転職経験者の体験談に学ぶ、面接で失敗しないためのポイント
面接では、自分の経験や実績をアピールしようと思うあまり、企業視点に欠けた受け答えをして不採用になってしまうことも少なくありません。
面接での失敗体験談をもとに、どんな対応・対策が必要なのか、人事組織コンサルタントの粟野友樹さんが解説します。
面接でよくある失敗の体験談
面接でよくある失敗の体験談には、主に以下の3つのパターンがあります。
体験談① 志望動機が上手く伝えられなかった(Sさん/大手メーカー→ITベンチャーの営業事務志望/20代/女性)
安定した大手メーカーの営業事務だったSさん。ベンチャー企業で働くことに憧れ、営業事務に応募したものの、「なぜ他業界から、ITベンチャーを選んだのか」「なぜ、うちの会社なのか」を面接で伝えられずに不採用に…。
勢いのあるベンチャー企業で働きたい、営業事務の経験を活かしたいという“自分視点”の思いは面接で伝えられましたが、転職を希望する企業で具体的にどう貢献できるかという“企業視点”がありませんでした。
解説:
営業事務志望ということなので、その企業の商品やお客様の特徴、営業体制についてよく調べ、その組織の中で自分の経験がどう活きるかを話すべきでした。面接でわからない点などあればきちんと質問をして、コミュニケ―ションを深めてゆく姿勢も大切です。
体験談② 面接官に刺さる自己PRができなかった(Mさん/派遣会社のエンジニア→ソフトウェア会社のエンジニア志望/20代/男性)
技術者派遣の会社で働くMさん。自社でサービスを持つ会社で、エンジニアとしてスキルアップしたいと転職活動をしました。
技術者派遣では、短期間で複数のプロジェクトを担当するため、開発経験やスキルの幅には自信がありました。そのため、面接でも経験の豊富さをアピールしましたが、応募先企業が求めていたスキルや働き方とのミスマッチがあり不採用になりました。
解説:
企業が求める具体的なスキル(プログラミング言語や開発経験)をきちんと調べ、その技術に特化した経験を伝えるなど、企業に合ったアピールをすべきでした。
自社サービスを持つ会社の場合、一つの案件にじっくり取り組む働き方を求めているケースもあります。複数案件を短期間で経験したことをアピールするよりも、そのうちの一つの、Mさんがとくに力を入れて取り組んだプロジェクトについて深堀りして話した方が、面接官の心に刺さったかもしれません。
体験談③ 面接官に一方的に話しすぎた(Nさん/メーカーの営業→メーカーの営業志望/30代/男性)
同業界・同職種の転職を考えていたNさん。これまでの経験や実績をアピールしようと意気込むあまり、面接が始まった途端に、自己PRを一気に話し始めてしまいました。企業側には、「上手くコミュニケーションが取れない」、「営業先でも、お客様に対して一方的に商品をアピールするのではないか」と判断され、不採用となりました。
解説:
面接は「自分のことだけをアピールする場」ではありません。面接は、企業側とのコミュニケーションの場。お互いに知りたいことを質問し合いながら理解を深めていく、という認識が大切です。
営業職の方は、普段から話すことに慣れているからこそ、一方的なプレゼンテーションのように話し始める方も少なくありません。事前に伝えたいことは簡潔にまとめ、企業側に質問したいことを整理しておくといいでしょう。
面接で聞かれて困った質問と解説
面接では、想定外の質問をされて、答えに窮してしまうこともあるでしょう。次のような質問をされたら、どう答えるべきなのか…。具体的なポイントを解説します。
質問「あなたは入社したら成果を出せますか?」
解説:
仕事をどう評価され、成果につながるかは、入社してみなければわかりません。
そのため、「成果を出せます!」と即答するよりも、「成果を出すための努力、行動を惜しみません」「これまでも新しいプロジェクトでは、こんなアクションを起こしました」と、取り組む姿勢や熱意、具体的に行ったアクションなどをアピールするといいでしょう。
企業側が問う「成果を出す」が、何を指しているのかわからないときは、その会社では具体的にどんな行動が成果につながっているのかを質問してみるといいでしょう。そうやって、お互いに共通認識を持てるようにすり合わせていくことで、建設的なコミュニケーションにつながります。
質問「自身の弱みは何ですか?」
解説:
これは、自己分析がどれだけできているかを知りたいとき、あるいは、求職者の志向性やタイプを知りたいときに、聞かれやすい質問の一つです。
面接で弱みを答えるときは、強みにも言い換えられる言葉を選び、弱みを改善するために努力している内容をプラスして話すといいでしょう。
