転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 人事経験を活かして転職したいが、面接が盛り上がらず落ちる
(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2013年6月12日
中尾瞬太郎さん |
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飲食業や出版社などで営業を経験した後、不動産会社で人事、総務業務を4年間担当。会社の業績悪化に伴い、昨年末に勤務先を退職。経験を活かして、人事職として再就職を目指すが、書類は一定レベルで通るものの面接で思うように力を発揮できず、落ちてしまう。 | |
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約4年間の人事・総務経験を活かして、転職したいと考えています。主に人事職に応募しており、面接のご案内をいただくケースも多いのですが、面接の段階で落ちてしまいます。
今までに何社ぐらい応募したのですか?
昨年末から今に至るまでに、100社以上に応募しました。書類通過率は約3割と、私の年齢にしては高いと思っています。しかし、せっかく面接のチャンスをもらっても、面接が盛り上がらなくて…。ほとんどが一次面接落ちです。
確かに、書類通過率3割は高水準ですね。中尾さんの経験が評価された結果でしょう。では、面接で落ちている原因はどこにあると、自己分析されていますか?
面接の場で、言いたいことの半分も言えていないのが、敗因だと思います。自己PRとして、人事経験の内容と具体的な成果、失敗経験とそこから学んだこと、それをどう御社で活用できるか…を伝えるべく事前準備しているのですが、もともと緊張しやすいタイプであるうえ、面接担当者の顔色を読んでしまい、話をはしょってしまったり、途中で切り上げてしまうことが多いんです。私自身も人事なので、相手が真剣に話を聞いていない、つまらなそうにしている、といった空気を敏感に察知してしまうんです。伝えたいことはたくさんあるのに、これではダメですね…。
ちなみに、中尾さんが前職で採用面接を行っていたときは、応募者のどんなところに注目して採否を決めていましたか?
やる気の強さと、自社の雰囲気になじめるかどうかですね。
「やる気」と、「なじめるかどうか」は、どうやって判断するのですか?
やる気も、なじめるかどうかも、その人の人柄、個性から判断することが多いですね。人柄がわかれば、自社で力を発揮できる人材かどうか、だいたい判断できますから。
なるほど、おっしゃる通りだと思います。そして、それは中尾さんご自身にも言えることですね。「人柄や個性」を、応募先企業に伝えていないことが、中尾さんの敗因だと思いますよ。まず、必要以上に「面接担当者の顔色を読む」のは止めましょう。
やはりそうですよね…。
中尾さんがおっしゃる通り、人事は応募者の人柄や個性、そして本音が知りたい。そこから、自社で活躍してくれそうか、具体的にイメージして採否を決めるのです。それなのに、こちらの顔色をうかがって言い淀まれてしまっては、その人の本気度は図れません。ましてや個性など伝わるはずもありません。
おっしゃる通りです。人事がどこを見るのか、自分でわかっていながら、それができていなかったです。
加えて、先ほど「自己PRとして、人事経験の内容と具体的な成果、失敗経験とそこから学んだこと、それをどう御社で活用できるか…を伝えるべく事前準備している」とおっしゃっていましたが、すべてを自己PRとして一気に語るには、少々長すぎます。…おそらく、これらを長々と語っている途中で、人事の『ちょっと長いな。まだ続くのかな』という表情を察知したのでは?中途半端に終えるぐらいならば、人事としての中尾さんの一番のこだわりを、端的に伝えたほうがよほど効果的だと思いますよ。それに、「もっと知りたい」と思ったら、先方から質問をかぶせてきます。
なるほど。確かに私の自己PRは総花的で長すぎたかもしれません。要点を絞らなければ、伝わるものも伝わらないですよね。
はい。ぜひ伝えてほしいのは、「仕事において大切にしてきたこと、信条」「仕事へのこだわり、スタンス」です。いずれも、仕事の“成果”を生み出す土台となるものであり、汎用性のあるもの。「当社でも力を発揮してくれそうかどうか」を判断する材料になります。
信条やこだわりですね。わかりました!
…応募書類を拝見すると、中島さんならではの「こだわり」を感じます。初めの会社では、アルバイトスタッフの離職率の高さを改善するため、アルバイト全員の意見を聞いてシフト管理の方法を見直し、1年間退職数ゼロを維持した、とあります。次の営業会社では、営業担当者の意見を聞いて、評価制度を見直したり、現場の要望をくみ上げてトラブル対応の研修やロープレを強化し、顧客からのクレーム率低下につなげた、ともありますね。中尾さんは人事担当者として、まずみんなの声を集めて課題を抽出し、そこから改善案を考えて、周りの合意を取りながらやるべきことを遂行する…ということを大切にしてきた、という印象を持ちました。どうですか?
そうか、そういうこだわりを伝えるべきだったんですね。会社は変わっても、「現場の社員みんなの声を聞き、やるべきことを実践する」ことにはずっとこだわってきました。組織は人で成り立っていると思うので、大変でもみんなの意見をまず聞くことが重要だと思うんです。
そのこだわりを、自己アピールの軸にしてはどうですか?中尾さんの仕事ぶりが伝わり、入社後の活躍イメージを具体的に思い描くことができます。それに、こだわりを端的に伝えれば、「では、具体的にはどんな課題をどう解消したのですか?」「どんな成果が出たのですか?」などの「次の質問」を呼び込めます。必要以上に話が長くなることもなくなり、会話のキャッチボールができるようになる。相手の顔色をうかがう機会も、減るはずですよ。
たしかにその通りですね。やってきたことには自信を持っているのですが、自分のことを客観的に見られていなかったです。本当に参考になります!
(苦笑しながら)中尾さんのクセかもしれませんが、私が言うことをすべてそのまま受け止めて、すぐに納得してしまっているのが気になります。もちろん、本当に心から納得しているならばいいのですが、私がアドバイスしたそばから間髪入れずに「その通りです」と言われると、「本当は納得していないのではないか」「上辺だけ合わせようとしているのではないか」などと思ってしまいます。面接の場でこのようなコミュニケーションを取っていると、「調子はいいけれど、本音が見えない人」と判断されてしまう恐れがあるので注意が必要ですよ。何事も、一拍置いて考えてから話す習慣をつけてください。また、「はい」「いいえ」で答えられる質問には、はい、いいえだけで返すこと。言い足りないと思うかもしれませんが、相手がもっと突っ込んで聞きたいと思えば、さらに質問を重ねてきます。質問に対して正しい答えが返せているかどうか、常に考える習慣をつけておくといいですよ。
今までは表面的なことしか伝えていなかったし、伝えようともしていなかったと気づかされました。準備した自己PRを一からすべて語ろうとしたことが、人事の顔を曇らせ、それを察知した私が中途半端に切り上げる…という悪循環を生んでいたのですね。自己PRを一から見直し、転職活動に臨みたいと思います。(中尾さん)
- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- 平山諭