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Oculus Rift20セット以上を保有!?自称エバンジェリストを直撃!
なぜ、Oculus Riftは
エンジニア心をくすぐるのか?
バーチャルリアリティの世界に飛び込んでいくような感覚を体験させてくれる「Oculus Rift」。日本におけるエバンジェリストと言っても過言ではない近藤義仁氏に、「なぜ、Oculus Riftにハマるのか」その理由を聞いた。
(文/川畑英毅 総研スタッフ/馬場美由紀)作成日:14.02.10
VR技術に、ついに“本物”が来た

「今度こそ、これは本物だ――Oculus Riftの実物を体験した時、それを実感しました」
 と、株式会社エクシヴィ代表取締役社長、近藤義仁氏は語る。Oculus Rift(オキュラスリフト)はゴーグルのように頭に装着する、いわゆるヘッドマウントディスプレイ(HMD)の一種。ただし、最初からVRゲーム用を第一目的にうたい、民生用の既存のデバイスを組み合わせ、安価でありながら高性能を目指して作られている。


 南カリフォルニア大出身のパーマー・ラッキー氏が開発。2012年に最初のプロトタイプが公開された。その後のクラウドファンディングによる資金調達では、なんと目標額25万ドルの10倍に迫る240万ドルが集まったという。2013年春からは「開発者向けキット」の提供も始まり、体験者を中心に、さらに熱狂的な関心も広まりつつある。このOculus Riftのどこが、そこまで開発者たちの心を捉えるのか。



「今までもVR用HMDはあったが、Oculus Riftは“没入感”が全く違う。まず、今までのテレビやテレビゲーム、携帯のゲーム、それらはすべて平面だった。そこから一歩進んだものとして、3Dテレビや3D映画などというものもあったけれど、実のところ、それらは全然3Dではなかった。単に、正面の画面が若干浮き出て見えるだけ。どうしても限界がある。

しかしOculus Riftの場合は、“球”を感じることができる。画面を眺めている感覚ではなく、映像の中に自分自身が入り込む感覚を味わえる。例えばラジオからテレビの時代に移り変わったように、その次のステップとして、“VR体験”へのパラダイムシフトの転換が起きる。それだけのインパクトを持った技術だと思っています」


 ネット上では、「『ソードアート・オンライン(※1)』の実現が近付いた?」などという声もちらほら見かけるが、開発者のP.ラッキー氏自身、日本のVRアニメの大ファンなのだとか。


 2013年4月以降、Oculus Riftは、それに合わせたゲームや映像コンテンツを作るための「開発者向けキット」の提供が行われている。それも、この手の製品(しかも試作品)としては破格の、300ドルという低価格での提供である。


 近藤氏はOculus Riftを日本で広め、この技術を開花させようと、その開発者向けキットを「提供開始以来、今まで15、16……いやもう20セットを超えたかな? あちこちに貸与して、手元に少なくなると買い足しているので、もういくつかわからない」というほど買い込んでいる。さすが、Oculus Riftのエバンジェリストを自称するだけのことはある。

仮想世界に入り込みたい

 もちろん、近藤氏がここまでOculus Riftに“ハマる”には、それなりの下地がある。
「もともとゲーム好き、特に体感ゲームは大好きで、コンシューマゲームはスーパーカセットビジョンやファミコンまで、あらゆるものを買ってプレイしてきていました。ゲームプログラマとして開発したのはプレイステーション、プレイステーション2からXbox。映画の『トータル・リコール』や『マトリックス』を観て、ゲームの中、仮想現実の中に入ってみたいという夢も、ずっと抱いていました」


 しかしこれまでのHMDは、映像が四角く映っているだけ。こちらの動きにある程度連動するところまではいっても、とても“入り込む”ところまでは至っていなかった。


「その一方で、2012年ごろから、ネットを通じて不特定多数の出資者を募る“クラウドファンディング”の仕組みが拡大し始めていました。これには非常に興味を持って、実際に、iPhoneと連動するスマートウォッチ、“Pebble”にも出資しています。
そんな中、2012年の夏に、そのクラウドファンディングで開発費募集を始めたのが、Oculus Riftでした。


これまでVR用HMDといえば、どんなに安くても、周辺機器を合わせて10万円は超える。それをいくら既存のデバイスを極力使うからといっても、300ドルはあり得ない、詐欺じゃないかと疑いたくなるような値段だ、というのが最初の印象でした。しかし、だからこそ、VRができたらそれ以上にすごいことはない。

PVを観ても、そのすごさの一端は伝わってきました。僕らにとっては“3Dゲームの神様”とも言える天才プログラマ、ジョン・D・カーマック氏がこの技術を絶賛。開発者のパーマー・ラッキー氏の後押しをしている。優れたゲームエンジンであるUnityも関わっているという。『これは出資しないと!』と、即座に思いましたね。

