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たった1台のサーバやLAMP環境構築が新たな可能性を切り拓く

運用保守監視から設計構築への
“リアル脱出計画”

運用保守監視エンジニアの多くが目指す設計構築への道だが、そこには「キャリアの壁」が昔も今も立ちはだかる。しかし設計構築エンジニアが不足し、なおかつ採用ニーズが高まっている今、まさにその壁を越えるチャンス。その中で壁を越えるアドバイスを専門家に聞いた。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:14.02.13

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株式会社クライス&カンパニー
グループマネージャー シニアコンサルタント
半藤 剛氏

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アイム・ファクトリー株式会社
HRコンサルティング事業部 コンサルタント
宮田 望氏

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アクシスコンサルティング株式会社
エグゼクティブコンサルタント
田畑 孝氏

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田畑 孝氏

運用保守→設計構築へ、インフラエンジニア中途採用市場の最新動向


まず現在、ネットワーク・サーバ系を中心としたインフラエンジニアの中途採用市場の動向について、その現状を把握したい。
今回取材した3名の専門家からは、揃って「インフラエンジニアの採用ニーズは特にこの1〜2年で、増加している」と指摘している。

「特に自社でBtoCのWebサービスを手がけている企業を中心にこの1年で、インフラエンジニアの採用ニーズは明確に増えてきています」(宮田氏)
「通信キャリアの需要をはじめ、Webや仮想化、クラウド関連など、SIの募集も増えています。この分野の一般的なトレンドとして、“採用ニーズが増えるとマッチした転職希望エンジニアが減る”傾向が強く、今はまさにその時期にある、というのが実感です」(半藤氏)
「当社はおもにITコンサル系の企業を多く受け持っていますが、そこでもインフラの設計構築を担うエンジニアの採用ニーズは数年前から根強くあります」(田畑氏)

そしてその主要ターゲットとして浮かび上がってくるのは、「20代中盤〜30代前半までの運用保守監視エンジニア」だ。
本来、採用企業側としては即戦力となる設計構築エンジニアを求めている一方、このクラスのエンジニアがこと採用市場において圧倒的に不足している、という現実がある。
その結果、ある一定のボリュームゾーンがある、サーバやネットワークの運用・保守・監視業務を数年経験している、若手インフラエンジニアにターゲットを切り替えて採用活動を展開している、というのはここ1年の大きな流れだ。

一方、応募者側も「より上流工程にチャレンジしたい」「もう何年も同じ顧客の元で運用を担当し、技術的な成長が停滞しているため、新たな環境で成長したい」というような思いを持つエンジニアが「運用・保守・監視からの脱出」を図って転職を求めるケースが確実に増えているという。

運用保守から設計構築にキャリアチェンジする際の“3つのハードル”


しかし、運用保守監視経験のあるエンジニアであれば、誰もが設計構築にキャリアチェンジできるわけではない。
半藤氏によると、この1年で運用保守監視エンジニアの応募者が、目標とする設計構築業務で活躍できるポジションに転職できたケースはそれほど多くなく、企業と転職希望者とのギャップは大きいという。
「実際に転職できた方々も、最初から設計構築業務を担当できるケースは少なく、入社当初はこれまで同様、運用保守業務からスタートし、その後設計構築業務へと進むことを想定したケースが多いです」(半藤氏)

なぜ理想の企業に転職できないのか?
その大きな要因は「設計構築」にチャレンジしようとする、エンジニア自身の普段の取り組み方や姿勢によるところが大きいという。
例え設計構築の業務経験がなくても、運用保守監視の業務を担当しているころからすでにこの先、設計構築エンジニアになるために必要なスキルや知識、経験が何なのか、ある程度理解することは可能だ。
そこで現状のポジション・環境下において、努力次第で必要なスキルを身に付けられるものは積極的にキャッチアップしていく姿勢や努力を継続していくことが、採用面接時の評価に大きく影響を与えることになるという。
もちろん、そこで特に努力もせず、現状の運用保守監視業務を淡々とこなすだけの毎日を繰り返しているエンジニアにとって、設計構築へのハードルが高くなるのは言うまでもない。

