超こだわりの“一筋メーカー”探訪記 この分野なら任せなさい! |
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アイス一筋81年!
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「ガリガリ君リッチ」に9月、「コーンポタージュ」が登場!
メイン担当の若手2人が「オススメの食べ方」を教えます
ガリガリ君の「コーンポタージュ」(9月4日発売予定)
「まずは普通に食べてみてください。そしてその次、僕のお勧めの食べ方はすりおろす。カキ氷をつくれるおもちゃ『おかしなカキ氷』(タカラトミーアーツ発売)でも、おろし金を使ってもらってもOKです。それを少し置いて少し溶けた状態にすると、コーンポタージュの冷製スープみたくなるんです。かなりうまいです」
こう語るのはガリガリ君「コーンポタージュ」を開発した、赤城乳業株式会社の開発本部開発部応用研究チームの岡本秀幸氏だ。企画から原料の選定、最終的な味づくりまで、まさに開発全般を行うが、ガリガリ君の新商品開発担当は実は彼ひとり。入社4年目、弱冠26歳の若手社員である。
「試作の段階で味や触感などを知るために何度も食べたのですが、食べれば食べるほど病みつきになりました。僕のお勧めは3本目。1本目はチャレンジ。最初は『え!』と思う人もいるでしょうから。2本目は確認。もう一度味を確認してください。そして3本目。すでにコーンポタージュ味にハマっています(笑)。それと、疲れが残る朝に食べると、元気が出ますよ」
技術部技術課で副主任を務める岡村哲平氏はこう語る。岡本氏の開発した「コーンポタージュ」の試作やライン化を担当しており、「開発と製造をつなぐのが僕の仕事」と語る。彼も入社6年目、28歳の若手社員である。
出来レース?10回以上の作り直しで納得できる味を試作
赤城乳業株式会社 ガリガリ君の「コーンポタージュ」 |
ガリガリ君の商品開発はプロジェクト体制を取る。岡本氏の応用開発チーム、岡村氏の技術課のほか、資材を調達する購買部門、品質保証部門、マーケティング部門、パッケージデザインなどを請け負うデザイン会社が連携して商品を開発し、社内のプレゼンに合格すれば商品化が決定する。 今年の春、ガリガリ君のプロジェクトメンバーは、新フレーバー商品のディスカッションを重ねていた。皆で案を出し、最終的に30〜40種類のアイデアが集まった。ここから5〜6種類を絞り込み、試作品で「予選会」を行い、最終的にコーンポタージュ味が選ばれた。 実は岡本氏は、企画会議の前から密かにコーンポタージュ味の試作をしており、以前から世に出したいと思っていた。通常のガリガリ君より価格の高い「ガリガリ君リッチ」なら、子供だけでなく大人もターゲット。大人にとって「懐かしい味」を提供すれば、喜んで食べてくれるだろうし、売れると感じてもいた。 |
コーンの浮上の問題発生!前代未聞の製造ラインを止めたテスト
「従来のレシピ」では完成しなかった、新しい味
まずは原材料の選定。コーンポタージュの100%粉末だとダマになるとわかり、スープタイプや顆粒タイプを選んだ。メーカー数社から合計十数種類を購入して味づくりを試す。また、アイスの中にコーンを入れることを思いついたが、しっかりした味を出したいとフリーズドライのコーンと決めて、複数社からさまざまなタイプを購入した。 「簡単に言ってしまうと一般的なアイスは、果汁などの風味原材料、乳製品、砂糖をベースにして、香料で味出しを補ってつくりますが、こうした従来の方法ではコーンポタージュの菓子やスープの味は出ませんでした。そこでコーンの粉末に加えて、数種類の塩を混ぜ、調味料であるブイヨン入りの粉末を使い、砂糖も何種類かを組み合わせました。コーンは北海道産の質のよいものを使っています」 こうした試行錯誤を続け、1〜2カ月を掛けて納得できる「コーンポタージュ」が完成した。だが、工場の設備の1000分の1スケールの試作機でアイスにしてみると、思わぬ事態が発生した。 |
赤城乳業株式会社 アイスの中にはフリーズドライのコーン |
頭を下げ続け、1分間に200個製造するラインでテスト
人気の「ソーダ」、ガリガリ君のパッケージは3種類ある ガリガリ君の関連商品の数々 |
その理由は、水分のないフリーズドライのコーンの軽さにあった。だが、浮かんだままで商品化すれば、アイスの下部にコーンが集中してしまい、食べ始めても最初はコーンが出てこない。コーンが均等に散らないのは致命的な欠陥となってしまう。 1分間でガリガリ君を200個製造するという生産ライン。稼働中のこのラインを止めて、コーンポタージュのテスト専用に動かすというアイデアだ。しかも、原材料を納入するタイミングに合わせて、ラインを空けてもらうという無茶なスケジュール。 2人はある程度、改良のためのポイントを絞っていた。原材料の配合レシピ、原材料を撹拌するための羽の形、タンクの大きさ、原材料に加えるクラッシュアイスのバランスなどだ。混ぜ方を変えたり、撹拌する速度を調整したり、クラッシュアイスのポンプでの送り方を調べたり……これらを実際に目で見ながら判断し、失敗すれば原因を調べ、成功すればその理由を検証した。 |
難関の社内プレゼン、社長の「ベリーグッド!」で商品化決定
タッグを組んだエンジニア2人、これからの夢とは?
商品化に向けた最後の難関は社内プレゼン。主に経営陣が味見をするのだが、そもそも「本当に売れるのか?」と心配されていた商品。岡本氏は「売れると思っていたのはプロジェクトメンバーだけでしょう」、岡村氏は「特に営業部門は不安がっていました」と振り返る。 岡本氏は大学卒業後に赤城乳業に入社し、新商品開発チームに配属。約10種ものアイスの新商品を、企画、味づくり、容器のデザイン、商品名まで担当し、約1年前にガリガリ君の開発担当になった。 岡村氏も大学卒業後に同社に入社し、生産ラインの管理を任された。2年目に品質保証を担当し、3年目から今の部署に配属。新商品のためのライン構築、設備の仕様決め、新しい設備の購入、納期やスケジュール管理などが主な仕事だ。 私、取材の後で「コーンポタージュ」を食べさせていただきました。お世話になったから言うわけではないですが、「うまい!」。とろっとした触感で、甘みがあって、コーンポタージュの味もしっかりしている。そして、その味が全く嫌みではない。やっぱりガリガリ君はスゴいよ。 |
岡本氏が開発を担当した「シャリシャリ君」 2人は仲良し 会社の受付で人を迎えるガリガリ君 |
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