• はてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
発見!日本を刺激する成長業界25 ライフログが人気!位置情報など周辺技術も話題
生活や行動をデジタルデータで記録する「ライフログ」を始める人が増えている。スマートフォンとクラウドで拡大が見込まれているが、そのキーとなるのはログをするアプリだけでなく、位置情報などその周辺環境の充実だ。
(取材・文 総研スタッフ/高橋マサシ 撮影/関本陽介)作成日:12.07.02
2011年度の市場規模は10億円超、2015年度には52億円を予測
 ライフログに使用するアプリは無料のものが大半で、サービスで課金する事業者もまだ少ないため、本格的な市場形成はこれからだ。
 矢野経済研究所では、消費者から取得したライフログを使ってその消費者にサービスを提供する「個別提供型」と、ライフログプラットフォーム事業者が消費者から取得したライフログを第三者の事業者に提供する「外部提供型」の、2形態の事業者の売上高を合算して市場を予測。2011年度は前年度比303%の10億6000万円を見込む。
 また、スタートアップの市場だからこそ、今後は分析・解析できるデータの充実による価値の向上、アプリなどの開発環境の整備、参入企業の増加などが期待される。同研究所では市場の大半を占める「個別提供型」に加えて、「外部提供型」サービスも徐々に増加すると見て、2015年度には52億円の市場となると予測している。
ライフログ市場規模推移と予測 (グラフの出典)注1:事業者売上高ベース 注2:2011年度は見込み、2012年度以降は予測(2011年11月現在)出典:(株)矢野経済研究所「ライフログ市場に関する調査結果 2011」(2011年12月6日発表)
GeoHex/世界地図を埋める六角形メッシュ、プライバシー保護の「ZONE」とは?
 ライフログに欠かせないのが位置情報。しかし、これを公開するか否かはプライバシーの問題と直結するため、設定を「OFF」にするユーザーも少なくない。ONかOFFかの二者択一ではない、新たな手法をGeoHexが提案している。
「ON」でも「OFF」でもない位置情報の設定、ベースは「GeoHex」
GeoHex Ver.3で表した東京駅周辺の地図
GeoHex Ver.3で表した東京駅周辺の地図
 個人の日常的な行動を記録するライフログ。食事、体調、睡眠、趣味、場所、移動……と内容はさまざまだが、これらは個人情報そのものだ。個人で完結して使っていても不正アプリなどで情報流出の危険性が高いが、SNSでの使用ではより注意が必要になる。中でも場所、すなわち位置情報はプライバシーの最たるものだ。GEOHEX Inc.代表の笹田忠靖氏はこう語る。
「私は『ダダ漏れ』が嫌いなんです。いつどこで何をしたかを誰かが知っているのはどうも……。ですから、スマートフォンアプリの位置情報の設定は『OFF』にすることが多いのですが、あるアプリで『OFF』にしても別のアプリで『ON』になって起動したりと、ユーザーには負荷がかかっていますよね。これをオプトインできちんと制御するために、ZONEを開発しました」
「Social」「Location(Local)」「Mobile」を合わせた「SoLoMo」という言葉が広く使われるようになった。ソーシャルネットワークと位置情報の融合したモバイル、特にスマートフォンでのサービスのことだ。SoLoMoのライフログも増加しているが、アプリの位置情報をONにすれば情報流出の危険が生じ、OFFにすればサービスは使えなくなる。こんなジレンマに悩むユーザーも多いのではないか。
 笹田氏が考えたのはどちらでもない「グレーゾーン」だ。公開する対象者やアプリ単位で位置情報の開示範囲を変える。例えば、家族や友人にはピンポイントで位置情報を公開して、その他のユーザーにはその精度を落とす。信頼できるアプリで詳細な位置情報が必要な場合は開示するが、そうでないアプリには渡すデータのレベルを粗くする。
 こうした設定をスマートフォンの画面で手軽にできるのがZONEである。まだα版の公開前にもかかわらず、2012年1月のジオメディアサミット(日本最大級の位置情報メディア向けカンファレンス)で発表すると絶賛を浴びた。
「そもそもONとOFFしか認めないのが乱暴な話。ZONEはその範囲をフレキシブルに決められるので、ONとOFFの間の設定をユーザーが『ぼかす』ことができます。今はそれを何段階かにするかを考案中で、先日は12段階のバージョンでデモを公開しました」

