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ITバブルからの景気回復、リーマンショック、震災、そして現在…
エンジニア採用動向とTech総研の11年間を振り返る
エンジニアのための仕事応援サイトとしてTech総研が立ち上がって早11年。エンジニアを取り巻く環境はどう変わってきたのか。
(総研スタッフ/タニー只野)作成日:14.03.28
Introduction

 2003年にリクナビNEXTのエンジニア向け情報サイトとしてスタートしたTech総研。スタート時は「エンジニアのための『いつかは転職』ブレーン」として、現在は「エンジニアのための『仕事・職場・転職』応援サイト」として、エンジニアを取り巻く雇用やキャリア形成に関する情報提供を行ってきた。スタートから実に丸11年が過ぎ、当時と現在とでは、IT・モノづくりの雇用環境は大きく変化している。これまでどのような変遷をたどってきたのか、今回、エンジニアの雇用環境の変化を中心に、Tech総研11年の歴史を振り返ってみたい。

「採用天気予報」に見る、求人環境の変化

 サイトオープン時から連載している「採用天気予報」。これは、エンジニアの職種を8分野(2003〜2005年までは6分野)に分け、それぞれの求人トレンドを3カ月に一度紹介する記事だ。転職の成功率は採用市場に大きく影響されるため、求人トレンドを把握してキャリアパスや転職を検討してもらう狙いで続けてきた。

 この連載で紹介された求人動向のうち、天気マークを数値化し、年次のグラフにしたのが以下の図である(8分野をグラフにすると非常に見づらいため、IT・モノづくり・素材系の3分野にまとめた)。

グラフ:「採用天気予報」に見る、求人環境の変化

 11年を振り返ってみると、3分野ともに、求人動向は2006年をピークとして、2009年に大きく落ち込んでいる。雇用は景気をすぐに反映するのではなく、数カ月ほど遅れて影響するため、2008年のリーマン・ショックの大きな雇用インパクトは2009年に訪れているものとみられる。また、2009年に大きく落ち込んだ求人動向だが、再び上昇を続けリーマン前まで盛り返しつつあるIT系に比べ、モノづくり・素材系はいまだ苦戦を続けている。

 変化の大きいエンジニアの雇用環境。これまでの採用動向や流行りのキーワードとともに振り返ってみよう。
 ※注※データ、動向とも2003年4月〜2013年6月までのものです。

「採用天気予報」イラスト
2003年:エンジニアの転職市場は拡大傾向
ITビジネス:晴れときどき曇り ソフト技術:晴れときどき曇り 通信・ネットワーク:晴れときどき曇り
電気・電子系:晴れ 機械・メカトロ系:晴れ バイオ・化学系:晴れ

 中国を中心とした製造業のアジア設備投資も回復し、DVD、PDPなどデジタル家電、カメラ付き携帯電話、さらには自動車向け受注が堅調な電気・電子、メカトロ、機械などが中心になって、転職マーケットは拡大傾向。
 この年のIT系の転職市場で注目された職種は、コンサルタントとWeb技術者。特にERP、CRM、SCMプロジェクト経験者は、コンサルティングファームから引き合いが強く、また、Webエンジニアは大手からベンチャー企業までいずれも人気で、Java、XML、DBなどのスペシャリストが高く評価される傾向に。
 モノづくり系ではデジタルカメラのメガピクセル競争により、画像処理アルゴリズムの研究開発といった求人が目立った。素材系では、有機EL、PDP、液晶という新世代ディスプレイの材料開発、半導体回路設計ができる「ディスプレイ・デバイス・エンジニア」が人気に。

Tech総研メモ

 燃料電池の実用化がスタートしたことを受け、この年は「自動車業界TOP企業に聞く☆次世代エンジン開発最前線」「好調な自動車業界!変貌する“生産技術”の現場」など、次世代エンジンの開発に取り組み業績好調な自動車業界を積極的に取り上げている。開発者たちの努力の結果、当時まだ珍しかったハイブリッド車がいまは世界レベルで販売実績を上げ、自動車業界を牽引している。


