久保理佐子さん （仮名・26歳）
	外国人向け派遣会社、外資系コンサルティング会社、外資系精密機器メーカーで、主に経営企画職、人事職の経験を積む。経験を活かして3回目の転職活動に臨んでいるが、書類落ちが続き悩んでいる。学生時代に留学経験があり、TOEICは930というハイスコア。
	・26歳で、すでに3社を経験。自分ではキャリアアップのために転職を重ねてきたつもりだし、ビジネスの立ち上げも経験するなど着実にスキルアップしているつもりだが、書類の段階で落ちてしまう。 ・経営企画か人事に応募しているが、本当にこの路線でいいのか確信が持てない自分もいる。自分のアイデンティティ探しから始めたほうがいいような気もしてきた。

外国人向けの人材派遣会社で、経営企画と人事業務を2年経験したのち、外資系コンサルティング会社の人事を経て、外資系精密機器メーカーでプロジェクトマネージャーを任されていました。次の転職では、経験を活かして経営企画か人事職を目指していますが、なかなか書類選考が通りません。

4年間に、3社を経験しているのですね？なぜそんなに短期間で転職したのですか？

初めの会社は、日本で職を探している外国人と直接やり取りができる人材コーディネート業務がやりたいと思って入社したのですが、なぜか社長直下の立場で人事と経営企画を任されて…。私は得意の英語力を活かしてもっと現場で活躍したかったんです。そこで、コンサルティング会社の人事に転職したのですが、ここでの業務は外国人スタッフのビザ申請がメインという、完全に事務処理作業。ルーティン業務に耐えかねて、前職に転職しました。

前職の精密機器メーカーでは、どんな仕事を？

日本に進出したばかりの外資系メーカーで、スタッフは社長と私の2人だけ。日本向けのビジネスモデルを確立させるところから携わり、製品の日本導入・拡販を手掛けました。0を1にする仕事はとてもやりがいがあったのですが、社長のごり押し・イケイケの営業スタイルにどうしても付いていけず…1年超務めたものの、先日退職しました。

なるほど。そして次は経営企画か人事を目指しているのですね。

うーん、経験を活かすとなるとその路線だと思い、応募しているのですが…。何かまだ「これ」というキャリアイメージがつかめないんですよね。何か迷走している感じがします。

先ほど「ルーティンワークはダメ」とおっしゃっていましたが、それはなぜ？

前の会社がとりわけそうだったのかもしれませんが、本当に毎日毎日単純作業で…。成長が全く感じられなかったんです。私は、自分のキャパより少し上のレベルを目指してストレッチできる環境でこそ力を発揮できるタイプ。いろいろな刺激を受けるとアイディアが浮かぶし、フットワークも良くなってさらに前に前に進もうと思えるんです。

そういう意味では、人事業務などは、ルーティンの部分が多いかもしれませんね。（応募企業リストを見ながら）久保さんが何社か応募されている人材サービス会社のコーディネーター業務なんて、1日に何人面談して、どんなアドバイスをして…とオペレーティングな部分も多いですよ。飽きちゃうんじゃない？

そうですね。26歳で3社はやはり多いという印象です。一般企業では、あまりステップアップとはとらえてもらえないでしょうね。

やっぱり。書類も外資は比較的通るけれど、日系企業はほぼ全滅です。でも外資はジョブの範囲が明確なところが多くて、制限されている気がして…。ああ、何かどうすればいいのかわからなくなってきました。

久保さんは、自分がイメージしていた環境と違うと、割と短期間で見切ってしまい、次の目標に気持ちが移ってしまう傾向がありますね。でもそろそろ、自分の希望ばかりを追い求めるのは考えたほうがいいでしょう。もう3社でチャレンジして、次は4社目ですよね。次は「腰を据えて働ける環境の中で、自分なりにチャレンジする」方向にシフトしては？

なるほど…。

さきほど、「0を1にする仕事が好きだし得意」とおっしゃっていましたよね？この経験はとても貴重ですが、0から1を作り続けられる仕事はありません。1を作ったら、次はそのビジネスモデルの運用・改善という、久保さん的にはルーティンに見えるかもしれない業務がメインになります。でも、ビジネスにとっては1を100に拡大させることこそ重要ですよね？この経験を積んで初めて、「ビジネスの立ち上げを担える」といえるのではないですか？誰かが1にしたものを運用するのがイヤならば、1社に腰を据えて「0を100にする」ことを考えてはどうでしょう？

…言われてみれば確かにそうですね。

今まで話を聞いていて、久保さんは海外営業が向いているのではと思ったんですが、どうでしょう？そういう志向はある？

あるにはあります。でも、営業は前職で多少経験はあるものの、新規開拓は社長がメインで行っていたので、経験自体は浅いんですよね。

でも「英語力を活かして日本と海外をつなぐ仕事」という点で、ご希望に合っているし、スキルも活かせますよ。留学経験があり、前職で海外のプロダクトを日本市場に普及させていた経験もある久保さんならば、文化の違いを理解したうえで間をつなぐことができるでしょう。前職では社長の営業スタイルが合わなかったということですが、反面教師にするという方法もあるのでは？久保さんはチャレンジ型ですから、管理部門というよりはビジネスの最前線で攻めていくほうが向いている気がしますよ。

確かに、向いているし成果も出せると思います。では、浅い経験をどうアピールすればいいでしょう？

日本の製品を海外に売る営業よりは、前職のように「これから日本市場で展開しようという外資」が狙い目でしょう。日本ならではの商習慣を理解したうえで、海外の製品のビジネスコンセプトを考え0から日本に普及させてきた経験は、ストレートにアピール材料になります。ましてや、経営企画、人事と管理部門の経験も持っている。進出外資には心強いはずです。レジュメの冒頭で、0から1にしてきた経験と、海外プロダクトを日本市場にどうすれば受け入れられるかを考え、実行してきた経験をアピールするとともに、「今後はビジネスを軌道に乗せ、さらに拡大させる業務にも挑戦していきたい」と希望を伝えておきましょう。

なるほど、わかりました。

今は、管理部門向けに職務経歴がまとめられていますが、前職での顧客数や受注規模、商談相手など、営業としての働きぶりがわかる項目を追加しましょう。難しかった商談案件をピックアップして、どのような努力をしたのか説明するのもいいでしょう。具体的なエピソードは、採用担当者に入社後の活躍ぶりをイメージさせることができます。

確かに。さっそくまとめ直してみます！

次の職場で、仮に何か意に沿わないことがあっても、すぐにあきらめないで。それも一つの企業文化であり、企業戦略。ある程度は許容することもビジネスパーソンには大切な経験です。そして、必要だと感じたら、「自分の力でじっくり変えていく」ことを考えましょう。そんな経験を積めば、久保さんの市場価値はさらに上がりますよ。

EDIT

伊藤理子

DESIGN

マグスター

ILLUST

もりいくすお

PHOTO

TAKE

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