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Windowsテクノロジーを採用してアプリ開発やサーバー・インフラの整備を行うgloops。同社取締役CTOの池田秀行氏と、マイクロソフト・エバンジェリストの砂金信一郎氏に、Windowsテクノロジーの展開を語り合ってもらった。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:12.05.10
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2012年4月24日・25日に東京で開かれた、日本マイクロソフトの「Windows Developer Days」。アプリ開発者のために次期OS「Windows8」や、Metroスタイルアプリの開発手法を紹介するイベントだ。インテルと共にイベントのプラチナスポンサーになったのが、gloops。今年のMLB東京開幕戦の冠スポンサーとしてもその名を馳せたが、「インテルの隣に、並み居る日本の大手IT企業を従え、ソーシャルゲームの会社が……」と聞くと、IT業界の潮流の変化に驚く読者もいるに違いない。
gloops(以下、グループス)と日本マイクロソフト(以下、マイクロソフト)は今、密接な関係を築いている。昨年の11月には品川のマイクロソフト本社で、合同セミナー「全部見せます! ASP.NETで開発した大規模ソーシャルゲーム」を開催した。今では月間150億PV超、延べ1500万人以上の会員数を誇るグループスのエンジニアが運用技術の裏側を解説し、マイクロソフトのエバンジェリストとパネルディスカッションを行った。このときのカップリング、グループス取締役CTOの池田秀行氏と、マイクロソフトのエバンジェリスト砂金信一郎氏に再び、ソーシャルゲーム業界におけるWindowsテクノロジーの現状と未来について語り合ってもらった。
──以前も紹介したように、グループスは、多くのソーシャルゲーム開発企業がLAMP系システムを標準環境とする中で、アプリケーションサーバーにWindows Server 2008 R2上のIIS、データベースサーバーにもSQL Server 2008 R2、さらにはゲームアプリケーションの開発は全面的にC#とASP.NETで行っていますね。その開発環境の選択には池田さんが大きな役割を果たしたとか。
株式会社gloops
取締役CTO 池田 秀行氏 |
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砂金 |
今Windowsサーバーを使っていると言うと、驚かれることもあるでしょう。 |
池田 |
開口一番に言われるのは「ライセンス料金などコストが高いでしょう」というもの。9割の人が聞きますね。ただ、サーバー1台あたりの集約率が高いので、決して高くはない。しかも運用が非常に楽ですからね。開発から運用まで、人的コストも含めてトータルで考えると、もしかしたらLAMPよりも効率がいいかもしれません。 |
──それもあって、Apacheを捨てて、IISに特化するわけですね。
池田 |
もちろん、当社にLAMP環境が全くないわけではない。そもそもマイクロソフト製品ですべてをそろえようとは思っていないですから。DNSやファイルサーバー、ログサーバーなどはLinuxですし。LAMPとWindowsの「ハイブリッド環境」と呼んでいるのですが、必要なところに最適な技術を導入する適材適所の考え方が基本なのです。アプリ開発にC#とASP.NETを使っているのも、それが開発生産性に優れているという、ちゃんとした理由があるからです。 |
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日本マイクロソフト株式会社
デベロッパー&プラットフォーム統括本部 パートナー&クラウド推進本部 エバンジェリスト 砂金 信一郎氏 |
──ところで、グループスとマイクロソフトの関係。いつからこんなに密接になったのですか。
池田 |
昨年の夏ぐらいですね。当社の現会長である梶原宛に、砂金さんのパートナーである方からメッセージがあって、一度お会いましょうみたいな。それまで当社がWindows環境でバリバリ開発していることって、そんなに宣伝してなかったと思うのですが、一体どうやって知ったのですか? |
砂金 |
それは企業の採用ページを見ていればわかりますよ(笑)。どういう技術者を欲しがっているかで、社内技術の構成もだいたい見えてきます。 |
──砂金さんにはどんな目的があって、グループスにアプローチしたのですか?
