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エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.
115
転職直後の年収アップは51%!
転職の理由と満足度は?
現在の景気の下で転職した場合、年収は増えるのか、減るのか。最も気になるところをTech総研が調査。2012年以降に転職した経験のあるエンジニア100人に、転職前後の年収変化やそれに対する満足度を聞いた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:13.05.10
転職後に年収が「増えた」人は全体の51%

 Tech総研が、2012年1月〜2013年3月に転職した26〜39歳のエンジニアにアンケートを行ったところ、転職後に年収が「増えた」人は全体の51%、「変わらない」が16%、そして「減った」人は33%だった。転職で年収が下がった人が3割以上もいるということになる。(DATA1)

DATA1 転職前後での年収増減変化
DATA1 転職前後での年収増減変

 Tech総研では同様の調査を毎年のように行っているが、例えば2010年の調査(対象者100人)では、全体の75%が5〜25%の幅で転職後に年収が増えていると回答している。それに比べると今回の調査における年収低下の割合はやや多い。

 とはいえ、これを景気とからめて判断するのは難しいところ。一般に20代での転職は年収増加につながりやすく、30代になるとその伸びが小さくなる傾向があり、今回もそうした傾向が反映されているのかもしれない。

 転職における最大関心事が給与・年収の増加にあることはたしかだが、もちろんそれだけではないことも事実。それは転職後年収の満足度にも現れている。転職先の年収の満足度を聞いてみると、DATA2のように満足している人のほうがやや多いのだ。「とても満足している」(8%)、「やや満足している」(31%)を合わせると満足層が39%を占め、「とても不満」「やや不満」の不満層29%を上回っている。

 満足度の理由を聞いてみると、必ずしも年収額や年収の増減だけではなく、仕事内容や残業時間、業務に対する評価など、転職という自分の行動を総合的に判断していることがわかる。

DATA2 転職直後の年収に対する満足度
DATA2 転職直後の年収に対する満足度

 アンケートに記載された転職エンジニアの声のうち、代表的なものをいくつか拾ってみよう。

エンジニアの生声

回答:とても満足している

●「仕事のやりやすさを重視しているので、年収はあまり気にならない」
(年収670万円→630万円/36歳/通信系・システム設計)

回答:やや満足している

●「年収は低くなったが、無駄な残業はなくなり時間が確保できるから。時間をお金で買ったと思えば十分」
(年収380万円→336万円/33歳/情報処理系・システム開発)

回答:普通

●「年齢と能力に応じた収入になるかは、今後の自分の活躍次第だから」
(年収400万円→500万円/39歳/機械関連・品質管理)

回答:やや不満である

●「業務の質や量からすると、低い気がしているから」
(年収250万円→350万円/26歳/インターネット関連系・インフラ設計)

回答:とても不満である

●「前職の年収が300万以下になってしまい、500万円が欲しくて転職活動を始めたが、結果は350万。一番最初にいた会社の450万円は最低でもほしい」
(年収290万円→350万円/38歳/通信系・セールスエンジニア)


 満足層は、転職後の仕事の質と量を、年収を考える上での基準にしていることがわかる。転職初年度の年収ダウンは想定内として、その後の自分の伸びしろに期待するという前向きの回答も見られる。「今後、自分が活躍して年収をアップしていける」という希望があれば、心理的な満足度は高まるはずだ。

 仕事の質と量を年収判断の根拠にしている点は不満層も同様だが、ただ中には年収の目標値を設定し、それが達成できなかったので「不満」とする人もいる。転職活動において年収目標を設定すること自体は必要だが、これにこだわりすぎると、その不満はトラウマのように根強く残ってしまい、後の仕事にも影響を与えるかもしれない。

 年収目標が達成できなかったのは、結局自分の能力に対する主観的評価と、転職市場における企業からの客観的な評価にズレが生じているということだ。そのギャップを冷静に受け止めて、次の対策を取るほうが賢明という考え方もできるのではないか。

「会社や業界の将来に不安を感じた」が最も多い転職理由

 転職後の満足度は、転職を決意した理由とも大いに関係がある。「年収を上げたいから」という理由だけで転職すれば、それが達成できなかったときの不満度は高まる。ただ、実際には理由はそれだけではないのだ。

 年収だけが転職理由ではないとすると、なぜ彼らは転職を決意したのだろうか。最も多かったのが「会社や業界の将来に不安を感じた」。そして、「会社からの評価や給与が上がらない、下がった」「休日数、残業、勤務時間に不満があった」「会社の人間関係に不満を感じた」などが続く。

 中でも「将来への不安」「評価・給与が上がらない」という2つの理由が突出している。アベノミクス効果で企業環境は好転しているという報道もあるが、勝ち組企業はほんの一握り。多くの企業が市場環境の悪化で事業撤退や事業再編を迫られている。会社や業界の将来に不安を感じる人が多いことは十分頷ける。