2004年:すべての職種が晴れマークに
ITビジネス:晴れ ソフト技術:晴れ 通信・ネットワーク:晴れ
電気・電子系:晴れ 機械・メカトロ系:晴れ バイオ・化学系:晴れ

 輸出やデジタル家電などの需要に支えられて日本経済は順調に回復、景気は上向きとなり企業の設備投資も活発化した2004年。これまでデジタル家電と自動車頼みだった市場にも、ようやく通信、IT、ソフトの主要プレイヤーが復帰。全分野、求人マーケットは晴れマーク。
 IT系では金融系業務知識を持つエンジニアが人気。また、システム環境の移行に伴い、Linuxに長けたエンジニアのニーズも高かった。2003年同様、デジタル家電や自動車の好調を受け、組み込み系や制御系のソフトエンジニアも求人は増加。また、中国に進出する企業が増加していることから、現地と国内のスタッフをつなぐ「ブリッジSE」も採用市場の話題のキーワードに。
 モノづくり系では、デジタル景気の影響でC-MOSやCCDなど画像系技術が人気。好調な自動車業界は、大手完成車メーカー、サプライヤーから中小企業にいたるまで、求人のすそ野が大きく広がった。

Tech総研メモ

 2003〜2004年に大いに盛り上がったデジタル景気。では実際に働くエンジニアがこの景況をどう捉えているのか、「緊急座談会☆デジタル景気はエンジニアを幸せにしたか」という企画でアンケート調査を実施。記事によると、回答者の約半分が「労働時間が増加した」と回答。また、残業が増えたことが影響しているのか、60%が「年収が上がった」と答えている。


2005年:景気回復に伴い採用はさらに増加
ITビジネス:晴れ ソフト技術:晴れ 通信・ネットワーク:晴れ
電気・電子系:晴れときどき曇り 機械・メカトロ系:晴れ バイオ・化学系:晴れ

 全般的な景気の回復基調を受けて、企業は新卒、中途ともに人材採用を増やした2005年。なかでも目立つのはIT、自動車関連、金融などの業界で、求人数はいずれも前年同期を大幅に上回る。2005年4月には個人情報保護法が施行され、ネットワークエンジニア、セキュリティスペシャリストのニーズも高まった。
 IT系では、民間企業のIT投資や、金融、自治体、官公庁系のシステム案件の活発化によるSIer、コンサルタントファームの求人増が目立った。なかでも金融系は銀行、ノンバンク、クレジットカード会社などの統合・再編が進んだことで、新規のシステム案件が発生。大量採用の要因となった。なお、このころ採用市場で人気の職種は「ITアーキテクト」。
 モノづくり系では、活況を呈していたデジタル家電の売れ行きがピークを過ぎて、企業業績の勝敗も明確に。エレクトロニクス業界の求人は、自動車以外は踊り場の空気が漂い始める…。
 バイオ・化学 系は、バッテリー材料、電子デバイス・自動車用材料、そのほかの機能性・工業材料などの分野で、幅広い求人が見られ晴れマーク。

Tech総研メモ

 この年、青色発光ダイオード(青色LED)の発明対価を巡る中村修二氏と日亜化学工業との間で争われていた裁判が、和解という形で決着した。和解勧告の金額は6億857万円。日夜研究開発を続けるエンジニアの地位向上のために行ったこの裁判について、中村氏の胸中を緊急取材。「エンジニアはジャパニーズドリームを見よ」という中村氏の心強いメッセージを、ぜひご覧いただきたい。


2006年:絶好調の「快晴」マーク登場!
制御系SE:晴れ アプリ系SE:快晴 コンサルタント:晴れ 通信・ネットワーク:晴れ
電気・電子系:晴れ 機械・メカトロ系:晴れときどき曇り 半導体系:快晴 化学・材料系:晴れ

