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愛知県一宮市の新開発拠点がスタート!
コナミグループ高砂電器産業が遊技機技術者を大量採用
デジタルエンタテインメント事業で知られるKONAMIだが、実は遊技機事業でも独自の存在感を発揮している。同グループの遊技機事業を支えるのがグループ会社の高砂電器産業。ぱちんこ・パチスロの新型機を開発する電気回路設計者に仕事の醍醐味を聞いた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/中藤眞美)作成日:12.10.31
コナミグループの一員として遊技機事業を担う
女番長(スケバン)
コナミグループ 一宮事業所
コナミグループ 一宮事業所

 コナミグループは1992年の遊技機事業への参入以来、アニメや3DCGなど多様なコンテンツを盛り込み、遊び方やユーザー嗜好の変化に対応。エンタテインメント性あふれる商品ラインナップを投入してきた。パチスロでは遊技機事業オリジナルコンテンツのほか、「グラディウス」「幻想水滸伝」などコナミグループの人気コンテンツを採り入れた商品も開発。ぱちんこでも同様にコナミグループが持つ制作ノウハウと多様なコンテンツ資産を活用した商品展開を進めている。

 2012年3月期決算によれば、2011年9月に発売したパチスロ最新作「マジカルハロウィン3」が過去最多の出荷台数を記録するなど、遊技機事業の売上高は過去最高、前年比2.5%増となる約184億円を達成している。コナミグループの遊技機事業の中核をなすのが、KPEと高砂電器産業だ。KPEは当初、ぱちんこ機の液晶表示装置や映像コンテンツの開発・製造からスタート。その後、パチスロ機本体の開発・製造・販売にも参入している。

 一方の高砂電器産業は、ぱちんこ・パチスロ機のメーカーとして大阪で60年以上の歴史を誇る老舗。一時、社名をアビリットとしていたが、2011年1月のコナミグループ入りで社名を創業時のものに戻した。パチスロの最新機種では「女番長(スケバン)」などがある。ちなみに両社は、2012年には共同で遊技機の販売会社「KPE・高砂販売株式会社」も設立している。

 2012年、コナミグループは関東・関西に続く中部地区の開発・製造・物流拠点として、愛知県一宮市に新たに事業所を開設した。面積約8万7000平米はグループの拠点の中でも最大規模。高砂電器産業も大阪本社に加え、この一宮事業所にも企画・制作チームを置くことになった。

商品ラインナップ増加に伴って、制作組織も拡大

 コナミグループ入りで高砂電器産業の人材戦略も大きく変わった。募集職種は遊技機プロデューサー・ディレクター、映像・CGデザイナーなどのクリエイティブ人材から、制御プログラマー、回路設計・機械機構設計のエンジニアまで全職種に及ぶ。ぱちんこ・パチスロ制作に関わる制作グループだけで年度内にこれまでの陣容を倍増する予定だ。

「商品の供給力を強めて市場で一定の位置を占めるためにも、商品ラインナップを増やしたい。タイトルを増やして、市場の変化を取り込むことで、ヒットタイトルも生まれやすくなります。とはいえ遊技機は、最初のアイデアから開発を経て市場に投入するまで2年はかかるもの。新機種を毎年投入するためには、開発ラインをさらに充実させていく必要があります」
と募集の背景を語るのは、プロデューサーの田原大輔氏だ。

 年間制作本数が多ければ、それだけ開発者は経験を積むことができる。経験の少ない若手クリエイター/エンジニアも同時に複数ラインに携わることで、ヒットの条件を体感的に身につけることができるのだ。コナミグループ入りで、同グループのコンテンツをぱちんこ・パチスロに展開する機会も増えてくる。ゲームと遊技機におけるIP(知的資産)の相互活用が増えるということも、今回の人材募集拡大の背景にはあるようだ。

田原 大輔氏
プロデューサー
田原 大輔氏
遊技機のルールに沿いながら、エンタテインメントを実現する電気回路設計者

 ぱちんこ機の開発は年々複雑になっている。「電飾として高価なLEDを大量に採用したのは遊技機業界が最初ではないか」(田原氏)と言うように、それが使えるとなったら、最先端の部品やデバイスを選択することに、ためらいのない業界なのだ。ただ、必ずしも最先端技術ばかりとはいえず、むしろ既存の技術を複雑に組み合わせることに高度なテクニックが求められる。

 制作はチーム単位で行われる。プロデューサー、ディレクター、プランナー、デザイナー、プログラマー、エンジニア等の専門スタッフが1つのタイトルの研究から企画・制作を担当し、最終商品まで仕上げるのが同社のスタイルだ。

