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経済アナリストの森永卓郎氏とエンジニア400人が語る 円安・株高より経済成長!アベノミクスとエンジニア 経済アナリストの森永卓郎氏とエンジニア400人が語る 円安・株高より経済成長!アベノミクスとエンジニア
アベノミクスで株高と円安が続き、景気も持ち直しているようだ。この状況をエンジニアはどう見ているのか。アベノミクスは今後どうなるのか。経済学者の森永卓郎氏とエンジニア400人のアンケート調査から探ってみた。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 人物撮影/平山諭) 作成日:13.03.27
最終面接は油断できず!4割以上の企業が「通過率20%未満」
アベノミクスに期待するのは「仕事の充実」か?

 日経平均株価は上昇を続けて1万2000円を超え、為替レートは1ドル100円を伺う勢いだ(3月22日現在)。3月の月例経済報告では景気の総括判断を、3カ月連続で上方修正した。

 これらは「アベノミクス」の効果とされ、施策である2%のインフレターゲット、金融緩和の拡大、公共事業など財政出動が実現されれば、日本経済はますます回復基調に向かうと見る向きも多い。では、エンジニアは現状をどう見ているのか。400人へのアンケート調査を実施した。

 職種はハードウェア系とソフトウェア系が各200人、年齢は20〜40歳で、20〜24歳、25〜29歳、30〜34歳、35〜40歳が各100人。性別は男性84%、女性16%だった。

 「アベノミクスに何を期待しますか?」と複数回答で尋ねたところ、以下の結果となった。

図:アベノミクスに何を期待しますか?(複数回答可)

 1位はダントツで「日本の経済成長」、66%の人が挙げた。年齢別では20〜24歳が最も多くて73%、一番少なかったのは30〜34歳で57%だった。2位は「雇用の安定・失業率の改善」で46%の人が挙げ、年齢による差は少なかったものの、ここでも20〜24歳が51%と最も多かった。

 1位と2位の突出さを考えれば、政府への希望は数多くあっても、エンジニアは「仕事への影響」を期待しているようだ。経済の回復なしに充実した仕事は望めないだろうし、新しい仕事へのチャンスも生まれない。そして、仕事を安定して続けるための雇用全般も重視している。

ハード系職種は「円高」、ソフト系職種は「領土問題」が3位
 アンケートからは職種差が出た。機械、電気、生産技術、品質管理などのハードウェア系職種と、プログラマ、SE、ネットワークエンジニア、コンサルタントなどのソフトウェア系職種とでは、期待する対象が若干異なっていた(下のグラフ)。
図:ハードウェア系職種の期待/図:ソフトウェア系職種の期待

 1位と2位は変わらないが、ハード系では3位が「円安」だ。これらの職種はメーカー勤務が中心なので、円安→輸出増→自社・業界の業績上昇と考えているのではないか。雇用の安定を望む声が全体の数値より低いのも、終身雇用制度が比較的存続し、転職者の少ないメーカーだからと考えれば納得できる。

 ソフト系の3位は「領土問題の解決」。ただ、割合は28%で、4位以降が26%、26%、25%、24%と続く団子状態。領土への意識が特別強いというわけではないだろう。ハード系とは逆に「円安」は8位と低く、転職が珍しくない職種だからか、雇用に関する関心が高めだ。

 では、そもそもアベノミクスとは何か。今後はどう動くのか。経済アナリストの森永卓郎氏に取材した。
経済アナリストの森永卓郎氏が予見!アベノミクスの到達点
円安効果を持つ金融緩和はもっと早くすべきだった

 アベノミクスは大胆な金融緩和、財政出動、成長戦略を3本柱としていますが、当面大きな効果を発揮するのは金融緩和でしょう。リーマンショックの後、世界が金融緩和を進める中で、日本だけがしなかったのです。
 日銀の総資産額は国内のお金の総額とほぼ同意です。その理由は、中央銀行がお札を印刷するときは何かの資産を購入して、その代金として日本銀行券を市中に流すからです。買った金額と支払った金額は同じなので、総資産額=国内のお金となります。