また宮田氏は、エンジニア自身の“ある志向性”が、転職難易度を高めていると指摘する。
「当社の場合、多くの方が業務時間外に自らLAMP環境を構築してみたり、またベンダー系の資格を取得したりと設計構築にチャレンジするために必要なスキルを高める努力をしています。
ただそうした方でも理想通りのポジションに転職できないことはあります。そのひとつが、『自社サービス至上主義』に縛られている点。設計構築をやるならSIよりも自社サービスを展開している企業の方が、やりたいことができると考えている方が非常に多い。でも実は自社サービス企業の方が設計構築に携わる機会が少なかったり、実際に携わるとしても求められるスキルレベルが非常に高度の場合が多いのです。
そこでスキルアップを考えての転職を希望されている方には、このような実情をお話しすると共にSI企業への転職も視野にいれての活動をアドバイスさせていただくことがあります」

また田畑氏からは「採用企業側と応募者側、双方が求める“別の志向性”のギャップ」も、運用保守から設計構築にキャリアチェンジする難易度を高めていると指摘する。
「当社が担当するITコンサル企業の多くは、設計構築から運用まで全体の専門技術を深く理解している方を求めていて、入社後は現場の第一線で活躍。その後ゆくゆくはITアーキテクトやITコンサルタントとしてキャリアアップしてほしい、という思いがあります。
一方、当社に来る運用保守のエンジニアの方は将来コンサルタントを目指す方が多いからか、意外にも転職先では技術から離れてより上流工程に早くチャレンジしたいという思いを持つ方がいます。
そのため、採用企業側の求める人物像やキャリアパスをきちんとお伝えして理解をしてもらい、まずは現場で今までの運用保守エンジニアのご経験・スキルを生かして成果を出していただきます。その上で、キャリアアップをしていくようアドバイスをすることで、ギャップを埋めるようにしています」

運用保守から設計構築にスムーズにキャリアチェンジするために今、すべきこと


では、これから設計構築を目指す運用保守監視エンジニアが、これまで紹介したさまざまなハードルを乗り越え、スムーズに転職するためには、どうすればいいのか?
今回取材した3名の専門家からのアドバイスは、やはり日ごろからの「自己啓発」を地道に取り組むこと。さらに普段の業務でも、自分の担当領域以外にもチャレンジしていく姿勢が求められるという。


半藤氏:どんな資格を取得したか、ではなく“資格取得の過程”を見ることで「ポテンシャルやのびしろ」をチェック
   
資格の取得に関しては、ベンダー系でもITマネジメント系でも特にこの資格を取ればOK、というものはありません。
それよりも「その資格をなぜ取得したいのか?」「どのくらいの期間(スピード)で資格を取得できたのか?」「その資格を現在の業務にどのように活かしているのか?」など、資格取得のための目的や手段、過程などを企業側は見ています。
また普段の業務でも、現状のシステムや業務フローなどに対して課題意識を持ち、それを改善するアイデアを考え、周りの上司や先輩に話して、実行に移し成果を出す。成果自体が大きなものではなくても、成果を出すために自ら考え、提案し、行動しているというプロセスやマインドを、企業側は高く評価します。
この2点に関して積極的に取り組むことで、その人が持つ「ポテンシャル」「伸びしろ」を企業側は評価するのです。ポテンシャルが高ければ、「入社後からでも設計構築の技術的な知識・ノウハウのキャッチアップは十分可能」と判断されるため、結果的に設計構築のポジションへのキャリアチェンジを実現できる可能性が高くなります。


宮田氏:小規模でも自ら設計構築にチャレンジする「ちょっとした努力」が重要

個人的には、資格を取得するよりも自ら設計構築にチャレンジすることのほうが、採用企業側から高く評価される
と考えます。一昔前と比べて、今はLAMP環境や仮想環境を低コストかつ簡単に自分の手で構築できる便利な時代。
そこで、できる範囲で実際の業務環境をプライベートで再現してみるチャレンジは、設計構築にキャリアチェンジする上で必要不可欠だと考えます。Linux等のOSからミドルウェアやアプリケーションまで一通り設計構築するのがベストですが、ロードバランサーを構築してみるだけでも、企業側の評価は違います。
私が担当する、ある企業の採用担当者が「150円のジュースを2つ買うのを我慢して、300円のレンタルサーバを借りる姿勢を評価したい」と話した言葉が強く印象に残っていますが、そうした「ちょっとした努力」を示すことが重要なのです。


