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小島プロダクションが次期メタルギア ソリッド制作スタッフ募集
KONAMIのゲームエンジンプログラマが語るFOX ENGINEとは
Game Developers Conference 2012で発表され、大きな話題を呼んだKONAMIの「次期メタルギア ソリッド」のスタッフ募集。その「メタルギア」シリーズの次世代ゲームエンジン「FOX ENGINE」を手がけるエンジニアに、その仕事内容、キャリア観を聞いた。
(取材・文/白谷輝英 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:12.05.23
KONAMIの未来を担う次世代ゲームエンジン「FOX ENGINE」を手がける

 (株)コナミデジタルエンタテインメント小島プロダクションのゲームエンジンプログラマ。同社入社後は、名作「メタルギア ソリッド」の制作に参加してきた。当時担当していたのは、各種の画面エフェクト、特殊なギミックづくり、一部のボス戦におけるグラフィックスなどだった。

 現在の小島プロダクションは、常時数百人程度が集まっている、精鋭のゲームソフト制作チーム。しかし、当時の制作チームは数十人程度だった。プログラマだけに限れば、数人ほどしかいなかったという。そのため、幅広い業務を担当し、スキルを磨くことができた。

 その後も、一貫して小島プロダクションに所属。すべての「メタルギア ソリッド」シリーズに、グラフィックス担当者としてかかわってきた。また、アクションRPG「ボクらの太陽」の基礎部分の設計や、PlayStation®2など新機種の登場時の性能解析や描画エンジンの開発といった業務も手がけている。いわば、グラフィックスのプロフェッショナルだ。

 そんな彼が現在取り組んでいるのが、KONAMIが自社開発中の新ゲームエンジン「FOX ENGINE」だ。マルチプラットフォームで動作し、次世代のゲームコンソールでも動くように設計されている。小島プロダクションのこれからの作品も、「FOX ENGINE」での制作が進められているところだ。

 ゲーム制作に興味を持つ人ならご存じの通り、「ゲームエンジン」とは、ゲーム制作を効率化するために用意されるプログラム群を指す。繰り返し発生し、手間がかかる作業などはゲームエンジンに任せ、制作者はゲームの質を高めることに集中させようというのが、世界の潮流なのだ。現時点では、Crytekが開発した「CryENGINE」、Epic Gamesが開発した「Unreal Engine」、Unity Technologiesが開発した「Unity」などが広く知られている。

 そこに新たに参入しつつあるのが、「FOX ENGINE」なのである。
「これまでの小島プロダクション作品は、職人肌のクリエイターが手間をかけて作り込むスタイルでした。質の高いものはできるのですが、時間と手間がかかるのが難点だったと言えます。今後、ゲームの制作規模は大きくなる一方。そこで、時間と手間をできる限り抑えることが課題となっていました。『FOX ENGINE』の開発は、そのための切り札なのです」

株式会社コナミデジタルエンタテインメント 小島プロダクション 制作部 テクニカルディレクション担当
株式会社コナミデジタルエンタテインメント
小島プロダクション
制作部 テクニカルディレクション担当
「メタルギア ソリッド」
「小島プロダクションのこだわり」を実現するため、ゲームエンジン自社開発を選択

 ゲーム会社の中には、他社製ゲームエンジンのライセンスを購入し、開発に活用するところが少なくない。しかし、小島プロダクションはその道を選ばなかった。
「『メタルギア ソリッド』シリーズなどの作品には、小島プロダクションならではのこだわりや『味』があります。他社製のゲームエンジンを借りて使うだけでは、それらは表現しきれないと考えたのです。もちろん、既存のゲームエンジンに手を加え、作品を制作することは不可能ではありません。ただ、そうすると制作に余計な手間がかかり、『効率化』という目的は果たせなくなります。また、ゲームエンジンがバージョンアップした時に対応できないのも難点。それなら、自社のやりたいことを実現できるようなゲームエンジンをゼロから作る方がいいというのが、小島プロダクションの考え方でした」

 小島プロダクションは、「FOX ENGINE」でリアルタイム・レンダリングした画像を、さまざまな場で公開している。その美しさ・精細さは、実写の画像となかなか見分けが付かないほどである。これだけのクオリティを実現できたのは、小島秀夫監督をはじめとするスタッフから寄せられた要望を、十分に吸収してきたからだ。また、「FOX ENGINE」では、欧米のゲームエンジンに優るとも劣らないほどリアルなライティング表現、モーショングラフィックスなども可能にしている。目指すは、世界をリードするレベルのゲームエンジンだ。

「AI(人口知能)の面でも独自の工夫が盛り込まれています。例えば、『メタルギア ソリッド』シリーズでは、敵に向かって『グラビア雑誌』というアイテムを使用することが可能です。すると、ほとんどの敵は夢中になって読み始めるので、その間に相手を倒したり、そこから逃げ去ったりすることができるのです。あるいは、火炎瓶を敵に投げつけると、敵に火が付いて慌てながらもがくような演出が入ったりします。こうした、ユーザーが思わずニヤリとしてしまうような仕掛けは、『FOX ENGINE』によって従来以上に作りやすくなったと思いますね」

 欧米のゲームでは、単純なリアルさや強さだけを求めた敵キャラクターが作られるケースが多い。しかし小島プロダクションでは、遊び心をふんだんに盛り込んでゲームを制作するのだ。数ある「ステルスアクションゲーム」の中で、「メタルギア ソリッド」シリーズが世界中の多くの人々から愛されている理由も、そこにあるのかもしれない。そして「FOX ENGINE」には、そうした遊び心の「土台」となることが期待されているのだ。

「FOX  ENGINE」は、既に現場でのゲーム制作に使われている!

