入社2年目で作っちゃった!?“秋葉原ラボ”の全貌

幅広いユーザに親しまれているサイバーエージェントが運営する「Ameba」。裏には、大規模データを解析する最先端エンジニアたちの働きがあった。華やかなサービスを支えるプロフェッショナルの姿を、きゃんちが明らかに！

（取材・文／津留有希　総研スタッフ／山田モーキン）作成日：12.07.25

	「エンジニアにとって理想の職場を探し出すこと」を使命にさまざまな職場に突撃するＴｅｃｈ総研公認レポーター。アニメやゲームをこよなく愛するかたわら、自らブログやSNSを使いこなす高いネットスキルの持ち主。最新の技術情報にも関心が高く、エンジニアという職業を深く尊敬している。のべ5年以上に渡る企業取材に磨かれたテックハニーの洞察力は鋭く、愛らしいメイド服に包まれた癒しの笑顔と無邪気な質問で、職場の魅力やエンジニアの素顔を次々に引き出していく。

	テックハニー"きゃんち"の素顔はこちら http://www.girls-record.jp/artists/kyan_art.html

　エンジニアのみなさん、こんにちは！　お久しぶりです、テックハニーきゃんちです。　どうしてもみなさんにご紹介したいステキな職場を発見し、こうしてコスチュームも新たに舞い戻って参りました☆　どうでしょう、似合ってますか？
　今回ご紹介するのは、みなさんご存知「Ameba」を主力事業とする企業さんの、秋葉原にあるラボ。コーポレートカラーに合わせて、記事のデザインもグリーンに一新しました。このグリーンのように、夏の暑さも吹き飛ばす爽快なレポートをお届けしますので、期待してくださいね！　では、行ってきます☆



	1998年設立。主力事業である「Ameba」は、会員数2000万人以上を誇る日本最大級のインターネットメディアとして、ブログサービスの他、アバターコミュニティサービス「アメーバピグ」やミニブログサービス「Amebaなう」など先進的な独自サービスをリリースし続けている。ほか、インターネットメディア事業やインターネット広告事業を展開する。 http://www.cyberagent.co.jp/

福田一郎さん（29歳）画面左
アメーバ事業本部Ameba Technology Laboratory研究室長。Hadoopを使用したデータ解析のスペシャリストで、若くして現在の秋葉原ラボを立ち上げた頼れるリーダー。普段の冷静な語り口に似合わず、議論になると誰よりも熱くなるとか。趣味はアイドルとメイドカフェ巡りという、まさに秋葉原で働くために生まれたような一面も。
安田柾弘さん（27歳）画面右
アメーバ事業本部に所属する検索エンジンディベロッパー。ラボの立ち上げメンバーのひとり。某サービスの検索エンジンロジック改良をひとりで受け持っていた経験を持つ。尊敬する人物像は「修行僧のようにストイックな技術者」と迷いなく語る筋金入りのエンジニア。