田畑氏:たった1台のサーバを自ら工夫&活用して環境構築を図る努力

採用企業側が設計構築エンジニアとして求めるレベルというのは、「一人称で構築ができて、その構築ノウハウに関するアドバイスを周りの仲間にわかりやすく説明できる」
ということ。一見すると非常にハードルが高いように思われますが、決してそんなことはありません。
まず1台で結構なので、安価なサーバを自宅に設置。その限られた環境の中で、どうすれば理想的な環境を構築できるのか、自分なりに考え、工夫しながらチャレンジすることで、設計構築を考えるベースとなる知識を高めていくことが重要です。
それとともに普段の業務でも、例えば自分が携わっている運用業務の設計書を閲覧してわからないことを先輩に質問することで、技術的な知見を収集する。実はそうした経験を積むことで、技術的な知識以外にもロジカルシンキングやヒアリング能力、調整力、提案力、課題解決力など将来、上流工程やコンサルタントとして活躍するために必要不可欠なスキルを高めることにもつながるのです。

運用保守のキャリアにこだわっていくべきタイプとアドバイス

ここまで運用保守監視から設計構築にキャリアチェンジを志向するエンジニアに対する問題点やアドバイスについて取り上げてきたが、その一方でタイプによっては、運用保守エンジニアとしてのキャリアを追求したほうがいいケースもある。
そこで最後に、3名の専門家からそれぞれ運用保守に向いているタイプと、その道でキャリアアップしていくためのアドバイスを伺った。

半藤氏:ユーザー視点をお持ちの方は運用保守への適性が高い

運用保守は、一番ユーザーに近い位置で業務を行っています。そのため、ユーザーの視点で物事を考え、ユーザーのために貢献したいという思いをお持ちの方は、運用保守の道をそのまま進むのもひとつの選択肢だと思います。
その中で、ユーザーや業務に対する理解を深めながら、より大規模なインフラ運用に挑戦し、効率的な運用保守ノウハウを考え体系化して横展開することで、多くの顧客が抱える運用保守トラブルを解決することに全力を尽くす。そうしたやりがいを追求し、運用保守スペシャリストとしてバリューを発揮するのもキャリアパスのひとつです。


宮田氏:スペシャリスト志向の方こそ、運用保守を極められる

実は設計構築よりも運用保守分野のエンジニアの方が、スペシャリストタイプが多いと感じています。一見、運用保守業務は決められたルーティン業務を淡々とこなすイメージがありますが、実際には一つのシステムにじっくりと取り組める環境と、必ず数年に一度はシステム全体のリプレイス案件が発生しています。
そうしたタイミングで、自ら手を挙げてより効率的な運用の仕組みを提案したり、その上で設計構築のフェーズにも関わっていくチャンスが必ずあるはず。そのチャンスを見逃さないためにも、普段から先ほど触れたようにできる範囲で設計構築にもチャレンジしたり、自ら運用設計を行い運用改善の提案を行う運用コンサルタントとしてのキャリアもあります。
このように運用の仕組み自体を改善するアイデアを出し、形にしていく努力が運用保守エンジニアとして成長していくために必要だと考えます。


田畑氏:運用保守は“下流”ではない!重要なポジションで仕事をしている意識を持つこと

意外に多くのエンジニアが「運用保守は、設計構築に比べて下流だ」という“誤った認識”をされています。
しかしそれは大きな間違いです。効率的かつ安全な運用保守を実現することは、システム全体の品質向上に欠かせない非常に重要な業務であることは、疑いの余地がありません。
「常に効率的な運用を実現するためにどうすべきか」という視点から、運用フローの見直しや改善案を提案、実行することで成果を出す「運用スペシャリスト」というキャリアを目指す。そこに魅力ややりがいを感じられる方であれば、ぜひこうしたキャリアをとことん追求することをお勧めしたいですね。

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