転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 12年勤めた大手企業を退職、初の転職活動に臨むが一次面接落ちが続く
(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2014年12月3日
田嶋康史さん |
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大学卒業後、大手IT関連会社に就職。1年間営業を経験した後、顧客企業向けサポートデスクに異動し、以来11年間ずっと同業務を務める。この9月に退職し、初の転職活動に臨んでいるが、書類はそこそこ通るものの一次面接ですべて落ちてしまう。 | |
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新卒で入社したIT関連会社で、サポートデスクとして11年間経験を積んできました。9月に退職し、初めての転職活動をしています。同じサポートデスクの求人を探していますが、書類選考は3割の確率で通過するものの、一次面接が突破できません。
書類選考3割通過とは、なかなか高い数字ですね。でも一次ですべて落ちてしまうと。ご自身では、何が原因だと分析されていますか?
生真面目で、かつ口ベタなタイプなので、自分の想いが面接でうまく伝わっていないのでは…と感じています。会話のキャッチボールも上手ではないので、コミュニケーション力に欠けると思われているのかも。サポートデスクの仕事においては、口下手であっても相手の要望をくみ取ることに力を注ぎ、十分対応できていると思うのですが…。
なるほど。でも口ベタでも、緊張していても、「心からの想い」は必ず相手に伝わりますよ。…では私からいくつか質問させてください。田嶋さんは今回なぜ、転職を志したのですか?9月までお勤めだった会社は、世間に名の知れた大手企業ですよね?
もっと顧客企業に寄り添った、クオリティーの高いサポートがしたいと思ったからです。前職はおっしゃる通り大手企業ですが、だからこそ、サポートデスクの仕事もガッチリ規定に縛られていて、顧客のためにできることが限られているんです。そういう制限やワクがない企業で働いてみたいと思ったのが、転職の理由です。
お気持ちはよくわかりました。では、田嶋さんご自身は、前職ではどんなことにこだわって仕事をしてきたのか、教えてください。
こだわり、ですか…。前職で提供していたのはネットワークサービスで、24時間絶対に止めてはいけないものです。前職のクライアントは、「名の知れた大手だから信頼性がある」という理由で選んでくれたのだと思うので、基本的には「絶対にネットワークを止めない」、トラブルが起こった時は「1秒でも早くトラブルを収める」ことを念頭に置いていました。
「絶対に止めない」ために、田嶋さんはどんな工夫をしたのですか?
前職にはサポートデスクが始まって以来起こったトラブルのすべての記録が蓄積されています。過去の事例を見て、顧客企業ごとに「起こり得るトラブル」を事前に予測し、トラブルを起こさないように手を打っています。
次の職場では「もっと顧客企業に寄り添ったクオリティーの高いサポートがしたい」とのことですが、前職では田嶋さんはどのように顧客第一主義を実現してこられたのですか?
顧客企業ごとにKPIを設定し、それを高い水準で実現すべくチームで意思統一を図りながら行動しました。KPIの基準は社内基準があるのですが、顧客からの要望も加味しつつプロジェクトごとに新たなKPIを策定して、チームメンバー全員に共有し、皆がそれに沿って行動していました。
なるほど…面接で落ちてしまっている理由が、なんとなく見えてきました。
え!?何が原因なのでしょう?
