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発見!日本を刺激する成長業界30 監視から多目的へ、ネットワークカメラの進化論
街のいろいろな場所に設置されている監視カメラが今、劇的な進化を遂げている。ネットワーク化、カメラの高機能化、画像認識ソフトとの連携などにより、マーケティングをはじめセキュリティ以外の分野でも需要拡大が進む。
(取材・文/井元康一郎 撮影/平山 諭 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:13.02.22
新興国のセキュリティ強化需要を受け、年率1割の成長市場に
 社会の治安向上ニーズの世界的な高まりを受け、年率約1割のペースで成長を続けているのが、セキュリティをオンラインでチェックできる監視カメラ市場。ネットワーク化されたものを含め、監視カメラ需要が特に高いのは中国や東南アジア、中近東などの新興国だ。販売台数押し上げの原動力となっている。
 一方、成熟市場である日欧米などの先進国では監視用途に加え、高機能カメラで録画した映像を画像解析ソフトにかけ、店舗内での人の通行パターンや消費行動を調査するといったマーケティング向け需要が立ち上がりつつある。市場調査会社の矢野経済研究所は監視カメラのグローバル市場について、2015年には2009年比で約8割増となる、1205万台に拡大するとの予測を発表している。今後の成長性に要注目だ。
世界の主要ブランド監視カメラ市場規模推移(2011年は見込み、2012年以降は予測)出典:(株)矢野経済研究所「世界の監視カメラ市場に関する調査結果 2011」(2011年8月26日発表)2007年:6,230, 2008年:7,200, 2009年:6,840, 2010年:7,470, 2011年:7,980, 2012年:8,790, 2013年:9,700, 2014年:10,770, 2015年:12,050※日本・欧州・米国・中国・韓国・台湾の主要ブランド監視カメラメーカ40社合計の出荷数量ベース
アクシスコミュニケーションズ/世界大手が仕掛ける監視カメラの活用法
 高精細、高感度、ネットワーク化など性能向上が著しい定点型カメラ。世界シェアトップ級のアクシスコミュニケーションズは、月光程度の明るさでも昼間のように録画できるカメラなど、独創技術で新規ニーズを掘り起こしている。
「監視カメラ」の呼称はもう古い!? 新機種が生む多様な付加価値
最新型のネットワークカメラ「P1354」
最新型のネットワークカメラ「P1354」
ネットワーク化で激変する、定点型カメラの利用価値
 エレベーター、地下通路、ATM、スーパーマーケット――社会のさまざまな場所に多数設置されている監視カメラに今、劇的な変化が起こりつつある。これまで監視カメラはセキュリティ目的で使われることが大半だったが、カメラの性能向上やネットワーク化によって、監視以外の目的に使えるシステムが続々と提案されているのだ。
 ネットワークカメラを使ったソリューションを提案している1社が、スウェーデンに本社を置く監視カメラの世界大手、アクシスコミュニケーションズだ。
 同社の提案モデルでは、店舗内の映像情報をソフトウェアで分析し、来店客が売り場を回るルートや、その流れが悪くなる場所などを分析。店内のレイアウト改善やリニューアルプランの策定に利用できるという。また、同様の技術を用いて、レジに並ぶ人の数や看板の前で立ち止まる人の数などをカウント、解析する利用法もあるそうだ。

「アクシスはもともとネットワーク技術をキーワードにビジネスを展開していた企業で、私が入社した90年代半ばは、ネットワークプリントサーバーなどが主力でした。そのネットワーク技術と定点型カメラを融合させたネットワークカメラを世界で初めて開発したのが1996年。当時は1秒当たり約1コマという低速でしたが、ネットワーク化によってそれまでにないバリューが生み出された瞬間でした」
 1994年、アクシス日本法人の設立と同時に入社し、現在はシニアテクニカルマネージャーとして技術部門を束ねる落合大氏は語る。
カメラの高性能化が進むにつれて用途も拡大
「スタンドアロンの定点型カメラの場合、その場の様子を見ることしかできません。しかし、ネットワークに接続され、データをサーバーに蓄積し、そのデータをソフトウェアで解析できるようになると、マーケティングのためのデータ取得などいろいろな用途に使うことができます」
 ネットワーク化された当初は、カメラに組み込む半導体などの技術が進化途上だったこともあって、動画を撮って送信するだけで精一杯という状況だった。しかし……。
「部品のスペックが向上し、カメラに余力が出てくるにつれて、様子が変わってきました。流通業界向けのカメラ連動型POSシステムなど、ソリューションベンダーが構想している高度なシステムを実現可能な、ハードウェアをつくれるようになってきたのです」