砂金 |
もともと私は、「Azure」を専門とするエバンジェリスト。いわば社内の特任チームです。当社のクラウドを使って新しい価値を生み出し、日本の会社でグローバルに成功する企業事例を探し、それを応援したい。これから伸びそうな会社と一緒にやっていきたい、ということがありました。 ソーシャルゲーム業界は今、絶好調です。だから製品を安くしますから買っていただけますか、というアプローチはナンセンス。それよりもこの業界が本当に困っていることを支援したくて、よくよく聞いてみると、それはエンジニア人材の採用なんですね。 実際に、ゲーム業界でも開発ラインを一つ増やしたいとき、LAMP系の優秀な技術者だけを集めるというのはなかなかハードルが高いものがあります。その点、Windows技術者ならまだ集めやすい。技術者のすそ野が広いですからね。 もし、我々がWindows系技術者の採用を支援しなかったら、このままいくと、ソーシャルゲームはもちろん、ほかの分野でもLinux系が増え、Windowsからシフトしていく。マイクロソフトとしてはそれだけは防ぎたいという下心も、もちろんありました。 つまり、グループスがWindows技術者の採用にお困りなら、そのお手伝いをしたい。マイクロソフトと協業することで、企業ブランドの向上など何らかの付加価値を高めることができればいいなと思いました。それが前述の共催セミナーや、「Windows Developer Days」での協業につながった。米国マイクロソフト本社から幹部技術者やマーケティングの責任者を呼んで、グループスに紹介したこともあります。「勢いのある日本のソーシャルゲームベンダーで、Windowsテクノロジーがこのように使われている」事実を、本社含むマイクロソフト全体に周知させたかったんです。 |
──ソーシャルゲーム業界におけるWindowsテクノロジーの位置付けは、グローバルに見るとどういう状況なのでしょうか。
砂金 |
例えば、シアトルの「Azure」のチームは、ほとんどがインド人です。インドだけでなく、ベトナムなどもそうですが、プログラマ教育の基本はC#。Javaよりも、教育の素材としていいんです。「C#書けますよ」というインド人が、今大量に世界に散らばっている。グローバルに展開する企業にとっても、人材調達のしやすさということでは、やはりWindows系だと思います。 インフラ的な観点で言うと、韓国のゲームが以前オンラインゲームを世界中に配信していたころは、もっぱらWindowsサーバーを使っていました。これはWindowsなら、世界中どこにいっても、それこそ東欧でも中東でも、保守・メンテナンスしてくれる企業があるからです。 これはこれからのソーシャルゲームのグローバル展開を考える上では重要な要素です。東京だけでものを考えると見えにくい問題も、視点をシンガポール、パリ、ニューヨーク、サンフランシスコではどうなんだろうかと広げると、違った光景が見えてきます。 その点、マイクロソフトは世界に拠点がありますから、他国の同僚と連携することで、いまどこの国で何がトレンドなのかがわかる。コンテンツの展開先として、この国が、今面白いとか、エンジニアの供給を考えるならこの地域だというようなアドバイスも可能です。 |
──グローバル進出の貴重な援軍になってくれるわけですね。ところで、グループス─マイクロソフトの協業関係はこの先、どういう展開を見せるのでしょうか。
池田 |
共催イベントのようなものは考えているし、1年通してやっていくということは決まっているけれど、それ以上は具体的にはまだ何も詰めてないですね。 |
砂金 |
細かいスケジューリングよりも、アドホックな対応力が重要です。これはマイクロソフトにとっての課題でもあります。もともと私のエバンジェリスト・チームは“ゲリラ”のようなもので、すぐに現れては去っていく神出鬼没的なところがあるのですが、それでも、グループスと付き合うようになって、意思決定が早くなりました。 スピード感、アドホック感、柔軟性。これはマイクロソフトの組織全体に反映させたいもの。ほうっておくと我々も“大企業病”に陥ってしまいますから。 |
──グループスからすれば、最初はゲリラだと身構えたけど、よくよく話を聞いたら友軍だったということですよね。同じゲリラでも、さすがマイクロソフトのゲリラは違うなと思ったことは?
