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TechWave・湯川鶴章、匠Lab・萩本順三、AR三兄弟

常識を打ち破れ!
未来型ITエンジニアの働き方

新年度を迎え、IT業界にも新卒入社したフレッシュなエンジニアたちが新たな第一歩を踏み出した。変化が激しく先の見えないIT業界で、エンジニアはどのような考え方を持って、仕事に向き合っていけばいいのか。IT業界で活躍する3人の方から、意見をうかがった。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:12.04.04

フィギュア好きのJavaプログラマが脚光を浴びる時代に!?


TechWave.jp
チーフブロガー
湯川鶴章氏

「『Javaができる』といったようなコモディティ化したスペックを求められてきたITエンジニアの働き方はソーシャルグラフの広がりによって今、確実に変わりつつある」と語るのは、自らもコミュニティメディア「TechWave.jp」の編集長として、テクノロジーで閉塞感のある今の日本の社会を打破しようと精力的に活動している湯川氏。
Facebookやツイッターを含めた“ゆるいつながり”を持てるメディアの登場で、個人同士のつながりがきっかけで新しい仕事が生み出されるケースが増えている。そして、表面的な技術スペックだけでなく、「Javaの○○に関して、○○レベルまで理解した上で実装できる」といったより詳細なスキルレベルや、「プロジェクトに参加するメンバーを気持ちよく仕事をしてもらうことを得意にする」など、人間的な魅力も含めて、自分の強みをより細かく主張できるようになっているのだ。

そこで重要になってくるのは「自分自身の良さや強みを客観的に理解すること」だと湯川氏は指摘する。
「そもそも生まれ持って身についている自分の能力に気づいているエンジニアは、それほど多くありません。実名を通して自分のありのままの姿を発信し続け、周りの知人から指摘してもらったりすることで気づくこともあります」

さらに湯川氏は、これからITエンジニアが求められるスキルや価値は、“強烈な個性”だという。
「例えば『フィギュアが好き』『クラシック音楽が好き』といった、これまで仕事に直接結びつかないような“趣味の領域”が今後、ITエンジニアにとって非常に重要な付加価値として認知されるのではないかと考えます。ハッキリ言ってこれだけ変化の激しいIT業界の将来を見通すことは、不可能に近いこと。それならば仕事やプライベートに関わらず、誰にも負けないと自負できるこだわりや思いをソーシャルメディアによってアピールしていく方が、“フィギュアに精通したJavaプログラマ”という独自のアプローチでPRでき、そこから全く新しいニーズが生まれる可能性もあるのがIT業界なのです」

そしてもう一つ、これからのITエンジニアのワークスタイルとして湯川氏が提案するのは、“新興国で働く”ということだ。
「日本を含めた先進国はすでに必要としているモノやサービスがある程度行きわたっていて、今生み出されているITサービスの多くは、それほど欲しくないユーザーに“半ば無理やり買わせたり、使わせようとする”ようにみえてならないんです。
その一方、新興国では高度成長期の日本のように“どうしても○○が欲しい!”という強い欲求を持った人々がひしめいています。そうした人々の強いニーズにこたえるために、IT技術が果たす役割や可能性は非常に大きい。そこで実際に1年程度、現地で生活してみれば、ITエンジニアなら誰しも現地の人々のニーズにこたえられるサービスや技術が思いつくはず。きっとそこからスタートすれば、高いモチベーションで大きなやりがいや充実感を得られるでしょう」

要件定義からさらに上流の「業務」「戦略」そして「価値」に目を向ける必要性


匠BusinessPlace
代表取締役社長
萩本順三氏

27歳でIT業界に飛び込み、オブジェクト指向や要求開発といった分野を開拓、それらをビジネスにどう活用していくかをテーマに「豆蔵」や現在の「匠BusinessPlace」を立ち上げてきた萩本氏。その彼がこれからのITエンジニアに求められる役割や働き方について、主に3つのポイントを提案する。

まずひとつめが、「要件定義のさらに上流の領域まで踏み込んで提案し、行動を起こしていくこと」
「これまでのシステム開発は“要件定義”からスタートするケースが多い。でもそもそもなぜそのプロジェクトをやる必要があるのかを考えた場合、さらに上流工程まで踏み込んでエンジニア自身が目を向ける必要があるのです。要件定義を決める前提となる業務内容、さらにその内容を決める基本方針となる戦略。そしてさらに突き詰めればクライアントのビジネスが世の中に提供したい価値を理解して初めて、そのビジネスを成功させるためにどのようにITを活用すべきなのかを考え、提案できる。今、多くのクライアントはITエンジニアに対して、まさにその領域に関する提案を求めているのです」

二つ目は「目に見えないITの価値を可視化する技術を磨く」ということ。
そもそもITやソフトウェアというものは、目に見えないもの。だから技術に詳しくない一般ユーザーやクライアントにとっては、ITがもたらすメリットや価値を瞬時に理解することは難しかった。それでも多くの企業がこの十数年で積極的にITをビジネスに取り入れてきたのは“なんとなく便利になりそう”という考えからだったが、ビジネス環境の悪化に伴い、ITに対するクライアントや経営者の見方は厳しくなっているという。
「そこで今、ITエンジニアに求められるのがITを可視化する技術。これまでもITに関する説明を多くのエンジニアがクライアントにしてきましたが、それはあくまでITの技術的構造や特徴を説明しているにすぎない。本当に重要なのは、構造的な特徴を説明しつつ、それは相手のビジネスにどのように利用されることで、どのような価値を生み出すのかまで、具体的にシミュレーションしながら説明しなければなりません。それによって相手がITの価値の本質を理解することでこちらの提案が採用されるのです」
これまでITエンジニアの多くは、目の前に与えられた技術に取り組めば良かったが、これからは取り組んだ一つ一つの技術を可視化することで、相手に理解してもらえるテクニックも磨く必要があるという。

