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LINE、ニコニコ動画からSENSEI NOTEまで

日経新聞・井上理記者が語る
“日の丸Web”の未来

数多あるWebサービスの中で、グローバル規模で利用されているメジャーなサービスの多くはアメリカ・シリコンバレー発が多数を占める。なぜ日本発のWebサービスはメジャーになれないのか?またメジャーになるための条件は何かについて、長年Web業界の表裏を追求してきた記者の視点から探ってみたい。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:13.03.06

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井上理氏<br />
日本経済新聞社 編集局 電子報道部記者

井上理氏
日本経済新聞社 編集局 電子報道部記者

1999年、慶応義塾大学総合政策学部を卒業、日経BP社に入社。以来、ネット革命などIT業界やゲーム業界の動向を中心に取材。雑誌『日経コンピュータ』『日経ビジネス』編集部を経て、2009年、『日経ビジネスオンライン』に配属。2010年、日本経済新聞 電子版の創刊に合わせて日本経済新聞に出向。ソーシャルメディアの動向を中心に、電子媒体の特性を活かした記事執筆に取り組む。著書に『任天堂 “驚き”を生む方程式』『BUZZ革命』。

世界で勝てないのは“コピーモデル”が原因


めまぐるしいスピードで変容していくIT・Web業界。その中で10年以上、動向を追い続ける記者が、今回ご登場いただく井上理氏だ。「井上記者の署名がある記事は全部読みたい」という読者も多く、これまで数々の注目記事を掲載。特に昨年、社会問題となった「コンプガチャ」の真相や大躍進を遂げた「LINE」開発の裏側や事業戦略など、世の中の注目を集めるテーマに対していち早く切り込み、ニュースバリューの高い記事を取り上げてきた。

今回、井上氏に「日本発Webサービスが世界で戦える日が来るか?」というテーマで、ご自身の考えをうかがった。これまで数多くのWebサービスが登場しているにもかかわらず、現実として世界標準となっているサービスはgoogleやAmazon、Facebook、Twitter等米国・シリコンバレー企業が大勢を占める。これまで日本のWebサービスが世界に広まらなかった原因はどこにあるのか?その中でも今、日本のWebサービスで、世界で戦えるものは何か?今後、世界で戦っていくために必要な条件とは?といった疑問に対して率直に答えていただいた。

――――――――――――――――――――――――――――――――

日本のWebサービスがなぜ世界で勝てないのか?それは海外、特にアメリカ・シリコンバレーを象徴する、すでに世界的に成功しているサービスの“コピーモデル”が多かったからです。私がこの業界をチェックするようになった1999〜2000年頃はいわゆる「ITバブル」の絶頂期。特にこの時は「ITでひともうけしよう」というマネーゲーム的な様相を呈していたから、ゼロから創造するよりも、すでに海外で流行っているサービスをコピーして量産すれば、ある程度大きな市場規模のある日本では、それだけでビジネスとして成立してしまう。しかしそのことが、逆に「日本発Webサービス」の成長の芽を摘んでしまったのではないかと考えます。

世界で勝つためのキーワードは「日本固有の文化」


世界で通用するサービスの共通点や、世界で勝つために必要な条件を考えた時、まず脳裏に浮かんできたのは、価値観や文化の違いを乗り越えても消費者に受け入れられるサービスの「公明正大」さ。これはWebサービスに限らず、グローバルビジネス成功の大前提と断言してもいいと思います。例えば消費意欲をあおることに腐心して、ビジネスモデルをブラックボックス化したサービスのようにその仕組みが「公明正大」でなければ、ゆくゆくは多くのユーザーが不信感を抱き、そのサービスを利用しようとは思わなくなってしまう。もっとわかりやすく言えば、「自分の子どもには絶対にやらせたくはない」と思えるようなサービスは、間違いなく海外では利用されません。

その原則を踏まえた上で、あえて日本発Webサービスが世界で勝つためのキーワードは、やはり「日本固有の文化をいかに活用するか」でしょう。

以前記事で取り上げた「Tokyo Otaku Mode」は、まさに日本のオタク文化を海外ファンに向けて発信するサービス。現在Facebookで1000万人以上のファンを有していて、この数は日本人が運営するFacebookページにおいて最多です。

日本の裏側にある南米などで、日本アニメ「涼宮ハルヒ」などが熱狂的に支持されて、現地のファンが動画サイトにコスプレ姿等を多数アップしている。日本にいるとにわかに信じられないようなことが現実に起こっていることでもわかるように、日本の固有文化は海外で戦っていく上で、大きなアドバンテージを持っていると思います。