 景気の回復傾向は確実なものになり、企業は軒並み設備投資や生産を拡大。エンジニア採用ニーズは各業種・職種で近年まれにみるレベルまで高まった。バブル期に匹敵するような設備投資の拡大で、企業の人手不足感が根強くなった一年だ。2006年7〜9月期からは「快晴マーク」が新たに加わった。これは、「あまりに求人が多すぎて晴れマークでは足りない」という多くのキャリアアドバイザーからの要望で、新しく追加したマークだ。2006年の求人動向の活況具合がよくわかるエピソードといえるだろう。
 また、2005年までは6職種で求人動向をお伝えしていたが、「『ソフト技術』にはWeb系と組み込み系が含まれ、両者は必要とされるスキルも求人業界も異なる」「『素材系』でも半導体は特殊である」といった意見が複数のキャリアアドバイザーから挙がったことから、2006年からは職種を整理し8職種にしている。
 大手家電メーカーが自社開発にシフトし、組み込みエンジニアの人手不足が深刻化。また、業界再編と個人向け投資商品などの新商品開発により、金融業界は引き続き採用を強化。そしてポータル、EC、音楽・動画配信などの、いわゆるWeb2.0(!)的なサービス分野から、求人案件がひっきりなしに出る年となった。
 フラッシュメモリーの大増産で、工場の拡張・新設など数千億円規模の設備投資が始まり、半導体業界は絶好調。半導体業界の採用はこの年がピークである。また、2006年はナンバーポータビリティ制度の導入が始まるため、携帯キャリアは顧客争奪戦に向けて端末機種の開発に携わるエンジニアの採用を本格化。
 化学業界は自動車、エレクトロニクス産業の好調に牽引され、軒並み好決算。慢性的な人手不足が顕在化し、まれにみる中途採用ブームに。2006年は、いずれの業界も超売り手市場となった。

Tech総研メモ

 企業の採用強化が相次いだ2006年。外資系の大手IT企業人気Web企業大手ベンダー、日本国内の企業でも、急成長のIT企業大手ポータル大手自動車メーカー、普段はあまり中途採用が多くない重厚長大企業まで、採用ニーズの高まりを感じられるような採用系の記事が多い年となった。この傾向は2007年も続く。
 なお、「ユビキタスの扉を開く無線ブロードバンド」「Bluetooth/ユビキタス時代到来でいよいよ開花!」「GIS/ユビキタス社会に不可欠の位置情報」「20XX年のユビキタス、ロボット、Web」など、“ユビキタス”という用語も目立つ一年だった。


2007年:採用現場では人材の奪い合いに
制御系SE:晴れ アプリ系SE:快晴 コンサルタント:快晴 通信・ネットワーク:晴れ
電気・電子系:晴れ 機械・メカトロ系:晴れ 半導体系:晴れ 化学・材料系:晴れ

 エンジニアの採用は依然続き、自動車業界、とりわけ完成車メーカーにおける人手不足は深刻で、採用基準のダウンは止まらない。電子部品業界、機械・メカトロ業界も同様だ。制御・組み込み系では装置、自動車、携帯電話関連で採用意欲に高止まりが続き、アプリケーション開発系でも金融、製造、流通、インターネットビジネスなど全方位にわたって採用が活発化。また、2008年度決算から施行される日本版SOX法により、コンサルティングファームや監査法人の人材獲得合戦が開始。このころ、売り手市場という背景と、時短ブーム、企業の業績アップによる労働時間の増加から、ワークライフバランス重視で企業を選ぶエンジニアが増加した。
 メカトロ設計技術者の人材不足は深刻で、自動車業界では完成車とサプライヤーが人材の奪い合いをするような状況に。対してメモリ汎用品やシステムLSIを主軸にする半導体の大手業界は後半に従い採用は鈍化。半導体は世界的競争が厳しく製品単価の値崩れも激しいため、採用強化戦略が打ち出せないことが原因とみられる。
化学系では、海外の発電所プラント需要により、エネルギー産業の企業がかつてない規模での中途採用を展開した。

