転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 特別企画 転職活動の「深刻な悩み」に答えます!PartII
(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2009年8月19日
Dr.門野のカウンセリングには、全国から多くの応募が寄せられます。そのため、残念ながら皆さんにお会いすることができないのが現状。そこで、応募フォームにお寄せいただいた相談内容の中から特に多い「お悩み」を取り上げ、記事上で解決策を探ります。
「厳しい景況感を受け、今回はあえて辛めに、歯に衣着せず語りました。厳しいアドバイスもあるかと思いますが、転活に悩み、袋小路に陥っている方が、視点を切り替えるきっかけになれば…と願っています」(Dr.門野)
長年派遣社員として働いてきたが、派遣切りに遭い、失業。非正規雇用の不安定さを思い知ったので、事務職の正社員に応募するものの、書類で落ちてしまいます。
(40代女性、ほか同様の悩み多数)
Dr.門野の診断
「派遣ならではのメリットも享受していたはず。にもかかわらず、不況で派遣切りに遭ったから正社員になりたいと言われても困ってしまう」。…皆さんいろいろな事情があって派遣の道を選んだのだと思いますが、長く派遣で事務に関わってきた応募者に対する企業側の本音はこれです。
ましてや、今までと同じ一般事務を目指すのは、さらに難易度が高い。現在は、同じように派遣契約を打ち切られた事務職の人が一斉に正社員を目指しているため、競争率が非常に高くなっています。そんな状況ですから、どうしても年齢が若い人が優位になります。なぜなら給与水準が低いうえに、ポテンシャルもあるから。ベテランの人がダメというわけではなく、「条件がいい人がほかにいるから」不採用になってしまうんですね。
それでも「経験もあるし、どうしても事務に就きたい」という方。事務職として、ずっと働き続けられるイメージが湧きますか?例えばずば抜けて高い英語力とか、事務スペシャリストとしてのプラスアルファのスキルがあるならば別ですが、いわゆる一般事務は、前述の理由で、今後も折にふれ若い人に取って代わられる可能性が高いのです。
本当に正社員になりたいのであれば、腹をくくって視点を大幅に切り替えましょう。今まで勤めていた派遣先は、大手企業で、立地もよく、オフィスもきれいだったことでしょう。だからといって、「次の就職先も都心じゃないと嫌だ」とか、「ある程度の知名度がある会社がいい」などと言っているようではブランク期間が延びるばかり。勤務地、企業規模、給与額、仕事内容などで、えり好みをしないことです。経験不問としている求人ならばあらゆる職種にトライするぐらいの気持ちでないと、この厳しい環境下で転職先を探すのは難しい。1社でも多く、アプローチ先を増やすことを考えるべきです。
考えられる選択肢は2つです。正社員になることを優先し、覚悟を決めてあらゆる仕事に応募するか、もしくは景気が回復するまでアルバイトやパートでつなぐか。でも景気が回復して事務職の採用が増えるのは、まだ先のことでしょう。長く働き続けるにはどういう道を選ぶべきか。この機会に今一度、自分自身に問うてみることも必要かもしれません。
今の職場が不満だが、かといって何がやりたいのか、何が向いているのかわかりません。適当に興味が引かれたところに応募するので、志望動機が弱く、書類は通過しても面接で必ず落ちてしまいます。
(20代男性、ほか同様の悩み多数)
Dr.門野の診断
もし、まだ会社を辞めていないならば、絶対に辞めるなと言いますね。若い時期は、コミュニケーションや人間関係など、ビジネスパーソンとしてのベースとなるスキルを身につけるべき期間。不満を理由に今の環境から逃げるだけでは、何の成長もありません。今の仕事、職場に不満があるならば、それを解消する努力をしましょう。そうしなければ、どんな会社のどんな仕事に就いたところで、同じ不満の繰り返しになります。「一人ではムリ」と言うならば、同期の仲間や同僚などに声を掛けるとか、同じような不満を持った人を引き込むとか、とにかく行動を。若いうちは、まだまだ失敗が許されます。
一方で、すでに会社を辞めてしまった人は、視点を切り替えましょう。 辞めたにもかかわらず「何がやりたいのかわからない」ままでは、転職先が見つかるはずはありません。やりたいことがどうしても浮かばないならば、「やりたくないこと」を挙げてみましょう。働き方、環境、社風、扱う商品やサービス、給与…など、項目ごとに「こんな会社、こんな仕事はいやだ」と思うものを挙げていくのです。
激務っぽいから○○業界はイヤだ、人と触れ合う仕事は不得意、家から1時間以上掛かる会社は避けたい…など、やりたくないことならばいくらでも出てくるのでは?一通り、イヤだと思うことを列挙し終わったあと、「そこで挙がっていないもの」を洗い出せば、自ずと「応募できる仕事」が見えてくるでしょう。
とはいえ、そうやって応募し、入社したところで、同じような不満にぶつかる可能性は高いと思います。その不満は、あなたがいつかは越えなければいけない壁なんです。これを超える努力をどこかでしないと、転職を繰り返すことになります。
基本スタンスとして覚えてほしいのは、「不満を周りのせいにしない」ことです。それを解決する努力をすることで、人は成長するからです。もし、「アイディアを上司に伝えても、聞いてもくれない」という不満ならば、それを「上司が悪い」で済ませるのではなく、言い方を変えてみるとか、言う相手を変えてみるとか、納得させるために資料を作ってみるとか、別の手段を考えましょう。例えそれがうまくいかなくとも、このように発想を変えた瞬間、仕事が楽しくなったりするものです。
仕事に対する不満はいつか自然に解消するものではなく、中身を変えながらずーっと付きまといます。不満に対峙し、それを乗り越えた人でないと、次のステップには進めません。同じ階層の、代わり映えのしない仕事で、成長しないまま年を重ねていくことになります。不満に真剣に向き合えば、今の閉塞感は必ずや解消するはずですよ。
底を打ったとは言われますが、景況感はまだまだ厳しい。転職環境も決していい状況とはいえません。これを読んでいるあなたがまだ在職中ならば、やみくもに飛び出すのは決してお勧めしません。辛い環境であっても、何とかい続けてほしいと言いたい。このご時世、今以上の環境をほかに探すのは、至難の業だからです。
もしすでに退職しているならば、一日も早く再就職して、ブランクをこれ以上空けないこと。ブランク期間が長引くほど、どうしても不利になるからです。そして、今までのキャリアの延長線上だけで見ていては、なかなか応募先が見つからないでしょう。今までの探し方、絞り方を、一旦がらりと変えてみたほうがいい。
今回はいろいろ厳しいことを言いましたが、辛いのは自分だけだと思わないで。この経済不況です。傍目には順風満帆に見える人だって、給与カットに遭って家計を切り詰めるなど、さまざまな苦労をしています。会社の先行きが読めず、不安を抱えながら働いている人もたくさんいます。厳しいご時世ではありますが、新しい自分を発見するいい機会だと、どうか前向きにとらえてほしいですね。
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- 伊藤理子
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