上から目線に要注意!「催促メール」の書き方
「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」等の文章力・コミュニケーション力向上をテーマに執筆・講演活動を行う山口拓朗さん。そんな山口さんに、今回は「催促メールの書き方」について解説していただきます。
高圧的な催促メールを送っていませんか?
メールで何かしらの催促をするときに、つい上から目線の高圧的な文章を書いてしまうことはありませんか? あるいは、明らかに冷たい文章を書いてしまうことはありませんか?もしも、あなたに思い当たるところがあるなら、注意が必要です。
記入をお願いしていた◯◯システム利用者アンケートが、まだ届いておりません。至急お送りください。
この文面を「冷たい」と感じる人もいるでしょう。約束の期日を過ぎての催促ですので、厳しい言葉が必要なときもあるかもしれません。しかし、相手との関係性を大事にしたいのであれば、催促の「強さ」や「言い方」には細心の注意を払わなければいけません。
相手はうっかり忘れていたのかもしれません。あるいは、何かしらの手違いや不具合があって、アンケート記入済みのメールが、こちらに届かなかったのかもしれません。もっと言えば、そもそもこちらが送った「アンケート記入のお願いメール」が相手に届いていなかった、ということも考えられます。
強めの(冷たい)催促をしたあとに、こちらの過失だったことが判明したらどうなるでしょうか。バツが悪くなる……で済めば、まだマシなほうでしょう。相手の気分を損ねれば、信頼関係が崩れてしまうかもしれません。
催促メールでは「逃げ道」をふさがない
では、先ほどの文章(原文A)を改善してみましょう。
先週(9日)、◯◯システム利用者アンケートを送らせていただきました。お手元に届いておりますでしょうか。<確認>昨日(17日)の18時に締め切りを設定しておりましたが、今日現在、藤井様からの返信を確認できておりません。<暗に催促>
何かしらの手違いで、藤井様にアンケートが届いていなかった可能性もあるかと思い、ご連絡を差し上げた次第です。<配慮>
念のため、本メールにも、お送りしたものと同じアンケートを添付しておきます。<配慮+暗に催促>
ご多忙のところ、誠に恐れ入りますが、ご確認いただければ幸いです。<配慮>
どうぞよろしくお願い申し上げます。
いちど目の催促では、この改善文のように、“こちらのメールが届いているかどうかの確認”という体裁を取るのが無難です(暗に催促であることは伝わります)。
大事なのは、「何かしらの手違いで〜」のような配慮を交えて、相手の「逃げ道」を用意してあげることです。感情任せに高圧的な催促をしてしまうと、相手の自己防衛本能が発動し「どうしてあなたの言う通りにしなければいけないの?」と態度を硬化させてしまう恐れがあります。
逆に言えば、「逃げ道」が用意されていれば、相手も素直に「申し訳ございません。すっかり失念しておりました」と、すぐに記入済みのアンケートを送ってくれるかもしれません。相手に何かしらの行動を望むときは、相手の立場になって、どうしたら相手が行動しやすいかを考えましょう。
◯ ご回答いただければ幸いです。【お願い調】
◯ ご対応いただければ幸いです。【お願い調】
なお、催促メールでは、つい言葉がきつくなりがちです。仮に相手に過失があったとしても、まずは「お願い調」で書きましょう。
商品が期日までに届かなかった……さて、どう催促する?
もうひとつ別のシチュエーションで見てみましょう。
本日の正午までにいただくお約束になっていた商品Aがまだ届いておりません。
困っておりますので、至急お送り願います。
“取り付く島もない”メールです。「至急お送り願います」という結びは、完全に「命令調」です。
もしかしたら、相手には、やむを得ない事情があったのかもしれません。あるいは、相手に非がない可能性も0%ではないでしょう。あとになって、こちらに非があったことが判明した場合(こちらが納期を誤って伝えていた等)、どう弁明するつもりでしょうか。
注文していた商品Aの件でご連絡差しあげました。<確認>本日の正午までにいただくお約束になっていましたが、現時点でまだ手元に届いておりません。<暗に催促>
何か問題が発生したのではないかと心配しております。<配慮>
ご多忙のところ誠に恐れいりますが、ご確認いただければ幸いです。<配慮>
どうぞよろしくお願い申し上げます。
相手を責めるニュアンスを排した文面です。とくに「何か問題が発生したのではないかと心配しております」という一文には、相手への配慮が感じられます。
もしも相手が商品の発送手続きを忘れていたようであれば、催促メールを受信するやいなや「申し訳ございません。今からすぐにバイク便でお送りいたします」と、お詫びのメール(電話)をしてくるでしょう。
一方で、原文Bのような高圧的な催促を受けた場合、相手がカチンときて、お詫びどころか、いい言い訳めいたメール(電話)や、こちらや第三者に責任転嫁したメール(電話)をしてくるかもしれません。
常習犯への対応とリマインドメールの活用
もちろん、どのような文面にするかは、相手との関係性やシチュエーションにもよります。つまりはケース・バイ・ケースです。
- 相手が“締め切り破りの常習犯”であるケース
- 一度催促したにもかかわらず、再び期日までに届かないケース
このように“誠意”や“礼儀”を欠いたケースでは、確固たる催促・対応をしていきましょう。言うまでもありませんが、メールでは、相手が受信するまでにタイムラグが生じがちです。一刻を争うようなときは、メールではなく、電話をかけることも検討しましょう。
なお、是が非でも期日を厳守してもらいたいときは、のちのち催促メールを送らなくて済むよう、締め切り数日前にリマインドメール(確認のメール)を送ることをお勧めします。メールに誤解やミスはつきものです。それゆえ、自分の身は自分で守るしかありません。相手を信用しすぎて自分が損をしないよう十分に注意しましょう。
著者:山口拓朗
『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』著者。
伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)他がある。
山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/
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