転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 本職は大学院の研究員。生活費を稼ぐために別の仕事を見つけたい
(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2012年10月17日
榎本健人さん |
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大学時代から社会学系のある分野の研究に没頭。現在も大学院で研究を続けている。しかし、2年前に結婚したにも関わらず、生活費をほとんど稼ぎ出せない状態。収入を少しでも増やしたいと、研究と両立できそうな仕事を探しているが、大半が書類落ちの状態。 | |
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榎本さんは社会学系分野の学問の研究家で、本も執筆されているのですね。
はい。大学時代から10年以上、研究に取り組んでいます。本の執筆のほか、専門誌への寄稿や、講演会なども行い、数回ですがテレビや雑誌の取材も受けたことがあります。これからもずっと、この分野に打ち込みたいのですが、研究費は取れても生活費まで回せるのはほんのわずか。結婚しているのに生活がままならず、恥ずかしながら互いの実家の支援を受けている状態です。あと2〜3年経てば、私の研究分野にももっと研究費が割り当てられる見通しなので、それまでをしのぐために一時的にほかの仕事を探しているのですが、なかなか見つからないんです。
大学の研究室って、そんなに収入が少ないのですか!?
人によると思いますが、私の場合は少ないですね。研究費は数百万円単位でもらえるのですが、あくまでこれは「研究費」。大半が研究や調査に充てられ、個人の取り分はほとんどありません。妻は、研究自体は応援してくれているものの、いつまでも実家からの支援を受けるわけにはいかないと…。どうすればいいでしょう?
どんな仕事を探しておられるのですか?
本命は、大学の非常勤講師です。研究とも両立しやすいですしね。でもなかなか求人がないので、中高生向けの社会系科目の塾講師や、得意の英語を活かせる英会話の講師などに片っ端から応募しています。今までに100社以上に応募し、派遣登録までしているのですが、全然面接の機会が得られません。それなりにいい大学を出ていると思いますし、研究にもずっとまじめに打ち込み、成果も出してきたのに、なぜ会ってもくれないのでしょう?
うーん…学習塾において社会系の科目は、英語、国語に比べると少々優先度が低いですよね。しかも、ずっと研究に打ち込んできた榎本さんに「受験に受かるための授業」ができるとは思えない。専門分野ではない英語ならば、なおさら。講師の路線は、ハードルが高いのではないかなあ。そもそも、どこに応募したとしても、「2〜3年だけ働きたい」ということがわかってしまったら、どこも雇ってくれないと思いますよ。
…では、私はどうすればいいのでしょう?途方に暮れてしまいます…。
そもそも、本当に2〜3年後には何とかなるのですか?研究費が増えるという保証はあるの?
私はそう思っています。実際、そういう感触も得ています。
状況が変わる可能性もゼロではないですよね?本当に生活のこと、家族のことを考えるならば、そういう不慮の事態に陥る可能性も前提に、ちゃんと仕事を探すべきだと思いますよ。すなわち、研究を生活のメインにせず、趣味レベルに下げて、家族のためにきちんと働く!と腹決めすることです。
うーん…(悩)。
もし腹決めができるならば、応募先は今よりはぐんと広がります。応募書類を拝見すると、研究のためのフィールドワークでは、海外にも何度も出向き、現地スタッフを含めた十数人規模のチームをまとめてきた実績をお持ちですよね?プロジェクトの収支を考え、スケジュールを立て、英語を使ってマネジメントして来た経験や、研究結果を論文にまとめ、学会で発表して来た経験は、リサーチ会社や外資系コンサルティング会社などで活かせる場面がありそうです。これから海外進出を目論む企業にも、アプローチできるかもしれません。ご出身大学は、かなりの難関大学ですし、いわゆる「地頭のよさ」を買ってくれる企業もあるでしょう。また、本を執筆したり、メディアに取材された経験もウリにできます。そういう人を自社のブランドとして前面に押し出したいと考える企業も、あると思います。
…少し視野が広がりました。でも、やはり今の研究を趣味レベルに落としたくはありません。10年以上、心血を注いできたし、この分野での実績やプライドもあるので、研究から離れるのは嫌です。
なるほど。確かにそうでしょうね…。研究の道をあきらめられないならば、覚悟を決めて、なりふり構わず人脈を当たり、「本命であり、研究との両立ができる大学講師」の道を探すしかないと思いますよ。研究者同士の人脈、おありですよね?片っ端から、真剣に大学での仕事を探していることを伝えて回れば、どこかヒットするのでは?
何人かの親しい人や先生方には、話しているのですが…なかなか。
いやいや、「何人か」では少ないですよ。そもそもの求人が少ないのですから、あらゆる人脈をしらみつぶしに当たらないと。「知人の知人」レベルにも売り込む勢いと覚悟が必要です。この分野は、求人サイトにはほとんど出てきません。普通の就職活動は難しいのですから、自分の力で開拓するしかありませんよ。
知り合いレベルの人に急に連絡して、仕事がないか聞くなんて、驚かれませんかね…。
榎本さんからは今一つ、必死さが感じられませんね(苦笑)。どれだけ真剣に仕事を探しているのか、周りにもっと伝えることができれば、周りの動き方も変わってくるはず。例えば、○○大学が講師を募集しているというニュースを耳にしたときに、「榎本さんのことをふと思い出す」確率が上がるでしょう。やりたいことを実現するために、できることはやってみましょうよ。
わかりました。もっと行動してみます。
ぜひ。その結果、どうしても見つからなかったら、腹を決めて2〜3年はアルバイトなどで食いつなぐか、もしくは民間企業の仕事に臨むことも考えましょう。その際は、研究者はビジネス感覚がないと思われがちなので、先ほどのプロジェクトマネジメント経験や、常にプロジェクトの収支を考え、行動してきた点、成果のアウトプット方法など、「ビジネスの現場ですぐに活かせる経験を積んできた」ことを前面にアピールしてください。
Dr.門野と話して、そもそもの本命である大学講師の職を探すための行動量が圧倒的に足りなかったと気づきました。民間企業にもアピールできるスキルがあるとわかったのも、収穫でした。まずは知り合いのつてをもっとたどって、可能性に賭けてみたいと思います。(榎本さん)
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- 伊藤理子
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