 最もニーズの高い監視機能についても、カメラの性能向上に伴って劇的な進化を遂げつつある。昨年末に発売された主力製品の「P13シリーズ」では0.1ルクス、すなわち月明かり程度の照度でもカラーのハイビジョン映像を得られるほどの、高感度な性能と画像処理能力を持つ。実際にモニタ内の映像を見ると、夕方くらいの景色かと思われるほどに鮮やかなカラー映像となっている(下の画像参照)。
落合 大氏
アクシスコミュニケーションズ株式会社
技術本部
シニアテクニカルマネージャー

落合 大氏
「この性能は、当社の『Lightfinderテクノロジー』によって実現したものです。コア部分である画像処理やネットワーク接続のASICチップは自社開発したもの。単に画質が優れているだけでなく、複数のアクセスがあっても高フレームレートを維持できるのも特長です。映像の情報解析もサーバー側ですべて行うのではなく、カメラ内でかなりの処理ができるようになりました」
 セキュリティ分野、映像解析を利用した新分野など、多用途化が進むネットワークカメラ。技術革新が潜在ニーズを掘り起こすというトレンドは、当分の間続きそうだ。
日本のカスタマーとの連携を深める、現地法人エンジニアの重要性
「P1354」の撮影映像。場所はドイツの鉄道敷地内。まるで夕方のようだが、実際の環境は照度1ルクス未満という月夜程度
「P1354」の撮影映像。場所はドイツの鉄道敷地内。まるで夕方のようだが、実際の環境は照度1ルクス未満という月夜程度
同社が1996年に発表した世界初のネットワークカメラ「NetEye 200」
同社が1996年に発表した世界初のネットワークカメラ「NetEye 200」
最先端の技術に触れる楽しみと、顧客と接するやりがい
 同社のネットワークカメラやビデオサーバーなど基幹製品の研究開発は、すべて本国スウェーデンの研究所で行われている。ネットワークカメラの性能を左右する中核技術である画像処理、通信部分については独自開発を貫く一方、光学レンズ、可動メカニズム、給電などカメラの要素技術については、それらを得意とする企業とパートナーシップを結ぶことで得ている。
 日本法人の技術部門の役割はおおむね2点。ソリューション製品にアクシスのカメラを使う直接的カスタマーである、SI企業やリセラー(取得代行業者)などとの折衝と、販売後のサービスだ。R&Dには直接携わらないが、落合氏は「エンジニアとして大いに喜びを感じられる仕事だ」と語る。
「弊社はネットワークカメラのパイオニアで、出てくる製品は他社の後発品ではなく、常に先発型のもの。世界のトレンドをつくっていく新コンセプトに日々触れられるのは、好奇心旺盛なエンジニアには喜びそのものだと思います」

 落合氏はもともと、大学でUNIXサーバーの研究に携わる研究職だった。言わばネットワーク技術のエキスパートだったのだが、アクシスコミュニケーションズに入社して18年間、好奇心をそそられる日々が続いたという。
「研究開発は日本では行いませんが、毎年世界中のエンジニアをスウェーデンに呼んで、今後リリースされる製品情報を発表したり、企業文化の再確認を行うカンファレンスを開きます。世界のエンジニアが同じ思想で仕事をすることが、成長のカギだと考えているわけです。そこで見るネットワークカメラの先端情報は本当に興味深いものです」
ネットワーク関連のハイスキルが生かせる世界
 同社のカメラは基本的に全世界共通仕様だが、セキュリティシステムや次世代マーケティングツールはハードウェアだけで成り立っているわけではない。先端技術を熟知する立場からのソリューションの提案もするが、パートナー企業が認識技術やデータベース技術などと組み合わせ、パッケージ化することで付加価値を持たせていくのが基本事業。パートナー企業との連携でビジネスが成り立っているのである。
 今日取り組みを強化しているのは、こうしたSI企業やリセラーなどへの技術サポート力のアップだという。そのため、同社のエンジニアの数は直近1年で2倍にもなった。
「ハードウェアは世界共通でも、ニーズは市場によって異なります。日本のニーズに合う製品を提供できていない場合は、顧客の声をすぐさま本社に送ります。ただ、そのニーズのくみ取りは簡単ではありません。自社製品とパートナー企業のソリューション技術の両方を知っている必要があるからです。ですから、R&Dに直接タッチせずとも、弊社のエンジニアへの要求スキルはかなり高いですね」