 今回はエンジニアの中でも主に電気回路の設計者の仕事を見ていこう。電気回路設計者は、遊技機に組み込まれている電飾やアクチュエーターなどを制御する回路を設計するのがメインの仕事だ。これらのほかに、電飾、映像、サウンドなどをそれぞれ制御する基板がある。これらの基板は、「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則(遊技規則)」という法令で技術上のルールが定められている。

 近年、遊技機の機構は複雑化・大型化する傾向にあると言われる。だが、同時にルールに則った厳しい制約と、光と音のページェントというエンタテインメント性の両方を技術的に満たさなければならないという課題への挑戦が、遊技機開発の醍醐味と言えよう。

 他ジャンルの製品と違って、遊技機の電気回路設計に特徴的な要素について、田原氏はこう言う。
「一つには、この遊技規則に沿った基板設計という特殊性があります。この知識は異業界にいる人は全く触れたことのないものでしょう」

 遊技規則の理解は異業界からの転職者が少ない理由にもなっているが、田原氏はそのハードルは決してクリアできないものではないという。ほかにも「ホール内での使用を前提とした高信頼性」も、重要なポイントだ。基板の高性能化にともなう発熱に加え、密封されたぱちんこ台は電子部品にとっては過酷な環境になる。ホール環境で生じる静電気も尋常ではないし、「球が出ない」と台を揺さぶるユーザーがいるかもしれない。遊技機は一般に3年が最低耐用年数とされるが、その間に壊れないよう、熱や振動条件に配慮した回路設計が求められる。

 さらに、不正対策もこの業界ならではの特殊要素だ。静電気や電磁波を使って不正に出玉を獲得する、いわゆる「ゴト」と呼ばれる行為。
「防止装置ができれば、それをかいくぐる手法が発明されるという“いたちごっこ”が現状。ゴト行為を検知したり、ゴト行為そのものが行われないような工夫を回路に組み込むことも、私たちの重要な仕事になります」

 正確さが求められる遊技機の回路設計。何よりも重要なのは「論理的な姿勢を崩さないこと」だと、田原氏は指摘する。
「設計して動けばそれでいいというのではなく、なぜこう動くのか/動かないのかを、論理的に確認する姿勢が欠かせません。常にそうしておくことで想定外のトラブルにも冷静に対処することができるのです」

 こうしたロジカルな思考法は、遊技機に限らず、ほかの電気回路設計でも求められるもの。逆に言えば、他業界でそのスキル・経験を身につけた技術者であれば、十分に遊技機業界へ転職できる“資格”があると言えるのだ。

「きちんと動くこと」に全精力を傾けて

 田原氏が語った遊技規則を、「してはならない最低限のルールとして定められているもので、その解釈は状況によって変わってきます。だが、制約があるからこそ、技術的には面白い」と前向きにとらえるのは、回路設計担当のシニアマネージャーだ。
「回路基板は機種を越えた共通部品もあるが、基本的には機種ごと新規に設計します。実際のぱちんこホールなどでそれが動いているのを見るのが、一番の楽しい瞬間ですね」
 と、語る。

 例えば液晶の画面サイズが変われば、それに応じて回路設計を変えるのは当たり前。ゲーム性を高める演出手法に新たなアイデアが生まれれば、それを実現するために回路は一から書き直しになる。その一方で、ぱちんこは認可商品であるため、一度製品を販売すれば、その後の製造では改修ができないという事情もある。

 部品交換などで不具合を修正することができないため、設計・生産工程における信頼性確保は重要だ。検査工程には相当な時間が費やされる。かといって、検査コストは青天井というわけにはいかない。設計段階から信頼性を高めるために、日々の格闘が行われている。

シニアマネージャー(設計担当)
シニアマネージャー(設計担当)

 現在は多数のメンバーを抱えるマネージャー職。チーム内のコミュニケーションを密にすることを何より大切にしているそうだ。
「毎日の業務日報にはこまめにコメントを入れます。制作部全員が自由に行き来できる環境にあり、専門技術の垣根を越えて、技術交流ができるようになっているのが、当社のいいところです」
遊技機の電気回路設計は「メカ(機械)とソフトウェアをつなぐ仕事」というのが持論だ。

「回路設計者が評価のためにアセンブラやC言語で自らプログラムも書くこともありますし、メカニズムについての知識も増やさなければなりません。電気系の技術者がその専門に加えて、ソフトウェアや機械・筐体設計のことも覚えられるという点では、キャリアを成長させるのに最適の職場といえるかもしれません」
 と、仕事の幅広さを強調する。

 コナミグループの遊技機事業を支える主力企業としてこれからの成長性が期待される同社。エンジニアの新しい活躍のフィールドが広がる。

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