 この総資産額が日銀の2012年度上半期決算で、7年振りに過去最大になりました。逆に言えば、7年間はお金の量を増やしてこなかった。リーマンショックの後、イギリスは約5倍、アメリカは約3倍、ユーロ圏は約2倍に増やしたのに、日本はほぼゼロだったのです。
 経済の仕組みはシンプルです。余っている物の値段は下がり、足りない物の値段は上がる。円が少なくてほかの通貨があふれていたから円高が続き、日本にとんでもない不況をもたらした。リーマンショック後に世界で劇的に景気が落ちたのは、日本だけです。
 ですから、政府と日銀が足並みをそろえるのは評価できます。ただ、2%のインフレターゲットはすぐには達成できないと見ています。

インフレターゲット「2%」の実現が難しい理由

 インフレ率の計算方法はさまざまですが、2%を達成しようとすると1ドル125円くらいの為替レートが必要になります。物価の構成要素を簡単に言えば、人件費、企業の利益、輸出入の3つです。
 賃金も企業利益も急には増えないので、輸入物価をメインに物価を上げようとするとそれくらいの為替が必要です。デフレ脱却寸前だったリーマンショック直前の為替が約110円だったことからも、デフレ脱却にはそれ以上の円安が必要だということです。
 実際、何人かのメーカーの経営層に話を聞くと、ほぼ全員が「125円の為替レートなら日本は無敵になる」と言うんです。「中国も韓国も怖くない」ってね(笑)。でも、オバマ大統領の狙いはドルを安くして輸出を拡大し、経済を復興させること。日本の「無敵」に賛成するとは思えません。

 また、物価が2%上がると国債金利も約2%上がります。国債の発行額は1年で合計約160兆円ですから、金利が2%上がると3兆2000億円も財政負担が増えます。加えて、特に中小の金融機関が危機的状況になります。金利が上がると、融資先がなくて山のように抱えている国債の価格が下がるからです。
 今の国債の金利は1%弱、仮に1%とすると、プラス2%で金利3%の国債が市場に出ますから、1%の国債はたたき売るしかない。ただ、売ったら損になるので決算書上は含み損になります。こんなことが起きたら、体力のない中小の金融機関が倒産の危機に陥ります。

グローバル化による「弱肉強食」が日本でも始まる

 このような事情から、私は当面の物価上昇率は「1%弱」に落ち着くと思います。実際、政府と日銀が1月に物価目標導入の共同声明を出すのと同時に、日銀が展望レポートの改訂版をまとめています。ここに2014年度の消費者物価上昇率の目標が、「0.9%」になっているのです。
 この数字は実に象徴的で、消費者物価上昇率には1%の上方バイアスがあると言われているからです。仮に消費者物価上昇率が1%なら、本当の物価上昇率は0%という意味です。これに従えば、0.9%とは実はわずかにデフレ状態のこと。デフレ脱却寸前まで景気は上向くが、ここで止まるというのが私の見通しです。

 景気の急拡大は夏くらいまででしょう。その後は余熱で続くかもしれませんが、急拡大は見込めない。その中で本領を発揮するのが成長戦略です。金融緩和と財政出動は「経済のパイをどう増やすか」ですが、成長戦略は「そのパイをどう分けるか」です。経済成長を目指しているのではありません。
 そして、成長戦略の要がTPPです。TPPを進める目的は、日本の経済や貿易をグローバルスタンダードに合わせるためでしょう。つまり、今後の日本では、経済のパイを奪い合う弱肉強食が始まると思います。

アベノミクスはメーカーを救った?モノづくりの大切さ

 ただ、アベノミクスはエンジニアに大きな恩恵を与えました。円安・株高によるメーカーの復活です。昨年11月まで、何人かのメーカーの経営者と話していると、特に大手企業は「いかに早く日本から逃げるか」ばかりを考えていました。私は日本の製造業が終わると本気で思っていました。

 しかし、この円安で一息つき、1ドル100円まで戻れば国内で何とかやっていけると思います。日本からモノづくりが消える危機が去っただけでも、かなりの朗報です。エンジニアには技術だけやればいいと思う人もいるでしょうが、技術開発とモノづくりはセットで行うべきです。モノをつくっていなかったら、技術は進歩しません。
 メーカーのエンジニアだけでなく、アプリ開発などIT系エンジニアもハードと無縁ではいられません。日本からモノづくがなくなれば、ソフトウェア産業も徐々に衰退していったと思います。