先ほど、私は「田嶋さんならでは」の工夫やこだわりをうかがいました。でも、返ってきた言葉の中には「田嶋さんならでは」のものはなく、組織の機能や役割を聞かされ続けたという印象です。単に前職のサポートデスクのPRをされただけのような。
そんなつもりは、なかったのですが…。
「過去のトラブル事例に則って、対策を講じる」「顧客の要望は加味しつつ、社内基準をもとにKPIを設定する」などの言葉に、田嶋さんの工夫やこだわりは感じられません。それどころか、「大手企業ならではの規定やワクが嫌だというけれど、どっぷりそれに浸かってきているじゃないか」という印象を持ってしまいます。こういう姿勢が、面接での言葉の端々から伝わってしまったことが、一次面接落ちの原因ではないかな。ましてや、応募しているのは、基準やワクに捉われずに顧客第一主義を貫こうとしている企業なのですよね?「大手で経験を積んできたかもしれないけれど、柔軟性のある対応はできなさそうだ」「うちのような熱い志を持った企業には合わない」と判断されているのだと思いますよ。
そうですか…私なりに熱い想いは持っているのですが、どうやって伝えればいいか…。話し方も生真面目すぎるとよく言われますし、プレゼンテーションのように「想いを熱く伝える」のは苦手です。
では「話し方」ではなく、「話す内容」で想いを伝えましょう。田嶋さんは、応募書類からも、実際にお会いしたときの雰囲気や口調からも、大手企業で真面目に長年、サポートデスクの業務に取り組んできたことがわかります。ただ、どの経験がどう活かせるのか、そして応募先企業に入ってどうなりたいのかが伝わってきません。応募先企業でやれること、貢献できることをまとめたうえで、「この部分は御社でさらにブラッシュアップしたい」と伝えると、熱さや成長意欲が伝わります。
私の場合は、自他ともに認める「生真面目さ」で貢献できると思います。大手だから細かい規定があり、目標設定もされていましたが、どれも寸分の狂いなくクリアしました。スケジュールも完璧に守っていたし、顧客からの要望もすべて完璧にこなしていたと自負しています。ただ、あのまま前職に居続けると、「基準を守り、ワクを超えない」という体制にどっぷり浸かってしまう。規定を多少破ってでも、顧客の要望を叶えるために行動する「熱さ」を発揮しないまま、働き続けるのは嫌だと思ったんです。だからこそ、前職を辞めて「退路を断った」のです。
今の言葉からは田嶋さんならではの「熱さ」を感じましたよ。心の底から出た言葉だと感じました。…本来であれば、在職中の方には「辞めないで転職活動をしたほうがいい」とアドバイスしています。ブランクが長くなると企業の印象はどうしても悪くなりますし、「早く決めなければ!」と焦ってしまい、転職で叶えたいと思っていたことを見失う恐れがあるからです。でも、田嶋さんの場合は、すでにお辞めになっている事実が、熱い想いを伝えるのに優位に働きそうです。先ほどの「退路を断つために退職を選んだ」という言葉からは、「大手の体制に染まりつつあった自分を何とか変えたい」という強い想いと覚悟が伝わりますよ。
なるほど…。門野さんから突っ込まれ続けて、少々感情的に話したことが、結果的にはよかったのかな(苦笑)。
そうかもしれませんね(笑)。饒舌に想いを語る必要はないですが、「想いを言葉にする」努力はしたほうがいいでしょう。言葉にするには、自分の想いととことん向き合い、整理する必要があります。考え抜いて整理した心からの言葉には、魂が乗ります。緊張していようが、口下手であろうが、熱い想いは伝わりますよ。
わかりました。門野さんがおっしゃるように、自分自身とじっくり向き合う時間を設けてみます。
さすが、とことん真面目ですね(笑)。田嶋さんのその雰囲気からも話し方からも伝わる「真面目さ」は、田嶋さんならではの個性。ご家族や友人、前職の同僚などの第三者に、「自分はどんなふうに真面目か」をヒアリングして、自己PRとしてまとめるのも一考です。「生真面目すぎるが故のエピソード」などがあれば併せて書いておくと、田嶋さんの個性が伝わりますよ。例えば、成長中のベンチャーなど「サポートデスクを立ち上げたばかりで基盤を固めたい」という企業は、自社にはいない「真面目すぎるぐらい真面目な人」に基盤固めを任せたいと考えるでしょう。ぜひ、前向きにアピールしてみてください。
大手の基準やワクが嫌だと言いながら、それにどっぷり浸かったような話ばかりしていることに気づかされました。仕事に対する熱い想いはあるのに、全く伝わっていなかったことが残念です。私の個性だと言ってくれた「生真面目さ」を面接でうまくアピールするべく、まずは自分自身とじっくり向き合いたいと思います。(田嶋さん)
- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- 平山諭