きゃ：	はじめまして！　実は私も「Ameba」ユーザなので、今日は楽しみにしていました。さっそくですが、渋谷の本社と、ここ秋葉原との違いはなんですか？
福田：	ここは「Ameba Technology Laboratory」（以下「ラボ」）といいます。簡単に言うと、「Ameba」などのサービスで日々生成される膨大なログデータを総合的に管理し、その利用について技術的な研究をする場です。
安田：	2011年4月にオープンしました。データの解析・マイニングと、検索エンジン開発、機械学習を研究しています。
きゃ：	新しくてきれいなオフィスですね。デスクも目線が合わない設計になっていて面白いです。……あの片隅にある、畳に座椅子のスペースはなんですか？
福田：	僕の作業スペースです。
きゃ：	お茶室が出現したみたい（笑）。ということは、福田さんがリーダーなんですね。お若いのに、すごいです！　どういった経緯があったのですか？
福田：	もともと僕は「アメーバピグ」でゲームを開発していました。そのとき、これからゲーム内で課金するケースが増えていったら、ユーザの行動を総合的にログデータから解析する必要性が高まるのではないかと考えました。当時はサービスごとにログを管理していて、「Ameba」全体のログを一元管理するような解析基盤は存在していなかったのです。そこで、安田をはじめ、大規模なデータを扱うことに興味のある同期3人に「統合ログ解析基盤を作らないか」と声をかけたのが始まりです。
安田：	私は「アメブロ」や「Amebaなう」、プロフィール検索などの検索エンジン開発を手がけていました。検索システムもログを分析してロジックを組み立てるので、福田の話の重要性はよくわかりました。その後、4人で何度も合宿をやって意見をぶつけあい、提案書を作りました。
きゃ：	合宿ですか。会社から補助とか出るんですか？
安田：	出るんですけど、申請しませんでした。そのときの業務に直結するサービスを作るための合宿でもありませんから、みんな自腹で、有給を取って。
きゃ：	すごい！その考え方は素晴らしいですね。
福田：	調査の結果、大規模データを分散処理するフレームワーク「Hadoop」と「Hive」を使用すれば実現できるというめどが立ちました。そこで、チームとしてログ解析基盤の開発に当たらせてほしいと申請しました。2009年末ごろだから、入社2年目のときですね。
きゃ：	そんな若手の提案を受け入れる度量のある会社って、なかなかないですよ。
福田：	次の年、うちのチームにインターンの大学生を呼んだとき、打ち上げの場で「大規模データを扱う専門の部署と場があったらいいね」という話題が出ました。酒席の冗談で「僕は秋葉原が好きなので、秋葉原ならやりたいです」と言ったら、翌日にはオッケーが出て、トントン拍子にラボの開設が決まってしまったんです。とりあえず次の日から物件を探しました……。
安田：	不動産屋に足を運んだり、ビルの資料を取り寄せたりしている福田を見ているのは、なかなか面白かったですよ（笑）。
福田：	そういう経緯で最初は4人から始まったチームですが、「Hadoop」の使用経験者やデータマイニングのプロを中途で採用し、現在は20人弱のラボとなっています。
きゃ：	それでお若い福田さんがリーダーなんですね。サイバーエージェントさんが独創的なサービスを次々と発表できるのも、組織に年功序列ではない柔軟性があるからかもしれないなあと、納得です☆

きゃ：	ログ解析基盤は、どんなことに活用されているんですか？
福田：	ほんの一例ですが、ブログの閲覧ログを利用して、「ブログ推薦機能」を実現しました。ユーザがあるタレントのブログを読んだら、似たような特性のブログも読みたいだろうと仮定して、同じジャンルのタレントのブログを推薦しています。
きゃ：	あっ、ホントだ。私のブログを見たら、お友達のアイドルさんが推薦されてきました！
福田：	多くのタレントが利用しているところも「Ameba」の特色なので、タレントブログを扱っているチームは多くのユーザにいろいろなタレントのブログを閲覧してもらいたいと考えています。タレントチームとブログを管理しているチームは別なのですが、こうしてラボに部署横断的なログ解析基盤ができたことで、「ブログチームの持っている閲覧ログを使ってタレントチームでのサービス活性化を図る」といったことができるようになったんですよ。
安田：	検索エンジンチームではスパム記事の判別を行っています。スパマーは旬のワードを記事に入れて最新記事の検索上位を狙ってきます。そこで、スパム記事を除去し、信頼度の高い記事を検索上位に持ってくる必要があるのですが、その判別にはログ解析基盤に集められたデータを使用するんです。現在も、より精度をあげるために開発中です。もちろん、これはほんの一部で、もっとさまざまなところでログは活用されていますが。
きゃ：	ログって、宝の山なんですね。知りませんでした！
安田：	「Ameba」は、ブログサービスをはじめ、「Amebaなう」「アメーバピグ」など、多面的なサービスを展開している日本有数のインターネットメディアです。複数のサービスを利用しているユーザの行動ログを集中管理している企業はなかなかないので、データマイニングを研究したい人にとっては、かなり面白い環境かもしれません。データマイニングのプロフェッショナル、絶賛募集中です！
きゃ：	だそうです！　ほかにラボならではの魅力はありますか？
安田：	技術選定において、多くの裁量権を持っているところでしょうか。ミドルウェアなどで新技術を使いたいと提案した場合、採用される可能性は高いです。ただし、研究のための研究をする組織ではないので、あくまで「社の課題を解決するアプローチとして有効な新技術」に限りますが。
きゃ：	野心あるエンジニアさんにとっては、大きな魅力ですね。
福田：	Hadoop関連ではHBaseを友達関係などのグラフ構造を扱うデータストアとして採用しました。国内ではあまり使用実績がなかったHBaseですが、グラフ構造データは組み合わせが大量に増加しやすく、書き込み処理が多くなりやすいことなどの理由からHBaseは比較的向いていると思われたので採用することを提案し、実現させることができました。
きゃ：	ええっ!?　普通の大企業なら尻込みしますよね。
福田：	そうだと思います。莫大な予算のかかることですから、失敗しちゃった、ではすみません。そのぶんこちらも真剣でした。前例がないので、問題にぶつかるたびに自分たちで切り拓かなければならない苦悩もありましたが、軌道に乗せることができました。「Hadoop」とその関連プロダクトはオープンソースプロジェクトになっているものが多いので、問題やバグを発見・解決できたものについてはパッチを送ったりもしています。また、関連プロダクトのコミッターになっているメンバーもいます。
きゃ：	チャレンジを応援する気風が、エンジニアを育てるんでしょうか。おふたりが20代だなんて、すごすぎますよ！