その後、当初に予定されていた開発者キットの納期はどんどん過ぎて、『やっぱり難しいか、届いたらそれだけでラッキーかな』などと思い始めていたところ、アメリカ本国では、ちらほら届き始めたという知らせが入ってきました。そして13年の4月30日、とうとう念願のOculus Riftが届いたんです!」


 そして、冒頭の感想が飛び出した、というわけである。「今度こそ、本物」の「今度こそ」には理由がある。
「実を言えば、日本企業においてもVR技術は重要なテーマ。そしてこれまでも、およそ10年周期くらいで大きな波が起きているんです。確かにそこそこのものは作り上げているんだけれども、しかし“仮想世界に入り込む”というレベルはほとんど満たしていなくて、そのたびにガッカリしてきたのも事実。

それだけに、パーマー氏が言う『今回のOculus Riftがまた“ガッカリ”な代物だったら、また今後10年間、無駄な時間を重ねることになりかねない』という言葉に大変共感を感じています。現物が届く以前に、すでにソフトウェア開発キットはオープンになっていたので、それまでにコツコツと、デモソフトもいくらか作ってみていました。それらを動かしてみたら、むしろ期待以上! とうとう来たか、と感動しました」


 近藤氏を編集部に紹介し、インタビューにも同席してくれた増井雄一郎氏もこれには大きくうなずく。

「確かに、『これぞ本物』感、iPhoneが出てきた時のようなワクワク感を非常に感じましたね。僕も少し遅れて開発者キットを入手、今はそれ用に、ゲームエンジンのUnityの勉強をもうちょっとしようと考えているところです」

エンジニアがOculus Riftにはまる、その理由

 名だたるエンジニア、プログラマが衝撃を受け、次々にはまるOculus Rift。近藤氏も、入手直後にいくつかのデモ動画を作成してニコニコ動画に投稿。中には、現実の手の動きをトレースできるモーションコントローラ「Razer Hydra」を使い、バーチャル世界の初音ミクの髪に触ってみる、などという“うらやましけしからん”ものも。



「しかし、やはり2Dの動画ではすごさはなかなか伝わらない。やはり、実際に見て、体験しないとこの面白さはわからない。そうこうしているうち、周りにも持っている人が現れ始め、そうした人たちとも協力し合って、積極的に体験会を開催するようにしました。一時は毎週のように開いていました。イベントにも持って行ってその一角に体験スペースを設けたり。3D感触インタフェース装置の『Novint Falcon』と組み合わせ、初音ミク握手会も開催しました。



また、Oculus Riftは単に体験するだけでなく、作るほうがもっと楽しい。それなら作る人も増やそうじゃないかということで、有志を募り、Unity Technologies Japanの伊藤氏が主催する Oculus Game Jam(オキュラスゲームジャム) も一緒に開催しました」


 多くのエンジニアを惹きつける理由は、いったいどこにあるのか。近藤氏はその理由を次のように語る。
「自分たちの手で“未来”を作り出せること。それに尽きます。例えば、iPhoneの最初のモデルがアップルから発売されたのは、2007年の6月末。それから6年あまり、スマートフォンはわれわれの生活スタイルを変えるほどのインパクトを持った存在に成長した。今、このOculus Riftが登場して、東京オリンピックが開催されるのが6年後ですよね。もしかしたら、そのころにはこうしたHMDが一般化して、競技の模様をまさにその場で体験しているかのように楽しめるようになっているかもしれない。


もちろん、これはVRゲーム用を主目的に開発されたものではあるのですが、例えば恐竜が闊歩していた古代の森に行ってみるとか、教育分野への応用は十分にあり得る。建築前の建物の中にコレを使って入ってみて、レイアウトやインテリアを検討してみるといったシミュレーションやプレゼンテーションの用途にも使える。ゲームに始まり、しかしわれわれの生活や産業を大々的に変革していくインパクトを持った技術なんです」

 2014年1月7日からアメリカのラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「2014 International CES」では、早々にOculus Riftの改良型、「Crystal Cove」も公開されている。新型は有機ELディスプレイを採用して画面のブレを減少。またこれまでは顔の向きの変化を感知するだけだったのが、位置そのものを捉えるようになり、「顔を近付けて覗き込む」などの動作も可能になった。


「今はとにかくOculus Riftの面白さに大ハマリしている状態ですが、近い将来、VRの会社を立ち上げて、ビジネスとしても、この技術が定着・発展していく手助けをしたい。この技術が世に広まるにつれて、ゲーム機のときと同じように、健康面、安全面でいろいろ意見も出てくると思う。いわゆる『ゲーム脳の恐怖』みたいなヤツです。そうした点でも問題がクリアされて、ますます誰もが楽しめるようになって欲しいですね」


※1 川原礫/著『ソードアート・オンライン』(アスキー・メディアワークス刊、電撃文庫)


・PlayStationは株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの商標です。
・ファミコン・ファミリーコンピュータは任天堂の商標です。
・Xboxは、米国 Microsoft Corporation および / またはその関連会社の商標です。

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