 この微妙な設定を可能にしているのが、同じく笹田氏が開発した「GeoHex」。地図上に敷き詰めた六角形ポリゴンとその実行プログラムのことだ。通常の地図のメッシュは正方形だが、これを六角形で描いた。こうすれば円に近くなり、隣接する六角形同士の距離が等しくなる。しかし円とは違って、重なりや隙間は生まれない。この精度の高い六角形を分割していけば、任意に「範囲のレベル」を決めることができる。
「六角形にしたのは、単にGoogle Mapsの上に六角形を描きたかったから(笑)。ゲーマー世代の遊びの感覚でした。六角形は物理的にバランスが取れていても縦横の規則性はない。整然としているが不規則。とてもクールに見えたんです。ロジックが必要になると座標系から設計して、何百何千枚もの紙地図に六角形を描いて、数式化しました」
笹田忠靖氏
GEOHEX Inc.
代表

笹田忠靖氏
昨年4月にWhere2.0に凱旋、今年はZONEを発表して高評価
{ZONE}のイメージ画像
{ZONE}のイメージ画像
GeoHex Ver.2とVer.3の分割方法の差
GeoHex Ver.2とVer.3の分割方法の差
 笹田氏はもともとエンジニアではない。前職は地図情報会社のサービスディレクターで、マーケティングを含めたWebサービスを担当していた。主に「企画屋」として、社内でのブラウザ地図プロジェクトに長く参加し、Webマップの歴史を体感してきた。
 そんな彼は2008年、世界最大級の位置情報カンファレンス「Where2.0」に参加する。世界中からの参加者に出会い、グローバルな位置情報のロードマップを見て、刺激を受けたと同時に国内との温度差を感じたという。

「Where2.0で感じたのは『丸腰』で行ったことの恐ろしさ。『何やってるの?』と聞かれて、『ローカル向けのローカル地図サービスだよ』と話しても、『ふうん』だけで感心してはもらえなかった。今度は何かの『ネタ』を持っていきたいと感じました。ジオ業界でもオープンソースが活発になり、コミュニティの活動も広がっていますが、どうしても海外が中心で輸入技術が多い。日本人の感性を生かしたネタで、世界にくさびを打ち込みたいと感じました」
 こうして独力で立ち上げたのがGeoHexだ。会社員の仕事と個人の活動を切り分け、「毎日が勉強、週に3日は徹夜」を続けた。そして日本を対象にしたGeoHex Ver.1を2009年11月に公開した。
「ひとりで実装とアルゴリズムの設計をしました。技術は一から覚えましたが、『地図屋』なので内容に見当はつきましたし、数学的にも複雑なものでなく、着想から完成まで2カ月くらいでした。ただ、ジオエンジニアのコミュニティには助けられました」
 2010年7月には世界版であるVer.2を公開。こちらの開発のほうが苦労したという。メルカトル法では日本の辺りはさほどではないが、南北に行くほど地図と実際と差が大きくなる。そこで笹田氏は投影法を学び、各六角形が狭い範囲の中でほぼ等しい面積を保つように座標系を置き換えた。また、六角形同士が重なり合うと一意性が保たれないことから、日本版では60段階だったヘックスサイズ(六角形のレベル)を、大陸クラス「Level:0」から直径約60cmの「Level:24」の25段階に変更した。
 2010年12月に公開したVer.3ではコードの振り方を変更。それぞれのヘックスコードは各1文字にXY両軸の情報を内包しているが、サイズが1段階小さくなる度にこのコードが1文字増加するようにした。また、レベル間で分割する比率を4分割から9分割し、中心の六角形を取り囲む6つの六角形が、上位レベルに内包されるようになった(図参照)。
 これらのことからより扱いやすくなり、検索もしやすくなった。GeoHexのユーザーは六角形のマッピングをビジュアルとして使う人と、「この辺り」のレベルで場所を検索したいエンジニアに二極化しているというが、特に後者にとって朗報のはずだ。
「スマートフォンでライトなアプリが普及してきたためでしょうか。Google Mapsは使わない、緯度経度を扱うのは難しい、サーバーに負荷を掛けたくないなどの理由から、テキスト検索のイメージで位置情報を使いたい人が増えているようです」

