転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 医薬品業界の研究員を4年間経験。アピールできることがないと悩む
(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2013年1月23日
小林あずささん |
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大卒後、契約社員として医薬関連会社に入社。バイオマーカー(生体情報を数値化・定量化した指標)の評価、分析を4年間担当する。正社員を目指して転職活動を始めたものの、どんな仕事がやりたいのかピンと来ず、どんな経験が売りになるのかもわかっていない。 | |
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就職活動に失敗してしまい、卒業後、今の勤務先である医薬関連会社に契約社員として入社しました。バイオマーカーの評価、分析を担当し、丸4年が経ちましたが、どうしても仕事にやりがいを見出せず、転職を考えています。30歳になる前に、正社員になりたいという思いもあります。しかし、取り立ててアピールできる売りがないうえ、そもそも何がやりたいのかがわからず困っています。試しにいくつかの求人に応募してみたところ、書類は通過したのですが、一次面接で落ちてしまいました。
どんな仕事に応募してみたの?
CRA(臨床開発モニター)です。CRAの友人に、「この仕事ならば経験を活かせるのでは?」とアドバイスされたからです。5社応募して、4社面接に進みましたが、いずれも一次面接落ちでした。CRAの仕事に興味はありますが、「どうしても就きたい」というわけではないから、熱意が伝わらなかったのだと思います。
何がやりたいのか、何に向いているのかを、探っていく作業をしたほうがよさそうですね。…ではまず、なぜ今の仕事を辞めたいと思ったのですか?
毎日の業務に、全く変化がないからです。「実験、解析、報告書作成」の繰り返しで、ほぼ1人で完結する仕事です。周りと関わることも少なく、坦々と1日が過ぎて行き、やりがいを感じる場面はほとんどありません。もちろん、この実験が新しい医薬品の開発につながるため、社会貢献の一助を担っているとは思いますが、こう毎日が単調に過ぎていくと、何のために働いているのかわからなくなってしまって…。今までに数回、患者さんへの臨床試験に立ち会うことがあり、インフォームド・コンセント(患者や被験者に対して十分な情報提供を行い、同意を得ること)も経験しましたが、このときは自分が介在している価値を少なからず感じることができました。そのため、よりユーザーに近い仕事に転職すれば、反響がダイレクトに得られるから、自分の仕事の意味が感じられるのではないかと思ったんです。
なるほど。小林さんは、ご自身の仕事に対する現場の反応、意見など、明確なフィードバックが得られる環境に移りたいのですね。となると、「クライアントに近い」というのは仕事選びの大きなキーワードになりそうですね。そういう意味では、医療機関や被験者と関わる機会が多いCRAは、応募先として外れてはいません。また、「チームで行う仕事」というキーワードも当てはまりそうです。チームワークが問われる仕事は、自分の仕事ぶりが、ほかのチームメンバーの仕事に大きな影響を与えるからです。
キーワードで考えたら、少し頭が整理されました。応募先を探す際に、役立てられそうです。…でも私、自信を持ってアピールできるものが本当にないんです。応募書類の自己PR欄にも、「実験、解析、報告書作成という毎日の実務作業を、スケジュール通りに間違いなく、かつ迅速・丁寧に仕上げる」ぐらいしか書けなくて。応募先が定まっても、こんな私が正社員に転職できるのかと考えると…不安で仕方ありません。
どんな経験であっても、必ず自分の身になっており、今につながっています。まずそのネガティブな考えを切り替えたほうがよさそうですね。
そうは言っても…。
「スケジュール通りに間違いなく、迅速・丁寧に仕事を仕上げてきた」とおっしゃいましたが、なぜそのようにしようと思ったのですか?
「責任感」からだと思います。私が行っているのはルーティン作業ではありますが、医薬品が作られる過程の一つであり、いい加減な気持ちで仕事をしていては、その後の医薬品の品質に影響を及ぼしてしてしまうと思うからです。…でも、よく考えてみれば「スケジュール通りに間違いなく、迅速・丁寧に仕上げる」なんて当たり前のことですよね。こんなことをアピールしてもしょうがないか…。
いえいえ、立派なアピール材料ですよ。そもそも、自分の仕事を「スケジュール通りに間違いなく、迅速・丁寧に仕上げる」ことができる人なんて、あまりいないんじゃないかな(笑)。そして、どんな会社でも、スケジュール通りに真面目に、丁寧に仕事をこなしてくれる人は高く評価されます。加えて、小林さんは、自分の仕事に責任を持ち、「何のために」を考えながら、迅速・丁寧な仕事を徹底してきた。数字やフィードバックなど、具体的な成果が感じられないから、なかなか自分の働きに自信が持てないようですが、もっとPRすべきですよ。
…少しだけですが、自信が出てきました。では、応募書類は今の内容で大丈夫ですか?
書類通過率は高いから、今のままでも問題ありませんが、「自信を持って面接に臨むために」は、少し応募書類を書き換えたほうがいいかも。今の応募書類には、「スケジュール通りに間違いなく、迅速・丁寧に仕上げる」だけが自己PRとして書かれていますが、これだけだと「言われた通りに作業をこなしている」という印象を持つ人もいるかもしれませんから、今おっしゃった「目的意識を持ち、自分の仕事に責任を持ってやり遂げてきた」事実も一緒にアピールしましょう。自ら主体性を持ち、強い責任感を覚えながら日々の業務に真剣に取り組んできたことが伝わります。もし、仕事の精度を上げるために工夫したこと、改善したことなど具体的なエピソードがあれば、書き添えるとなおいいでしょう。また、インフォームド・コンセントという、命に関わる高度なコミュニケーションを実践してきた経験も貴重です。どんな想いを持って、どんな点に工夫・配慮して、患者とコミュニケーションを取ったか、記しておきましょう。…これらを書類に記しておけば、この内容をベースに面接での会話が進むので、面接で臆することがなくなるはずです。
なるほど、わかりました。もう一度見直し、書き直してみます。
面接では、これらのアピール材料を踏まえて、「自分の仕事の成果や意義を、もっと肌で感じられる環境で、自分を鍛え続けたい」と志望動機を伝えるといいでしょう。今の職場で、自分の役割を理解し、責任を持って仕事に取り組んできたという土台があり、さらに上を目指したいという意欲も伝わります。そして「御社の○○職は、自分の仕事の成果や意義を間近に感じられると感じたから応募した」と続ければ、話に1本軸が通ります。
漠然と思っていたことを、言葉にしてもらった気がします!応募先も、この視点で探していこうと思います。
自分の経験なんて売りにならないと思っていたのですが、立派なアピール材料だと言われ、少し自信が持てました。自分が就きたい仕事も、おぼろげながら見えてきた気がします。キーワードをもとにじっくり求人を探し、面接の際は胸を張って臨みたいと思います。(小林さん)
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