Tech総研メモ

 取引先から委託されたシステム案件を担当するのではなく、自社内のシステム導入や再構築の担当者である社内SEを志望するエンジニアが増加。このため「人気高まる社内SEへのキャリアチェンジ」という記事を特集した。記事内のアンケートでもご紹介しているが、ITエンジニア3000人へのアンケートでも、転職したい職種(複数回答)のランキングでは、社内SEは41%と第2位の人気となっている。


2008年:好調な前半に対し、衝撃の後半へ
制御系SE:晴れ アプリ系SE:晴れ コンサルタント:快晴 通信・ネットワーク:晴れ
電気・電子系:晴れときどき曇り 機械・メカトロ系:晴れ 半導体系:晴れときどき曇り 化学・材料系:晴れときどき曇り

 サブプライムローン問題に端を発する米景気の減速傾向が鮮明になっていくなかで、とうとう9月にアメリカの投資銀行、リーマン・ブラザーズが破綻した。これにより連鎖的な金融危機が発生、その余波は日本経済にも及んだ。2008年後半、採用現場に大きく陰りが見え始める。2006年から出現した「快晴マーク」は2008年7〜9月期で終了し、以降、このマークが出ることはない。要するに、2006年7〜9月期から2008年7〜9月期のちょうど2年間が、日本の好景気時代だったのではないだろうか。
 前半は絶好調だったシステム投資によるエンジニア採用も、終盤には採用が控えめに。制御系では家電業界、携帯電話業界で横ばい、減少傾向。自動車は依然堅調ではあるものの、採用企業は限られ始める。唯一、コンサルタント分野は活況が続くも、第二新卒の採用は減少に。
 モノづくり系では、クリーン・エネルギーや省エネという社会的要請の高まりが背景にあり、発電プラント設計や制御系技術、電池では二次電池、太陽電池などに関する研究開発職の需要が活発化。同様に、主にモーターを効率よく回す用途で使われるパワー半導体があらためて注目を集める。しかし絶好調だった家電業界は液晶薄型テレビの事業再編が進み、FPD事業撤退による人材流出が始まる。また、長く採用ニーズを牽引していた自動車業界も、採用は継続するも少しずつ落ち着きを見せ始めた。

Tech総研メモ

 2008年の前半は、おおむねどの業界も採用が活発だったため、「活躍の場は宇宙!UFO開発エンジニア大量採用の衝撃(注:エイプリルフール企画です)」などと浮かれた記事を作っていたが、9月の金融危機以降、記事の方向性は世相を反映し圧倒的にシビアな内容へ。「まさかうちの会社が…倒産完全対策マニュアル」「悲惨な景気…今、知っておきたい転職必勝法 準備編」「悲惨な景気…今、知っておきたい転職必勝法 行動編
 もうひとつ、2008年はWinnyの開発者、故・金子勇氏にインタビューさせていただいたことを挙げておきたい。係争中だったこともあり、当時金子氏の個別インタビュー記事はほとんどなく、緊張してお伺いした結果が「金子勇@SkeedCastは、根っからのプログラマ!」の記事だ。誰もがファンになる明るい笑顔の天才プログラマ。心より御冥福をお祈りいたします。


2009年:急速に冷え込む転職市場
制御系SE:曇りときどき雨 アプリ系SE:晴れときどき曇り コンサルタント:曇り 通信・ネットワーク:曇り
電気・電子系:曇り 機械・メカトロ系:曇り 半導体系:曇りときどき雨 化学・材料系:晴れときどき曇り