きゃ：	ラボにはどんなタイプの方が多いんですか？
安田：	さまざまな個性の人がいますけど、きちんとディスカッションできるメンバーが集まっていますね。打ち合わせを進めるうちに議論が白熱してくることも多いです。
福田：	ホワイトボードが多いからディスカッションになりやすいのかも。ここのオフィスを作るとき、ホワイトボードをたくさん置いてもらうように頼みました。
きゃ：	壁が一面ホワイトボードになってますもんね。そんな大切なスペースに落書きしてしまって、すみません（笑）。ディスカッションからケンカにはならないんですか？
安田：	ケンカに近いほど熱くなることはありますよ（笑）。それぞれが練り上げたビジョンをぶつけあうから、お互いに譲れないのは当たり前。非常に勉強になりますし、より良い結論に至るように、前向きなディスカッションができていると思っています。
きゃ：	ステキな職場ですね☆　そんなおふたりが思い浮かべる「優秀なエンジニア」ってどんな人でしょうか？
福田：	そうですね、「手段と目的を取り違えない人」でしょうか。
きゃ：	といいますと？
福田：	「流行だから」とか「みんなやっているから」という理由で技術や言語を選んでいるエンジニアは、手段が目的化していると思いませんか。「何を実現するためにその技術をやってるんですか？」という問いに説得力を持って答えられるような、能動的に動いている人が優秀なエンジニアでしょう。かつ、大きな目標に向かって、1年後、2年後…とやるべきことを設定できるような、リーダーの素養も必要だと思います。
きゃ：	福田さんが、まさにそんな感じですよね。若くしてログ収集基盤の必要性を説いてラボを立ち上げたんですから。安田さんはいかがですか？
安田：	優秀なエンジニアと聞くと、「修行僧」のような人物像が思い浮かびます。
きゃ：	しゅ、修行僧ですか！？
安田：	共にラボを立ち上げた仲間の一人ですが、休日だろうと毎日ストイックに勉強しています。進歩していくWebの技術を常に吸収していくライフスタイルを継続していることがすごいと思うのです。「本物のスペシャリスト」と呼ばれるエンジニアになるのは、そういう修行僧のような人だと思います。
きゃ：	両方のタイプがそろっているラボは最強じゃないですか！　私も一員になってみたいです☆　最後に、おふたりの今後の目標を教えて下さい！
安田：	サービス横断的なログ解析基盤は一応の完成をみたので、次は、現在サービスごとに持っている検索エンジンとスパム判定システムを統合化したいです。遅くとも1年後には完成させます。その後も、ログ解析基盤の強みを生かし、会社やユーザにメリットのあるシステムを開発していきます！
福田：	個人的には、ラボをもっと実験的なことができる場にしていくことを希望しています。ひとつ考えているのは、画像処理系の研究。似たような画像を探す機能や、物体検知など、ニーズはあるんじゃないでしょうか。とにかく、好奇心を忘れず、新しいことに挑戦していきたいですね！
きゃ：	本日は熱いお話しをたくさん聞かせていただいて、ありがとうございました！　これからも「Ameba」ユーザとして応援しています☆


	普段何げなく使っている「Ameba」の裏側には、膨大なログデータから新しい発見を得ようとする先進的な研究があったんですね。今回は、まだ20代のおふたりが高いプロ意識をお持ちだということと、仕事に対する真剣な姿勢に感動しました。とってもカッコよかったです☆　おふたりのようなエンジニアが集まっているからこそ、「Ameba」は次々に独創的なサービスを開拓できるんだなぁと思いました。「プロ」と名乗るからには、どんな分野であろうと、目的意識をもって努力しなければいけませんよね。あらためて、私自信、身の引きしまる思いをしました。また新たな思いで、「Ameba」を楽しく使っていきたいと思います☆