ち、ある程度経験を積んで、業務内容もひと通り経験した頃、ふと見かけたスポーツ番組のデータ提供で、データスタジアムというクレジットを目にしたのです。それまでも、アナリストというレベルではないですが、スポーツをデータから見るのは好きで、そうした職種もあるのだろうということは薄々わかってはいたのですが、『これは面白そうだ』と思いまして。自分の好きなことを仕事にするのはどうなんだろう、という迷いもありましたが、業務そのものに熱中できることは、仕事のモチベーションとしてこれ以上のものはないだろう、と。それが決意の瞬間でしたね。

バスケットボールに関しては、その頃にNBAの試合も熱中して観るようになって、好きなチームの試合映像はすべて観戦するような日々を送っていました。いきなりバスケットボールのアナリストになり、細かなルールや戦術は改めて必死に勉強しましたし、自分が面白いと思うデータとファンの方々が興味を持ってくださるデータが同じものなのか不安もありましたが、先ほどのファイナルのデータ提供で会場が盛り上がっていたのを見て、自信になりました」

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