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自動車業界各社の参入が本格的となった「自動運転車」。そのために使われる技術はセンサー、通信、ソフトウェアなどのIT系分野が中心となる。各社の技術と求めるエンジニアを、東京モーターショー2013の会場で取材した。
(取材・文/井元康一郎 撮影/平山諭 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:13.11.29
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オートノマスドライブ
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今年8月に北米、10月に日本のCEATECと、立て続けに自動運転車のパフォーマンスを行った日産自動車。東京モーターショーにもそのクルマ「オートノマスドライブ」(自律走行)を出品している。
自動運転技術の開発を手がける、企画・先行技術開発本部技術企画部の岸本洋一担当部長は語る。 |
日産の自動運転車はミリ波レーダー、レーザースキャナ、カメラを使って全周囲を監視し、人工知能がクルマの動きを判断するというタイプのもの。自動運転にはクルマだけで完結させず、例えば道路側に管制機能を持たせ、両者の協調で行う方法もある。そして、基本的にはそちらのほうが合理的でもある。 同社もこうした方向に進むことを念頭に置いているが、今日の自動走行車はあくまでクルマ単体で周囲の情報を認知し、クルマをどう走らせるか判断し、機械によって運転操作を行うという、最も難易度が高い完全自律走行を目指したもの。最難関を目標に挑戦を続け、技術開発をスピードアップさせるのが狙いだ。 |
日産自動車株式会社
企画・先行技術開発本部 技術企画部 担当部長 岸本 洋一氏 |
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「今は難しいものに思えるかもしれませんが、技術革新でクリアできることはたくさんある。例えば、オートノマスのトランクには4台のパソコンが入っていますが、ITの進化でどんどん小さくなるはず。今は道路交通法や基本的な運転マナーをコンピュータに教えこんでいますが、能力の増強でより複雑な制御ができるようになる。こうしたクルマの知能化が最も重要なファクターです」 |
「技術の裾野はものすごく広い。例えば、レーダーや画像による認識はヘッドユニット、通信、認識アルゴリズムと、ソフトとハード両方にわたる開発が必要になります。クルマを自動的に動かすための制御技術も、電動分野を中心にもっと高める必要があり、機械系エンジニアも必要です」
同時に、クルマを運転するときの人の感情を分析して、よりよい自動運転のあり方を模索するという、人文科学的なアプローチも必要になってくるという。 |
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展示された新型ハリアー(自動運転の関連機能はなし)
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今年10月、多くのクルマが混走する首都高速道路で、自動運転のデモランを成功させたトヨタ自動車。今後の開発については、完全自律走行からのフィードバック型ではなく、クルマに運転支援を導入する積み上げ型で進めていく構えだ。 「もちろん私たちを含め、世界の自動車メーカーはずいぶん前から自動化技術を研究しています。ただ、あくまで今は生まれた技術の中で、安全性や運転の楽しさの向上に役立つものを、順次市販車に導入していく段階だと思います」 |
トヨタは東京モーターショーで、高速道路を自動的に巡航するための技術展示を行った。ディスプレイに道路の映像を流し、車線の認識やコーナリング時のラインの判断などをビジュアル表示することで、自動運転の概念や技術をわかりやすく説明するものだ。 この高速巡航はトヨタの自動運転技術の一例。東富士テストコースに自動運転をクルマと道路の両面で研究するための専用路を作るなど、自動運転の研究開発に対する力の入れようは相当なものだ。 |
トヨタ自動車株式会社
制御システム先行開発部 第3制御システム先行開発室長 金光 寛幸氏 |
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「人間が運転する場合、カーブでは基本はアウト・イン・アウトなのですが、大型車がいたら接近しすぎないように避けますよね。それを機械で行う場合は、どういう走り方で安心感が生まれ、気持よく感じられるかといった作り込みが、自動運転技術のカギとなる重要な要素だと思います」 「これらの知識があれば開発にかかわることは十分に可能ですが、単に要素技術を知っているだけでは、設計屋で終わってしまいます。自動運転の未来を作っていけるエンジニアは、単一デバイスの開発やソフトウェアのコーディングといったレイヤーではなく、デジカメでも何でもいい、複数の機能を統合するシステム開発で経験を積んだ人です」 |