 ネットワークカメラのエンジニアに要求される技術は、具体的にはどのようなものなのか。
落合 大氏
アクシスコミュニケーションズ株式会社
技術本部
シニアテクニカルマネージャー

落合 大氏
「カメラというとハードウェア関連の技術がまず思い浮かびますが、実はカメラの知識は入社後の研修でドキュメントを読むなどすれば、それなりに習得できます。簡単ではないのはネットワークに関する知識、ノウハウです」
 アクシスのネットワークカメラは基本的にTCP/IP上で作動している。システム内ではカメラ、サーバー、ストレージ、ルータなどが密接に連携しており、エンジニアにはそれを俯瞰したシステムを構築することが求められるという。
「カメラにはCPU、メモリ、ネットワークなどが内蔵され、OSはエンベデッドLinux。まさにWebサーバーそのものなんです。TCP/IPの知識だけでなく、ハードとソフト両方のPCアーキテクチャにある程度通じている必要があります。ちなみに、メタプログラムのSDKはWindowsを用いていて、その分野の経験も生かせます」
 実際に同社に転職したエンジニアの前職は、ネットワークエンジニア、ISPでの回線エンジニア、PCベンダーのコールセンター担当など幅広い。
「必須なのは探究心や好奇心。あとは適応能力さえあれば、スキルを大いに活用できる舞台だと思いますよ」
参入企業が幅広く、ハードとソフトのスキルが生かせる有望分野
業務用からエンドユーザー向けまで多くのメーカーが参入
 監視カメラとネットワーク化は今後、切っても切れない関係になっていくと考えられている。そのトレンドの中で、とりわけ高いスペックが求められる業務用定点型カメラを本格展開できているのは、ネットワークに関する基盤技術をトータルで持ち合わせている企業が主だ。
 アクシスコミュニケーションズのほか、日本ではパナソニック、ソニー、東芝、キヤノンなどが名を連ねる。

 一方で、PCやスマートフォンに装着し、テレビ電話などに活用する安価なネットワークカメラも需要が伸びている。こちらはネットワーク技術自体を通信端末メーカーやPC機器メーカーが請け負う形になるため、カメラ側はもっぱら受像モジュールを担当することになる。

 シンプルで解像度の低い受像機はコスト競争が激しく、新興国メーカーが主体となっている。また、日本企業ではハイエンドクラスをつくるコニカミノルタ、シャープ、日本ケミコン、ミツミ電機などの名が挙がる。このほか、顔認識、音声認識など動画ファイルの解析ソフト技術を持つ企業も、広義のネットワークカメラ関連企業ととらえることができるだろう。
想像以上に広いスキルカバレッジ、今すぐチェックを
 ネットワークカメラ開発に求められるスキルとキャリアだが、いずれもカバレッジがとても広い。ハードウェア系では画像処理設計全般。DSP、FPGA、ASIC設計および組み込みソフト開発経験は、カメラ本体や通信モジュールの開発にダイレクトに生かせる。
 もちろん光学設計、カメラの向きをコントロールするためのモーターやリンケージを使った可動部機構設計など、よりカメラに近い部分の経験も重宝される。民生用ビデオカメラやデジカメの開発フローを理解しているエンジニアなら、抵抗感なく入っていけるだろう。

 IT系ではネットワーク以外にソフトウェアの役割も重要だ。昔は監視カメラといえば、専用の回線や受像機などを備えた製品が主流だったが、今はWebブラウザで閲覧可能。解析も映像サーバーの蓄積データをパワフルな処理能力を持つPCで行うスタイルが一般的になりつつある。
 顔認識、音声認識をはじめとするデータ解析ソフトに精通したエンジニアは、ネットワークカメラに最適化した新ソフトの開発、あるいはSI企業などでのコンサル業務で活躍可能。また、Webアプリ開発ニーズも今後増加してくだろう。トラフィック分散や画像圧縮、クラウド関連にも活躍の場が広がっていく見込みだ。
 カメラを使って新しいバリューを創出してみたいというエンジニアは業界情報、求人情報を積極的にチェックしよう。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
ビデオカメラとネットワークカメラは違う。それにしても、「カメラ本体よりネットワークの技術と知識のほうがはるかに大切」と落合さんが語ったときは、ライターとともに「ほう」とうなってしまいました。技術と製品、用途との関係って、やはり興味深いですね。

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