そして最後は「2人の自分を持ちながら、日々の業務に取り組む」というもの。
これまで紹介してきた、「ビジネスの価値に目を向けること」「そのビジネスにITがどのように活用できるのか、可視化してわかりやすく説明できること」をいざ、これから実践していこうとする場合、実はこの「2人の自分を持つ」という考え方が、大いに役立つと萩本氏は指摘する。
「『今目の前の業務を懸命に取り組む自分』と『その行為がビジネスとしてどのように役立つのか』、常にその2つの視点で仕事をすることで、ビジネスの視点からITをどう活用すべきかという、これまでのITエンジニアに欠けていた視点や考え方を養うことができるのです。
あとはそこで発見したアイディアを上司や経営層・クライアントに対して提案するほんの少しの勇気さえあれば、きっとITエンジニアの活躍フィールドは限りなく広がり、ITエンジニアの価値も高まっていくと確信しています」

やりたいことを実現したければ、おもしろそうに話をすべし!


ALTERNATIVE DESIGN++ 代表
AR三兄弟 長男
川田 十夢氏

AR(拡張現実)技術を追求しつつ、最近では“AR三兄弟の長男”としてメディアでの活動も精力的にこなしている、ALTERNATIVE DESIGN++代表の川田氏。2010年に独立した川田氏だが、それまで10年余り、ミシンメーカーで「ミシンとネットをつなぐ技術」で特許を開発するなど、斬新なアイディアと行動力で早くからITエンジニアとしてユニークな働き方を実践してきた。
「メーカーにいた時もネットの技術を活用して新しいモノを生み出したいと思っていたんですけど、そもそも当時は社内にIT部門そのものがなかった。だから社内で働きかけを行って、自分で部門を立ち上げたんです」と、その当時を振り返る川田氏。

しかしその働きかけも決してスムーズに進んだわけではない。ITという目に見えない技術やその価値を、どうすれば社内の人に理解してもらえるのか?様々な試行錯誤を繰り返した結果、川田氏が出した結論は「短い言葉で、専門用語を一切使わず、“おもしろそう!”と思ってもらえるような話をすること」だった。
「今もAR三兄弟として、奇抜な格好でARが持つおもしろさや可能性についていろんなところでアッピールしてますが、そもそも人って興味がなければ真剣に話を聞いてくれない。でも特に技術者って、誰かに新しい提案をするときに少しでも正確に伝えようと難解な言葉を多用しがち。本当に大事なのは、まず“目の前の人をわくわくさせること”だと僕は思うんです。そこで興味を持ってからさらに細かい技術についてアッピールすれば、必ず人は耳を傾けてくれます。どんなに優れた技術や面白いアイディアがあっても、それを実現するためには人や金を動かさなくちゃならない。そのために、僕はあらゆる手段を使っておもしろそうな話をして、まず興味を持ってもらうことに全力を注ぐんです」

そうして川田氏はやりたいことを着実に実現させて会社でできることはすべてやりつくしたと実感した後、独立した。その上で今、企業に勤める多くのITエンジニアに対してアドバイスできることについて聞いたところ、「数多く打席に立ち、思いっきり三振し続けること」だという。
「特許を開発するなど成功したこともありますが、その数十倍は失敗していますね。ある時、個人的な興味から“尻文字”について研究したことがあって、研究したからといって何かをプロダクトとして出せる訳でもないのでそれなりの赤字をたたき出すわけですよ(笑)。人によっては“社内で頑張ってもやりたいことができないから独立したい”と考える人もいるかもしれませんが、独立してひとつでも失敗したらその時点で“アウト”。その一方企業に所属していれば、打席に立ち三振してもそれで路頭に迷うようなことはない。そのありがたみを今になって、すごく実感しています。だからこそ独立や転職を考える前に、やりたいことを実現させるためのアッピールを全力ですべきだといいたいですね」

では川田氏のようにやりたいことを見つけたり、そしてそれを社内で実現させていくためにどのようなことに取り組んでいけばいいのか?その問いに対して川田氏は「今の仕事と全く無関係なテーマをチェックして、そこから自分のテーマや会社が追求すべきテーマと結び付けた上で、未来の履歴書を作ったり、翻訳者を見つける」ことだという。
「最近、“触角工学”というシンポジウムにふらっと参加しました(笑)。参加するまでどんなことをやっているのかさえわからなかったのですが、参加してみるとユニークで斬新なテーマを研究している人が多くて、すごい刺激になったんです。例えばそれって、社内に目を向けてもきっと同じことが言えて、自分と直接関係なくてもユニークな技術やアイディアを持った人は必ずいるはずなんです。そうした方々をチェックした上で、自分のやりたいテーマや会社としてどのようなテーマを追求すべきかを考えて、『この人とこの人を結びつけて一緒にやったら、このアイディアを実現できる』という、未来の履歴書を作ることができる。あとはそれを実現していくためにアッピールしていくわけですが、どうしてもアッピールがうまくできない人は、代わりにわかりやすくアッピールしてくれる“翻訳者”を見つけて、協力してもらえればいい。今、ARも含めITをテーマに活躍するチャンスは大きく広がっているからこそ、ぜひ自分のやりたいことを実現させてほしいです。かつて自分が最初に叩いた”Hello World”の”World”が、世界そのものであったように」

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