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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2008年12月10日
森 真由美さん |
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大学工学部を卒業後、設計事務所2社での短期アルバイトを経て、不動産会社の設計アシスタントに。正社員登用を目指して2年間勤務したが、倒産により離職。正社員の設計職を目指すが、面接には進むものの不採用ばかり。アルバイト経験しかないせいではと悩む。 | |
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面接に進んでも、必ず途中で落ちてしまいます。アルバイト経験しかない私が正社員を希望するのは厳しいんでしょうか?
そんなことはありませんよ。少なくとも書類選考を通過した会社は、「アルバイト経験しかないから」という理由で不採用にはしていません。
そうでしょうか…。建築士を目指して勉強もしているのですが、もう失業期間も3カ月を過ぎたので、別の職種で妥協すべきかどうか悩んでいます。
設計のアシスタント業務を手掛けていたということですが、どんな業務を?
設計者のサポートがメインです。図面を引くための現地の下調べやさまざまな調査から始まり、実際に設計に関わったり、模型制作も手掛けました。物件のオープニングイベントの企画運営を任された経験もあります。とにかくいろいろなことをやりましたね。
へぇ〜、責任ある仕事を任されていたんですね。アルバイトの域を超えているなぁ。
前の会社では正社員登用を希望していて、上司も私の気持ちを汲んで責任ある仕事を計画的に振ってくれていたんです。だから、アルバイトという雇用形態しかなくても、すぐに転職できると踏んでいましたが、ここまで面接で落ちるとは…。楽観視しすぎていました。
そんなに落ち込まなくて大丈夫。面接に呼んだからには、森さんは採用候補なんです。だからおそらく、候補者の中で「ギリギリ競り負けた」だけだと思いますよ。
そこで私が競り負けてしまう理由は何なんでしょう?
もし森さんが採用担当者だったとしたら、どんな人を採用したいと思いますか?
そうですね…自分の仕事に責任を持って取り組み、かつ周りを引っ張りながら仕事を進められる人でしょうか。
なるほど、その通りだと思います。では、森さんが面接で実際に伝えた「志望動機」を教えてもらえますか?
はい。「建築を通して、付加価値のある空間を作りたい。アルバイト経験しかありませんが、御社において幅広い分野を学び、スキルを積みたいと思っています」と伝えました。
…うむ、今の志望動機だと、先ほど森さんが言っていた「責任を持って仕事に取り組む人」という印象はないなあ。
え!?そうですか?
志望動機に加え、応募書類も少し改善する余地がありそうです。ここを変えたら、ぐっと森さんの印象が変わるはずですよ。
今おっしゃった志望動機からは、どれだけ責任ある業務を任されていたのかが伝わらないんです。アルバイト経験しかないことに、逆にとらわれすぎている気がするなあ。
そうですか…。
「アシスタント業務をしていました。これから御社で頑張りたい」という人と、「アルバイトながらこの領域は任され、責任を持って取り組んできました」という人だったら、後者を採用しますよね?せっかくいい経験を積んできたんだから、「任された経験」をもっとアピールしましょうよ。
具体的には、どのように伝えればいいでしょうか?
森さんは設計すべてに関わったわけではないけれど、前段階の工程は任されていたわけでしょ?ならば、「アシスタントという立場ではありましたが、設計の工程の中で○○の部分は私にすべて任され、私の責任で進めてきました」など、権限と責任を持って業務に取り組んできたと話しましょう。そして、経験を積むごとに、業務領域を広げてきたことも伝えること。正社員登用に向け、上司に計画的に鍛えられてきたことも伝えてもいいかもしれません。
なるほど…。
ついでに、応募書類の志望動機欄もブラッシュアップするといいですよ。現在のものも、関わったプロジェクト名が書かれていてわかりやすいのですが、プロジェクトの規模と、その中で森さんがどんな立場で、どんな責任を担っていたのかまで書きましょう。そうすれば、もっと書類通過率が上がると思います。
責任を持って仕事に取り組んできた姿勢を、書類にも落とし込むんですね。
その通り。あと、応募書類の中で「私の強み」をまとめているのはいいのですが、「粘り強い」「好奇心が旺盛」「猪突猛進」というアピールは、新卒の学生っぽくてますますアシスタントっぽさを助長しているような気がします。「業務をやりきる力」「自ら動く」「責任感」などの言葉に変えましょう。
わかりました、さっそく作り直してみます。…このまま目標は変えずに設計職に向けて突き進んでもいいでしょうか?
業界を取り巻く足元の環境は厳しいですが、森さんはまだ若いし、現場で鍛えられてきたから、設計職の道で突き進んでいいと思いますよ。とはいえ、正社員の道が厳しいようだったら、雇用形態にこだわらず、契約社員や技術者派遣なども選択肢に入れてみては?現場で実績を積み、経験値を上げることは、森さんにとってメリットが大きいはず。3年間正社員以外で武者修行しても、まだ27歳でしょ?そのころ、もし建築士の資格が取れていたら、たとえ正社員経験がなくても引く手あまたなはず。
少し勇気が湧いてきました。設計職にこだわりながらも、視野を広げてアプローチしてみます。
現場経験を積んで、より「任される人」になってください。そうすれば森さんの市場価値はもっと上がりますよ。
このまま設計職にこだわり続けていいのか迷っていたので、今日はすっきりしました。やってきた業務をどう表現するかで、評価は大きく変わるのですね。「責任を持って仕事を任せられる人」という視点で、もう一度書類と志望動機を組み立ててみます。(森さん)
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