池田 |
視点の広さですね。そこはさすがグローバル企業です。僕らはひたすら2年間ゲーム開発だけやってきて、ソーシャルゲーム業界やネット業界のことは詳しくなったけれど、その枠を超えたIT全体の動きは知らなかった。ましてや世界が今どうなっているか、ということも。そういう視点を提供してもらえるのがありがたいことです。 |
──マイクロソフトにはXboxなど独自のゲーム開発技術や、Xbox LIVEなどオンラインゲームの配信技術もあります。そのノウハウをグループスに提供する、というようなことはありますか。
砂金 |
Xbox関連では、間接的にはともかく、直接的なノウハウ提供はないと思います。ただ、ジェスチャー操作でプレイできる「Kinect」の技術。こうした新しいテクノロジーでは、一緒に何かできるといいですね。これからのモバイル端末にKinectが搭載されると、どういうゲームが生まれそうか。ゲームの企画担当者には興味深いテーマだと思います。 次期OS、Windows8の世界的展開のなかで、私たちは「Windows Store」をスタートさせますが、このストアでのゲームタイトルの上位をグループスで独占して欲しいですね。もちろん日本での上位ではなく、世界での上位です。それだけのポテンシャルがありますよ、グループスには。 |
──グループス以外に、ソーシャルゲーム業界で他の協業関係を増やす予定は?
砂金 |
考えなくはないですが、LAMPな会社をひっくり返すのはそれなりに大変なので、今はひたすら「グループス徹底支援」です。それでグループスの開発力や企業としての価値が高まればいい。そうしたサクセスストーリーを見て、うちもぜひと言われれば、お話をするのはやぶさかではありませんけれども。 |
──ソーシャルゲーム業界におけるWindowsテクノロジーの位置付けは、グローバルに見るとどういう状況なのでしょうか。
池田 |
国内のWeb・ソーシャル業界では、これ以上ないといわれるほどの、Windowsテクノロジー環境を作り出したいと考えています。いや世界的にも、「Windowsテクノロジーでいま一番ホットな会社はここだ!」と言われるようになりたいですね。そのためには、優秀なWindowsエンジニアを積極的に増やすことが欠かせません。 SIerだとプログラマやコーダーの位置付けは相対的に低いですよね。人月仕事を支えている底辺という位置付け。しかし、Web業界はエンジニアがいないことには先に進めない。コードを書く仕事は文字通りの花形職業なんです。Windows系エンジニアの採用を通じて、そのステイタスの向上に寄与できたらなと思っています。何せ3〜4人のチームで、100万人のユーザーと向かい合うわけですからね。責任は重いけれど、その達成感にはものすごいものがあります。 さらに言えば、グループスにはコードを書くと同時に、ゲームの企画にも参加できるチャンスもあります。つまり、すべてを自分たちの頭で考えることができる。自分の技術がトラフィックにダイレクトに影響する。純粋なエンジニアリングも面白いけれど、それを取り巻くビジネス環境も面白い。これは他の業界にはなかなかないことだと思います。 |
砂金 |
大手SIにいると、いつまでもコードを書けないですからね。すぐに現場から離されて管理系の仕事に回されてしまいます。グループスだったら、いつまでも現役でいられる。その魅力は大きいんじゃないかな。 一番ホットでスポットライトが当たっている企業に移るというのは、昔からエンジニアがスキルを伸ばす上での最短経路でしたからね。グループスはまだまだ伸びますよ。最初はヤンチャな人たちばかりかと思ったら、意外とみなさんオトナで、マネジメントもしっかりしている。Windows系のエンジニアの皆さんには、グループスのように伸び盛りな環境でどんどん活躍してもらいたいですね(笑)。 |
マイクロソフトでクラウドコンピューティングを中心とした啓蒙活動を行うエバンジェリスト。東京工業大学出身。日本オラクルで修行を積んだ後、戦略コンサルタントに転身していた時期もあったが、Windows Azureの世界観に魅せられて2008年マイクロソフトに参画。 |
大手SIerではJavaで大規模SIの開発、BtoC向けWeb開発に従事。2006年グループス入社。自社フレームワークのコアアプリケーションの基盤設計・構築。開発プロセス全体の標準化・効率化に挑む。東京工業大学出身。 |
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