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NHN Japan橋本建吾氏、DeNA坪田朋氏、UXTokyo酒井洋平氏が登壇
LINE、comm開発者が語った
テックヒルズ「UI,UXの衝撃」
「UI,UXの衝撃〜ユーザーを魅了するプロダクトの裏側〜」をテーマにCROOZが主催した技術勉強会「テックヒルズ」。LINE、comm開発者、UXのスペシャリストが登壇し、400人以上の技術者、デザイナーたちが集結した注目イベントをレポートする。
(取材・文/総研スタッフ 宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:12.11.15
CROOZ主催の技術勉強会「UI,UXの衝撃」に400人以上が参加

 インターネットサービス向上と業界全体の発展を目的として、次世代技術の可能性を追求する技術勉強会テックヒルズ。ソーシャルゲーム、ブログ、ネット通販など、モバイルインターネットコンテンツを提供するCROOZが主催している。これまでも「検索サービス」(第1回)、「ネイティブアプリvsWebアプリ」(第2回)、「Flashの今後」(第3回)など、注目の技術テーマと豪華なゲスト登壇者で開催し、話題を集めてきた。第4回は、「LINE」「comm」の開発者やUXのスペシャリストがUI/UXを語るということもあり、予約開始から約1週間で定員数300人を超え、参加者は400人以上となった。

今回の登壇者プロフィール
酒井 洋平氏
UXTokyo
酒井 洋平氏
UXスペシャリスト。ユーザリサーチに基づいたサービスの改善提案業務や各種UXデザイン手法の社内実施支援などを担当。学生時代には電気工学、認知心理学、情報デザインを無節操に学ぶ。富士通総合デザインセンター、富士通デザイン、NHN Japanを経てミクシィに入社。ネコ好き、テクノ好き。User Experienceに携わる実践家のためのネットワーク「UXTokyo」メンバー。
橋本 建吾氏
NHN Japan 株式会社
橋本 建吾氏
文系大学卒業後、Web制作会社でアートディレクターとしての勤務を経て自らのデザイン会社を設立。その後、ネイバージャパン株式会社へ入社。2012年、NHN Japanへ経営統合後の現在も、UIデザインチームのマネージャーとして、デザイン制作物全般に関わるとともに、「LINE」「ネイバーまとめ」などの主力サービスにおけるUIデザインも手がける。
坪田 朋氏
株式会社ディー・エヌ・エー
坪田 朋氏
自動車工学系の専門学校を卒業後、外資系オンラインゲーム企業、大手ネットサービス企業などを経て、2011年DeNAに中途入社。過去Web系のディレクターとしてキャリアを積み、前職の某ネットサービス企業では、大規模blogサービスを中心にCGM系サービスのプロジェクトマネジメントを担当。現在はMobageプラットフォーム事業UXデザイン部の部長を務める。
【Part1】 「開発者のためのUXデザイン」 UXTokyo 酒井 洋平氏



 トップバッターで登壇したのは、UXTokyo酒井洋平氏だ。最近、UI(User Interface/ユーザーインタフェース)とUX(User Experience/ユーザーエクスペリエンス)は「UI/UX」ひとくくりにされて語られることが多いが、酒井氏はそのことに疑問を感じているという。そのUIとUXの定義の違いについて、酒井氏の体験を記録した動画を交えて語り出した。
「定期券期限切れの朝」と題したその動画では、酒井氏が出勤時に地下鉄の定期切れに気付き、ATMで現金を下ろし、定期を買い、自動販売機でジュースを買うなどの一連の行動が映し出される。

 酒井氏はこうしたユーザーの「主観的経験」こそがUXであり、ユーザーの「主観的経験をさせる接点」がUIであると説明。だが、ユーザー個人それぞれが持つ主観的経験をデザインすることは不可能だ。だからこそユーザー体験(UX)が想起されるように、UIを企図して設計することが重要であると意見を述べた。つまり、以前はUIだけを大事に考えてきたが、これからはユーザー体験を意識したデザインが必要となってきたため、UI/UXという表現になっているというのである。

