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他社製品から「浮気させる」プレゼン・マスター澤円氏が伝授!
話べたエンジニアでも伝えられる
技術プレゼンの極意
技術プレゼンにセミナー、社内勉強会など――。エンジニアでも意外に話す機会はあるもの。そんな時「話べただから」としり込みしてしまうあなたに、卓抜したプレゼン術で「この人あり」と知られる、日本マイクロソフトの澤円氏が極意を披露する。
(文/川畑英毅 総研スタッフ/馬場美由紀 撮影/平山諭)作成日:14.03.26
相手に応じて臨機応変に変わる、澤円氏のプレゼン術




「僕はこの“Lync”(Microsoftの統合コミュニケーションシステム)の話をする時、いつもこの、雪道で車にチェーンを着けている人の写真を出すことにしているんですよ……。ちなみに、チェーンを着けてみたことはありますか?」

「だから、いざという時、特別なやり方に切り替えなければいけない場合、そこでどうしても業務は止まってしまうんです。先ほどの写真の例で言えば、突然の大雪の時に、普段使ったこともないチェーンを取り出して、四苦八苦して取り付ける。チェーンは走っている時には付けられないのだから、どうしても止まる。それを防ぐにはどうしたらいいか。チェーンを付けるのではなく、普段からスタッドレスタイヤを履いて走っていればいいんです」

「実際に、3.11直後の日本マイクロソフト社自体もそうでした。災害時にも、何ら特別な準備や指示もなく、在宅勤務に切り替えられる。それは、常に、どこでもメールを見ることができ、どこでも仕事できる前提があるから。『時間・距離』に関わらず活躍できるということが、組織をモチベートできるのです」

 たとえ話を上手に挟み込み、また、聞いているこちらに適宜質問を投げかけ、関心をそらさない。“Microsoft Lync”という製品の細かい機能の説明よりも、それがあることによって何が変わるのか、できるのかをイメージできるよう話が進んでいく。

 ほんの一部分、文字で写しただけでは伝わりきれないとは思うが、これが、マイクロソフトテクノロジーセンター・センター長、澤円氏によるプレゼンテーションの例だ。日本マイクロソフトに転職しておよそ20年。肩書きは何度か変わったが、ほぼ一貫して大型案件のプレゼンテーションにより自社の製品やサービスの魅力を伝え、本人曰く「他社製品や旧バージョンから振り向かせて、浮気させる」ことに携わり、多くの実績を上げてきた。

 今や、そのプレゼンテーション術と、「キリスト」にも似た個性的な風貌で、日本マイクロソフトにこの人ありと知られる存在に。実際、「普段どんなふうにプレゼンを行っているのか聞かせてください」とお願いしたプレゼンで、思わず、「そんなシステム、ちょっとウチにも欲しいな」と思わされてしまうほど。

「先ほどのプレゼンテーションは、どちらかというと経営者向けの話し方なんです。企業はどうあるべきか――例えば『業務が停まらないこと』『企業が成長していけること』をビジョンとして見せ、そこにマイクロソフトがどう手伝っていけるのかを示す。

 担当者が相手の場合は、これでは響きません。コアの部分は同じ話であっても、大所高所ではなく、『こうしたら社長に褒められますよ』『これを示せば、あなたの説得力が上がりますよ』というふうに、論調を変える必要がある。

 押し付けたり恐怖をあおったりするやり方は、僕は好みません。大事なのは、こちらの話を聞くことが相手にとって得だと思ってもらえるようにすること。『こいつに話を聞くと何かある、これはいいことを聞いた』と思ってもらえたらしめたものです」

 立て板に水のような澤氏のプレゼンを聞いていると、「自分は話上手」と思っている人でさえ、自信を失ってしまいそう。話べたにとっては魔法のようなプレゼン術である。しかし澤氏は、「確かに話し方で工夫しているところもあるけれど、それは枝葉のテクニック。多少まごつこうが、赤面しようが、そんなことは大した問題ではない」と言い切る。

 それでは、エンジニアのためのプレゼン術――その極意はどこにあるのだろうか。

【Point 1】 話べたは、「話し方」が下手なのではない

「エンジニアで、『説明が下手』と言われる人がいるんですけれども、それは『説明のしかたが下手』なのではなくて、話の相手はどこがわかっていないか、なぜわかっていないか自体を本人が理解していないことが多いんです」と、澤氏は言う。例えば、と澤氏が例としてあげるのは、野球界のスーパースター、長嶋茂雄氏。なんだかハマっているのかいないのか、よくわからないカタカナ英語交じりの独特な話法はお馴染みだ。

「長嶋さんは、監督としても、ほとんど人間的魅力だけで成功を収めることができた。これはいわば究極の例外です。普通の人は、決してこれを真似してはいけない。日本はプレイヤーとして成果を出した人がマネージャーになる。
しかし『名選手は必ずしも名監督ではない』ともよく言われますよね。それはなぜか。天才的な人は、感覚的にいろいろなことができてしまう。だから逆に、『なぜこの人はできないんだろう』がわからない。これはエンジニアにもよくある問題です。

『その技術がなぜ必要か』『それがなぜ身に付いたのか』が自分でわかっていない。わからない人の気持がわからない。――そこで『話し方が下手だから』と思ってしまうと不幸です。テクニックの問題ではない。『なぜ』の棚卸しができていないことこそが問題なんです。

僕はもともとプログラマでしたが、さらに遡れば文系の出身。最初この世界に入った時には、技術的なアレコレがさっぱりわからなかった。だから、とにかく噛み砕いて噛み砕いて、バラバラの粒になるほど細かくして、まずは自分に対して説明をする必要があった。そんな具合いなので、今でも『ああ、たぶん、わからない人がいるだろうなあ』という前提で話をする。

