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エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.
117
採用担当者に聞いた
中途入社エンジニア給与決定の裏側
転職で給与が上がるか下がるかは、転職活動における関心事のひとつ。採用側はどのような基準で給与を決定しているのか。エンジニア採用に携わった経験のある100人にその実情を聞いた。
(総研スタッフ/馬場美由紀 イラスト/絵理すけ) 作成日:13.09.05
転職直後の給与は“何”で決まるのか?

 Tech総研が2013年3月に行ったエンジニアの転職直後の給与調査によれば、「増えた」人は全体の51%、「変わらない」が16%、そして「減った」人は33%だった。この年収決定はどのように行われているのだろうか。今回は直近2年以内にエンジニア採用に携わったことがあり、中途採用エンジニアの給与決定に携わっていた採用担当者100人に給与額決定の舞台裏を聞いた。

 まず、エンジニア中途入社者の給与を最終決定する際に、決め手としているポイントを聞いてみた。最も多かったポイントは「会社の給与基準」36%、続いて「エンジニアの技術力」20%、「エンジニアのポテンシャル」15%、「エンジニアのキャリア」14%、「前職の年収」11%、「その他」3%となった。ちなみに「その他」では、人柄、マネジメント能力、社会人としてのマナーなどが挙げられていた。

 企業によって決め手となるポイントの比率は違ってくる。企業の給与テーブルや採用予算、採用活動する際のエンジニアニーズの影響も当然ある。どのように比率を定めているのか、いくつか紹介してみよう。

DATA1 エンジニア中途入社者の給与決定ポイントは?
DATA1 エンジニア中途入社者の給与決定ポイントは?
  • 「採用の最重要ポイントは会社の給与基準。ベース判断は前職年収であとは業績による判断としている」 (研究機関)
  • 「社内の階層別給与をベースにし、職務経験にそって採用地位を設定する」 (自動車メーカー)
  • 「社内規定を最重視するが、やる気と実績、技術スキルの高さを考慮して決定」 (機械メーカー)
  • 「一人当たりの人件費が決まっているが、当社は経験の浅い社員が多いので他の社員への良い影響を期待し、キャリアや社内にない技術力を持っている人材かどうかを考慮して決定する」 (商社系総合商社)
  • 「前職の年収も考慮するが、会社の給与水準に合わせてもらうことが前提。ポテンシャルは絵に描いた餅。現実に発揮される能力に価値がある。スキルを求めて即戦力の中途採用を行うため、技術力とキャリアは評価の対象となる」 (ソフトウェア・情報処理系)
  • 「会社の人件費と基準が大体決まっているが、独学で新しい技術を得るよう努力する人物か、どのようなプロジェクトに関わりキャリアを積んできたか、持っているパフォーマンスが発揮できるかも判断基準としている」 (医薬品メーカー)
  • 「会社の給与体系・資格手当との整合をベースに、担当製品、開発経験や専門知識を評価している」 (重電・産業用電気機器メーカー)
  • 「給与テーブルが基本となるが、採用に応じてもらうため前職給与も考慮する。即戦力として採用するのでポテンシャルや実地力のレベルを示すキャリアや技術力も評価の対象となる」 (半導体メーカー)
  • 「会社の想定する人件費の枠内で、即戦力になる技術力と柔軟かつ強靭な精神力を持つこと」 (ソフトウェア・情報処理系)
  • 「1人あたりの人件費がベース。あとはスキルに応じて決定する」 (自動車メーカー)
  • 「他社員とのバランスを考慮する。前職年収は参考程度。やる気と即戦力は評価する」 (鉄鋼・金属メーカー)
  • 「自社の求めるスキルと成果物をきちんと出せるかどうかを見極める。実績と給与の関係についても、やや考慮する。入社後も積極的に自己のスキルを上げようという意欲があるか、また自身が芳しいと思っていなくても、他人に説明できる一貫したキャリアがあるかなど」 (独立系SIer)
  • 「ポテンシャルは面接での受け答えから計る。これまでの経験言語やどれだけの資格があるかも重要」 (大手SIer)
  • 「能力主義」 (専門コンサル系)
  • 「得意な分野は何か、どのような改革を行ってきたか、どのような開発(メンテナンスなども)に携わってきたか」 (サービス業)
  • 「最低限の生活保障を考慮し、あとはやるき次第。海外経験や語学力は給与アップの評価対象となる」 (人材派遣系)
前職よりも給与を上乗せした決め手とは?