 だが、ユーザーとは誰のことなのか、そのユーザーの価値とは何なのか。それを考えなくてはUXデザインはできない。そこで酒井氏はあるマンガを例に、「価値発見プロセス」の見つけ方の例を紹介した。本屋の店員である主人公は売れていない絵本が気になり、絵本コーナーを観察し始める。絵本の重要性に気づき、同僚に絵本コーナーの改善案を相談する。最初は乗り気ではなかった同僚も徐々に関心を持ち始め、絵本の価値に気づくというエピソードだ。酒井氏は主人公たちが絵本の価値にたどり着いた「価値発見プロセス」を以下のように定義した。

  • 計測
  • 気づき
  • ベンチマーキングと観察
  • プロトタイピング
  • ストーリーテリング

 UXの価値発見のためには、UXデザイナーだけはなく、マーケティング、プランニング、デザイン、エンジニアリング、QA、カスタマーサポート、営業など、部門を超えて全社横断的に考えていく必要があると酒井氏は締めくくった。

【Part2】 UI/UXについて 〜LINEの場合〜 NHN Japan 橋本 建吾氏

 続いて登壇したのは、NHN Japanで「LINE」をはじめとするUIデザインを担当する橋本建吾氏だ。橋本氏もUIとUXの違いについてから話し始めた。まず橋本氏は、朝食写真を例に「UX design ≠ UI design」であることを説明してみせた。カップやスプーン、ミルク、シリアルが並ぶ洋食の写真では、食器や食材をプロダクトや機能として考え、スプーンで統合すると説明。さらに牛乳の量をコントロールしてシリアルの質感を変えたりすることで、味や質感を変えることがUXのアプローチだと語った。2枚目は和食の写真で、日本食は木の箸、漆の器など、材質が変わるだけでユーザーが感じる印象が大分変ることを例に出し、材料や素材の選択の重要性を説いた。そして、この役割を担うのがUIデザイナーだ。橋本氏いわく、「UXはユーザーの感受であり体験、UIは感受性を生み出す入り口、窓」なのだという。

 次にNHN JapanのUXデザインプロセス、題して「NHN UX Designプロセス」が紹介された。ポイントは「simple」「Quick and Fast」「意匠」の3つである。

1. simple

 橋本氏は会社に入ってから半年くらい、上司に「デザインはシンプルに」と言われ続けたそうだ。なぜUIにシンプルさが必要なのかについては、「インターネットの情報の供給と仕組みにヒントがある」と語る。インターネットの歴史を紐解くと、1997年頃から世の中にホームページと検索エンジンが登場してきた。当時は、ネット上の知識を受け取るだけのWebからユーザーへの一方的な配信だったと説明。それが2005年以降、ブログが台頭し、不特定多数の人が情報を流通するようになった。つまり、誰でも使えるシンプルなインタフェースが必要になったのだという。

 この考えはビジネスのデザインにも影響すると、橋本氏はLINEのバナーデザインを例にシンプルの重要性を証明した。紹介されたバナーデザインAは、LINEスタンプのイラストが目を引くパターン、一方デザインBは「無料通話アプリ」というキャッチコピーだけのシンプルなもの。並べてみるとデザインAのほうが目立つように感じるが、Bのほうがクリック数が高かったそうだ。実際、画面に当てはめてみるとシンプルなバナーやキャッチコピーのほうが目につきやすい。

2. Quick and Fast

 かつての一般的だったワークフローは、「plan → design → develop」というウォーターフォール型。工期が読みやすくて進行に有利である反面、プロジェクトのロールバックには弱い。そこでNHN Japanでは、UXチームがリサーチとフィードバック、UIチームがプロトタイプに落とし込み、デベロップチームと連動するというやり方を採用した。あるUIが完成したら開発に、だが1回では終わらせず、そのループをクルクルまわす。さらに、UXチームでデザインやインタラクション、ニーズへの満足度を検知し、場合によっては開発に戻す。起点がどこでもよく、いつでも回せるので、クイックな開発・意思決定ができる。