世界で戦う可能性を持つ日本発Webサービスは『ニコニコ動画』と『LINE』


『SENSEI NOTE』

現時点において世界で戦える可能性を持つ日本のWebサービスの代表例としては、『ニコニコ動画』と『LINE』が挙げられると思います。

日本固有の文化の発信拠点である『ニコニコ動画』の場合、ネットの世界で生きている人が今後さらに増加していくことを見越して、そうした利用者がイキイキと活躍したり稼げたりする場を作りたいという思いで作られました。それによって健全なネット社会を築いていこうとする基本理念は開設当時から現在までぶれることなく、昨年も「ニコニコ超会議」などネットとリアルの融合を進めることによって、ネットの住民がよりリアルで活躍できるような場であろうとしています。

『LINE』は「人と人とのコミュニケーションをより豊かに便利にする」という、非常にわかりやすいコンセプトを持つサービス。ヒットの要因となった「スタンプ」は、ケータイの絵文字文化の発展です。といいつつ私自身、LINEがこれだけ短期間で急成長するとは想像していませんでした。2011年6月のリリース時もそれほど大きなインパクトを感じなかったし、実は最初は「カカオトークのまねかな」くらいに思っていましたし(笑)。
しかしリリースから数カ月後、10代〜20代前半の若者に圧倒的な支持を得ていることを知った時、これは確実にヒットすると確信。すでに国内だけでなく、アジアでも急速に利用者を増やしています。

この両サービスに共通しているのは、先述した「公明正大」や「日本固有の文化」に加え、「心を豊かにするサービス」であることです。

最近は、上記の条件を兼ね備えたスタートアップベンチャーが増えているように思えます。例えば、今、注目している日本発のWebサービスに『SENSEI NOTE』というものがあります。昨年開催された起業チャレンジイベントの『Startup Weekend Tokyo』で注目を集め、「小・中・高校の先生が知恵を持ち寄る」という、いわば教育関係者のためのSNSのような位置づけ。「SENSEI NOTE」の創業者(編集部注:Loupe代表取締役の浅谷治希氏)は、今の教育業界が抱えるさまざまな問題は生徒だけでなく、教える側の環境にも問題があることに注目。全国の先生同士を「SENSEI NOTE」という、独自のネットワークを介して結ぶことで、課題と解決を共有するサポートし、健全な教育社会を築こうとしている心意気で起業しました。今年、本格的にサービスを開始し、ゆくゆくはグローバルも視野に入れているそうなので、今後も注目していきたいと思います。

“ネットネイティブ世代”が、従来の日本にないモノを作り上げることに期待


先ほど日本発のWebサービスが海外で受け入れられない理由に「コピー」という話をしましたが、日本はこれまで、単なるコピーではなく、技術を組み合わせたり、洗練させることで産業を発展させてきました。例えば自動車や家電等、日本が得意としてきたモノ作りの分野も、欧米から普及してきたものをブラッシュアップしたり、新たな技術や機能を組み合わせることで実現してきた。

一方、ITやWebサービスは業界自体がまだ歴史が浅いので、後から技術をブラッシュアップさせることが得意だった日本にハンデがあったのかもしれません。しかし現在、主要なWebサービスが一通り揃ったところで、これから日本の強みを活かすチャンスが増える可能性は大いにあると思います。
それにネットが生まれて20年が経ち、生まれながらにネットの世界で生きてきた「ネットネイティブ世代」が本格的に社会に出て活躍しだすタイミング。私自身もそうした若い世代に話を聞く機会が多くなってきましたが、皆一様に、はじめから世界を明確なターゲットにして活動しているんですよね。これまでの日本人ができなかった、ゼロから全く新しいWebサービスを作り上げる可能性もあると思っていますし、先ほど話した組み合わせや洗練の分野でも期待できると思います。

それにすべての産業がネット化していく中で、今後、「SENSEI NOTE」のような、特定業種・分野に特化したソーシャルメディア化が急速に進んでいくはずです。教育や医療をはじめ、これから各専門分野のソーシャル化によって新しい技術やサービスがどんどん生まれていきますし、その担い手となるのがネットネイティブ世代になるのではないでしょうか。ただし個人的には30代以上の世代が起業する「オジサンベンチャー」の動きにも注目しています。やはり私と同世代の方たちにも頑張ってほしいですから(笑)。

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