 笹田氏はGeoHexを携えて2011年4月、Where2.0に「凱旋」した。日本人でただ一人登壇して発表すると、会場からは「Coool!」などとGeoHexを絶賛する声が飛んだという。また、2012年4月のWhereconf(旧Where2.0)にも登壇して、2011年から開発を続けてきた「ZONE」を発表。今年も唯一の日本人発表者だったが、「プライバシー保護の画期的な解決策」と高い評価を得たという。
「位置情報を使うことのハードルはプライバシーの問題。ZONEでそのハードルが下がれば、位置情報系のサービスは広がり、ユーザーだけでなくデベロッパーにもメリットになるはず。コンシューマーから収集するリアルタイムなビッグデータの活用も、ZONEのゴールのひとつです」
笹田忠靖氏
GEOHEX Inc.
代表

笹田忠靖氏
アプリ開発が主流だが、周辺機器、ビッグデータなど市場拡大に期待
スマホアプリでは企画力だけでなく操作性やUIも重要
 デジタルでのライフログという行為が比較的新しく、スマートフォンの普及に伴い拡大してきた分野なだけに、まだ市場が固まっているとは言い難い。そのため、ライフログへの参入企業は広く業界を横断しており、個人でアプリを発表しているエンジニアも少なくない。また、現状ではアプリやサービスのほとんどが無料であり、マネタイズを含めてこれからの業界と言える。

 ライフログの現在の主役は、手軽に記録ができるスマートフォンアプリだ。ユーザーが意識することなく自動でログを取得するタイプもあるが、多くはユーザーが自発的に撮影や入力などの操作を行うもの。
 そこで、アプリ自体の企画力もさることながら、操作を簡便にする機能性や扱いやすいUIなども求められている。アプリ開発は基礎的な開発力で可能でも、ユーザーに記録させたくなる機能や記録を長続きさせる操作性などは欠かせない。こうした経験のあるエンジニアはSNS系やWeb系の企業に多いだろうが、SIerのエンジニアでも十分に挑戦できる。
ビッグデータや周辺機器との連携、新分野への挑戦も可能
 過去の記録の検索や共有だけでなく、蓄積されたデータの分析や活用もライフログの楽しみのひとつ。データの分析・解析やその結果の見せ方に経験のあるエンジニアも重宝されそうだ。
 前回の記事「スマホ普及で開花!モバイルヘルスケアが有望業界に」では、無線機能付きの血圧計で取得した値をスマートフォンから送信し、別のサービス会社でユーザーの健康管理を行うシステムを紹介した。こうしたケースであれば、周辺機器の開発にネットワーク、電気・電子、メカ系のエンジニアニーズが出てくる。

 データを利用した有望市場がビッグデータだ。個人情報保護との連携は必須だが、数カ月、数年と記録した大多数の生活データが集まれば、データマイニングにより企業だけでなく社会全体への貢献も大きくなる。上記の例であれば、生活習慣の分析から病気と予防の新たな関係がわかるなどだ。ピンポイントな職種はデータサイエンティストだろうが、まだ新しい業界だけに参入余地は高いだろう。