 リーマン・ショックに象徴される米国金融危機は、製造業など産業界全体におよび、株式と消費マーケットを揺るがした。すぐに日本にも影響し、底の見えない不況が日本経済を覆う。それは製造業の雇用や労働環境にもすぐさま反映し、業界によっては「快晴」まで見せていた採用市場の盛り上がりから、一気に雨を伴う曇り空に変えた。
 この時期でも比較的健闘しているのがIT・アプリケーション系の求人。逆に制御系エンジニアの求人は激減し、わずかに残るのは一部の通信キャリアやパチンコなどの遊戯機器業界。活況だったコンサルタント分野では、製薬や医療機器などメディカル全般、大手通信キャリア、物流(SCM)関連の業界でニーズがある程度と、軒並み厳しい状況に。
 モノづくり系では大手メーカー各社の業績下方修正に転職市場も影響を受け、エレクトロニクス分野では「応募者100人に対して採用枠は1人」くらいの狭き門へ。機械・メカトロ分野では、自動車業界の陰りと対照的に、プラント設備、発電、飛行機などの重工・重電系の求人が根強く残った。
 何よりも厳しいのが半導体業界で、業績悪化にあえぎながら生き残りをかけて企業再編を模索しており、採用どころではない状態。化学・材料系も電池や環境対応車関連を除いて求人は低迷を続けたままだ。

Tech総研メモ

 2008年に日本で発売が開始されたiPhoneをはじめとして、2009年はスマートフォン利用者が増加した年となった。利用者増加に伴いアプリ開発に注目が集まり、大きな話題となった「セカイカメラ」など、アプリ開発の現場を取り上げる機会が増えた。これ以降、スマートフォン対応のゲームアプリやコミュニケーションアプリが大流行し、関連するIT企業が著しく成長することになる。


2010年:とうとう雨が降り出す業界が出現
制御系SE:曇りときどき雨 アプリ系SE:晴れ コンサルタント:晴れ 通信・ネットワーク:曇り
電気・電子系:曇り 機械・メカトロ系:曇り 半導体系:雨 化学・材料系:曇り

 リーマン・ショックを克服し、ゆっくりではあるものの回復してきた日本経済。しかし内需で回復というよりは、グローバルな需要が回復の主たる要因。グローバル市場の動向が、今後の本格的な景気上昇局面を左右すると考えられるようになり、この年から「グローバル」「語学力」といったキーワードが頻出するようになった。
 IT系では、Eコマース、SNS、ポータルサイト、ネット広告、あるいはソーシャルアプリ事業などを展開する、ネット系企業の好調が続く。ソーシャルアプリの開発と、高トラフィック、高負荷に耐えるサーバーの構築・保守の両面でニーズが拡大した。また、コンサルティング分野では、IFRS(国際財務報告基準)が注目キーワード。グローバル連結会計が必要な企業では対応を迫られ、採用は活発化し続けた。ネットワーク系では、サーバーを仮想化して運用するデータセンターや企業が増えたことにより、「仮想化技術」をキーワードにした求人が目立つようになった。
 モノづくり系では、自動車サプライヤーが採用復活。モーター、ハーネス、ブレーキシステム、ギアなどの車載技術はもとより、生産技術や車両の材料開発なども含めた多くの分野で求人が全開した。しかし半導体業界は相変わらず厳しいまま、ついに求人動向は雨模様に…。

Tech総研メモ

 2010年は「ソーシャルゲーム」「クラウド」のキーワードが花盛り。なかでも「ソーシャルゲーム」の領域は、SNSプラットフォーム系企業だけでなくソーシャルアプリ開発を行う企業も積極的に採用を行っており、LAMP(Linux、Apache HTTP Server、MySQL、Perl、PHP、Pythonなどの頭文字からなる)経験者の人気が急増した。


2011年:業界によっては採用は回復傾向へ
制御系SE:晴れときどき曇り アプリ系SE:晴れ コンサルタント:晴れ 通信・ネットワーク:曇り
電気・電子系:晴れときどき曇り 機械・メカトロ系:晴れときどき曇り 半導体系:曇り 化学・材料系:晴れときどき曇り