自動運転は、飛行機、船、鉄道など他分野ではすでにかなりのレベルまで進んでいる。クルマの自動運転がそれらと異なるのは、外的要因のパラメータが格段に多いことに加え、パーソナルモビリティとしての快楽が損なわれては元も子もないということ。 |
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特性の異なる複数のデバイスを統合した
「予防安全システムパッケージ」 |
東京モーターショーにEVの自動パーキングの技術展示を行ったデンソーは、ミリ波レーダー、レーザースキャナ、カメラ、無線通信など、自動運転を実現させるための要素技術を多数持つ部品メーカーだ。
こう話すのは、研究開発3部長で工学博士の松ケ谷和沖氏だ。 |
デンソーは現在、センシング技術を活用した次世代の予防安全システムを開発中だ。エントリー、スタンダード、プレミアムの3つのパッケージがあり、前方車両との衝突回避・軽減、車線逸脱防止、夜間視界支援、標識認識支援などなどはエントリーから標準。スタンダード以上は対人衝突回避機能、プレミアムでは出会い頭衝突回避や路外逸脱防止なども加わるなど、今日の安全技術のレベルをはるかに超える機能が実装される。
クルマの性能を高めて競争力を強めたいと思うのは自動車メーカーの常。自動運転を頂点とする先進安全性は中でも重要なジャンルで、技術的にも困難が付きまとう。夢のようなことを言われることもしばしばだ。 |
株式会社デンソー
研究開発3部長 松ケ谷 和沖氏 |
ドライブを体感させる
「インタラクティブ・コミュニケーション・コックピット」 |
もっとも、その難しさとは裏腹に、自動運転技術のニーズは今後、増えることはあっても減ることはないと言う。 |
一方で、複数の技術を組み合わせて何ができるのかという、システマチックな発想を持つことが要求される側面も。 |
運転を支援する
「ヘッドアップディスプレイ-操作コマンダ連携システム」 |
前のクルマに自動で追従中。ドライバーは手放しでOK
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東京モーターショーが行われている西館の屋上スペースでは、情報通信技術を駆使したさまざまな自動運転技術のデモが行われた。そのひとつがホンダの超小型モビリティ。前を走行するクルマを認識し、加減速やコーナリング、交差点での右左折などの動きに、自動的に追従する機能が備わっている。追従側の超小型モビリティには人が乗っていてもいいが、無人でも動くというのがポイントだ。 |
本田技術研究所スマートモビリティ開発室の石田喜三氏はこう語る。利用例として、アメリカで急速に広がっている「カートゥーゴー」というサービスを挙げた。街乗り用の2人乗り車で、ワンウェイで乗り捨てできることが特徴だ。
「とても便利なのですが、欠点は需要と供給が一致しないこと。ステーションによって台数に偏りが出るので、人海戦術でクルマを配備し直しています。しかし、この追従システムが完成すれば、そのすべてに人が乗らなくてもいい。5台のクルマを5人ではなく、1人で回送できるようになるんですよ」
前方に追尾用レーザーレーダーを装備。運転支援や自動駐車用に、超音波センサーを前後と側面に装着している。 |
株式会社本田技術研究所
スマートモビリティ開発室 第1ブロック 主任研究員 石田 喜三氏 |
スマートモビリティの分野でも今後、研究開発の人材ニーズはさらに増える可能性が高いという。
「自動運転はインフラと車両の両方を見ていく必要があるため、技術の裾野はとても広いんです。EVに必要な電気工学、アクチュエータなどの制御技術はもちろんですが、無線通信、スマホなどの情報端末、また自動運転の情報をユーザーに的確に伝えるGUIの開発も大切。必要とするエンジニアのスキルは数えられないほどです」
ホンダのスマートモビリティ自動運転開発チームも、情報通信、車両制御、実装設計、プロジェクトマネジメントがそれぞれ同じくらいの比率とのことで、旧来の自動車開発とは様相が異なることがわかる。特に不足感があるのは、画像認識、空間認識、マップマッチングなどを手がけたことのあるエンジニアだという。
人間がクルマの運転をするうえで最も重要なのは視界や音、振動などから周囲の情報を得ること。機械は人が見えないものを見ることができるが、人が直感的に理解できるモノの形などを読み取るのはあまり得意ではなく、認識アルゴリズムはまだまだ発展途上。ロボットやパターン認識などで経験を積んだようなエンジニアにとっても、自動運転は格好の新天地になるだろう。
曲がり角でも前車を見失わずに走行
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スマホの操作で自動駐車を開始
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両側のクルマにぶつからずピッタリ駐車完了
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