 そして、企業事例で紹介した笹田氏のような新分野の開拓。彼は地図業界の出身ではあったが、エンジニアではなかった。
「まず、手を動かしてみてと言いたい。簡単なものならつくりやすい環境は整っているので、いくらでもトライできるはず。コミュニティに入ることも大切ですね。私はジオ系のエンジニアの『凄いね』『面白いよ』といった声から、『GeoHexで行ける』と思いましたから」
 ライフログに特化した企業はほとんどない。ならば、個人レベルを含めてやりようはいくらでもあるはず。ネットで記事などをチェックして、動向を探るだけでもやってみたい。
  • はてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
あなたを求める企業がある!
まずはリクナビNEXTの「スカウト」でチャンスを掴もう!
スカウトに登録する
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
こんな記事をつくりながら何ですが、ライフログは向いていないかも。健康管理のような強制力があれば別ですが……めんどくさがりなんですね、私。でも、溜めたデータの分析はお願いしたいです。溜められませんが。

このレポートの連載バックナンバー

発見!日本を刺激する成長業界

100年に1度といわれる大不況下にもかかわらず、右肩上がりの業界があった!成長を支える各社の技術力、それを生み出す技術者の発想に迫ります。

発見!日本を刺激する成長業界

このレポートを読んだあなたにオススメします

ミクシィ鈴木理恵子の“アプリ開発ビギナー向け講座”

本当に知ってる?最低限押さえたいOAuthのマナー

鈴木理恵子のアプリ開発ビギナー向け講座Webサービスやアプリでユーザーの情報を見たり、書き換えたりするために事前に承認してもらうための「許可」ボタン。今回は…

本当に知ってる?最低限押さえたいOAuthのマナー

スマートフォンの普及でセキュリティや個人情報が危ない

高木浩光が語る!プライバシーを守るのは真心である

ブログ「高木浩光@自宅の日記」で、独自にセキュリティやプライバシーの問題を指摘する高木浩光氏。「セキュリティ・エバンジ…

高木浩光が語る!プライバシーを守るのは真心である

利用者は5%、タブレットが人気、面倒くさいのは使用制限……

BYODが拡大中!エンジニアのお好みアプリと満足度

私物のデバイスを業務に使用するBYOD(Bring Your Own Device)の導入が、企業や自治体で拡大中だ。では、実際にどの…

BYODが拡大中!エンジニアのお好みアプリと満足度

京都から世界に羽ばたくエンジニアやサービスを生み出す!

検索できない京都の通り名住所を解決する「ジオどす」

京都府から世界に羽ばたくエンジニアやサービスを生み出すべく開催された「京都まゆまろ杯スマホアプリコンテスト」。地図アプ…

検索できない京都の通り名住所を解決する「ジオどす」

アゲハ田中里実の“実のなる”ガールズアプリレビュー

恋人×スマホに関するニーズは?カップルアプリ大特集

アゲハ田中里実のガールズアプリレビュー今回のガールズアプリレビューは、「恋人×スマホ」に関するニーズと、人気のアプリをレビューします! カップル限定のSNS…

恋人×スマホに関するニーズは?カップルアプリ大特集

応募者は「イケた!」と思ったのに……なぜ不採用?

スキルが高い人材でも「NG」を出した人事の証言

求人の募集要項にあるスキルは満たしていたのに、なぜか結果は不採用。そんな経験をした人も多いのでは? では、採用に至らな…

スキルが高い人材でも「NG」を出した人事の証言

この記事どうだった?

あなたのメッセージがTech総研に載るかも

あなたの評価は?をクリック!(必須)

あなたのご意見お待ちしております

こちらもお答えください!(必須)

歳(半角数字)
(全角6文字まで)
  • RSS配信
  • twitter Tech総研公式アカウント
  • スカウト登録でオファーを待とう!
スマートグリッド、EV/HV、半導体、太陽電池、環境・エネルギー…電気・電子技術者向け特設サイト

PAGE TOP