 職種によっては2月の求人総数は前年同期比の1.5倍とするところもあり、製造業全体の新興国向け輸出増加や設備投資の活性化が雇用にも反映。しかし、3月11日に大地震と大津波、そして福島原発事故が東日本を襲う。
 一年を通して、制御系では自動車、自動車サプライヤー、FAの求人が多い。また、LTE(Long Term Evolution)本格普及を見据えてか、通信装置や通信インフラ系のメーカーで求人が増えた。Web系では引き続きソーシャルゲームが隆盛を誇る。LAMPだけでなく、iPhone、AndroidのOSや開発環境の知識、Objective-C、Javaの経験も大人気だ。ソーシャルゲーム人気に伴い、インフラエンジニアへの求人も高止まり。コンサルタント分野では、会計、IFRS(国際財務報告基準)、SCM、金融業界のM&Aに伴う業務改革といった案件関連で求人が続く。
 モノづくり系では新興国向けの自動車輸出の拡大で、自動車サプライヤーが回復し始める。広くは電子制御ユニットにかかわる技術で、EV、HV系の需要も。また世界的なスマートフォン需要の拡大の影響か、電子部品・電子デバイスメーカーからの求人も目立つようになった。なおずっと不振が続いていた半導体だが、ようやくフラッシュメモリや電源ICなどの設計エンジニアの採用が回復してきた。降り続いた雨がようやく止んだ模様。自動車や半導体の回復に引っ張られ、化学・材料系も緩やかに上昇カーブ。

Tech総研メモ

 震災後に陥った深刻な電力不足。「電力不足への有望株、エネルギーハーベスティング」「電気が足りない!省エネに賭けるエンジニアたち」「電力分散ニーズで脚光!燃料電池“エネファーム”」など、技術力を駆使して電力不足に立ち向かおうとする記事が目立った年だった。


2012年:モノづくり系で増える特定派遣
制御系SE:晴れときどき曇り アプリ系SE:晴れ コンサルタント:晴れ 通信・ネットワーク:晴れときどき曇り
電気・電子系:晴れときどき曇り 機械・メカトロ系:晴れときどき曇り 半導体系:曇り 化学・材料系:晴れときどき曇り

 ヨーロッパの経済不安がギリシャからスペインへと広がり、円高は高止まりを続けたまま。メーカーの新興国シフトも現地でのシェア争いは過酷であり、日本経済は足踏み状態の2012年。
 この年、モノづくり系で大幅に増えたのが特定派遣会社からの正社員求人だ。電気、機械、素材とモノづくり系の多くの分野で採用数を大きく伸ばしている。これまでの採用の中心はメーカーだったが、分野によっては求人の3〜5割が特定派遣会社からというケースもあり、採用側の顔ぶれは大きく変化してしまった。
 IT系は2011年に引き続き、ソーシャルゲーム関連職の採用熱が変わらず旺盛。大手SNSからSAP(ソーシャル・アプリケーション・プロバイダー)、ゲームメーカーまでが幅広い技術職種を募集している。求められるスキルはLinux、UNIX、Java、PHP、Ruby、Objective-Cなど。ただ、海外進出に熱心な大手プラットフォーマーへの転職は、豊富な技術力に加えて英語力も求められるため、以前よりもハードルが高くなった。このころのネットワーク業界での注目キーワードは「クラウド」「仮想化」「通信領域」。VMwareやCitrixといった「仮想化」の知識は高く評価される傾向に。また、クラウド化でコストを削減するため、社内に専門のネットワークエンジニアを置きたい企業も増加。通信系では、LTEや4G移動体通信の展開に向けた需要を背景に、通信機器メーカーからの求人が見られている。

Tech総研メモ

 ソーシャルゲームやアプリ開発などWeb業界で人材ニーズが高まった2012年、目立ったのは「SIからWeb業界への転職」という動き。SIと比較すると開発スタイルはスピーディで柔軟性が高く、自分が携わったサービスに対して、ユーザーからの反響が比較的早く得られるという魅力から、SIから転身するエンジニアが増加した模様。SIとWebの違いを、「SIからWEBへ…転職組vs残留組の生声レポート!」で、実際に働くエンジニアの生声とともにレポートした。