 転職したらやはり給与は上がってほしいもの。今回調査に協力してくれたエンジニア採用担当者の内、「予定していた給与よりも上乗せした経験がある」のは51%と、なんと半数以上。どのような点が評価されて給与を上乗せしたのか、その理由を聞いてみたところ、求めていた条件にプラスアルファの技術力やや実務経験を持っていたり、競合企業より高い給与を提示することでどうしても採用したかったからといった内容が多く見られた。

DATA2 前職よりも給与を上乗せした理由
DATA2 前職よりも給与を上乗せした理由
  • 「キャリアと面接から読み取る将来性」 (ソフトウェア・情報処理系)
  • 「将来の幹部候補として技術力のみならず人間力に優れていた」 (サービス系)
  • 「職務内容が当社のニーズに一致している」 (自動車メーカー)
  • 「試用期間中の本人の実力を見出したから」 (専門コンサル系)
  • 「困難に直面した際の対応実績」 (ソフトウェア・情報処理系)
  • 「新規開発製品の可能性があると思われたから」 (家電メーカー)
  • 「他社内定済みのため、他社オファー額より上乗せした」 (鉄鋼・金属メーカー)
  • 「過去のキャリアにより即戦力度が高いと感じた」 (精密機器メーカー)
  • 「過去に開発した商品開発能力を大幅に重視」 (鉄鋼・金属メーカー)
  • 「技術力+コミュニケーション力+語学(英語)」 (半導体メーカー)
  • 「コミュニティでの活躍」 (インターネット関連系)
  • 「人一倍のハングリー精神と自社、業界の環境を知り尽くし、目指すべき方向性とその動機を明確に伝えることができていた」 (独立系SIer)
  • 「成長と業務能力」 (金融・保険系)
  • 「本人の能力、過去の経験など、人事担当だけでなく技術系役員のプロの視点からの質問などにより最終決定した」 (コンピュータメーカー)
  • 「優秀な方は、競合が多いので、給与で魅力を出すこともある」 (独立系SIerコンサルファーム)
エンジニア側からの給与交渉で望ましいアプローチは?

 さて、気になるのはその転職後の給与をアップさせるために、エンジニア側からの交渉はどのようなアプローチが望ましいかということ。採用担当者たちが望ましいと考えているアプローチは、前職の実績や給与よりも、やはり入社後にどのような貢献を具体的に伝えてくれること。また、過去の実績よりも入社後の実績で給与を上げていくという回答も目立った。実績に伴った裏付けがあれば説明してほしいという声も少なくないので、提示された給与額に納得がいかない場合は、なるべく具体的に自分が転職先にどんな貢献ができるのかをアピールしよう。

DATA3 エンジニア側からの給与交渉で望ましいアプローチ
  • 「前職の給与明細の提示」 (通信機器メーカー)
  • 「面談時にUPが納得できる資料・プレゼを提示する。(会社側に立った視点で効率化・付加価値の向上に貢献できる提案など)」 (不動産・建設系)
  • 「できるだけ職歴や資格、具体的な技能レベルを履歴書などに記載して欲しい」 (不動産・建設系)
  • 「職務経験をベースに必要金額を提示してもらい、会社が可否を判断する」 (自動車・輸送機器メーカー)
  • 「応募書類に必ず記載してもらっている」 (機械関連メーカー)
  • 「資格や経験値など、実績を明確にわかる尺度で説明できること」 (機械関連メーカー)
  • 「事前に希望給与と前職給与を応募書類で提示してほしい」 (医薬品・化粧品メーカー)
  • 「職務経歴。英語ネイティブスピーカーの技術者との直接面談」 (半導体メーカー)
  • 「会社にとってプラスとなる要素の説明」 (総合電機メーカー)
  • 「中途採用なら即戦力が第一。こちらの専門会話についてこれるか見る」 (鉄鋼・金属メーカー)
  • 「入社後、どのようなスキルを活かし、どう仕事に反映できるのか明確に伝えることが必要だと思う」 (独立系SIer)
  • 「前職でどれだけもらっていたかを駆け引きなしで正直に進言することが望ましい」 (機械関連メーカー)
  • 「周囲と溶け込めるかコミュニケーションを確かめたいので集団面接がいい」 (医薬品・化粧品メーカー)
  • 「自分の持つプロ意識」 (セラミックメーカー)
  • 「前職の年収、本人の希望年収をベースとするが、本人の能力が当社の必要とする水準にあるかどうか、またその年収に応じた仕事を与えられるかも大事なポイント」 (コンピュータメーカー)
  • 「自分で目標を設定させ、どれだけそれを達成できたら定量的に示す」 (大手SIer/NIer、コンサルファーム、ベンダー)
  • 「オンリーワンであること」 (鉄鋼・金属メーカー)

 逆に、給与交渉だけ固執してアピールしてきたりするのは一般的には印象が悪い。度が過ぎると不採用になったり、むしろ希望額よりも下がる提示をされることもあるので注意が必要だ。だが、自己への評価が低いと思った場合には、ためらうことなく相手に伝えるべきだろう。転職相場は日々変化していくし、採用側の企業や採用担当者によって判断基準も一定ではない。そうした事情やノウハウを持つ人材エージェントに登録して給与アドバイスを受けてみることもおすすめしたい。

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