安斎奈々さん （仮名・23歳）
	派遣社員として2年間、音楽・エンターテインメント系サイト運営会社の一般事務を務めていたが、契約満了につき6月に退職。一般事務で正社員になりたいと9月から本格的に転職活動を開始したが、志望動機や自己PRがうまくまとめられず書類落ちが続いている。
	・高校卒業後、アルバイトを含めさまざまな仕事を転々としてきた。社員としては3度目の転職活動になる。この年齢で転職回数が多いことが不安視されているのだろうか？ ・洋楽や洋画が好きなので、前職と同様、エンターテインメント系の会社で一般事務につくのが一番の理想。しかし、個社ごとの志望動機や、自己PRがうまくまとめられない。どうすれば「会いたい」と思ってもらえる書類が作れるのか、知りたい。

高校卒業後、アクセサリーショップなどでのアルバイトを経て、歯科医院に就職。助手として1年半務めた後、3カ月間アメリカに語学留学し、帰国後にアパレルショップの店員を半年、そして派遣社員としてエンターテインメント系の会社の一般事務を2年間務めました。この6月に任期満了したので、新たに一般事務として就職先を探しているのですが、なかなか書類が通過しません。今までいろいろな職を転々としてきましたが、次は正社員として腰を据えて働きたいのですが…。

今までに何社ぐらいに応募したの？

13社です。そのうち、面接まで進んだのは2社だけで、いずれも面接でうまく自己アピールができず落ちてしまいました。

うーん、そもそもの応募数が少ないですね。安斎さんはまだ23歳と若いのですから、数多く応募すれば確率論的に面接の機会は増えるはずです。そして、1社ずつ応募するのではなく、できればまとめて10社ぐらいに応募しましょう。1社の結果を待って、また次の会社に応募して…というやり方だと、時間ばかりが経ってしまいますし、まとめて応募することで、複数の会社を比較検討することもできます。

なるほど…確かにおっしゃる通りですね。応募の数は見直したいと思います。でも、私の場合、応募書類そのものに自信が持てないんです。個社ごとにうまい志望動機が思いつかないし、自己PRもどう言葉にしていいのかわからない。入社したい！という気持ちにウソはないのに…。数多く応募したところで、結局はダメなんじゃないかと。

では書類を拝見しましょう。これはマスコミ系の会社への応募書類ですね（じっくり目を通しながら）…うーん、「とにかくこの仕事がやってみたい。好きなものに囲まれて働いてみたい」という志望動機はちょっとどうかな…。誰にでも書けることだし、単にこの仕事に憧れているだけに見えますよ。もし、安斎さんが採用担当者だったら、忙しい中この人に会ってみたいと思う？

う〜ん…会ってみたいとは思えませんね…。

足りないのは、安斎さんがどんな思いを持ってこの仕事に取り組もうと考えているのか、そして、入社後にどのように役に立てると思っているのか。これが明確に書かれていて、かつ求める人材に合っていれば、「一度会ってみようかな？」と思えますよね。

確かにおっしゃる通りです。でも、自分の強みもイマイチわからないし、どんなふうに会社の役に立てるのかなんて…うまく言葉にする自信がありません。

わかりました。では、今までの経歴を振り返り、一緒に考えてきましょうか。

最初に勤めた歯科医院の助手のお仕事はどうでしたか？どんなやりがいを感じていました？

なるほど。前職のエンターテインメント会社には2年近く勤めたのですよね？

はい。もともと洋画や洋楽が大好きなので、好きなものを商品・サービスとして扱える環境にいられるのが嬉しかったですね。仕事自体は伝票処理や電話応対など一般事務がメインでしたが、販促物の発注やスケジュール管理など、いろいろな仕事を任せてくれる会社でした。やったことのない仕事が回ってきた時は、ちょっと無理かな？とも思ったのですが、「どうやったらうまくできるか」自分なりに方法を考えて、挑戦してきましたし、周りを見回して部内の困りごとを察知し「こういうことが求められているのではないか？」と率先して環境整備に努めてきました。そのため、上司によく「安斎さんは気が回るから助かる」と言われました。

ほう。かなり一生懸命に仕事に取り組んだのですね。新しい仕事にもどんどん挑戦したのはなぜですか？

性格的に、任された仕事を途中で投げ出すのが嫌なんです（笑）。

なるほど。安斎さんのことがいろいろ見えてきました。安斎さんは、仕事に対して常にどうすれば達成できるのか、考えて行動してきたところが強みと言えますね。なぜそうしたいのかというと、挑戦することこそが自分の成長につながるから…ではないですか？

ああ…言われてみれば、その通りです！

それはよかった。では、まとめるとこんなイメージでしょうか。「どんな場面に直面しても、自分なりにどうすればいいのか考え、行動できるのが私の強みです。なぜなら、そうして自分で考え、挑戦することこそが成長につながると思うからです。また、接客業で培った『人が求めていることを先回りして察知し、行動する』ことができるのも強みだと思っています。今まではいろいろな仕事を転々としてきましたが、社内の人のためにサービス精神を発揮して、皆が気持ちよく仕事ができるようにさまざまな業務に取り組んでいきたいと思っています」。…このように自己PRがまとめられていたら、ちょっと会いたくなりますよね？

確かに！ただ「この仕事がやりたい」と言われるよりも、俄然会ってみたくなりますね（笑）。

ですよね。この強みに合わせて応募先を選べば、志望動機もすんなりまとまるはずです。求人広告には、求める人材像が載っていますから、そこに「仕事が与えられるのを待つのではなく、自ら考え行動できる人」など、自分の強みを活かせそうなキーワードが書かれていたら、応募対象です。「御社なら、私の強みを活かせると思ったので、応募した」と語れますよね？

なるほど、そうですね！…となると、先ほどの自己PRに加えて、1社ごとの職務内容や培ったスキルなどのアピールも必要でしょうか？たくさんアピールしておいたほうが、企業との接点が増えますよね。

いえ、安斎さんはまだお若いし経験が浅いですから、 1社ごとの経験をくどくどアピールされても嘘っぽく感じるし、職歴の多さが目立ってしまいます。それよりも、「自分で考え、行動できる」「人の気持ちを察知し動けるサービス精神」を強みとして前面にアピールしたほうがいいでしょう。そのうえで、「今までいろいろな仕事を経験してきたけれど、一般事務の仕事を経験して、社内の人のためにサービス精神を発揮することが自分に向いているし、好きだと気づけた」と伝えれば、職を転々としてきたことも「一般事務に就きたいという気持ちに気づくために必要な経験だった」と言えます。経歴と志望動機に、一本軸が通りますよ。

転職回数が多いことに引け目を感じていたので、そう言われるとほっとします。自信を持って、転職活動に臨みたいと思います！

安斎さんはまだ23歳とお若い。それだけで可能性を感じてくれる企業は多いはずです。だから、「強み」さえ正しくアピールできれば、書類通過の確率はぐんと上がるはずですよ。「自ら考え、行動できる」「人の気持ちを察知できる」ことは、23歳ならば立派な強み。自信を持って、いろいろな企業にアプローチしてみてください。

EDIT

伊藤理子

DESIGN

マグスター

ILLUST

もりいくすお

PHOTO

TAKE

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