例えば、優柔不断な性格が弱みだとしたら、「物事を判断する際に、慎重になりすぎる傾向がある」と表現してみてはいかがでしょうか。
慎重さは、「物事を丁寧に検証・分析する力がある」とも考えられ、仕事では役立つシーンも多いです。弱みでありながら状況によっては強みになる、そんな要素を伝えられるといいでしょう。
質問「最近新たにリリースした〇〇(製品)の特徴を知っていますか?」
解説:
面接で製品の詳細を聞かれて困ったとき、大事なのは、わからないことに関しては「勉強不足で申し訳ありません」と素直に認めること。「○○の点についてはよくわからないので、教えていただけますか」と、謙虚に逆質問するなどして、企業理解を深めましょう。
面接官が製品の詳細の質問をする理由としては、「自社に対する理解度、志望度を見たい」という意図が挙げられます。しかし、製品のことをよく知らないのに、知っている振りをして答えても、「本当はよくわかっていないんだな…」と面接官にはすぐに見抜かれてしまうもの。
嘘で取り繕う姿勢は、社会人としての信用度を下げることにもつながり、「仕事のトラブルに直面したときも、嘘で誤魔化そうとする人なのかもしれない」と思われる可能性さえあります。わからない点は正直に伝えて、企業をもっと知ろうとする前向きな姿勢をアピールしましょう。
質問「当社代表の経歴についてはご存知いただけていると思いますが」と、経営者の経歴について話が展開した際、リサーチ不足でついていけなかった場合
解説:
企業によっては、企業理念や創業者の思いを大事にするがゆえに、経営者の経歴や考えに対する認識・理解を求職者に求める面接官もいます。
面接官が「当社の代表は〇〇出身なので、こういった領域に人脈や知見があり、この事業を展開しています」というようなことを話したとき、求職者が「なるほど。〇〇出身だったんですね」というように、その時初めて知ったというようなリアクションをしてしまうと、面接官には「この人は、コーポレートサイトに載っている情報を何も調べてないんだ」と思われてしまうケースもあります。
これが人事や現場マネージャーとの面接であれば、「勉強不足で申し訳ありません」と素直に知らないことを認めて、教えてもらうのもいいでしょう。
ただし、社長面接の場で、本人を目の前にしてリサーチ不足が伝われば、相手に対して失礼であり、志望度が低いと思われてしまう可能性も否めません。
経営者の経歴に関しては、情報がほぼ開示されていないケースもありますが、企業側に不勉強だと思われないためにも、コーポレートサイトに載っている情報は最低限、目を通しておくべきでしょう。
質問「併願先が、面接で話されたことと一致していませんが、なぜですか?」
解説:
面接の際、「ほかにどこを受けていますか?」と、併願先の企業について質問されるケースもあるでしょう。
さらに「その意図は何なのか」、と鋭く追及されるケースもあるので、併願先の企業については、すべてを言う必要はなく、細かい社名も伏せておくことをおすすめします。
もし、複数の業界を受けている場合は、転職理由や志望動機に合った会社のみを選んで伝えるのも一つの方法です。
面接で失敗しないためのポイントとアドバイス
面接で失敗しないポイントとしては、以下の3つが挙げられます。
ポイント① 事前準備をしっかり行おう
社風やトップの考え、求める人物像を把握しておくことで、なぜその会社を志望するのかを明確に伝えられます。
ポイント② 自身の強み・弱みはしっかりと分析しておこう
求められる仕事や役割によって、強みだと思っていたことは弱みになり、弱みだと思っていたことが強みとして力を発揮することもあります。
弱みを言語化する際は、ポジティブな表現にどう転換できるかも合わせて考えましょう。「自分には、集中しすぎて周りが見えなくなるという弱みがある。けれど、短期間で成果を求められる少人数のプロジェクトでは強みにもなる」など、性格特性を両面から見る視点が大切です。
また、弱みを伝える際は、その対処法・改善に向けたアクションも合わせて伝えると好印象です。
ポイント③ 想定外の質問は、逆質問するのもアリ
想定外の質問で、わからないことや困ったことがあれば、失礼のないように面接官に逆質問して解消しましょう。疑問点・不明点があるのに曖昧な答え方をしたり、知っている振りをして誤魔化そうとしたりするのではなく、きちんと質問に向き合う姿勢を見せることが大事です。
まとめ
面接では、相手と丁寧にコミュニケーションを取ろうとする姿勢があれば、好印象にもつながります。転職希望先の面接に自信をもって臨むためにも、企業に関する情報収集をしっかりと行い、自己分析による自分の強み・弱みを事前に整理しておきましょう。
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