3. 意匠

 UIで差別化を図るために、UIデザイナーが取り組まなくてはいけないこととして挙げられたのは、「ノイズを取り除く」こと。橋本氏はLINEはアプリ画面上の情報量を極力少なくし、ユーザー間のコミュニケーションを阻害する機能や表示は削っていることを明かした。ざらざらした四角い木にかんなをかけるとなめらかで気持ち良い質感になることに例え、UIデザイナーは「かんなをかける」ように、プロトタイプデザインを重ね、デザインがシンプルになるよう心がけるべきだと語る橋本氏。最後にUIデザイナーに必要なことを以下のようにまとめた。

  • UIデザイナーの選択の連続が、ユーザー体験(UX)をさまざまに彩る
  • 使う人の立場、状況を踏まえ、デザインはシンプルに
  • プロトタイプデザインを繰り返すことで、品質の凸凹をなくす
【Part3】 「アジャイル開発におけるUX」 DeNA 坪田 朋氏

 Mobageプラットフォーム事業UXデザイン部の部長を務めるDeNA坪田朋氏。先日リリースされ、話題の無料通話アプリ「comm」のプロダクトマネージャーでもある。DeNAではUXを重要視していることから、クリエイティブグループをUXデザイン部に名称変更したことを明かした。自らもUXに関心が高く、“UXラブ”と宣言している。

 坪田氏もUIはイメージしやすいが、UXは議論してもだいたい着地しないものだと語る。UXの定義について「UX白書」を引いてみても、違和感を感じるのはまだUXという言葉がうまく言語化できていないと考えているのだという。多くの概念を包括しており、一つの定義で言い表せなくなっているUXという言葉を、メンバー間では「システムの利用を通じて人々がもつ体験」と定義しているそうだ。

 また、UXデザイナーは「ユーザーの立場を中心に考えながら、方法論を組み合わせて課題・欲求を解決する」べきだとし、自身ではイケてるプロダクトをつくりたいと思っているという。さらに、「イケてないUIが生まれる理由」を以下のように考察している。

  • ユーザーニーズが不理解
  • 市場の勉強不足
  • コミュニケーション不足
  • チューニング不足

 DeNAでは、「リサーチ→要件定義→UI開発→テスト」をループさせることで、イケていないUIデザインが生まれないよう対策をとっている。リサーチで具体的に実施していることも紹介。まず、アンケートを使って、数値化・グラフなどで表現したものを分析する「定量調査」である。キャッチコピー、サービスの機能名、コア機能のニーズ、イラスト、キャラクターなど、主観が入るものを定量化調査で明確にし、いろいろな軸で切り取る。

 定性調査では、実際に使ったときにボトルネックになっていることや、スマホでゲームしているときの視線の動き、競合サービスなど、定量調査だけではわからないことをリサーチする。さらに競合調査では、ターゲットユーザーにプロモーション、デザイン、設計、グラフィックなど何が刺さっているかなどを切り出す。調査した後は要件定義やUI開発を進めていくが、そこでもさまざまな議論やテストを行い、リリースしてからもA/Bテストやデータ分析を行っていくという。徹底的な分析、プロトタイピング、ユーザーテストの実施と繰り返しが、UI設計では重要なことであると坪田氏は語っている。




 坪田氏は、「comm」の開発でも採り入れている「Scrum開発」についても説明を行った。アジャイル開発手法の一つで、スピードと品質が求められる現場には最適なのだという。具体的なメリットとしては、優先度・目的の可視化、役割の明確化、コミュニケーションコスト減が挙げられた。その詳細は坪田氏の講演資料で紹介されているので、興味がある人はこちら(http://www.slideshare.net/tsubotax)を参照してほしい。

 UI設計はリサーチとテストがとても大事であり、UXを考えないUIは時代遅れだという坪田氏。まとめでも、「リリースして終わりではない、リリース後の効果分析を徹底的に行い、次に何をするかを決めることが重要である」と繰り返し語っている。

第4回テックヒルズ(UI,UX)
https://www.facebook.com/groups/330534807043933/

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