「FOX ENGINE」の開発が始まったのは、2009年頃のこと。開発プロセスを短い期間で区切る、アジャイル手法によって進められている。すでにかなりの部分は完成しており、現在は、新しいゲーム作品の制作ラインで試用し、さらに改良を加えている段階だという。
「『FOX ENGINE』の効果は、現段階でもかなり上がっていますね。例えばゲームのステージを作る場合、以前ならデザイナーがワンセットすべて作らなければなりませんでした。しかし、今はステージ上にパーツを置いて構築する方法(インスタンスベース)に変わり、かなり楽になっています。配置を修正するのも簡単ですから、『この配置ではゲームがつまらない』と感じたら、すぐにやり直して再チェックできる。その結果、効率だけでなく、ゲームの質の向上にも役立っているのです」

「FOX ENGINE」の開発チームは、10人程度でスタートしたが、今では30人以上。時期によって増減することもあったが、基本的には数十人単位の構成だ。メンバーは、「コアシステム」「グラフィックスシステム」「アニメーションシステム」「コリジョン」「物理エンジン」「ユーザーインターフェース」「アセットシステム(アーティストが作ったデータをサーバーに登録したり、ゲームエンジンで利用したりするための仕組みを作る部門)」「エフェクト」「AI」「サウンド」「エディタ(ウインドウで操作するためのモジュール)」などの部門に分かれて開発を行っている。
「最初は、小島プロダクション内のメンバーでスタートしましたが社内の他部門からも人を集めることでこの規模になりました。社内でも、かなり注目を浴びているプロジェクトと言えますね。『メタルギア ソリッド』シリーズ以外でも、幅広く活用が期待されているゲームエンジンですから」

 小島プロダクションに対する注目度は、社内外を問わず高い。小島監督の下で働きたいと熱望し、他社から転職を果たしたクリエイターは珍しくない。また、他部門の同僚から、小島プロダクションが憧れの存在だと聞かされたこともある。その理由の一つには、小島秀夫監督という存在が挙げられるだろう。
「僕たちゲームプログラマの役割は、小島監督が考え出した企画を実現することです。そうした立場から監督を見ていると、発想の方法もアイディアの量も、普通の人と全く違うと感じますね。例えば、前作の『メタルギア ソリッド4』でも、作品に盛り込めたのは監督が出したアイディアのごく一部でした。僕らが『FOX ENGINE』をさらに進化させ、監督の考えをすべて作品に反映できるようになったら、きっともの凄いゲームが完成すると思いますね」

専門知識とエンジニアとしての幅広いキャリアを同時に磨ける職場

 小島プロダクションの魅力は、ほかにもある。意識の高いメンバーと一緒に働けることも、その一つだ。メンバーとは、「今までにない、面白いゲームを作りたい」という想いが共通している。そして、もの創りに対して貪欲な人に囲まれていることで、刺激を受け、エンジニアとして成長できる可能性が増えるのだという。
「小島プロダクションには、自由に発言できる風土があります。指示されたことだけをやるのでなく、メンバー全員で意見やアイディアを出し合い、互いに切磋琢磨しようとする雰囲気なのです。そして、そういう働き方ができる人を、小島プロダクションとしても求めているのだと思っています」

 こだわりの強い企画担当者やデザイナーから、難易度の高い要望を受けるケースは多い。これらに対処するのは苦しいこともあるが、それだけに、実現できたときの喜びは何物にも替え難いという。
「次作の『メタルギア ライジング リベンジェンス』では、敵キャラクターを斬ることができます。この要望が企画担当者から持ちかけられたのは、『メタルギア ライジング リベンジェンス』の制作前に、社内でプロトタイプを制作していた時でした。最初は、絶対に無理だと思いましたね。ご丁寧に、『斬った後に、関節が動くようにしてくれ』という、無茶な要望も付け加えられていましたし(笑)。ところが、物理の担当者と2人で1カ月ほど悩み、プロトタイプを作って斬ってみたところ、何とか形にできたのです。そして、実際に動かしてみたところ、実に面白い演出が実現できました。このときは、本当に嬉しかったです」

 コナミデジタルエンタテインメントは、2012年3月にサンフランシスコで開催されたイベント「GDC(Game Developers Conference)」において、新作「次期メタルギア ソリッド」に携わるスタッフを募集して大きな話題を呼んだ。日本国内でも、エンジニア、レベルデザイナー、アーティストといった職種で募集を行っている。小島プロダクションは、自らの価値を高めたいと考えるエンジニアにとって最適な場所だといえる。
「ハイエンドゲームの世界では、日々、技術が進化しています。そのため、専門分野の知識を磨かなければ、エンジニアとしての価値を高めることはできません。その点、小島プロダクションならゲームエンジンの開発など先端技術に触れられますし、周囲のベテランから知識を吸収することも可能です。さらに、他部門とコミュニケーションをとる機会も多いので、エンジニアとしての『幅』を広げることもできるでしょう。専門性と幅広さを同時に磨き、いわゆる『T型人間』を目指せるのは、エンジニアにとって理想的だと思います」

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