公共事業予算5.3兆円、アベノミクスでどう変わる? |
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建設・住宅業界
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公共事業予算16%増、アベノミクスの「国土強靭化計画」
アベノミクス効果で円安・株高が止まらない。この勢いに乗って今後実施されるのが、2%のインフレターゲットへの施策、日銀の金融緩和拡大、大規模な公共事業。中でも建設業界にとって朗報となるのは、大型補正予算が成立した公共事業だ。
公共事業の予算は前年度の約4.5兆円から約5.3兆円へと約16%も増加。また、「災害に強い国土づくり」を目指した「国土強靭化計画」では、10年間で総額200兆円をインフラ整備などに投資するという。
一方、住宅業界は2012年の住宅着工戸数が前年比6%増で、3年連続前年比プラスとなった。住宅ローン減税は2013年末で終わるが、その後は消費増税に合わせた拡充を予定。消費増税前の「駆け込み需要」も期待できそうだ。
こうした景気刺激策は今後の建設・住宅業界に新規需要をもたらすと期待されるが、その当事者である業界各社は、アベノミクスをどう見ているのか。編集部ではゼネコン、ハウスメーカー、マンションデベロッパーを中心に関連企業71社にアンケート調査を実施し、19社から回答を得た。その内容が次の表である。
質問の内容は3つ。1番目は、今後生まれるであろう新規需要に対する業績への影響度。見込みや期待値を含めて、以下の5つの選択肢から選んでもらった。
1 影響なし〜業績の+10%程度
2 業績の+10〜20%
3 業績の+20〜30%
4 業績の+30〜40%
5 業績の+40%以上
2番目の質問は2013年度の中途採用計画だ。3月時点での見込みを、以下の3つから選んでもらった。
1 増やす(前年比+○%程度)
2 減らす(前年比−○%程度)
3 変わらない
最後は、2013年度に中途採用を行う場合に、増員予定の職種である。以下の6つから複数回答可で選んでもらった。
1 営業
2 設計・監理
3 施工管理
4 人事・総務・経理など
5 経営企画・事業企画など
6 その他
業績向上に期待、中途採用を増加、主な求人は施工管理…動向を読む
建設・住宅業界はほぼ全社で需要増を見込む、業績10%超は3割強
まず新需要に期待する業績への影響だが、この表を見る限りでは、飛び抜けた好況感を予測する企業はさほど多くない。ただ、マイナスイメージを持つ企業はなく、ほぼ全社で需要増を見込んでいると考えてもよいのではないか。
そして、業界単位で微妙な温度差がある。ゼネコンは回答をいただけなかった企業もあるが、それらを除けば「なし〜業績の+10%程度」が多いのに対して、ハウスメーカー・マンションデベロッパーでは「業績の+10〜20%」から「業績の+40%以上」までの企業が見受けられる。どのような理由が考えられるだろうか。
公共事業の予算増は決定したが、インフラ系など大型事業が計画されるのはまだ先だ。そのため、これらを請け負うゼネコン各社は期待感を抱きつつも、今後の動向を慎重に見ているのかもしれない。
一方のハウスメーカー・マンションデベロッパーの中には、ハウスメーカーが圧倒的に多い。住宅業界が好調な要因がアベノミクスにあるとすれば、すでに効果を実感しているとも考えられる。景況感の継続や上昇を期待する企業もあるだろう。
2013年度中途採用計画へ影響は、ハウスメーカーが強気
>中途採用計画では、前年比で減らす企業は1社もない。そして、業績への影響度が反映されているようだ。ゼネコン各社に前年比と「変わらない」が多いのは、公共事業の影響はまだ確実視できないので、それらの計画や受注が決定してから中途採用を始めるからではないか。
また、中途採用で増員する職種では、各社が軒並み「施工管理」を挙げている。ゼネコンでのニーズがもともと強い職種ではあるが、公共事業の増加を見据えた選定とも考えられる。そうであれば、中途採用には慎重であっても、採用する職種は決めているとも言える。
ハウスメーカーは、アベノミクスが業績へのプラス材料とは感じつつも、中途採用の加速まで決断していないようだ。中途採用には個社の事情も反映されるので一概に言えないが、業績への期待感ほどは採用意欲が高いようには感じられないからだ。
こちらも業界の特色ではあるが、求人職種は多彩となっている。技術系職種以外に「営業」が目立つのは、販売顧客の増加を見越してのことではないか。
建設技術系の派遣会社で、大幅な中途採用増が始まるか?
建設・住宅業界の関連企業は母数が少なく、全般的な傾向つかめないが、アベノミクスへの期待値以上に中途採用を拡大させるようだ。この2社の共通点は、建設・建築系技術者の派遣業務を、事業のひとつとしていること。
近年では大手メーカーが特定派遣会社に技術者をアウトソースするケースが急増しているが、建設・建築業界でもその傾向が強くなっている。
特にハウスメーカーで期待感ほど中途採用を増加させず、派遣業に携わる企業が中途採用を大幅増としているのは、前者から後者へのアウトソースがあるからかもしれない。後者の募集職種が「施工管理」なのはそれの裏付けのようにも見える。
総じて言えば、政府の景気刺激策は建設・住宅関連の企業、そして各社の中途採用に徐々に影響を与え始めたようだ。雇用にどれだけ結び付くかはこれからだが、多くの企業、多くの職種で中途採用が拡大することを期待したい。
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