 モノづくりがいかに大切かは欧米を見ればわかります。イギリスは産業革命で世界の工場となりましたが、ポンドが基軸通貨になってポンド高が起こると、製品が輸出で売れなくなった。そこで金融業を国の基幹産業に変えたら、結果的に国が衰退し、アメリカに大借金をするようになった。
 アメリカも同様で、1960年代までは製造業が強くて、世界の工場に上り詰めました。しかし、製造業が衰退して、金融業に走り、リーマンショックを引き起こした。

 経済学で証明するのは難しいのですが、モノをつくらずに金に金を生ませて左うちわで暮らしていると、人間はどんどん堕落します(笑)。ですから、オバマ大統領が進める製造業復権はきわめて正しい判断ですし、日本は欧米と同じ道を辿るギリギリのところで踏みとどまりました。
 アベノミクスが日本の方向性を変えたのは評価できますが、私が日銀総裁ならインフレターゲットを2%まで一気にやるでしょう。


経済アナリスト 森永卓郎氏
東京大学経済学部卒業後、日本たばこ産業、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどを経て、2006年より獨協大学経済学部教授。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済。
経済アナリスト 森永卓郎氏
最終面接は油断できず!4割以上の企業が「通過率20%未満」
年齢が上がるほど期待度はアップ、微妙な職種差
アベノミクスで「今より充実した仕事」ができるようになると思いますか?

 アンケートに戻ると、「仕事への影響度」も尋ねている。先のアンケート結果のようにエンジニアは技術という仕事が好きで、誇りを持っている人も多い。

 そこで、アベノミクスによって「今より充実した仕事ができるようになるか」と尋ねたところ、「今と変わらない」が61%もあり、好影響を与えるとしたエンジニアは合計で27%しかいなかった。

 実体経済への影響がさほど現れていないので、効果を実感しにくいのだろうが、ちょっと少ないようにも思える。項目別で年齢が一番多いのは、「かなり」が30〜34歳で10%、「多少」が35〜40歳で25%、「変わらない」は25〜29歳で67%。年齢が上がるほど期待度が高くなっているようだ。

 職種別では微妙な差が出た。全般的な傾向だが、ソフト系のエンジニアのほうがアベノミクスへの期待が高そうだ。比較的にだが好意的な選択肢が多く、マイナスのものが少ないからだ。
図:ハードウェア系職種の期待/図:ソフトウェア系職種の期待

20代エンジニアからのメッセージ、エンジニアを幸せに!

 最後に「安倍政権に望むこと」で聞いたコメントをいくつか載せる。若い世代に熱心なコメントが多く、結果的にすべて20代の意見となった。

メッセージicon 「エンジニアの仕事は思っているよりもすごく大変です。余裕で労基の残業時間を超えることだってあります。法で定めるだけでなく、残業しなくてもいいように、会社が人を雇える空間をつくってほしいです」
(ミドルウェア開発:女性:22歳)
メッセージicon 「技術立国として継続的に成長できる仕組みをつくり、優秀な技術者が増えるようにしてほしい。非技術者が技術者を搾取している構造をなんとかしてほしい。現場で安い給料で苦労している技術者が多い」
(制御設計:男性:24歳)
メッセージicon 「企業がシステム導入などへの自己投資ができるように、お金の回りがよい経済状態にしてほしい。社会の大動脈のような大企業のみが潤う政策ではなく、毛細血管のような中小企業や零細企業も、恩恵を受けられるような仕組みを望みます」
(Web・オープン系SE:男性:24歳)
メッセージicon 「成果が形として必ず現れるとは言えない仕事が、研究や開発の分野に携わる者の宿命だと思う。それでもこの仕事をしているのは、それだけの意義を感じているからで、結果だけでなく『期待』にお金を払ってみるのも大切なことだと思う。何にお金を使うべきなのか、慎重に考えてから配分してほしい」
(研究・特許:女性:28歳)
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
この記事でアベノミクスについていろいろと調べ、話を聞いたわけですが、最後に載せたアンケートの回答がとても印象的でした。長めのコメントは圧倒的に若い世代に多く、真剣な内容が散見されました。エンジニアが幸せになる政策を期待したいです。

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