 また、たとえ企業収益が改善したとしても、それが社員の給与アップに反映するまでには相当な時間がかかる。業種や企業規模によっては、給与は据え置き、またはダウン傾向という企業がまだまだ多い。今回のアンケート結果も、こうした経済環境を反映したものという見方もできなくはない。

 転職理由をソフトウェア・ネットワークのソフト系(以下、ソフト系)と、電気・電子・機械・素材などのハード系(以下、ハード系)に分けて見てみると、職種による違いも浮かび上がる。

 ソフト系に多く見られる理由は「希望する仕事に就かせてもらえない、希望の部署に異動させてもらえない」(29%)、「他社にスカウトされた」(23%)というもの。一方ハード系のほうで目立ったのは「会社や業界の将来に不安を感じた」(57%)、「リストラがあった」(16%)だ。製造業界を直撃する不況の影響が推測できる。(DATA3)

DATA3 転職しようと思った理由は何?
DATA3 転職しようと思った理由は何?

 ちなみに、転職先の企業を選択した理由として最も多かったのが「仕事内容の面白さ、醍醐味」(52%)、次は「残業代を含む年収の額」(35%)、次いで「会社の風土や慣習との相性」(24%)、「企業の事業戦略や経営目標の将来性」(23%)、「職場環境や使用設備のよさ」(20%)などが挙げられた。(DATA4)

 年収への関心は高いが、それ以上に仕事内容を重視していることがわかる。「職場環境や使用設備のよさ」が上位に上げられているのは、やはりよりよい設備・機械・学習環境のもとで自分のスキルを伸ばしたいと考える、技術者ならではの理由と言えるだろう。

DATA4 転職先の企業を選択した理由は?
DATA4 転職先の企業を選択した理由は?
面接時の年収に関する会話や交渉は?

 転職後の年収のアップ・ダウンは転職相場で一律に決まるものではない。その人が前職で年収450万円だったから、転職時年収は10%アップなどと機械的に決定されるわけではない。同じ時期の転職者でも人によって年収の増減には幅がある。面接でチェックされる転職者個人のスキル・熱意などが大きく影響するのだ。面接は人と人の会話であるから、そこで頑張れば、自分の技術や熱意を「高く」売ることも可能だし、逆にプレゼンテーションが下手だと、「安く」売らざるをえない場合もある。

 そこで気になるのは転職の面接時に年収に関する会話や交渉があったのかということ。あったとすればどのような会話や交渉をしたか、ということである。全体では「会話や交渉をした」人が72%、「会話や交渉をしなかった」人が28%と、会話や交渉した人のほうが多かった。では、実際にどのような会話や交渉が行われたのだろうか。(DATA5)

DATA5 転職の面接時に年収に関する会話や交渉はあった?
DATA4 転職先の企業を選択した理由は?
エンジニアの生声

●「年齢やスキル、前社での年収などを含めた交渉を行った」
(年収430万円→450万円/38歳/インターネット・Web系開発)

●「ストレートに希望年収を質問されたので、前職場以上を希望すると伝えた」
(年収400万円→460万円/36歳/食料品・生産技術)

●「自分の経験と希望年収を伝え、年収を上げてもらった」
(年収500万円→600万円/31歳/自動車・研究・特許)

●「少々交渉したが、前職の給与は残業代が大きく占めていたため年収ダウンを持ち直すことができなかった」
(年収700万円→550万円/36歳/重電・サービスエンジニア)


 ここからわかるのは、年収が決まる過程では、面接における交渉の余地が十分残されている、ということだ。たとえ自分の転職理由が「年収を上げること」だけではないとしても、結局その人への総合評価は年収額という数値で表れる。自己への評価が低いと思った場合には、ためらうことなくそれを相手に伝えるべきだろう。転職面接は一種のバトルなのだから、転職戦線に挑む戦士たちは、闘いをヘジテイト(躊躇)してはならない。ダメモトで向かっていくぐらいの気構えが必要なのだ。

転職の満足度と年収変化の相関関係はあるか?

 最後に転職自体に対する満足度と、転職による年収変化の相関関係を分析してみよう。すでに紹介しているように、転職の満足度は年収の増減だけでなく、「仕事量や雑務が多くなっていた」「会社の人間関係に不満を感じた」などの問題が、転職によって解消されたかどうかという判断も含まれている。年収の増減でその満足度を比較してみると大変興味深い。

DATA6 今回の転職は成功したと思う?
DATA6 今回の転職は成功したと思う?
DATA7 転職前に感じていた不満は転職後に解消された?
DATA7 転職前に感じていた不満は転職後に解消された?
DATA8 転職先の年収の満足度は?
DATA8 転職先の年収の満足度は?

 先にも述べたように満足度の度合いは、個々の人による総合的な判断である。だが、せっかく転職するのであれば年収は少しでも上がったほうが満足度は高くなる。次回は面接でいかに年収アップさせるかという秘訣を、エンジニアの採用担当者と人材エージェントに取材して紹介するので、ぜひ参考にしていただきたい。

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