2013年:数多くの分野で景況感は急回復
制御系SE:晴れ アプリ系SE:晴れ コンサルタント:晴れ 通信・ネットワーク:晴れ
電気・電子系:晴れときどき曇り 機械・メカトロ系:晴れときどき曇り 半導体系:曇りときどき雨 化学・材料系:曇りときどき雨

 アベノミクス効果がエンジニア転職市場にも現れたのか、数多くの技術分野で景況感が急回復している。求人が増加したのは「制御系SE」「電気・電子系」「機械・メカトロ系」「ネットワーク」の4つ。ほとんどがメーカー、あるいはメーカー関連企業の中核職種である。 求人を引っ張るのは相変わらず自動車業界だが、ニッチ産業メーカー、産業機械メーカー、プラントメーカー、家電はメーカーからの求人は少ないものの、その制御ソフトを受注するソフトハウスが絶好調など、求人数だけでなく求人業界が拡大している。
 注目業種として「通信・無線」が登場。携帯電話だけでなく、デジタル家電全般に通信機能が搭載されるようになり、続いて自動車業界向けや産業機械メーカーからも無線・通信関連の技術者ニーズが高まる。
 IT系では、SI企業のSE採用は非常に活況。また、以前から話題になっていたビッグデータ/データサイエンティストなど、DBのプロを採用する動きが本格稼働し始めた。
 モノづくり系では、2012年に引き続いて自動車が市場を牽引し、特定派遣会社が採用強化している構図は変わらない。半導体は、採用を強める企業の数は限定的ではあるが募集は行われている。化学・材料系は、中小の独立系化学メーカーからの求人が増えている。

「給与WAVE!」に見る、エンジニアの給与推移

 11年間の企業側の雇用環境はこれまでお伝えした通りだが、雇用の変化とともに、エンジニアの待遇はどのように変化してきたのだろうか。本項では、「採用天気予報」と同じく長期連載の「エンジニア給与知っ得WAVE!」から、過去9年のエンジニアのボーナス額の推移を見てみたい。

グラフ:「給与WAVE!」に見る、エンジニアの給与推移

 グラフにしたのは2004年から2012年までの冬のボーナス額だ。全体の平均額は、2006年にピークを迎えて、2009年に大きく減少。その後少しずつ増加している。この動きは、冒頭にご紹介した求人動向グラフの全職種の平均値とよく似ている。もちろん、業種や職種によって連動しない場合もあるかもしれないが、全体的には業界の景気がよくなり採用が活発化すると、待遇にも反映されることを裏付ける結果となった。

最後に

 過去11年間のエンジニアの採用動向。半導体やソーシャルゲームのように、1〜2年で大きく雇用環境が変化した業界や、特定派遣企業に代表される、以前にはない業態の求人企業の台頭など、雇用は変化を続けている。人材の需要と供給のバランスによって採用基準の厳しさは調整されるため、同じ経験・スキルを持っていても、転職のタイミングによっては合否が変わってくる。

 もしあなたが転職を検討しているのであれば、いま、希望している業界の採用動向がどのような状況にあり、募集内容に対してどの程度採用要件を満たしているのかを確認してから活動を始めることをお勧めしたい。売り手市場であなたの希望が叶えられそうな状況なのであれば、積極的に企業との出会いを増やし、キャリアの可能性を探ってほしい。逆にもし採用動向が厳しい業界なのであれば、今いる会社を離れることが本当にあなたのメリットになるのかをよく考えてから動いたほうがいいかもしれない。

Tech総犬

 常に技術が進化していくように、今後も、エンジニアの雇用環境は変化し続ける。今よりもっとエンジニアが働きやすい社会へ。Tech総研は、エンジニアの仕事とキャリアを応援しています!

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