とにかく、自分でわからなければ説明してはダメ。そして、『なんとなくわかっているつもり』で流しておかず、知識の再検証をしておくことが大事なんです」


【Point 2】 聴衆が求めていることを話せ

 エンジニアにありがちなこと。例えば製品やサービスをアピールする際に、それについてよく知っていることは前提ではあるが、場合によっては、「それだけ」のことがある。結果、その製品やサービスがいかに素晴らしいかをとうとうと並べ立てるだけになってしまったりする。

「食べ物に置き換えてみましょうか。『美味しいですよ、ぜひ熱々のうちに食べてみてください』といくらしつこく薦めても、食べてもらえるとは限りません。例えば『いや、私、猫舌なんで』って言われたら、もうそこでお終いです(笑)。

 エンジニアはなまじ技術に詳しく、自信があるがゆえに、つい『優れたことを伝えないといけない、それが最大の差別ポイントなのだから』と思い込みがち。しかしそれに集中しすぎると、エラーを起こすことがある。まずは、相手が何を求めているかを知る。そしてギャップを埋めてからでないと、受け付けてはもらえない」

 そこで、冒頭のプレゼンのデモで、澤氏が話の合間に、私たち(聴衆)への質問を挟んだ、というところを思い出して欲しい。実はあれは、注意を引くだけが目的ではない。答の内容、答える姿勢から、聴衆の知識・技術レベルや、聞き取る意欲を探り出すための手段でもあるのだという。前述の例であれば、「熱々の食べ物はお好きですか?」の一言があれば、結果は全く違うものになる。

「話の流れに沿って、その中のことを聞いて確認を取りながらという場合もあるし、『家を出るときに、今日はどんな話を聞いてやろうと思いましたか?』なんて聞くこともある。『特にないです』『連れてこられて参加しているだけです』なんて言われることもあるけれど、それも当然、想定内。そういう場合に話す“おまかせコース”もあるし、オーダーも適宜受け付けます。『こんな話を聞きたいと思ってたんですよ』と言われたとき、『なるほどそれですか、ちょうどそれについてはいいネタがはいってるんですよ!』と言えたらしめたもの。いずれにせよ、聴衆が求めていることを(1)想定し、(2)さらに確認をして適宜修正すること。これが大事なことなんです」

 聴衆の“オーダー”にしっかり答えられるネタを用意しておく、ということは、つまり、事前の準備が大切ということ。普段から、話題の引き出しにさまざま蓄えておくことが必要になる。

「つまりは、ステージに立ったときには、もう勝負はほぼ決まっている、ということです。よく『上がってしまって失敗した』という話を聞きますが、それは多くの場合、『上がるくらい不安を抱えていた』ということなのです。準備をきちんとしておけば、多少のことにはぐらつきません。

 完璧に、流暢に話ができなくてもいいのです。お客さんが投げてきた球にきちんと反応さえできるなら、たどたどしかろうが、目をつぶってもらえるはず。肝心なのは、『自分の都合でしゃべらない、お客さんの都合で語れ』ということです」

【Point3】 よいプレゼンは拡散していく

 聴衆の都合に合わせて話す。これはいい事を聞いたぞ、と思ってもらえる話をする。そう思ってもらえれば、プレゼンは聴いた人からまた別の人へ、自然に伝わっていく。

「相手のことを考え、相手がいいことを聞いたと思えるように話せれば、次には、それをほかの人にも教えてあげよう、と思ってもらえる。そうなれば、いちいち自分自身でプレゼンして回らなくても、勝手に拡散して行ってくれる。いわば、お客さんが自分に代わって営業してくれるようになる。それが、僕の想定するプレゼンです」

 担当者相手に導入を薦めるプレゼンであれば、自社に持ち帰って、社内の説得材料として使えるネタを仕込む。経営者相手であれば、株主やマーケット、あるいはマスコミ取材などの際、自社をアピールできる材料になる要素を入れる。

 社内的なプレゼンであるなら、その相手が、外の人たちに対して使えるネタを提供する。 「『アイツの話を聞いておくといいよ』と社外の人に思われることも、回りまわって、自分の会社にも返ってくる。『そっちの部に○○ってヤツ、いるだろう。そいつを担当で回してもらえないか』なんて言われるようになれば、社内での認知度も上がってくるはずです」

エンジニアのみなさんへ、ちょっとしたアドバイス

 もちろん、ここまで述べたことも、一朝一夕でできることでなく、普段からさまざまなことに気を配り、研鑽を積む必要がある。しかし、普段から気をつけて関わることで、「説明上手、理解させ上手」になるトレーニングになりうることもあると、澤氏は言う。

「一つは、押し付けがましくなく、人に教える機会を積極的に持つこと。きっちり中身を噛み砕いて、相手にわかるように伝えることができているか。それは、その相手が成果を出せるようになったかどうかで、明確に確認することができます。

 もう一つは、自分自身がプレゼンの聞き手になっているとき、特に最後の質疑応答の時間には、必ず質問をすること。これは、聴衆に許された、ほぼ唯一の能動的な行為であると同時に、短い時間に簡潔に話すことで相手から何らかのレスポンスを引き出す――ごく短いプレゼンそのものです。

 ただし、エンジニアというのは、要するに『何かを作る人』。ハードであれソフトであれ、何かしらのモノを作るプロセスを見ている経験とバリューは、話を組み立てることにも通じるはず。細かい“話すテクニック”は後からでも身に付く。まずは話の中身をこそ、磨くよう務めてください」


澤円氏
澤 円(さわ まどか)氏 日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。その後、競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長をなどを歴任。11年7月、クラウド&ソリューションビジネス統括本部 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。
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